公開日:2024年12月19日  更新日:2026年7月 6日

「発達障害のある方を採用したいけれど、何から手を付ければいいのかわからない」 「すでに雇用しているが、定着がうまくいかず現場が疲弊している」という悩みを抱えている人事担当者も多いのではないでしょうか。

2026年7月の法定雇用率2.7%への引き上げの一方で、企業の障害者雇用への対応はこれまで以上に重要度を増しています。なかでも近年急増しているのが、発達障害のある方の雇用です。

しかし、特性の理解不足や業務割り当ての難しさから、「採用はしたが、現場で困っている」と悩む企業が後を絶ちません。

本記事では、企業の人事担当者に向けて、発達障害者の雇用に必要な知識を一気通貫で解説します。

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発達障害とは?

発達障害とはの画像

「発達障害」と一口に言っても、その特性は人によって大きく異なります。雇用担当者がまず押さえるべきは、発達障害は脳機能の特性であり、本人の努力不足ではないという前提です。

発達障害者支援法では、発達障害を「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害」と定義しています。

代表的な3つのタイプを、まずは表で全体像をつかみましょう。

種類 主な特性 強みになりやすい場面
ASD(自閉スペクトラム症) コミュニケーションの困難・強いこだわり・感覚過敏 細かなチェック作業・専門分野での集中
ADHD(注意欠如多動症) 不注意・多動性・衝動性 発想力・行動力・複数案件の並行処理
LD(学習障害) 読む・書く・計算など特定領域の困難 苦手分野以外での専門性発揮

それぞれ詳しく見ていきましょう。

ASD(自閉スペクトラム症)の特性

ASDは、かつて「自閉症」「アスペルガー症候群」「広汎性発達障害」などと呼ばれていたタイプを統合した診断名です。

主な特性は次の2つです。

  • 社会的コミュニケーション・対人関係の困難
  • 行動や興味の偏り(強いこだわり)

職場では「空気が読みにくい」「指示の意図を字面通りに受け取りすぎる」「予定変更に強いストレスを感じる」といった形で現れることがあります。

一方で、ASDの方は 特定分野への深い集中力と緻密さ を持つことが多く、品質管理・データ分析・プログラミングテストなど、正確性が求められる業務で力を発揮するケースが目立ちます。

ADHD(注意欠如多動症)の特性

ADHDの主な症状は、不注意・多動性・衝動性 の3つです。

職場で起こりやすい困りごとには以下のようなものがあります。

  • 書類のケアレスミスが多い
  • 締め切りや約束を忘れがち
  • 会議中にじっとしているのが苦手
  • 思いついたら即発言・即行動してしまう

ただし、これらは裏返せば強みにもなります。発想の豊かさ、行動力、複数の案件を同時並行で進める力 は、企画・営業・クリエイティブ系の業務で大きな武器になります。

「ミスが多い」という印象を抱いた場合、「向いていない仕事を任されているのかも」という視点を持つことが、雇用成功のカギです。

LD(学習障害)の特性

LDは、知的発達に遅れはないものの、読む・書く・計算するといった特定の学習能力に困難が生じるタイプの発達障害です。

LDには大きく3つのタイプがあります。

タイプ 困難な領域
ディスレクシア(読字障害) 文字を読むこと
ディスグラフィア(書字障害) 文字を書くこと
ディスカリキュリア(算数障害) 計算・数の処理

知的能力に問題はないため、苦手な領域を補う環境(音声入力ツール、図解中心の資料など)を整えれば、その他の業務では十分に活躍できます。

異なる障害が重なり合うケース・グレーゾーン

実は、発達障害は「ASDだけ」「ADHDだけ」と単独で現れるケースばかりではありません。

厚生労働省の研究によれば、発達障害のある成人(20〜70歳)838名のうち、ADHDとASDの併存は26.8%(225例)という報告があります。約4人に1人が両方の特性を併せ持っているということです。

また、近年注目されているのが「グレーゾーン」と呼ばれる方への配慮です。

  • 診断基準は満たさないが、特性が強く、職場で困難を抱えている
  • 障害者手帳を取得していない、もしくは取得を迷っている
  • 一般雇用枠で働いているが、適応に苦しんでいる

障害者手帳を持っていない場合、障害者雇用率にカウントされないため、企業としては「障害者雇用」の枠組みでは対応できません。しかし、合理的配慮の対象にはなり得ます。「診断の有無」ではなく「困りごとへの対応」という視点 を持つことが、多様な人材を活かす第一歩です。

発達障害のある方のはたらき方

発達障害のある方のはたらき方の画像

発達障害のある方が企業で働くとき、選択肢は大きく2つあります。「一般採用枠」と「障害者採用枠」です。

人事担当者として押さえておきたいのは、障害者手帳を持っている方でも、本人の意思でどちらの枠でも応募できるという点。逆に、手帳を持たない発達障害グレーゾーンの方は、原則として一般採用枠でのはたらき方となります。

まずは両者の違いを表で整理しましょう。

項目 一般採用枠 障害者採用枠
応募条件 誰でも応募可能 障害者手帳の所持が原則必要
障害の開示 任意(オープン/クローズを選択) 開示が前提
合理的配慮 開示されない場合は適切な配慮ができない可能性 法律で配慮の提供が義務
給与水準 健常者と同条件 業務範囲・労働時間で変動
求人の数 多い 限定的
法定雇用率カウント 対象外 対象

