中小企業基本法における中小企業の定義

中小企業基本法では、中小企業者の範囲を次のように規定しています。

  • 製造業その他
    資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人
  • 卸売業
    資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人

  • 小売業
    資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人
  • サービス業
    資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人

参考:中小企業庁「中小企業者の定義」

中小企業の障がい者の法定雇用率は?

障がい者雇用の法定雇用率は、障害者雇用促進法によって定められています。この法律では、事業主に対して雇用義務制度が課されています。そのため事業主は、雇用している従業員の一定割合以上の障がい者を雇用する必要があります。

法定雇用率は、民間企業は2.2%となっていましたが、令和3年3月から、この雇用率が0.1%引き上げられたため、民間企業の雇用率は2.3%となりました。つまり、障害者雇用率の対象となる民間企業の事業主の範囲が43.5人以上に広がることになりました。

障がい者の法定雇用率は、企業の規模によって変わることはありませんので、令和3年3月からは、2.3%が適用されることになりました。

中小企業における障がい者雇用の現状

中小企業では、障がい者雇用はどれくらい行われているのでしょうか。令和2年障害者雇用状況の集計結果からみていきましょう。

実雇用率について、企業規模別にみると、45.5~100人未満で1.74%(前年は1.71%)、100~300人未満で1.99%(同1.97%)、300~500人未満で2.02%(同1.98%)、500~1,000人未満で2.15% (同2.11%)、1,000人以上で2.36%(同2.31%)となっています。

中小企業における障がい者雇用状況

出典:厚生労働省「令和2年 障害者雇用状況の集計結果」をもとに株式会社エスプールプラスにて一部抜粋

この結果をみると、1,000人以上規模企業は法定雇用率を上回っていますが、それ以外の規模の企業は、法定雇用率を未達成となっています。

法定雇用率に届かない場合の罰則は?

企業は、障がい者雇用を求められており、法定雇用率が達成できないと障害者雇用納付金の支払いや行政指導、企業名公表が行われます。

障害者雇用促進法には、障害者雇用納付金制度といわれる制度があります。障害者雇用納付金制度により、法定障害者雇用率を達成していない場合には雇用納付金を納める必要があります。

雇用納付金の金額は、法定人数に不足している障がい者1人あたり月5万円で、障がい者雇用が1人不足するごとに年間60万円の雇用納付金を納めなければなりません。

また、法定雇用率が大幅に未達の場合、管轄のハローワークから障害者の雇入れ計画書の作成命令が行われます。また、それでも計画どおりに進まない場合、行政指導が行われ、社名公表になることもあります。

障害者雇用率達成指導の流れについては、下記のとおりです。

障害者雇用率達成指導の流れ

出典:厚生労働省「障害者雇用率達成指導の流れ」をもとに株式会社エスプールプラスにて一部抜粋

中小企業が抱える障がい者雇用の課題

中小企業は、大企業よりも障がい者雇用が難しいことがあります。それは、経済環境の変化を受けやすく、リソースも大企業ほどないことが多いからです。

例えば、障がい者を雇用するときには、職場環境を整えたり、支援者を配置するなど、雇用管理などを充実させようとすると、健常者を雇用するときよりも経済的な負担が大きくなります。障がい者雇用に関する助成金もありますが、資金や人員の余裕が少ない中小企業にとっては、厳しい状況になることが少なくありません。

また、障がい者の業務として切り出すときに、ある程度の企業規模があると、まとまった仕事にしやすいのですが、中小企業では従業員1人が多くの業務を兼務したり、専門性の高い業務などが多いため、障がい者が取り組みやすい定型的な業務などを切り出すことが難しい状況もよくみられます。

中小企業で障がい者雇用を進めるためのポイント

中小企業で障がい者雇用を進めるためのポイントについて考えていきます。

会社としての方針を立て、社内での障がいの理解を深める

障がい者雇用を進めるにあたっては、まず、会社としての方針を立てることが必要です。そして、会社としての障がい者雇用の方針を決めたあとは、それを社員に伝えて、障がい者雇用を行うことの理解を進めます。

多くの企業では、障がい者を雇用するときに、障害者雇用促進法の雇用義務があることを理由に挙げることが多いですが、他の社員がこのことを理解しないと、企業での障がい者雇用はなかなか進みません。特に、中小企業では、一つの部門や数人の担当者だけが頑張っても、業務量の確保などが難しい場合も多く、社内での障がい者雇用についての理解を深めることは大切なことです。

