障がい者雇用とは

障がい者雇用は、障害者雇用促進法で定められているものです。そのため企業では、障がい者を雇用することは、社会的責任を果たす一つの役割として認識されています。

障がい者雇用は、法律で定められているから行わなければならないもの、企業の負担になるものと思われることも多いのですが、実際には企業のメリットにつながることもあります。どのようなメリットがあるのかについてみていきましょう。

企業が障がい者雇用を行うメリット

企業が障がい者雇用を行うメリットの大きな点は、法律で定められている障害者雇用率を達成できることです。しかし、法律を遵守する以外にも、障がい者雇用を行うメリットはあります。

業務を見直すきっかけとなる

多くの企業では、障がい者を雇用することをきっかけに、社内の業務の見直しをおこない、業務を切り出しています。業務を見直すことによって、今まで行っていた業務を最適化したり、効率化をはかったりする機会となることも珍しくありません。

例えば、既に行っている業務や組織を変えていく必要は感じていても、実際に見直しをかけるには、社内調整するのが大変で、手をつけられていなかったかもしれません。長い期間、同じような業務フローをしている場合、商品・サービスの品質向上、コスト削減、組織の体質改善などの点で変化が必要なことも少なくありません。

そのような業務全体を見直すことによって、業務や、業務フローを見直し、再設計することにより、業務の効率化を高めることができます。そして、その中に障がい者が行う業務を作り出すこともできるのです。

社会的責任を果たし、価値創出につながる

企業が社会で活動していくためには、社会からの信頼が重要です。CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)は、企業が自社の利益だけを追求するのではなく、すべてのステークホルダー(消費者や投資家に加え社会全体などの利害関係者)を視野に入れ、よりよい社会づくりを目指す活動のことです。

企業のCSR報告の中には、ダイバーシティ推進の一環として、女性やシニア、外国人の活躍の場とともに、障がい者雇用についての取り組みについて記載していることも多くあります。障害者雇用率を達成し、障がい者が活躍している企業であると示すことは、社会的責任を果たしていることを明らかにすることにもつながります。

多様性のある会社づくりができる

ワーク・ライフ・バランス、テレワークなどの働き方が多様化する中で、障がい者を雇用することは、いろいろな制約や条件などをクリアしながら、人材が活躍できる場をつくることに貢献します。

ある企業では、障がい者のためにおこなった職種開発が、結果として健康上の問題が生じた既存社員の雇用の受け皿になることがあったそうです。障がい者にとって働きやすい職場は、全従業員にとって働きやすく安全な職場になる機会を提供することがあります。

助成金を受け取れる

障がい者雇用に関する企業への金銭的な支援として、助成金や、地方自治体からの奨励金などがあります。

助成金は、障がい者を雇用した時に活用するものがよく知られていますが、その他にも施設や設備のメンテナンス、雇用管理で適切な措置を実施、職業能力開発、職場定着のための措置を実施するなどの場合にも、活用できる助成金があります。

障がい者雇用で、企業がよく活用する助成金には、次のようなものがあります。

  • 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
    ハローワーク等の紹介から、障がい者を雇用する事業主に助成されます。
    • トライアル雇用助成金
      障がい者を試行的に雇用した場合や、短時間であれば働ける精神障がい者・発達障がい者を試行雇用する場合に助成されます。
    • 障害者雇用安定助成金(障害者職場適応援助コース)
      職場適応援助者(ジョブコーチ)による援助を必要とする障がい者のために、支援計画に基づき職場適応援助者による支援を実施する事業主に助成されます。
    • 障害者雇用納付金制度に基づく助成金
      事業主が障がい者を雇用するために、職場の作業施設や福祉施設等の設置・整備、適切な雇用管理をするのに必要な介助等の措置、通勤を容易にするための措置等などに助成されます。
    • 人材開発支援助成金
      障がい者の職業能力の開発・向上のために、対象障がい者に対して職業能力開発訓練事業を行うための施設や設備等の設置や整備や、職業能力開発訓練事業に対して助成されます。