それぞれのはたらき方を、企業視点で詳しく見ていきましょう。

一般採用枠でのはたらき方

一般採用枠は、障害の有無を問わず応募できる通常の採用枠です。

発達障害のある方が一般採用枠で働く場合、さらに2つのパターンに分かれます。

  • オープン就労:障害を開示して応募・就労する
  • クローズ就労:障害を開示せずに応募・就労する

特に発達障害は外見からわかりにくいため、クローズ就労を選ぶ方が一定数いるのが実態です。一般雇用のクローズ就労を選ぶ理由としては、職種の選択肢の広さや給与の高さが挙げられています。

ただし、企業側にとっては注意点もあります。

クローズ就労で起こりがちな問題
・本人から特性の申告がないため、適切な配慮ができない
・現場で「ミスが多い」「指示が伝わらない」とトラブルに発展
・結果的に本人が大きなストレスを抱え、うつ病など二次障害につながるケース

採用後に発達障害があることが判明した場合でも、企業側は配慮の提供を検討する必要があります。「ミスの対処に困る」のではなく、「特性を踏まえた業務設計に切り替える」という発想が重要です。

障害者採用枠でのはたらき方

障害者採用枠は、障害者手帳を持つ方を対象にした専用の採用枠です。発達障害のある方の場合、精神障害者保健福祉手帳を取得することで応募できます。

障害があることを開示したうえでの採用となるため、どのような配慮が必要か、事前にすり合わせできることが特徴です。

この枠の最大の特徴は、企業が法律に基づいて合理的配慮を提供する義務を負うこと。配慮の例としては以下が挙げられます。

  • 業務量や勤務時間の調整
  • 通院・服薬への配慮
  • 業務指示のマニュアル化・視覚化
  • 静かな作業環境の用意
  • 定期的な面談の実施

また、企業側にも以下のようなメリットがあります。

企業側のメリット 内容
法定雇用率への算入 障害者雇用率制度の対象としてカウント可能
助成金の活用 特定求職者雇用開発助成金など各種制度を利用できる
採用ミスマッチの低減 開示前提のためお互いの理解が深まりやすい
定着率の向上 配慮を前提とした受け入れで離職を抑制

なお、障害者採用枠では雇用率カウントの方法にもルールがあります。週の所定労働時間によって、1人を1とカウントする場合と0.5とカウントする場合があるので、人事担当者はしっかりと確認しましょう。

週の所定労働時間 カウント
30時間以上 1
20時間以上30時間未満 0.5(精神障害者は条件付きの特例措置で1)
10時間以上20時間未満(2024年4月〜) 0.5

特に発達障害を含む精神障害のある方には、週20時間以上の勤務でも1人としてカウントできる特例措置があります。短時間から働き始めて段階的に勤務時間を伸ばすケースで活用しやすい制度です。

発達障害者の雇用状況と最新データ

発達障害者の雇用状況と最新データの画像

「他社はどれくらい発達障害のある方を雇っているのか?」「給与水準や定着率はどうなっているのか?」――。経営層への報告や社内提案で、こうしたデータを求められた経験のある人事担当者の方も多いはずです。

この章では、厚生労働省が5年ごとに実施している「令和5年度障害者雇用実態調査」の最新データをもとに、発達障害者の雇用実態を多角的に見ていきます。

本章で扱う最新データの出典

発達障害者の雇用者数の推移と増加傾向

発達障害のある方の雇用は、ここ数年で増加傾向にあります。背景には主に3つの要因があります。

  • 2018年4月の法改正で精神障害者(発達障害含む)が法定雇用率の算定対象になった
  • 障害者手帳の取得者が増加し、企業側の認知も進んだ
  • 法定雇用率が段階的に引き上げられ、企業の採用ニーズが拡大した

障害者全体の雇用数も、令和5年度は110万7,000人と過去最高を更新。前回調査から25万6,000人増えており、障害者雇用市場全体が活発であることがわかります。

平均労働時間・平均月額賃金

厚労省の調査によると、発達障害者の労働時間と賃金は次のようになっています。

週所定労働時間別の割合

労働時間 割合
通常(週30時間以上) 60.7%
週20時間以上30時間未満 30.0%
週10時間以上20時間未満 4.8%
週10時間未満 3.9%

最も多いのは週30時間以上のフルタイム勤務(60.7%)。短時間勤務だけが選ばれているわけではなく、半数以上は通常勤務に近い形で働いています。

1ヵ月の平均賃金

区分 平均賃金
全体平均 13万円
週30時間以上 15万5,000円
週20時間以上30時間未満 10万7,000円
週10時間以上20時間未満 6万6,000円
週10時間未満 2万1,000円

賃金の支払形態は月給制が52.3%、時給制が44.2%と、ほぼ半々。雇用形態に応じて柔軟に運用されている実態がうかがえます。

なお、参考までに障害4区分の月額平均賃金を比較すると、身体障害者23万5,000円、知的障害者13万7,000円、精神障害者14万9,000円、発達障害者13万円。発達障害者の賃金水準は、知的障害者と精神障害者の中間に位置しています。

