更新日:2021年4月 2日
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障がい者雇用による税制上の優遇措置

障がい者を多数雇用していたり、障がい者雇用に積極的な企業は、税制優遇制度を利用することができます。障がい者を雇用した場合にどのような優遇措置を受けられるかについて、まとめました。

※この記事は2021年1月時点での障がい者雇用に関わる法律をもとに作成しています。

事業所に係る事業所税の特例

助成金の支給を得て、障がい者を一定数以上雇用する事業所は、事業所税の軽減措置を受けることができます。この措置には、事業所の床面積を対象とした「資産割」と、雇用されている従業員の給与総額を対象とした「従業員割」の2つがあります。

事業所税の資産割、従業員割は、どちらも恒久措置となっており、適用期限は定められていません。

【資産割】
障がい者を多数雇用する事業所が助成金の支給を受けて施設の設置を行った場合、その施設で行う事業にかかる事業所税について、課税標準となるべき事業所床面積の2分の1に相当する部分について控除できます。

資産割の活用には、要件を満たしているかの確認が必要になります。ハローワークで要件確認の手続きをしてください。要件を満たしている場合には、証明書が交付されます。

【従業員割】
事業所税の課税標準となるべき従業員給与総額の算定について、障がい者に支払う給与総額を控除できます。

対象要件

【資産割】
・障がい者を10人以上雇用し(※1)、かつ雇用割合が50%以上(※2)である事業主が対象となります。

※1 重度以外の障がい者で短時間労働者は、1人を0.5人としてカウントします。

※2 短時間労働者を除く重度障がい者は、1人を2人として、重度以外の障がい者である短時間労働者は、1人を0.5人としてカウントします。

対象となる助成金は、次のものです。

  • 雇用保険二事業に基づく「中小企業障害者多数雇用施設設置等助成金」
  • 障害者雇用納付金制度に基づく「重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金」

【従業員割】

対象は障がい者を雇用する事業主で、雇用人数や雇用割合は特に定められていません。

助成金の非課税措置

国や地方公共団体の補助金、給付金、障害者雇用納付金制度に基づく助成金の支給を受け、それを固定資産の取得または改良などに使った場合、その助成金分については、損金算入(法人税)、または総収入金額に不算入(所得税)とすることができます。障がい者雇用に関する助成金については、「障がい者雇用の助成金とは?種類や助成金の金額について解説」の記事で詳しく解説しています。

助成金非課税措置は、恒久措置となっており、適用期限は定められていません。

【法人税】
交付を受けた助成金で取得等した固定資産の帳簿価額を圧縮記帳により減額等したときは、確定申告書に圧縮記帳による圧縮額の損金算入に関する明細の記載がある場合に限り、減額等した金額は損金算入することができます。

【所得税】
固定資産の取得等に充てられた返還を要しない助成金の額は、確定申告書に所得税法第42 条(国庫補助金等の総収入金額不算入)の適用を受ける旨を記載するとともに、「国庫補助金等の総収入金額不算入に関する明細書」を添付した場合に限り、各種所得の金額の計算上、総収入金額に算入しないことが可能です。

対象要件

非課税措置が取られる助成金は、以下のとおりです。

  • 障害者作業施設設置等助成金
    障がい者を労働者として継続雇用する事業主に対し、障がい者がスムーズに作業を行えるように施設の改造などが行われた場合の費用を一部助成するものです。
  • 重度障害者等通勤対策助成金
    一定の基準以上の障がいのある労働者が、容易に通勤できるような措置をとった事業所に対し助成をおこなうものです。
  • 重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金
    一定基準以上の重度障がい者を雇用する事業主に対し、就労に必要な事業施設(作業施設、管理施設、福祉施設およびそれらの備品、整備)の設置・整備をした際に支給される助成をおこなうものです。
  • 障害者能力開発助成金
    身体障がい者や知的障がい者・発達障がい者などに向けて、職業能力開発訓練を行う事業主に対して、助成するものです。

過去にあった優遇措置

現在は利用できませんが、過去にはこのような優遇措置がありました。

機械等の割増償却制度

【適用期間は、平成32年3月31日まででした。】

障がい者を多数雇用する事業所が減価償却を行う際、その事業年度、またはその前5年以内に開始した各事業年度に取得・製作、建設した機械や設備などについて、普通償却限度額に加えて、機械は24%、工場用建物は32%の割増償却をすることができる制度です。

割増償却とは、減価償却の限度額を上回った金額を減価償却費として計上できます。

対象となる設備は、減価償却を行う年またはその5年前以内に取得、制作、建設したものが対象になります。

  • 障がい者が働く事業所に設置されている機械、およびその付属装置
  • 障がい者が働く工場用の建物、およびその付属設備

対象要件

次の要件のうちいずれかを満たす事業主です。

  • 労働者の総数に占める障がい者の割合が50%以上
  • 雇用している障がい者数が20人以上であり、かつ労働者の総数に占める障がい者の割合が25%以上
  • 法定雇用率を達成している事業主で、雇用している障がい者数が20人以上であり、かつ雇用障がい者に占める重度障がい者の割合が 50%以上

不動産取得税・固定資産税の課税の特例

【適用期間は、平成31年3月31日まででした。】

【不動産取得税の軽減措置】
障がい者を多数雇用する事業所が、助成金の支給を受けて事業用施設を取得し、引き続き3年以上、事業用に使用した場合に、その施設の取得に伴う不動産取得税について、取得価格の10分の1相当額に税率を乗じた額が減額されます。

【固定資産税の軽減措置】
障がい者を多数雇用する事業所が助成金の支給を受けて事業用施設を取得した場合には、その施設についての 固定資産税の課税標準は、当初5年度分に限り、課税標準となるべき価格から取得価格の6分の1に障がい者雇用割合を乗じた金額が減額されます。

対象要件

【不動産取得税の軽減措置】

  • 対象となる事業所の要件
    雇用している障がい者数が20人以上であり、かつ労働者の総数に占める障がい者の割合が50%以上
  • 対象となる助成金
    雇用保険二事業に基づく「中小企業障害者多数雇用施設設置等助成金」、障害者雇用納付金制度に基づく「重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金」を取得
  • 【固定資産税の軽減措置】

    • 対象となる事業所の要件
      雇用している障がい者数が20人以上であり、かつ労働者の総数に占める障がい者の割合が50%以上
    • 対象となる助成金
      雇用保険二事業に基づく「中小企業障害者多数雇用施設設置等助成金」、障害者雇用納付金制度に基づく「重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金」を取得

不明点等は、最寄りの都道府県労働局長またはハローワークへ

障がい者雇用を考えた時に適応される助成金の種類や、税制優遇制度に関わる申請方法について難しいと感じる方も多いと思います。

そんな時には、一度ハローワークや最寄りの税務署に問い合わせてみることをおすすめします。要件確認についてはハローワークに、制度については税務署、県税事務所へお問い合わせください。

また、適用期間や対象などの要件は都度変わる可能性がありますので、申請時に確認するようにしてください。

まとめ

障がい者を雇用するにあたって利用できる税制上の優遇措置制度についてご紹介しました。障がい者雇用を考えた時に適応される助成金の種類や、税制優遇制度に関わる申請方法について難しいと感じる方も多いと思います。制度や申請方法で悩まれたら、最寄りの税務署やハローワークに問い合わせてみることをおすすめします。

また、適用期間や対象などの要件は都度変わる可能性がありますので、申請時に都度確認するようにしましょう。

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