更新日:2021年4月14日
法制度・最新情報の資料

障がい者雇用の面接も一般雇用と基本は同じ

採用面接では、応募者の基本的人権の尊重と、応募者の能力と適性を基準として、選考を行なうことが求められています。これは、障がいの有無に関わりなく同じです。どのような点について、気をつければよいのでしょうか。

厚生労働省では、採用面接時で法律的に聞くことが禁止されている質問として、「本人に責任のない事項の把握」と「本来自由であるべきこと(思想信条に関わること)の把握」に関する適性と能力に関係がない事項を質問したり、把握することは、就職差別につながるおそれがあるとみなしています。

そのため採用面接時での面接では、次の点を聞くことはふさわしくありません。

「本人に責任のない事項の把握」としては、次のことが含まれます。

  • 本籍・出生地に関すること
  • 家族に関すること
  • 住宅状況に関すること
  • 生活環境・家庭環境などに関すること

「本来自由であるべき事項」としては、次のことが含まれます。

  • 宗教に関すること
  • 支持政党に関すること
  • 人生観、生活信条に関すること
  • 思想に関すること
  • 労働組合に関する情報
  • 購読新聞・雑誌・愛読書など

障がい者雇用の面接で確認するポイント

採用面接は、本人の就職に対する意欲、業務の適性などから判断することになります。加えて、障がい者雇用の採用面接では、就労への準備ができているか、障がい状況、障がい受容や、実際に業務がどれくらい行えるのか、合理的配慮などを確認することが必要になってきます。

それぞれの項目について、見ていきたいと思います。

ポイント1 就職に対する意欲

採用するには、本人の仕事に対する意欲や志望動機などが重要になってきます。特に、障がい者雇用の際には、就職面接に来ていることだけで、就職に対する意欲があると判断しないようにすることも大切です。

「就職活動をしているのに、就職への意欲がないとはおかしい」と感じられるかもしれません。しかし、障がい者雇用の場合、一般の採用よりも仕事内容や職種、地域などの点で、一般の求人よりもかなり選択肢が狭まっていることが多くあります。

また、就労移行支援事業所は2年間の活用できる期間が決まっているなど、就労訓練機関や学校へ在籍できる期間が決まっています。当然、修了や卒業するときまでに、訓練機関や学校では就職できるように指導していきますし、障がい者当事者の周囲からも就職を目指す雰囲気になります。

このような影響を受けて、実は、本人がまだ就職への意欲が十分でないとしても、就職活動を行なうことは珍しいことではありません。うまく仕事内容や、職場の雰囲気に合い、安定雇用に結びつく場合もありますが、本人に働く意欲が薄い場合、ちょっとした問題が起こったり、障がい者が思っていたような状況と違う状況があったりすると、簡単に退職してしまうようなことになることもあります。そのため本当に働く意欲があるのかどうかを、確認することは大切です。

ポイント2 就労準備

「就労準備性」とは、職種を問わず、働く上で必要とされる以下のような基礎的な能力のことです。

  • 働くことについての理解
  • 生活習慣
  • 作業遂行の基本的な能力
  • 対人関係の基本的なスキル

大阪市こころの健康センターでは、平成19年度から「精神障害者雇用に関する啓発事業」をおこなう中で、協力企業から障がい者の就労準備性の不足を指摘されたそうです。そのため精神障がいのある人の「就労準備性」を高めるためにはどうしたらよいかを取り組む中で、障がいのある人の「就労準備に関するチェックリスト」を作成しています。

この就労準備のチェックリストに示されている点は、次のことです。

  • 健康の維持
  • 日常生活能力
  • 対人関係
  • 仕事の準備
  • 職場のルール
  • 作業遂行力
  • 協力を得る

出典:大阪市こころの健康センター「就労準備性チェックシート」

このような点を確認することによって、就職の準備が整っているのかを把握することができます。

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ポイント3 障がい状況

障がい者雇用では、障がいに関する情報を把握しておくことが必要です。「障がいについて、直接本人にどこまで聞いてよいのか悩む」という声を聞くことがありますが、このような情報がなければ、どのように配慮してよいのかを理解することができません。