定着率・勤続年数

企業側にとって定着率と勤続年数は、採用コスト・教育コストに直結する重要指標です。

令和5年度調査によれば、雇用されている発達障害者の平均勤続年数は約5年1ヶ月。前回(平成30年度)から各障害種別で増加傾向が見られました。

障害の種類・等級別の雇用状況

雇用されている発達障害者の特徴を、もう少し詳しく見てみましょう。

障害確認の方法

確認方法 割合
精神障害者保健福祉手帳 81.7%
精神科医の診断 1.0%

8割以上が精神障害者保健福祉手帳を取得しています。前回調査(68.9%)から大きく伸びており、手帳取得が一般化していることがわかります。

手帳の等級

最も多いのは3級(41.1%)。3級は「日常生活または社会生活に制限を受ける」程度に該当し、就労可能な等級として位置づけられています。

最も多い疾病名

自閉症・アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害」が69.1%を占め、ASD(自閉スペクトラム症)系が圧倒的多数です。

発達障害のある学生への支援ニーズの高まり

教育現場では、発達障害の可能性がある児童生徒や、特別な教育的支援を必要とする児童生徒への対応が重要なテーマになっています。

文部科学省の令和4年調査では、通常の学級に在籍する児童生徒のうち、「知的発達に遅れはないものの学習面又は行動面で著しい困難を示す」とされた児童生徒の割合が示されています。(引用:文部科学省)

大学・短期大学・高等専門学校においても、障害のある学生への修学支援は広がっています。JASSOの令和6年度調査では、障害学生数は55,510人、障害学生が在籍する学校は1,042校とされています。(引用:JASSO)

さらにJASSOの関連資料では、令和6年度の障害種別の障害学生数について、精神障害に次いで発達障害が多く、発達障害や精神障害などに分類される学生数は増加傾向にあるとされています。

こうした背景から、今後は企業側にも、発達障害のある方を含めた多様な人材を受け入れるための採用・配属・定着支援の体制づくりが求められます。

発達障害のある方の中には、大学や大学院などで専門性を身につけている方もいます。一方で、障害特性や必要な配慮は一人ひとり異なるため、「専門職なら活躍できる」「短時間勤務に限られる」といった一律の見方ではなく、本人の強み・苦手・希望を踏まえて業務を設計することが重要です。

2026年法改正と特例措置により雇用が増える可能性

ここからは未来の話。2026年7月の法改正は、企業の障害者雇用対応を大きく変える節目になります。

法定雇用率の段階的引き上げスケジュール

時期 民間企業の法定雇用率 対象事業主
〜2024年3月 2.3% 従業員43.5人以上
2024年4月〜 2.5% 従業員40.0人以上
2026年7月〜 2.7% 従業員37.5人以上

2026年7月以降、これまで雇用義務のなかった従業員37.5人以上の企業も対象に。中小企業にとっても無関係ではいられない状況です。

さらに、すでに施行されている重要な変更点もあります。

週10時間以上20時間未満の特定短時間労働の算入(2024年4月〜)

精神障害者・重度身体障害者・重度知的障害者を週10時間以上20時間未満で雇用した場合、0.5人としてカウントできるようになりました。発達障害のある方を短時間から段階的に勤務時間を伸ばすケースでも、雇用率に算入できます。

除外率の一律10ポイント引き下げ(2025年4月〜)

これまで建設業など特定業種に適用されていた「除外率制度」が一律10ポイント引き下げに。これまで除外率が10%以下だった業種は、除外率制度の対象外となりました。

これらの改正は、企業に対するプレッシャーを高めると同時に、発達障害のある方の雇用機会を拡大する方向に作用します。「採用が義務に追われる仕事」から「事業に貢献する戦力としての雇用」へと、企業の意識も変わりつつあります。

人事担当者として今やるべきは、自社の現状の実雇用率を把握し、2026年7月時点で必要な人数をシミュレーションすること。早めの準備が、後々の負担を大きく軽減します。

発達障害者を雇用する企業側のメリット

発達障害者を雇用する企業側のメリットの画像

「障害者雇用は法律で義務化されているから仕方なく取り組むもの」――そんな受け身の姿勢で取り組んでいる企業がいまだに少なくありません。

しかし、発達障害のある方の雇用には、法律遵守を超えた経営上のメリットが数多くあります。実際に雇用を進めた企業からは、「想定以上の戦力になっている」「社内文化が良い方向に変わった」という声が次々と聞かれます。

ここでは、企業側にとっての3つの主要なメリットを具体的に見ていきましょう。

3つのメリット
・特定分野で高い専門性を発揮する人材が多い
・一度定着すると長期勤務が期待できる
・多様性ある組織づくりと企業イメージ向上

特定分野で高い専門性を発揮する人材が多い

発達障害のある方の中には、興味のある分野で高い集中力や探求心を発揮する方もいます。

実際に活躍している分野は多岐にわたります。

業界・職種 活かせる強み
IT・システム開発 細部へのこだわり・論理的思考・集中力
研究開発・技術職 探求心・専門知識への深い理解
データ分析・品質管理 正確性・緻密性・反復作業への耐性
翻訳・語学 高度な言語処理能力
デザイン・クリエイティブ 独自の発想・常識にとらわれない感性

