2026年7月、民間企業の法定雇用率が2.5%から2.7%へ引き上げられました。あわせて、障害者雇用義務の対象となる事業主の範囲も、常用労働者37.5人以上へ拡大しています。
法定雇用率への対応が求められるなか、企業では未達成の状況をどのように受け止め、障害者雇用を進めるうえで何を課題と感じているのでしょうか。
株式会社エスプールプラスでは、障害者雇用に関わる101名を対象に、2026年10月に独自調査を実施しました。
調査のうち、法定雇用率が未達成で従業員規模100人以上の回答者40名へ納付金への認識を集計したところ、47.5%が「無理に雇用改善はせず、納付金を支払うことにしている」を選択しました。
また、障害者雇用を進めるうえでの障壁として、「採用時の見極め、判断が難しい」39.6%、「社内に任せられる業務がない」30.7%といった回答も寄せられています。
本記事では、法定雇用率2.7%への引き上げ後の達成状況や、納付金に対する回答者の認識、採用・業務確保に関する課題を紹介します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 調査名称 | 法定雇用率2.7%施行後の障害者雇用に関する実態調査 |
| 調査手法 | インターネットによるアンケート調査(調査パネル利用) |
| 調査対象者 | 法定雇用義務のある企業に勤務し、障害者雇用に関わっていると回答したモニター |
| 有効回答数 | 101名 |
| 調査期間 | 2026年10月16日 |
| 実施主体 | 株式会社エスプールプラス |

| 法定雇用率2.7%を達成している | 52.5% |
|---|---|
| 未達成だが達成見込みがある | 32.7% |
| 達成の見通しが立っていない | 14.9% |
※「達成見込み」には2027年6月以降での達成を含みます。
2026年7月時点の法定雇用率2.7%に対する達成状況を尋ねたところ、「達成している」が52.5%、「未達成」が47.5%でした。厚生労働省の令和7年 障害者雇用状況の集計結果(令和7年6月1日現在)では、民間企業の実雇用率は2.41%、法定雇用率達成企業の割合は46.0%となっています。ただしこの数値は法定雇用率2.5%のもとでの集計であり、本調査とは時点も基準も異なります。
今回の障害者雇用の実務に関わる層を対象とした調査においても、約半数が法定雇用率を達成できていないという結果となりました。

| 無理に雇用改善はせず、納付金を支払うことにしている | 47.5% |
|---|---|
| 納付金対象にならないよう改善している | 30.0% |
| 社内でほとんど議論されていない | 17.5% |
| わからない | 5.0% |
障害者雇用納付金について、勤務先でどのように受け止められているかを尋ねました。
法定雇用率2.7%が未達成で、従業員規模100人以上の回答者で集計したところ、「無理に雇用改善はせず、納付金を支払うことにしている」を選択した割合が47.5%で最も多い結果となりました。
次いで「納付金対象にならないよう改善している」が30.0%、「社内でほとんど議論されていない」が17.5%となりました。

| 2026年12月末までに達成見込み | 22.9% |
|---|---|
| 2027年3月末までに達成見込み | 22.9% |
| 2027年5月末までに達成見込み | 16.7% |
| 2027年6月以降で達成見込み | 6.3% |
| 達成の見通しが立っていない | 27.1% |
| 達成を目指していない | 4.2% |
法定雇用率2.7%を未達成と回答した48名について、達成見込み時期を集計しました。
最も多かったのは「達成の見通しが立っていない」の27.1%でした。
一方、「2026年12月末までに達成見込み」と「2027年3月末までに達成見込み」がそれぞれ22.9%、「2027年5月末までに達成見込み」が16.7%となりました。
2027年5月末までの達成を見込む回答者は合計62.5%で、未達成企業の6割強は1年以内の達成を視野に入れていることがわかります。
また、「達成の見通しが立っていない」27.1%と「達成を目指していない」4.2%を合わせると、31.3%が具体的な達成見込み時期を示していません。
達成に向けた見通しを持つ回答者がいる一方、未達成企業のうち、およそ3社に1社は、今後の見通しが立っていない、あるいは達成を目指していない状態にあたります。