障がいに応じた業務を設定する

雇用する障がい者に、どのような業務を担当してもらうかについて、検討します。法定雇用率があるからといって、雇用しても仕事がないのであれば、働く障がい者にとっても居場所がなく、すぐに退職することにつながりますし、障がい者が配置された現場でも困ってしまいます。

どのような業務が切り出せそうなのか、社内で必要とされている業務は何かを調べて、業務を洗いだし、業務を設定していきます。

障がい者の採用や受け入れについて支援機関に相談する

企業が障がい者を雇用するときには、障がい者雇用の支援機関を活用することができます。障がい者雇用の相談や支援の窓口としては、次のような機関があります。

  • ハローワーク

    ハローワークでは、障がい者を雇用しようとする企業や雇用した企業に対して、雇用管理上の配慮についての助言や必要に応じて、地域にある他の障がい者機関の紹介、各種助成金の案内を行っています。

  • 地域障害者職業センター

    地域障害者職業センターには、障害者職業カウンセラーや配置型ジョブコーチなどが配置されており、障がい者雇用の専門的な役割を担っています。

  • 就労移行支援事業所

    就労移行支援事業所では、働く意志のある障がい者に、仕事をするうえで必要なスキルを身につける職業訓練や、面接対策などを通して、就職活動のサポートをしている機関です。就職後も、雇用した障がい者がその企業に定着できるよう、事業所を訪問したり、相談にのるなどのサポートを行います。

  • 障害者就業・生活支援センター

    障害者就業・生活支援センターでは、就業と生活の両方をサポートするセンターです。そのため、この機関には「就労支援員」と「生活支援員」がいて、働くことだけでなく、生活に関わる住まいや、役所への手続き、時には家族支援なども含めて、さまざまな日常生活の支援を行っています。

雇用支援制度などを活用する

障がい者雇用に関する企業への金銭的な支援として、助成金や、地方自治体からの奨励金などがあります。

助成金は、障がい者を雇用した時に活用するものがよく知られていますが、その他にも施設や設備のメンテナンス、雇用管理で適切な措置を実施、職業能力開発、職場定着のための措置を実施するなどの場合にも、活用できる助成金があります。

障がい者雇用で、企業がよく活用するのは、次のような助成金です。

  • 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
  • トライアル雇用助成金
  • 障害者雇用安定助成金(障害者職場適応援助コース)
  • 障害者雇用納付金制度に基づく助成金
  • 人材開発支援助成金

職場定着に取り組む

障がい者は採用しても、障がい特性にあった業務内容や配慮のある雇用管理がないと、離職につながってしまうケースも少なくありません。せっかく採用しても、すぐに離職になってしまうと、それまでの労力が無駄になってしまいます。

そうならないためにも、障がい者本人が活躍できる業務に取り組み、意欲を持ち続ける体制をつくることが必要です。また、合わせて障がい者が安定して働き続けられるように適切な配慮を示すことも考えていくことが必要です。

中小企業における障がい者雇用の事例

中小企業で、障がい者雇用にうまく取り組んでいる事例として、ある総合板金メーカーの事例をみていきましょう。

こちらの企業では、設計から板金、塗装、組立までの一貫生産が可能な生産システムが備えられています。従業員数は104名で、発達障がい3名が雇用されています。発達障がいの方が従事している業務は、塗装作業です。

この企業では、発達障がいの雇用ははじめてだったそうですが、ナビゲーションブックで社員の障がい特性を把握し、社長自らが社員研修を行い、社内理解を促進したそうです。

また、障害者職業センターのジョブコーチによる支援を活用し、ジョブコーチが、本人に対して作業理解度の確認、職場のルール・マナーについてのアドバイスや、精神面のフォローを行いました。従業員に対しては、本人への対応方法やフィードバックの方法などについてのアドバイスもしています。

技術力が求められる塗装部門での専門的な業務でしたが、本人の特性に応じた作業指導をていねいに行うことによってスキルアップが図れています。

なお、この企業は、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の職場改善好事例集(平成28年度)において、優秀賞を受賞しています。

まとめ

中小企業における障がい者雇用の現状や、障がい者雇用を進めるためのポイントについてみてきました。

中小企業の障がい者雇用は、大企業に比べるとリソース的に厳しいことも少なくありません。しかし、事例でみてきたように、規模が小さい事業所でも、障がい者の特性に合った業務を切り出し、社内で障がい特性を理解することで、雇用がうまくできているケースもたくさんあります。

障がい者雇用のポイントを抑えながら、支援機関や雇用支援制度などを効果的に活用することを考えていくとよいでしょう。