ASDの特性がある方の中には、細部への注意力や正確性を活かして、チェック業務や品質管理で力を発揮するケースもあります。「専門性の高い人材を採用する」――この視点に切り替えると、発達障害人材の見え方は大きく変わります。

一度定着すると長期勤務が期待できる

採用コストや教育コストを考えると、長く働いてくれる人材は企業にとって大きな価値です。

その点、発達障害のある方は1社で長く勤務する傾向があります。

具体的には次のような特徴があります。

  • 欠勤・遅刻が少なく、勤怠が安定している方が多い
  • 環境変化を好まないため、転職を繰り返さない傾向
  • 一度仕事を覚えると、確実にこなしてくれる
  • 数年単位の経験で十分な戦力に成長する

定着率の高さは、目に見えにくいけれど確実な経営メリット。「採用→教育→離職→再採用」の負のサイクルから抜け出せる人材として、特に中小企業にとっては貴重な存在と言えます。

ただし、これは「自然に定着する」のではなく、適切な配慮があった場合の話です。配慮がなければ早期離職につながるため、後の章で解説する業務設計と職場環境の整備が前提条件となります。

多様性ある組織づくりと企業イメージ向上

発達障害のある方を雇用することは、組織全体に良い影響をもたらします。

実際に発達障害のある方を受け入れた企業の声を見てみましょう。

「Aさんが来る前は『どんな方が来るのだろう』と不安を感じる社員もいたと思います。ですが、実習後も部内から『後回しにしていた仕事が片付いて助かった』『発達障害に対する考えが変わり、理解が深められた』という声がありました」(エンカレッジの企業インタビューより)

組織への波及効果は、おもに次のような形で現れます。

  • 指示の伝え方が改善:曖昧な指示を減らし、誰にとってもわかりやすい職場に
  • 業務マニュアルの整備 :属人化していた業務が可視化される
  • 多様性への理解:「違いを受け入れる文化」が社内に育つ
  • コミュニケーションの活性化:配慮や声かけが日常化する

加えて、近年は採用市場でもダイバーシティ&インクルージョン(D&I)への取り組みが企業選びの重要な判断材料になっています。発達障害者雇用はその具体的な実践として、企業ブランディングにも貢献します。

つまり、発達障害者雇用は「負担」ではなく「組織を強くする投資」。この視点を持てるかどうかが、雇用を成功させる企業とそうでない企業の分かれ目です。

発達障害者雇用でよくある課題と失敗パターン

発達障害者雇用でよくある課題と失敗パターンの画像

ここまで発達障害者雇用のメリットを見てきましたが、なかには課題に直面している企業があるのも事実です。

「雇ったけれど、現場でうまくいっていない」「採用したものの、何を任せればいいかわからない」――こうした悩みは、決して特殊なケースではありません。この章では、企業が陥りやすい3つの失敗パターンを赤裸々に取り上げ、なぜ起きるのかを掘り下げます。

失敗の3大パターン

  • 雇用管理者に負担が集中するケース
  • 定着せず早期離職してしまう
  • 業務割り当てができず仕事を任せられない

雇用管理者に負担が集中するケース

採用したものの、雇用管理者に想定以上の負担が発生してしまうケースがあります。

よくある課題

場面 起きていること
業務指示 曖昧な指示が伝わらず、何度も確認が必要
コミュニケーション 報連相が苦手で、トラブル発覚が遅れる
人間関係 悪気なく発言して同僚を怒らせてしまう
環境適応 オフィスの雑音や電話音で疲弊する
業務遂行 想定していたパフォーマンスが出ない

ここで重要なのは、多くの場合「本人が悪い」のではなく「環境とのミスマッチ」が原因だということ。

採用面接の短時間では特性を完全に把握するのは困難です。本人も自覚していない特性が、実際の業務環境で初めて表面化することは珍しくありません。発生している課題に対して、雇用管理者へ任せきりにするのではなく、一緒に対応を考えていくことが必要です。対応の例としては、以下が挙げられます。

  • 業務内容を見直し、本人の特性に合った仕事に再配置する
  • 配置転換を検討する
  • 外部の専門支援(ジョブコーチなど)を活用する

「採用した人材の強みをどう活かすか」という視点への切り替えが第一歩です。

定着せず早期離職してしまう

苦労して採用したのに、数ヶ月で辞めてしまう――。これも企業側が抱える大きな悩みです。

発達障害のある方が早期離職に至る理由は、複数の要因が絡み合っています。

早期離職に至る悪循環の例

  1. 業務ミスマッチ
  2. ミスが続く
  3. 上司から叱責される
  4. 自己肯定感が低下
  5. うつ病・適応障害(二次障害)
  6. 休職・離職

特に注意すべきは「二次障害」のリスク。発達障害そのものよりも、職場での失敗体験の積み重ねによって精神疾患を発症するケースが多く報告されています。

早期離職の主な原因

  • 業務ミスマッチ:苦手領域がメイン業務になっている
  • 人間関係:退職理由のトップに挙がる
  • 感覚過敏への配慮不足:オフィス環境が本人にとって合わない
  • 曖昧な指示:「適当にやっておいて」が理解できず抱え込む
  • 配慮の欠如:開示しても具体的な対応がない