また、障がい者本人も企業に障がいについて話すことで、就職に不利になるのかを心配してあえて自分から話さないこともありますので、本人からの申し出がない場合には、企業として適切な配慮を示したいという意思を示しながら、次のような点について聞くことができるでしょう。

  • 障がいの症状や、特性
  • 発症してからの経過や、医療機関との繋がり
  • 医療機関への通院頻度や、服薬状況
  • 職場で示してほしい障がいに対する配慮

ポイント4 業務内容の理解

求人している業務内容を理解していて、それらを仕事として行えるスキルや能力があるのかを確認することも大切です。

ある企業では、パソコンを使った業務で採用しましたが、スキル的な面で不足しており、本採用は難しいと判断したことがありました。パソコンを使った業務と言っても、いろいろな業務があります。

どの程度の業務を企業では想定しているのかを求人票や面接で提示し、企業側が想定している業務内容と、障がい当事者が考えている業務が合致しているのかどうかを明確にすることが大切です。

ポイント5 必要な合理的配慮

合理的配慮とは、障がいのある人も障がいのない人と平等に働けるように、一人ひとりの障がい特徴や職場環境によって生じる困難さを取り除くための個別の調整や配慮のことです。障害者雇用促進法が改正され、障がい者を雇用する事業主に対して、合理的配慮の提供義務が課されています。

合理的配慮を考える上で大切な点は、配慮の内容や程度は、個々の障がい者の状況や考え方、職場環境によって、変化するということです。ある職場で配慮が必要でも、他の働く環境では必要ないこともあります。そのため個々の必要な合理的配慮はどのような点なのかを、障がい当事者、企業側と双方がよく話し合う必要があります。

また、合理的配慮は事業主に求められますが、負担が過重な場合は、提供する義務はありません。事業活動への影響の大きさや、費用や負担の内容、企業の規模や財務状況によっても変わります。

状況によっては、その企業である障がいが求める合理的配慮を示すことは難しいという判断になることもあるでしょう。そのような場合には、企業側から障がい当事者に説明し、別の代替手段などを考慮することができるかもしれません。

ポイント6 緊急時の対応

障がい者を雇用していると、ときに予想しないような状況が起こることもありえます。そのようなときに備えて、緊急時の対応方法を検討しておくことも必要です。

例えば、職場で体調が悪くなったときの緊急連絡先や対応方法、地震などの自然災害が起こり、交通機関がすべて止まったときの代替手段や、連絡が取れなくなったときの複数の連絡先の確保、体調管理をするための必要な手段等についての確認などです。

障がい者雇用を成功させるポイント

障がい者雇用を進めるためには、もちろん今までお伝えしてきたような採用に関するポイントを押さえておくことは大切です。しかし、採用活動がうまくいけば、それで大丈夫というわけではありません。

障がい者雇用を進めるためには、社内で障がい者雇用への理解を深めることがポイントになります。たとえ採用がうまくいったとしても、障がい者雇用に対して社員の理解がない状態で配属されてしまうと、配属された先の部署で、一緒に働く社員は障がい者とどのように接してよいのかがわからずに戸惑うことになります。

また、採用された障がい者も、職場にうまく適応することができず、自分の居場所がないと感じさせてしまい、結果的に職場に定着することなく、退職に至ることもあります。障がい者雇用を進めるためには、社内で障がい者雇用の理解をしてもらうための準備をしておく必要があります。

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まとめ

障がい者雇用の面接で確認するポイントについて見てきました。障がい者雇用の面接も一般雇用と基本の考え方は同じですが、障がい者雇用の場合、配慮しておきたいことや背景を知っておくとよいことがいくつかあります。

面接では、本人の就職に対する意欲、業務の適性などから判断するとともに、就労への準備ができているか、障がい状況、障がい受容や、実際に業務がどれくらい行えるのか、合理的配慮などの点を確認するようにしてください。