公開日:2026年10月29日  更新日:2026年10月29日

法定雇用率2.7%への引き上げ後、未達成への対応を企業担当者はどう認識しているのか

2026年7月、民間企業の法定雇用率が2.5%から2.7%へ引き上げられました。あわせて、障害者雇用義務の対象となる事業主の範囲も、常用労働者37.5人以上へ拡大しています。

法定雇用率への対応が求められるなか、企業では未達成の状況をどのように受け止め、障害者雇用を進めるうえで何を課題と感じているのでしょうか。

株式会社エスプールプラスでは、障害者雇用に関わる101名を対象に、2026年10月に独自調査を実施しました。

調査のうち、法定雇用率が未達成で従業員規模100人以上の回答者40名へ納付金への認識を集計したところ、47.5%が「無理に雇用改善はせず、納付金を支払うことにしている」を選択しました。

また、障害者雇用を進めるうえでの障壁として、「採用時の見極め、判断が難しい」39.6%、「社内に任せられる業務がない」30.7%といった回答も寄せられています。

本記事では、法定雇用率2.7%への引き上げ後の達成状況や、納付金に対する回答者の認識、採用・業務確保に関する課題を紹介します。

調査結果サマリー

  1. 法定雇用率2.7%は47.5%が未達成と回答
  2. 未達成・従業員規模100人以上と回答した40名の47.5%(19名)が、納付金について「無理に雇用改善はせず、納付金を支払うことにしている」を選択
  3. 未達成と回答した人の31.3%が、具体的な達成見込み時期を示さず
  4. 障害者雇用の障壁は「採用時の見極め、判断が難しい」39.6%が最多。次いで「社内に任せられる業務がない」30.7%
  5. 社内に任せられる業務が「十分にある」と回答した割合は13.9%

調査概要

項目 内容
調査名称 法定雇用率2.7%施行後の障害者雇用に関する実態調査
調査手法 インターネットによるアンケート調査(調査パネル利用)
調査対象者 法定雇用義務のある企業に勤務し、障害者雇用に関わっていると回答したモニター
有効回答数 101名
調査期間 2026年10月16日
実施主体 株式会社エスプールプラス

調査結果詳細

1. 法定雇用率2.7%の達成状況|47.5%が未達成と回答

法定雇用率2.7%の達成状況。達成52.5%、未達成だが達成見込みあり32.7%、達成の見通しが立っていない14.9%。回答者101名。

グラフ1の回答項目と割合(n=101/単一回答)
法定雇用率2.7%を達成している 52.5%
未達成だが達成見込みがある 32.7%
達成の見通しが立っていない 14.9%

※「達成見込み」には2027年6月以降での達成を含みます。

2026年7月時点の法定雇用率2.7%に対する達成状況を尋ねたところ、「達成している」が52.5%、「未達成」が47.5%でした。厚生労働省の令和7年 障害者雇用状況の集計結果(令和7年6月1日現在)では、民間企業の実雇用率は2.41%、法定雇用率達成企業の割合は46.0%となっています。ただしこの数値は法定雇用率2.5%のもとでの集計であり、本調査とは時点も基準も異なります。

今回の障害者雇用の実務に関わる層を対象とした調査においても、約半数が法定雇用率を達成できていないという結果となりました。

2. 未達成・従業員規模100人以上と回答した担当者の47.5%が「無理に雇用改善はせず、納付金を支払うことにしている」と回答

障害者雇用納付金への認識。未達成・従業員規模100人以上と回答した40名の47.5%が、無理に雇用改善はせず納付金を支払うことにしていると回答。

グラフ2の回答項目と割合(n=40/従業員規模100人以上・法定雇用率未達成の回答者/単一回答)
無理に雇用改善はせず、納付金を支払うことにしている 47.5%
納付金対象にならないよう改善している 30.0%
社内でほとんど議論されていない 17.5%
わからない 5.0%

障害者雇用納付金について、勤務先でどのように受け止められているかを尋ねました。

法定雇用率2.7%が未達成で、従業員規模100人以上の回答者で集計したところ、「無理に雇用改善はせず、納付金を支払うことにしている」を選択した割合が47.5%で最も多い結果となりました。

次いで「納付金対象にならないよう改善している」が30.0%、「社内でほとんど議論されていない」が17.5%となりました。

3. 未達成と回答した人の31.3%が、具体的な達成見込み時期を示さず

法定雇用率未達成と回答した48名の達成見込み時期。2027年5月末までの達成見込み62.5%、具体的な達成時期を示さない回答31.3%。

グラフ3の回答項目と割合(n=48/法定雇用率未達成の回答者/単一回答)
2026年12月末までに達成見込み 22.9%
2027年3月末までに達成見込み 22.9%
2027年5月末までに達成見込み 16.7%
2027年6月以降で達成見込み 6.3%
達成の見通しが立っていない 27.1%
達成を目指していない 4.2%

