SDGsとは、「誰一人として取り残すことなく持続可能でよりよい社会を実現していく」ことを目標に国連が定めたものです。さまざまな人が平等に長く活躍できる社会を目指すものですので、もちろん障がい者が取り残されることがあってはいけません。
SDGsは2015年に国連総会で採択された、2030年までに全世界で達成することを目指す国際目標です。その内容は、地球環境、貧困、経済成長、子どもの教育など多岐にわたる17の目標と169のターゲット、232の指標から構成されています。発展途上国、先進国、企業、個人、世界中の誰もがその担い手となります。
そのなかで、障がい者に特に関わりの深い項目が、ゴール8とゴール10です。それぞれについて詳しく解説します。
17の開発目標のうち「ゴール8」で掲げられたのは働きがいを得ながら経済成長を目指すということですが、その中に障がい者雇用ならびに賃金についても明文化されています。
そこには「2030年までに、若者や障がい者を含むすべての男性および女性の、完全かつ生産的な雇用およびディーセント・ワーク、ならびに同一労働同一賃金を達成する」とあり、障がい者が差別されることなく雇用機会を得ることができる社会の実現を目標としています。ディーセント・ワークとは、働きがいのある人間らしい仕事のことです。
「ゴール10」では人や国の不平等の是正を目標としています。そこには「2030年までに、年齢、性別、障がい、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、すべての人々のエンパワーメント、および社会的、経済的、および政治的な包含を促進する」と書かれています。多様性を当たり前のものとして受け入れることを促進するという考え方です。
SDGsで言及されていることからもわかる通り、障がい者の働く権利は広く保証されるべきという理解が国際的に広がっています。
日本においても、障がい者雇用は社会全体で取り組むべき責任としての認識が浸透してきました。実際、法定雇用率が定期的に引き上げられるなど、障がい者雇用に関わるさまざまなルールや法律が制定・改定されています。しかし、企業の担当者の中には、そうしたルールを負担に感じている方もいるのではないでしょうか。
日本の法律では、法定雇用率以上の障がい者を雇用することが義務付けられており、その未達成が続くとペナルティが課せられます。しかし、障がい者雇用に取り組むことで、企業は以下のようなメリットを受けられます。
以上からわかるように、障がい者雇用に前向きに取り組むことは、義務を達成する以上のメリットを企業にもたらす可能性を秘めているのです。
SDGsを意識して障がい者雇用を進めていくことは、企業の社会的責任を果たすだけでなく、事業を持続させるうえでも非常に重要です。ゴール8とゴール10に特化して考えた場合は以下のようなことを意識する必要があります。
ゴール8の達成のためには、障がい者が働きがいを感じて働き続けられる環境の整備が必要です。障がい特性に配慮したつもりで簡単な業務を任せたとしても、その業務が障がい者本人にとって簡単すぎるものだった場合、仕事のやりがいは感じにくくなってしまいます。
そうした齟齬をなくすためには、雇用する側が障がい特性への理解を深め、本人の希望も聞いたうえで能力に見合った仕事を割り当てたり、新しい仕事へのチャレンジの機会を与えたりすることが大切です。その人が本来持つ能力を十分に発揮できるような環境を整えることで、障がいをもつ社員が大きな戦力となり、企業の成長へとつながっていきます。
ゴール10の達成のためには、障がい者に対する差別をなくし、雇用や就業の場で公平な機会や待遇を提供することが大切です。障がいがあるという理由だけで特定の業務を割り当てたり賃金を低く設定したりすることも差別にあたります。同一労働同一賃金の原則にのっとり、本人の能力に見合った業務を与え、その業務に見合った賃金を支払わなければなりません。
また、企業全体で社員のノーマライゼーション意識の向上を目指し、適宜研修などを実施することも効果的です。
エスプールプラスの企業理念は、「一人でも多くの障がい者雇用を創出し、社会に貢献する」こと。その理念のもと、障がい者雇用支援サービスを通じてSDGsの達成を目指しています。
その取り組みの一つが、わーくはぴねす農園のを活用した障がい者雇用です。
わーくはぴねす農園では、既存の業務の枠を超え、主に知的障がいや精神障がいのある方の希望や障がい特性に合わせた職域を開発し、最適な業務を割り当てています。
農園での仕事は、自然のなかで農作物の成長という成果を感じることができる、やりがいの大きな仕事です。また、農園社員と本社社員の交流の場を設けることで多様性のある企業風土が根付き、社員のノーマライゼーション意識向上にもつながります。
収穫した野菜は、福利厚生として社内販売に使われるケースも多く、その収益は開発途上国の飢餓の根絶に取り組む社会貢献運動「TABLE FOR TWO」などに寄付し、アフリカやアジアの子どもたちの給食としても活用されることもあります。
エスプールプラスのサービスは、農園の提供や採用サポートにとどまりません。障がいをもつ社員が就労後も長期的に定着できるよう、企業・障がい者の双方を継続的にサポートしています。これにより、わーくはぴねす農園の定着率は92%を誇ります。
SDGsは、性別や文化、障がい特性によって差別されることのない平等な社会で、誰もが安心して暮らしていくことを理念として掲げています。障がい者が障がいを理由に雇用機会を奪われることなく、当たり前に仕事を得て社会に参画すること。それはSDGsの理念と合致するものです。
障がい者が生き甲斐をもって働き、豊かに暮らしていくこと。これからの社会においてそれが当たり前にならなければ、SDGsの目標はけっして達成できません。障がい者雇用が単なる義務ではなく、企業の成長と持続のために必要不可欠なものであるという認識をもち、前向きに取り組んでいくことが、持続可能な社会の実現につながります。