企業が障がい者雇用を行わないデメリット

企業は、障がい者を雇用することが求められていますが、それが達成できないと障害者雇用納付金の支払いや行政指導、企業名公表が行われます。

納付金を納める必要がある

障害者雇用納付金制度では、障がい者を雇用することは「事業主が共同して果たしていくべき責任である」という社会連帯責任の理念に基づいています。そのため事業主間の障がい者雇用にともなう経済的負担の調整を図るため、障がい者を雇用する事業主に対しては助成することにより、障がい者の雇用の促進と職業の安定をはかっています。

法定障害者雇用率を達成していない場合、法定人数に不足している障がい者1人あたり月5万円が徴収されます。つまり障がい者雇用が1人不足するごとに年間60万円の雇用納付金を納めることになります。障がい者雇用の義務は、45.5人以上(雇用率2.3%になると43.5人以上)の企業に課されますが、雇用納付金の徴収は、100人以上の企業が対象となっています。

行政指導が入る

障がい者雇用の対象となっている企業には、毎年6月1日現在の障害者の雇用に関する状況(障害者雇用状況報告)をハローワークに報告する義務があります(障害者雇用促進法43条第7項)。

しかし、法定雇用率が大幅に未達の場合には、その企業を管轄するハローワークから障害者の雇入れ計画書の作成命令が行われたりします。それでも計画どおりに進まない場合には、行政指導や社名公表になることもあります。

行政指導の流れは、次のとおりです。

雇用状況報告(毎年6月1日の状況)→雇入れ計画作成命令(2年計画)→雇入れ計画の適正実施勧告→特別指導→企業名の公表

出典:厚生労働省「障害者雇用率達成指導の流れ」

企業名が公表される

行政指導が行われても、障がい者雇用の改善がみられない場合には、企業名が公表されます。

企業名が公表されるのは、年度によって異なります。最近は、平成28年度に2社、平成26年度に8社の社名公表があり、そのあとしばらく社名公表はされていませんでしたが、令和2年には、1社が社名公表されています。

出典:厚生労働省「障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく企業名公表について」

障がいのある方が障がい者雇用で就職するメリット

障がいのある方が障がい者枠で就職することは、雇用する企業から配慮を示してもらいやすくなります。

例えば、勤務形態、業務内容について、何らかの難しさがあれば、勤務時間を調整したり、休憩を取りやすくする、障がい特性に応じたコミュニケーションツールの活用や、業務手順を変更するなどの配慮を示してもらえるかもしれません。また、就労支援機関が関わっているのであれば、定着支援や、直接企業に伝えにくいことがあるときに、本人と企業との間に入って調整してもらうこともできます。

就職後に何か課題がでてきた場合でも、ジョブコーチと呼ばれる障がい者を支援する専門家にサポートしてもらうことができます。ジョブコーチは、障がい者だけでなく、企業側に対してもサポートします。例えば、障がい者とどのように関わったらよいのか、配慮を示すことができるのかなどのアドバイスをおこなったりします。障がい者枠で就職すると、このようなサポートを受けやすくなるので、結果的に、職場に定着しやすくなります。

一方、職場の人が、障がい者を雇用していることを知らない場合には、職場でのコミュニケーションや業務の進め方を配慮することはほとんどありませんし、何か支障があったときにも周りの社員から理解を得にくく、人間関係が悪化してしまうこともあります。

まとめ

障がい者雇用のメリット・デメリットについて考えてきました。

障がい者雇用をすることのメリットは、法律で求められている障害者雇用率を達成できることですが、その他にも業務を見直すきっかけをつくることや、社会的責任を果たすこと、多様性のある会社づくりができること、助成金を受け取れることなどがあります。

一方、障害者雇用率が達成できないと、障害者雇用納付金を支払う必要がありますし、大幅な未達成がある場合には、行政指導が入り、障害者雇用雇入計画書を出すことになります。また、それでも達成できないときには、企業名が公表されることになります。