法定雇用率2.7%を未達成と回答した48名について、達成見込み時期を集計しました。

最も多かったのは「達成の見通しが立っていない」の27.1%でした。

一方、「2026年12月末までに達成見込み」と「2027年3月末までに達成見込み」がそれぞれ22.9%、「2027年5月末までに達成見込み」が16.7%となりました。

2027年5月末までの達成を見込む回答者は合計62.5%で、未達成企業の6割強は1年以内の達成を視野に入れていることがわかります。

また、「達成の見通しが立っていない」27.1%と「達成を目指していない」4.2%を合わせると、31.3%が具体的な達成見込み時期を示していません。

達成に向けた見通しを持つ回答者がいる一方、未達成企業のうち、およそ3社に1社は、今後の見通しが立っていない、あるいは達成を目指していない状態にあたります。

4. 障害者雇用の障壁は「採用時の見極め、判断が難しい」39.6%で最多

障害者雇用の障壁。採用時の見極め・判断39.6%、社内に任せられる業務がない30.7%が上位。回答者101名、複数回答。

グラフ4の回答項目と割合(n=101/複数回答)
採用時の見極め、判断が難しい 39.6%
社内に任せられる業務がない 30.7%
管理職・現場社員の負担が大きい 19.8%
受け入れ体制が整っていない 19.8%
応募がなく採用できない 18.8%
雇用ノウハウやイメージがない 15.8%
受け入れ部署の理解が得られない 15.8%
設備・環境の整備にコストがかかる 14.9%
必要な配慮の内容や範囲がわからない 11.9%
経営層の理解・優先度が低い 7.9%
特に障壁を感じていない 19.8%

障害者雇用を進めるうえで障壁になっていることを複数回答で尋ねたところ、最も多かったのは「採用時の見極め、判断が難しい」の39.6%でした。

次いで「社内に任せられる業務がない」が30.7%、「管理職・現場社員の負担が大きい」「受け入れ体制が整っていない」がそれぞれ19.8%、「応募がなく採用できない」が18.8%となりました。

一方、「特に障壁を感じていない」と回答した人も19.8%いました。

今回の調査では、採用段階での判断や、雇用後に担当する業務の確保について難しさを感じている回答者が一定数いることがわかりました。

採用時には、応募者の希望や適性と、企業が用意できる業務や就業環境との適合性を確認することが重要です。企業が一方的に判断するだけでなく、本人も仕事内容や職場環境を理解し、双方が納得して雇用につなげられる機会を設けることが大切だと考えられます。

採用時の判断に関しては、自由回答でも次のような声が寄せられました。

「仕事への熱意も感じるが判断材料が少ない」(回答の一部を抜粋)

「実際に仕事をしてみなければわからない事がある」

こうした回答からは、書類や面接だけで応募者の希望や適性と業務内容の適合性を確認することに、難しさを感じている回答者がいることがうかがえます。

採用時には、仕事内容や勤務条件を具体的に説明することに加え、必要に応じて職場見学や実習などの機会を設け、企業と本人が相互に理解を深めることも考えられます。

5. 障がいのある方が活躍できる職場づくり|業務の確保と受け入れ体制の課題

障害者手帳を持つ社員に任せられる業務。十分にある13.9%、ある程度ある50.5%、あまりない28.7%、ほとんどない5.0%、わからない2.0%。回答者101名。

グラフ5の回答項目と割合(n=101/単一回答)
十分にある 13.9%
ある程度ある 50.5%
あまりない 28.7%
ほとんどない 5.0%
わからない 2.0%

障害者雇用を進めるうえでは、採用だけでなく、本人の希望や適性に合った業務や、安心して働ける環境を整えることも重要です。

障害者手帳を持つ社員に任せられる業務が社内にあると感じるかを尋ねたところ、最も多かったのは「ある程度ある」の50.5%でした。

「十分にある」は13.9%で、両者を合わせると64.4%が、社内に任せられる業務があると回答しています。

一方、「あまりない」が28.7%、「ほとんどない」が5.0%となりました。

また、法定雇用率2.7%の達成状況別に見ると、「十分にある」「ある程度ある」と回答した割合は、達成していると回答した人では71.7%、未達成と回答した人では56.3%となりました。

今回の調査では、社内に任せられる業務があると感じている割合について、達成状況別で15.4ポイントの差が見られました。

先ほどご紹介の通り、障害者雇用を進めるうえでの障壁を尋ねた別の設問では、「受け入れ体制が整っていない」「管理職・現場社員の負担が大きい」がそれぞれ19.8%となっています。