企業視点で見ると、再び採用活動に時間とお金を投入することに。

それだけでなく、離職となった障害者のキャリアを傷つけてしまうことにもなります。

定着率を上げるカギは、入社直後の3ヶ月です。この期間に密なコミュニケーションを取り、業務量や難易度を調整できる体制があるかどうかで、その後の定着率が大きく変わります。

業務割り当てができず仕事を任せられない

「採用したものの、何を任せればいいのかわからない」――これは、人事担当者から最も多く聞かれる悩みです。

厚労省の調査でも、雇用している企業の多くが「障害者に適当な仕事がない」と感じている実態が浮かび上がっています。

業務割り当てがうまくいかない企業の共通点

  • 既存業務をそのまま振ろうとする(配慮なし)
  • 業務をパッケージ化できず、その都度依頼している
  • 本人の特性を踏まえた業務マッチングをしていない
  • 業務割り当てを現場任せにし、人事がフォローしない

業務割り当ては、単に「任せられそうな仕事を見つける」ことではありません。本来は次のような作業が求められます。

ステップ 内容
①業務の可視化 現場の業務フローを洗い出す
②要素分解 各業務を細かいタスクに分解する
③タスク再編成 発達障害の特性に合うタスクをまとめる
④マニュアル化 視覚化された手順書を作成する
⑤運用設計 進捗管理・指示出しの仕組みを作る

これだけのプロセスを社内だけで完結させるのは、特に中小企業にとって大きな負担です。これも雇用管理者任せにすると、ほかの業務が圧迫され、「障害者雇用は大変なもの」というネガティブな認識が定着しかねません。

これらの失敗パターンには、必ず事前に防ぐための具体的な対策があります。次の章では、採用時にどんなポイントを押さえるべきかを詳しく見ていきましょう。

発達障害者を採用するときの選考ポイント

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採用の成否は、選考段階でいかに本人と業務のマッチングを見極められるかにかかっています。

通常の採用面接と同じ進め方では、発達障害のある方の本来の能力や適性を見誤るリスクが高まります。「面接で話が噛み合わなかったから不採用」と判断してしまい、優秀な人材を逃す企業も少なくありません。

ここでは、選考時のチェック項目と、面接実務での具体的な配慮を解説します。

選考で確認すべき項目と面接時の配慮

選考時、人事担当者が押さえておきたいポイントは大きく3つあります。

1. 自己理解度の深さ

発達障害のある方の長期定着には、本人が自身の特性をどれだけ理解できているかが決定的に重要です。

確認したい項目 チェックの観点
障害特性の理解 自分の特性を自分の言葉で説明できるか
得意・不得意の把握 何ができて何が苦手かを明確に伝えられるか
必要な配慮の言語化 どんなサポートがあれば働けるかを具体的に話せるか
過去の対処経験 これまでどう工夫してきたか、エピソードを話せるか

自己理解が深い方は、入社後も困りごとを早めに伝えられ、トラブルが大きくなる前に対処できます。逆に「特性についてうまく説明できない」「サポートが必要なことに自覚がない」場合は、定着リスクが高いと判断されます。

2. 就労意欲とサポート体制

選考でしばしば見落とされがちなのが、本人の就労意欲と外部サポートの活用状況

  • 「親に言われたから来た」など、受け身の姿勢ではないか
  • 主治医・カウンセラー・就労支援機関などとの信頼関係が築けているか
  • 困ったときに相談できる人や場所があるか

医療や福祉サービスを適切に利用できている方は、入社後にトラブルが起きても自力で乗り越える力があります。

3. 業務適性の見極め

最後は、自社の業務と本人の特性のマッチングを確認します。

  • 募集職種に必要なスキル・経験を持っているか
  • 任せたい業務に対する興味・関心があるか
  • これまでの職務経験から成果を上げた具体的なエピソードがあるか

ここで重要なのは「会話の流暢さで判断しない」こと。発達障害のある方は、言語の流暢さと理解の深さが比例しないケースが多くあります。

面接時の具体的な配慮

実際の面接では、以下のような工夫で本人の本来の能力を引き出すことができます。

質問の出し方

NG例 OK例
「これまでの経験について自由にお話しください」 「前職での具体的な業務内容を教えてください」
「強みと弱みを教えてください」 「得意な作業と苦手な作業を1つずつ挙げてください」
複数の質問を一度に投げかける 1つずつ区切って質問する

環境設定

  • 静かで集中しやすい個室を用意する
  • 蛍光灯のちらつきや強い香りなど感覚刺激への配慮
  • 必要に応じて時間に余裕を持たせる
  • 質問内容を事前に書面で共有することも検討

面接官の姿勢

  • 受容と共感の姿勢を保つ(緊張を解く)
  • 弱みを聞く理由を明確に伝える(脅威を感じさせない)
  • 答えに詰まっても急かさず、考える時間を与える

質問の意図を伝えてから聞く」という一手間で、応募者の自己開示は驚くほど深まります。たとえば「この質問は、入社後に気持ちよく働ける環境を一緒に考えるためのものです」と前置きするだけで、応答の質が大きく変わります。