| 採用時の見極め、判断が難しい | 39.6% |
|---|---|
| 社内に任せられる業務がない | 30.7% |
| 管理職・現場社員の負担が大きい | 19.8% |
| 受け入れ体制が整っていない | 19.8% |
| 応募がなく採用できない | 18.8% |
| 雇用ノウハウやイメージがない | 15.8% |
| 受け入れ部署の理解が得られない | 15.8% |
| 設備・環境の整備にコストがかかる | 14.9% |
| 必要な配慮の内容や範囲がわからない | 11.9% |
| 経営層の理解・優先度が低い | 7.9% |
| 特に障壁を感じていない | 19.8% |
障害者雇用を進めるうえで障壁になっていることを複数回答で尋ねたところ、最も多かったのは「採用時の見極め、判断が難しい」の39.6%でした。
次いで「社内に任せられる業務がない」が30.7%、「管理職・現場社員の負担が大きい」「受け入れ体制が整っていない」がそれぞれ19.8%、「応募がなく採用できない」が18.8%となりました。
一方、「特に障壁を感じていない」と回答した人も19.8%いました。
今回の調査では、採用段階での判断や、雇用後に担当する業務の確保について難しさを感じている回答者が一定数いることがわかりました。
採用時には、応募者の希望や適性と、企業が用意できる業務や就業環境との適合性を確認することが重要です。企業が一方的に判断するだけでなく、本人も仕事内容や職場環境を理解し、双方が納得して雇用につなげられる機会を設けることが大切だと考えられます。
採用時の判断に関しては、自由回答でも次のような声が寄せられました。
「仕事への熱意も感じるが判断材料が少ない」(回答の一部を抜粋)
「実際に仕事をしてみなければわからない事がある」
こうした回答からは、書類や面接だけで応募者の希望や適性と業務内容の適合性を確認することに、難しさを感じている回答者がいることがうかがえます。
採用時には、仕事内容や勤務条件を具体的に説明することに加え、必要に応じて職場見学や実習などの機会を設け、企業と本人が相互に理解を深めることも考えられます。