これらの結果からは、企業が障害者雇用を進める際に、担当する業務の確保に加え、職場での受け入れ体制や支援体制についても課題を感じていることがうかがえます。

障がいのある方が力を発揮できる仕事は、一律に決まるものではありません。本人の希望や適性、経験などを踏まえて業務を検討し、必要な配慮やサポート体制を整えることが重要と考えられます。

調査結果考察

障壁は採用と業務の二つ。未達成と回答した担当者の47.5%が「納付金を支払うことにしている」を選択

本調査から見えてきたのは、障害者雇用が進まない理由が単一ではないこと、そして達成に向けて動けていない企業が少なくないことです。

第一に、障壁は「採用の判断」と「業務の確保」の二つが並んでいます。 最も多く挙がったのは「採用時の見極め、判断が難しい」39.6%、次いで「社内に任せられる業務がない」30.7%でした。自由記述でも「判断材料が少ない」「実際に仕事をしてみなければわからない」といった声が寄せられており、限られた情報から本人の希望や適性と、企業の業務・就業環境との適合性を確認することの難しさがうかがえます。

第二に、業務の確保は「ある/ない」という二択では捉えきれない課題が見られます。 任せられる業務が「十分にある」「ある程度ある」と答えた企業は64.4%にのぼる一方、「十分にある」は13.9%にとどまりました。また、法定雇用率を達成していると回答した人では71.7%、未達成と回答した人では56.3%が、社内に任せられる業務が「ある」と回答しています。本人の希望や適性に応じて、継続的に担当できる業務を確保することは重要な課題と考えられます。

第三に、最も重視すべき結果として、法定雇用率2.7%が未達成で、従業員規模100人以上と回答した企業40社のうち、47.5%が「無理に雇用改善はせず、納付金を支払うことにしている」を選択しました。 納付金への対応を見ると、未達成企業で「対象にならないよう改善している」と答えたのは30.0%にとどまり、「無理に雇用改善はせず、納付金を支払うことにしている」47.5%と「社内でほとんど議論されていない」17.5%を合わせると65.0%にのぼります。さまざまな背景から、雇用率の達成に向けて取り組むかどうかの意思決定の段階で止まっている企業が多数を占めているのが実態です。

法定雇用率が2.7%へ引き上げられたことで、必要な雇用数は増えました。しかし、法定雇用率への対応を進めるうえでは、採用段階での相互理解や、本人が力を発揮できる業務の確保、雇用後の支援体制など、継続的な取り組みが欠かせません。しかし本調査の結果からは、雇用率の引き上げがただちに取り組みの加速につながるわけではないことがうかがえます。採用の判断を支える仕組みと、継続的に任せられる業務の確保。この二つの課題にどのように対応するかが、今後の障害者雇用を進めるうえで重要な論点と考えられます。

法定雇用率の達成に向けた取り組みを、障がいのある方が能力を発揮し、働き続けられる環境づくりにつなげていくことが重要です。

回答者属性

業種

業種 社数 構成比
製造業 29 28.7%
運輸業、郵便業 12 11.9%
医療、福祉 11 10.9%
情報通信業 10 9.9%
その他サービス業 9 8.9%
小売業 6 5.9%
金融業、保険業 5 5.0%
教育、学習支援業 3 3.0%
建設業 2 2.0%
電気・ガス・熱供給・水道業 2 2.0%
不動産業 2 2.0%
専門・技術サービス業 2 2.0%
生活関連サービス業 1 1.0%
その他 7 6.9%

従業員規模

従業員規模 社数 構成比
40人未満 1 1.0%
40人以上100人未満 10 9.9%
100人以上300人未満 11 10.9%
300人以上500人未満 14 13.9%
500人以上1,000人未満 18 17.8%
1,000人以上5,000人未満 23 22.8%
5,000人以上10,000人未満 8 7.9%
10,000人以上 16 15.8%

障害者雇用への関与年数

関与年数 人数 構成比
6ヶ月未満 5 5.0%
6ヶ月以上1年未満 1 1.0%
1年以上3年未満 21 20.8%
3年以上5年未満 25 24.8%
5年以上10年未満 27 26.7%
10年以上 22 21.8%

障害者雇用への関与内容(複数回答)

関与内容 人数 構成比
採用 74 73.3%
労務 59 58.4%
マネジメント 41 40.6%
同僚・業務上関わる 23 22.8%
その他 6 5.9%

※本調査の数値は小数点第2位を四捨五入しているため、合計が100%にならない場合があります。

関連リンク

出典

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