ハローワーク・就労移行支援事業所との連携

発達障害のある方を採用する場合、自社単独で完結させようとすると採用難度が一気に上がります。専門機関との連携が、効率的な採用と定着のカギです。

主な連携先は以下の通りです。

機関名 主な機能 活用タイミング
ハローワーク 障害者専門窓口での求人公開・応募者紹介 募集段階
地域障害者職業センター ジョブコーチ派遣・職業評価 採用後の定着支援
就労移行支援事業所 訓練を受けた応募者の紹介・採用支援 募集〜定着まで
障害者就業・生活支援センター 就業面と生活面の両面サポート 採用後の継続支援

特に注目すべきは「就労移行支援事業所」との連携です。

就労移行支援事業所とは、障害や難病のある方の一般就労を支援する障害福祉サービス事業所です。利用者に対して職業訓練や就職活動支援を行い、企業とのマッチングや就職後の定着支援も実施しています。

就労移行支援事業所を活用するメリット

  • 自身の障害特性や必要な配慮を理解し、企業へ適切に伝えられる就職希望者と出会える
  • 採用前の職場実習を通じて、業務適性や職場との相性を確認できる
  • 就職後も支援員による定着支援を受けられる場合がある
  • 障害特性への配慮や受け入れ体制づくりについて助言を得られる

障害者雇用を自社だけで進めようとするのではなく、専門機関と連携しながら採用・定着を進めることが、成功への近道となります。

発達障害者が多く活躍している業務・仕事内容

発達障害者が多く活躍している業務・仕事内容の画像

採用の次に直面するのが「何を任せればよいか」という問題。

発達障害のある方は特性が一人ひとり大きく異なるため、画一的な業務配置はミスマッチを生みます。ここでは、特性別の業務例と業界別の活躍パターンを見ていきましょう。

なお、特性や強み・弱みは一人ひとり異なるため、機械的に当てはめるのではなく、その方にあった業務を任せることが大切です。

ASD・ADHDの強みを活かして活躍している業務例

それぞれの特性を「弱み」ではなく「強み」として捉えると、適性のある業務が見えてきます。

ASD(自閉スペクトラム症)の強みと業務例

強み 活かせる業務
細部へのこだわり 品質管理・データチェック・校正
高い集中力 プログラミング・テスター業務・研究開発
ルーティンワークが得意 データ入力・スキャニング・ファイリング
専門知識への深い理解 翻訳・法務・会計・専門技術職
規則性を重んじる 事務処理・マニュアル業務

ADHD(注意欠如多動症)の強みと業務例

強み 活かせる業務
発想力・独創性 デザイン・企画・コピーライティング
行動力・スピード感 営業・新規開拓・イベント運営
複数案件の同時並行処理 プロジェクトマネジメント補佐
興味関心の幅広さ リサーチ業務・SNSマーケティング
過集中できる時間がある クリエイティブ作業・執筆業務

LD(学習障害)の強みと業務例

LD(学習障害)のある方は、知的発達に遅れがない一方で、「読む」「書く」「計算する」といった特定の領域に困難を抱える場合があります。そのため、苦手な領域を補う工夫や配慮を行うことで、強みを発揮しやすくなるケースがあります。

  • 読字困難 → 図表や画像、動画など視覚的な情報を活用しやすい業務
  • 書字困難 → 音声入力ツールや定型フォーマットを活用できる業務
  • 計算困難 → 電卓やシステムによる計算補助を活用できる業務

業務を検討する際は、既存の職務をそのまま任せるのではなく、業務内容を細分化し、一部の業務を割り当てて担当してもらう方法も有効です。例えば、営業職全体を任せるのではなく、顧客情報の整理や商談資料の作成補助など、個人の特性や強みに応じた業務を担当してもらうことで活躍の幅が広がる場合があります。

業界別の雇用事例(IT・製造・事務など)

実際にどんな業界で発達障害のある方が活躍しているのか、令和5年度障害者雇用実態調査と各社の事例から整理しました。

職業別の雇用割合(令和5年度調査)

順位 職業区分 割合
1位 サービス 27.1%
2位 事務 22.7%
3位 運搬・清掃・包装 12.5%

事務職が約2割を占めており、データ入力・書類管理など定型業務での活躍が目立ちます。一方で、専門職比率も高く、スキルを活かして専門性を発揮するケースも増加傾向にあります。