| 十分にある | 13.9% |
|---|---|
| ある程度ある | 50.5% |
| あまりない | 28.7% |
| ほとんどない | 5.0% |
| わからない | 2.0% |
障害者雇用を進めるうえでは、採用だけでなく、本人の希望や適性に合った業務や、安心して働ける環境を整えることも重要です。
障害者手帳を持つ社員に任せられる業務が社内にあると感じるかを尋ねたところ、最も多かったのは「ある程度ある」の50.5%でした。
「十分にある」は13.9%で、両者を合わせると64.4%が、社内に任せられる業務があると回答しています。
一方、「あまりない」が28.7%、「ほとんどない」が5.0%となりました。
また、法定雇用率2.7%の達成状況別に見ると、「十分にある」「ある程度ある」と回答した割合は、達成していると回答した人では71.7%、未達成と回答した人では56.3%となりました。
今回の調査では、社内に任せられる業務があると感じている割合について、達成状況別で15.4ポイントの差が見られました。
先ほどご紹介の通り、障害者雇用を進めるうえでの障壁を尋ねた別の設問では、「受け入れ体制が整っていない」「管理職・現場社員の負担が大きい」がそれぞれ19.8%となっています。
これらの結果からは、企業が障害者雇用を進める際に、担当する業務の確保に加え、職場での受け入れ体制や支援体制についても課題を感じていることがうかがえます。
障がいのある方が力を発揮できる仕事は、一律に決まるものではありません。本人の希望や適性、経験などを踏まえて業務を検討し、必要な配慮やサポート体制を整えることが重要と考えられます。
本調査から見えてきたのは、障害者雇用が進まない理由が単一ではないこと、そして達成に向けて動けていない企業が少なくないことです。
第一に、障壁は「採用の判断」と「業務の確保」の二つが並んでいます。 最も多く挙がったのは「採用時の見極め、判断が難しい」39.6%、次いで「社内に任せられる業務がない」30.7%でした。自由記述でも「判断材料が少ない」「実際に仕事をしてみなければわからない」といった声が寄せられており、限られた情報から本人の希望や適性と、企業の業務・就業環境との適合性を確認することの難しさがうかがえます。
第二に、業務の確保は「ある/ない」という二択では捉えきれない課題が見られます。 任せられる業務が「十分にある」「ある程度ある」と答えた企業は64.4%にのぼる一方、「十分にある」は13.9%にとどまりました。また、法定雇用率を達成していると回答した人では71.7%、未達成と回答した人では56.3%が、社内に任せられる業務が「ある」と回答しています。本人の希望や適性に応じて、継続的に担当できる業務を確保することは重要な課題と考えられます。
第三に、最も重視すべき結果として、法定雇用率2.7%が未達成で、従業員規模100人以上と回答した企業40社のうち、47.5%が「無理に雇用改善はせず、納付金を支払うことにしている」を選択しました。 納付金への対応を見ると、未達成企業で「対象にならないよう改善している」と答えたのは30.0%にとどまり、「無理に雇用改善はせず、納付金を支払うことにしている」47.5%と「社内でほとんど議論されていない」17.5%を合わせると65.0%にのぼります。さまざまな背景から、雇用率の達成に向けて取り組むかどうかの意思決定の段階で止まっている企業が多数を占めているのが実態です。
法定雇用率が2.7%へ引き上げられたことで、必要な雇用数は増えました。しかし、法定雇用率への対応を進めるうえでは、採用段階での相互理解や、本人が力を発揮できる業務の確保、雇用後の支援体制など、継続的な取り組みが欠かせません。しかし本調査の結果からは、雇用率の引き上げがただちに取り組みの加速につながるわけではないことがうかがえます。採用の判断を支える仕組みと、継続的に任せられる業務の確保。この二つの課題にどのように対応するかが、今後の障害者雇用を進めるうえで重要な論点と考えられます。
法定雇用率の達成に向けた取り組みを、障がいのある方が能力を発揮し、働き続けられる環境づくりにつなげていくことが重要です。
業種
| 業種 | 社数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 製造業 | 29 | 28.7% |
| 運輸業、郵便業 | 12 | 11.9% |
| 医療、福祉 | 11 | 10.9% |
| 情報通信業 | 10 | 9.9% |
| その他サービス業 | 9 | 8.9% |
| 小売業 | 6 | 5.9% |
| 金融業、保険業 | 5 | 5.0% |
| 教育、学習支援業 | 3 | 3.0% |
| 建設業 | 2 | 2.0% |
| 電気・ガス・熱供給・水道業 | 2 | 2.0% |
| 不動産業 | 2 | 2.0% |
| 専門・技術サービス業 | 2 | 2.0% |
| 生活関連サービス業 | 1 | 1.0% |
| その他 | 7 | 6.9% |
従業員規模
| 従業員規模 | 社数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 40人未満 | 1 | 1.0% |
| 40人以上100人未満 | 10 | 9.9% |
| 100人以上300人未満 | 11 | 10.9% |
| 300人以上500人未満 | 14 | 13.9% |
| 500人以上1,000人未満 | 18 | 17.8% |
| 1,000人以上5,000人未満 | 23 | 22.8% |
| 5,000人以上10,000人未満 | 8 | 7.9% |
| 10,000人以上 | 16 | 15.8% |
障害者雇用への関与年数
| 関与年数 | 人数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 6ヶ月未満 | 5 | 5.0% |
| 6ヶ月以上1年未満 | 1 | 1.0% |
| 1年以上3年未満 | 21 | 20.8% |
| 3年以上5年未満 | 25 | 24.8% |
| 5年以上10年未満 | 27 | 26.7% |
| 10年以上 | 22 | 21.8% |
障害者雇用への関与内容(複数回答)
| 関与内容 | 人数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 採用 | 74 | 73.3% |
| 労務 | 59 | 58.4% |
| マネジメント | 41 | 40.6% |
| 同僚・業務上関わる | 23 | 22.8% |
| その他 | 6 | 5.9% |
※本調査の数値は小数点第2位を四捨五入しているため、合計が100%にならない場合があります。
![]()
障害者雇用で欠勤が多い社員への対応を解説します。原因の確認、NG対応、合理的配慮の見直し、休みがちな場合の面談の進め方、職場環境の整え方、解雇・休職の判断まで。
![]()
ジョブコーチの資格に試験はありません。国家資格ではなく、職場適応援助者養成研修を修了して取得します。企業在籍型の取り方、費用、受講要件、更新の有無を企業向けに解説。
![]()
障害者雇用枠の精神障害とは、対象範囲と採用・定着のポイントを解説します。手帳の等級、カウント、発達障害の扱い、面接で確認したいことまで。
![]()
この記事では、「D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)」の基本的な意味から、DE&Iとの違いまでを解説します。労働人口の減少やイノベーション創出といった社会的な背景からD&Iがなぜ重要視されるのか、そして企業がD&Iに取り組むことで得られる人材不足の解消や企業ブランド向上などの具体的なメリットを掘り下げます。さらに、D&Iを推進するための具体的な取り組み例と、実践的な5つのステップを紹介します。
![]()
障害者雇用におけるハローワークの活用方法を解説。計画作成・準備・募集・選考・入社までの流れと、障害者試行雇用(トライアル雇用)・職場適応援助者(ジョブコーチ)・職場実習などの支援メニューを企業担当者向けに紹介します。
![]()
障害者雇用の等級別カウント方法を、身体・知的・精神の障害種類別に等級表つきで解説。重度判定によるダブルカウントや短時間労働者・特定短時間労働者の算定、自社の必要雇用人数がわかる計算事例も紹介します。