更新日:2023年3月28日
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近年、環境を壊さない、地球の自然と共生していくことを目指した行動や経済活動を重要視する声が高まっています。その中で、ESGやSDGsという言葉をよく耳にするようになりました。

今回は、ESGやSDGsの基本的な考え方を踏まえつつ、農園における障がい者雇用の意義について解説します。

ESGにおける農園での障がい者雇用

ESGの理念が広がりを見せる中、障がい者雇用を進めたいと考える企業が増えています。しかし、障がい者への理解や知見のないままに採用を始めても「募集したが採用につながらない」「業務の切り出しができない」「障がいの特性に合わせて適切な対応ができない」「定着が難しい」など、さまざまな課題が生じてしまい、採用担当者を悩ませているようです。

そんな中、新たな取り組みとして、農園を活用した障がい者雇用が注目されています。

ESGとはなにか

「ESG」とは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字から作られた言葉で、企業が経営活動において取り組んでいく課題を指しています。「環境」とは、廃棄物の削減やリサイクル、温暖化ガスの排出抑制などを指しています。また「社会」には女性の登用や活躍の推進、ワークライフバランスの実現などがあり、「ガバナンス」には経営の透明性やインサイダー情報の管理などが挙げられます。

ESGの枠組みは投資の世界においていち早く注目されました。企業には人材に対するダイバーシティ(多様性の尊重)や社会に対する感度の高さが求められ、今ではESGへの取り組みが進んでいることが社会的責任を果たす優良企業として企業価値を向上させる指標となっています。またその指標は投資家からの高い評価にもつながっています。日本のESG投資市場は2019年で336兆円。2015年から12倍に成長しています。こうした背景から、多くの企業がESGへ積極的に取り組むようになってきているのです。

※出典:農林水産省「未来を創る食農ビジネス」

ESGにおける障がい者雇用の意義

企業において障がい者雇用率が達成できているかどうかもまた、ESGの枠組みにおいて企業の価値を判断するための一つの指標となっています。障がい者雇用を推進している企業はすなわちESGの観点に基づいた経営を実現していると評価されていることもあります。

ESG投資が主流となる今、企業は株式市場における投資家の価値観を無視することはできません。この流れは、障がい者の雇用機会の創出という点においては非常にプラスとなるものです。今後も企業の障がい者雇用が進み、障がいのある方が社会で活躍し健全な暮らしができるようにするために、企業自体が変化していくことが期待されます。

農園での障がい者雇用

障がい者が適した職場に出会い定着するマッチングの場の一つとして農園が注目されています。実際、すでに多くの障がい者が農業分野で働き、やりがいや喜びを得ています。

なぜ農園が障がい者の働く場所としてふさわしいのか。それは、自然と触れ合いながら収穫物の実りを感じることで充実感を得られるからです。また、さまざまな作業が存在するため個々の能力に応じて仕事を受け持つことができるのも大きなポイントです。農林水産省も、知的障がい、精神障がいのある方が農業分野で活躍し、生き甲斐をもって社会参画を実現していく取り組みを推奨しています。今後、障がい者雇用が拡大していくための有効な場の一つとして農業が広く認知されていくことが期待されます。

※出典:農林水産省「農福連携の推進」

SDGsの取り組みとしての障がい者雇用

SDGsとは、「誰一人として取り残すことなく持続可能でよりよい社会を実現していく」ことを目標に国連が定めたものです。さまざまな人が平等に長く活躍できる社会を目指すものですので、もちろん障がい者が取り残されることがあってはいけません。

SDGsの基本的な考え方

SDGsは「Sustainable Development Goals」の頭文字を合わせた言葉で、持続可能な開発目標を持ち達成させていこうという理念です。2015年の国連にて全会一致で採択されました。テーマは貧困や飢餓、気候変動、エネルギーなど多岐に渡り、17の大きな目標にまとめられました。そのうち障がい者雇用と関わるがあるのは「Goal8」と「Goal10」の理念です。

Goal8.働きがいも経済成長も

17の開発目標のうち「ゴール8」で掲げられたのは働きがいを得ながら経済成長を目指すという目標ですが、その中に障がい者雇用ならびに賃金についても明文化されています。

そこには「2030年までに、若者や障がい者を含むすべての男性および女性の、完全かつ生産的な雇用およびディーセント・ワーク、ならびに同一労働同一賃金を達成する」とあり、障がい者が差別されることなく雇用機会を得ることができる社会の実現を目標としています。ディーセント・ワークとは、働きがいのある人間らしい仕事のことです。

Goal10.人や国の不平等をなくそう

「ゴール10」では人や国の不平等の是正を目標としています。そこには「2030年までに、年齢、性別、障がい、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、すべての人々のエンパワーメント、および社会的、経済的、および政治的な包含を促進する」と書かれています。多様性を当たり前のものとして受け入れることを促進するという考え方です。


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まとめ

ESGとSDGsはどちらも、性別や文化、特性によって差別されることのない平等な社会で誰もが安心して暮らしていくことを理念として掲げています。障がい者が障がいのあることを理由に雇用機会を奪われることなく、仕事を得て社会に参画すること。それはまさにESGやSDGsの理念と合致するものです。

障がい者が生き甲斐をもって働き、豊かに暮らしていくこと。それがこれからの社会において当たり前にならなければ、ESGの理念やSDGsの目標はけっして達成できません。私たち一人ひとりが障がい者に対して心を開き、ともに働くことに誇りを感じるようになることが、目標達成には欠かせない第一歩なのです。