業界別の活躍パターン

◆ IT業界

  • システム開発・プログラミング
  • Webデザイン・DTPデザイン
  • テスター・品質管理(QA)
  • データ分析・統計処理

IT業界では、テスター・品質管理・データ分析など、正確性や反復作業への集中力が求められる業務で活躍する例があります。

◆ 製造業

  • 倉庫での仕分け・ピッキング
  • 設備点検・検査業務
  • 部品包装・組立
  • 製造ラインの定型作業

中小の総合板金メーカーでは、発達障害のある方が塗装作業で活躍。ナビゲーションブックで特性を共有し、ジョブコーチ支援を受けながら定着につなげた事例があります。

◆ 事務・バックオフィス

  • データ入力・スキャニング
  • 経理伝票処理・請求書チェック
  • 文書ファイリング・郵便仕分け
  • 社内情報システムの管理補助

事務・バックオフィス領域では、データ入力、書類管理、経理補助、社内システム管理補助など、手順が明確でマニュアル化しやすい業務との相性が良い場合があります。

◆ 小売・サービス業

  • 店舗バックヤード(検品・補正・品出し)
  • ECサイトの商品登録
  • 顧客データ管理

小売・サービス業では、店舗バックヤード、商品登録、在庫管理、顧客データ整理などで力を発揮するケースがあります。

◆ 農業・軽作業

  • 農作物の栽培・収穫
  • 野菜のパッキング・出荷

業務マッチングは、雇用成功の鍵です。本人の強みを見極め、活かせる業務に配置することで、企業も本人もWin-Winの関係を築けます。

発達障害者雇用で職場が配慮すべきポイント

発達障害者雇用で職場が配慮すべきポイントの画像

採用がゴールではありません。雇用後の定着こそが本当の成功です。

定着を左右するのは、職場での日々の配慮。発達障害のある方が長く活躍するためには、本人だけが努力するのではなく、職場全体が変わっていく必要があります。

ここでは、特に効果が高い3つの配慮ポイントを解説します。

社内の発達障害に対する理解を深める

最も土台となる取り組みが、社内の理解促進です。

どれだけ仕組みを整えても、現場の社員が「業務連携が負担に感じる」という意識でいる限り、定着は実現しません。

社内理解を深めるための具体策

取り組み 内容
社員研修の実施 発達障害の特性・接し方の基礎研修を実施
ナビゲーションブック作成 本人の特性・配慮事項を1枚にまとめて共有
管理職向けマネジメント研修 指示の出し方・評価の仕方を学ぶ
しごとサポーター養成講座の活用 厚労省が提供する無料の研修を受講
当事者社員との交流機会 偏見を取り除き、共に働く仲間として認識する

特に有効なのが、厚労省の「精神・発達障害者しごとサポーター養成講座」。一般の従業員を対象に、発達障害について正しい理解を促し、職場での応援者になってもらうための無料講座です。e-ラーニング版もあるため、忙しい企業でも導入しやすい仕組みです。

ある中小企業の事例では、社長自らが社員研修を行い、社内理解を促進したことで、発達障害のある方の塗装業務での定着につながりました。トップが本気で取り組む姿勢を見せることが、社内文化を変える最も効果的な方法です。

業務内容のマニュアル化・視覚化

発達障害のある方の多くは、口頭の指示よりも視覚情報のほうが処理しやすい特性があります。

「適当にやっておいて」「いつもの感じで」――こうした曖昧な指示は混乱の原因に。一方で、図や手順書として視覚化された指示は、誰にとってもわかりやすいという副次効果も生み出します。

マニュアル化・視覚化のポイント

  • 作業手順を番号順に書き出す(箇条書きで明確に)
  • 写真や図を多用する(文字だけより理解が深まる)
  • 判断基準を数値化する(「キレイに」ではなく「何センチ以上」)
  • NGパターンも例示する(良い例だけでなく悪い例も)
  • 進捗確認のタイミングを決める(「30分ごとに進捗を見せる」など)

視覚化の具体例

抽象的な指示(NG) 視覚化された指示(OK)
「丁寧にお願い」 「①〜⑤の順番で実施。各工程後、写真と比較して確認」
「適当にまとめて」 「A4縦・1枚・3項目以内・箇条書きで作成」
「早めに提出して」 「本日17時までにメールで提出」
「いつものように」 「マニュアル○○ページの手順に従う」

業務指示の質は、発達障害のある方の生産性を2倍以上変えると言っても過言ではありません。

なお、このマニュアル化作業は、実は社内の業務改善そのものでもあります。属人化していた業務が可視化され、新人教育にも転用できるなど、組織全体の生産性向上に貢献します。

通院・感覚過敏への配慮とメンター活用

発達障害のある方が安心して働き続けるためには、身体面・精神面の両方への配慮が不可欠です。

通院・服薬への配慮

発達障害の方の多くは、定期的に医療機関を受診しています。通院しやすい環境を整えることで、症状の安定と定着率向上が両立します。

  • 月1〜2回の通院日に有給を取りやすくする
  • 通院後の出社時間に柔軟性を持たせる
  • 服薬時間に配慮した休憩設定
  • 体調変化を相談できる窓口の設置

感覚過敏への配慮

特にASDの方には、音・光・匂いなどへの強い感覚過敏がある場合があります。

感覚 配慮例
聴覚過敏 静かな席への配置・耳栓やイヤーマフの使用許可
視覚過敏 蛍光灯のちらつき対策・モニター輝度調整
嗅覚過敏 香水・芳香剤の制限・換気の徹底
触覚過敏 制服素材の配慮・座り心地のよい椅子

これらは大きな投資なしに実現できる配慮ばかり。ちょっとした環境調整が、本人のパフォーマンスを大きく引き上げます

メンター・ジョブコーチの活用

社内にメンター(支援役)を配置することで、本人の不安や困りごとを早期にキャッチできます。

  • 社内メンター:同じ部署の先輩社員が定期面談を実施
  • ジョブコーチ(社内型):障害者職業生活相談員などの専任者を配置
  • ジョブコーチ(社外型):地域障害者職業センターから派遣

