東京センチュリー株式会社
人事部 ダイバーシティ推進室 室長 小﨑 正人 様
人事部 ダイバーシティ推進室 担当課長 増田 真希 様
「国内リース事業」「国内オート事業」「スペシャルティ事業」「国際事業」の4つの事業分野をコアとした、日本有数の高い専門性と独自性を誇る金融・サービス企業である「東京センチュリー株式会社」。同社は現在「サステナビリティ経営」の一環として「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン」の実践を推進しており、多様な人材活用に積極的に取り組んでいます。2019年「わーくはぴねす農園船橋第2ファーム」に「TCわくはぴ農園」を開園以降、現在グループ全体で7チーム21名の障がいのある方を受け入れている同社人事部のお二人に、農園に携わった目的や意義、運営の成果をお聞きしました。
現在のファーム運営概要と、導入前に抱えていた課題をお聞かせ下さい
東京センチュリーは、企業活動を通じて社会課題の解決に貢献し、社会と当社の持続的な成長と企業価値向上を図る「サステナビリティ経営」を推進しています。その一環としてダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンを推進しており、さまざまな人材の登用や個性の発揮を積極的に応援しています。
「TCわくはぴ農園」は、その施策のひとつとして2019年4月エスプールプラス社「わーくはぴねす農園船橋第2ファーム」に2チームで開園、現在は計3チームで運営しています。「TC」は社名である東京センチュリー、「わくはぴ」はwork happinessの略称で、農園の理念である「働く幸せ」の想いが込められています。エスプールプラス社のファーム名称を参考にさせていただきました。
現在は夏の収穫に向けて18種類の野菜栽培に挑戦しています。開園当初は栽培が容易な葉野菜が中心でしたが、最近はスタッフのスキルも上昇しジャガイモやカブなど根野菜への挑戦も始まりました。栽培する野菜の選択は、スタッフの自主性に委ねています。「今回は何を育てようか」。農場長とスタッフたちのミーティングは、楽しいコミュニケーションの場になっています。
農園の運営は、農場長3名のリーダーシップのもと行っています。スタッフの障がいの種別や個性はさまざまですが、農場長が上手に和気あいあいとした雰囲気を生み出し、スタッフのやりがいを育んでもらえました。まさにワンチーム体制で野菜作りに取り組む毎日です。
開園当初は、私たち人事担当者も週に1回農園を訪れサポートしていましたが、4年目を迎えた現在は月に1回のペースで訪問しています。毎回農場長、スタッフと1対1で面談を行います。当社は人事面談を重要視しており、一般従業員に対しても年に一回程度実施しています。障がいの有無にかかわらず大切な従業員であり、同様に接するよう心がけています。
農場長とは毎日のように電話やメールで連絡を取り合っていますが、やはり対面での情報の共有が大切ですね。スタッフとの面談は時間も内容もそれぞれです。仕事の報告だけでなく、趣味の話で盛り上がったり健康状態や心の相談を受けたり。時には30分以上話し込んでしまうこともしばしばです。言葉のキャッチボールを通じて、スタッフの成長を後押しできれば、という思いで毎回面談に臨んでいます。
農園参画の決め手を教えて下さい
当社は長年にわたり、法定雇用率を上回る数の障がいのある方を採用してきました。主に身体障がいのある方を本業で雇用し、障がいの程度に合わせて仕事のスピード感を意識しながら、基本的に一般採用の従業員と同様に責任ある仕事に向き合ってもらっています。しかしサステナビリティ経営を理念とする当社は、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの観点からも、法定雇用率をクリアしているからそれで良し、とは考えておりません。障がいの種別によらず、より多くの障がいのある方に広く就労の機会を提供する必要性があると考え、エスプールプラス社の「わーくはぴねす農園」への参画が決定し、知的、精神に障がいのある方の雇用を開始しました。サステナビリティ経営に注力する経営陣の強い後押しを得られたことは幸いでした。2021年度の障がい者雇用率は3.22%です。
農園が生み出した具体的な成果をお聞かせ下さい
収穫した野菜は、すべてフードバンクに寄付しています。当初は社内配付も検討しましたが、社会貢献活動に活用する道を選びました。これまでに100箱を超える野菜がフードバンクを通じて児童養護、母子支援、障がい者支援等の福祉施設や困窮世帯などに提供されています。この活動はSDGsの「1.貧困をなくそう」「2.飢餓をゼロに」にも貢献できる活動と考えています。
スタッフに対しては、自分たちが育てた野菜がどのように社会の役に立っているかを常に周知しています。最近は会社の社会貢献活動の一翼を自分たちが担っている自覚も芽生え、モチベーションはますます高まっています。本業と異なり農園は直接的な利益を会社にもたらす部署ではありません。しかし社会貢献活動を通じて、当社のサステナビリティ経営に欠かせない重要なセクションになりつつあるのです。当社の営利や品格は、直接的利益を生む部署のみならず、農園活動によっても創出されていると考えています。また当社は健康経営の推進も行っていますので、農園の意義が経営方針とリンクする度合いは、今後ますます深まるものと期待しています。
一般従業員の農園に対する認識も日々進化しています。スタッフの働きぶりや野菜の生育状況などの農園の様子は、当社のポータルサイト内で定期的に紹介され、従業員一人ひとりのダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン意識の向上に役立っています。最近は「記事を楽しみにしています。ぜひ農園を訪問させてください」といった声掛けが多く寄せられるようになりました。コロナ禍が収束した折には、多くの従業員を案内し、農園メンバーとの交流を図りたいと考えています。実際にスタッフが生き生きと働く姿を見て、声を交わすことで、当社が推進するサステナビリティ経営の意義は、理解されると思います。
TCわくはぴ農園が目指す次のステップとは?
当社はダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの推進を目指し、2015年にダイバーシティ推進室を立ち上げサステナビリティ経営の一翼を担って参りました。全社的に多様な人材の雇用・育成・登用を実践する企業風土の醸成のためにも、農園の動向は大いに注目されているのです。
現在当社の障がい者雇用数は、求められる数字を大幅に上回っていますが、より多くの多様な能力の活用を推進したいですね。もちろん雇用するだけでなく、安心して楽しく働き続けられる職場環境を提供するためにも、農園の数もさらに増やしたいと考えています。また当社だけではなく、国内に20社以上あるグループ各社にも農園運営の意義をお伝えしています。農園での経験はグループ内で共有され、成果も周知されています。現在グループ2社の4チームが既にエスプールプラス社の農園に参画を果たしており、興味を持つ各社からの問い合わせも相次いでいます。グループ全体で連携して、農園運営から得た知見をサステナビリティ経営に活用するために、私たちの部署が伝道師として積極的に農園の素晴らしさをお伝えしていければと思っています。
2022年4月12日インタビュー
本文中の企業名、役職、数値情報等は、インタービュー当時のものです。
会社名 | 東京センチュリー株式会社 |
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事業内容 | 国内リース事業、国内オート事業、スペシャルティ事業、国際事業 |
URL | https://www.tokyocentury.co.jp/jp/ |