メンターは、業務指導者と兼任しないことがポイント。「仕事の評価をする立場の人には言いにくい困りごと」を吸い上げる役割が重要だからです。

入社後3ヶ月は週1回、その後は月1回など、定期面談の頻度を決めて運用しましょう。

障がい者雇用支援サービスのエスプールプラス

「社内に割り当てられる業務がない」 「ノウハウがなく、何から始めればいいかわからない」 「採用しても定着せず、また採用活動からやり直し...」 「社内のリソースだけでは限界がある」

こうした課題に対する実践的な解決策として、広がっているのが「農園型障がい者雇用」です。なかでも多くの企業に導入されているのが、株式会社エスプールプラスが運営する「わーくはぴねす農園」です。

わーくはぴねす農園は、農業を活用した障がい者雇用支援サービスです。サービスの特徴は大きく3つです。

  1. 障がいのある方・サポートスタッフの採用活動の支援
  2. 安全・清潔な貸し農園の提供
  3. 雇用アドバイスや農園施設の管理等、運営中のサポート

「自社で発達障害のある方を雇用したいが、業務割り当てに悩んでいる」「定着率を上げたい」――そんな課題をお持ちの企業は、まずは無料相談・資料請求から始めてみてはいかがでしょうか。

発達障害者雇用で活用できる公的支援・助成金

発達障害者雇用で活用できる公的支援・助成金の画像

発達障害のある方を雇用する際には、要件を満たす場合に公的支援や助成金を活用できることがあります。ただし、助成金は雇用そのものを目的化するものではなく、採用後の定着支援や職場環境整備を補助する制度として理解することが重要です。

「制度が複雑でよくわからない」「どれを使えばいいか判断できない」――こうした声をよく聞きますが、まずは主要な3つの制度を押さえれば十分です。

押さえるべき3制度

  • 特定求職者雇用開発助成金
  • トライアル雇用制度
  • 精神、発達障害者雇用サポーター制度

特定求職者雇用開発助成金とトライアル雇用制度

採用時のコスト軽減に最も効果が大きい2つの制度を、セットで紹介します。

特定求職者雇用開発助成金

ハローワーク等の紹介で継続雇用する労働者として障害者を雇い入れる企業に支給される助成金です。発達障害者の雇用に関連するコースは主に2つあります。

特定就職困難者コース

精神障害者保健福祉手帳を取得している発達障害者を雇用する場合のコース。

区分 中小企業 中小企業以外
短時間労働者以外(週30時間以上) 最大240万円(3年間) 最大100万円(2年間)
短時間労働者(週20〜30時間) 最大80万円(2年間) 最大30万円(1年間)

発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース

障害者手帳を持たない発達障害者を雇用する場合のコース。障害者手帳を持たない場合でも、発達障害がある方として制度要件を満たす場合には、発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コースの対象となる可能性があります。

区分 中小企業 中小企業以外
短時間労働者以外 最大120万円(2年間) 最大50万円(1年間)
短時間労働者 最大80万円(2年間) 最大30万円(1年間)

対象要件

  • ハローワーク等の紹介による雇い入れ
  • 雇用保険の一般被保険者として継続雇用
  • 週20時間以上の労働(短時間コースの場合)

特に注目したいのは、手帳を持たない場合も対象になる点。手帳を持たないが、医師の診断等により要件を満たす場合、活用できます。

障害者トライアル雇用制度

一定期間の雇用を通じて、本人の適性や職場環境との相性を確認し、継続雇用につなげるための制度です。

障害者トライアルコース

雇用対象 支給額 支給期間
精神障害者(発達障害含む) 最初の3ヶ月:月額最大8万円 その後の3ヶ月:月額最大4万円 最長6ヶ月
その他障害者 月額最大4万円 最長3ヶ月

精神障害者の場合、最大36万円の助成を受けられます。【障害者短時間トライアル雇用】

長時間勤務が難しい精神障害者・発達障害者向けの制度。

  • 週10時間以上20時間未満の短時間勤務からスタート
  • 最終的に週20時間以上の継続雇用を目指す
  • 適性や職場環境の相性を確認しながら段階的に勤務時間を伸ばせる

2つの制度の併用パターン

実は、トライアル雇用→特定求職者雇用開発助成金という流れで使うのが、最も合理的な活用法です。

  1. トライアル雇用(3ヶ月):適性を見極める
  2. 継続雇用が決定
  3. 特定求職者雇用開発助成金の第2期から受給

トライアル期間中はトライアル助成金を受け、本採用後は特定求職者雇用開発助成金に切り替えることで、複数の助成を受けながら採用ミスマッチを防げます。

精神・発達障害者雇用サポーター制度

採用に関する助成金とは別に、社内の理解促進・職場定着を支援する制度もあります。

精神・発達障害者しごとサポーター養成講座

厚生労働省が無料で提供している研修制度です。一般の従業員を対象に、発達障害について正しい理解を促進します。

講座の特徴

  • 完全無料で受講可能
  • 全国各地で開催
  • e-ラーニング版もあり、時間・場所を選ばず受講可能
  • 約2時間の短時間プログラム
  • 修了者には「しごとサポーターロゴマーク」が付与される

社内に複数のサポーターを養成しておけば、発達障害のある社員に対する理解が深まり、職場全体の受け入れ体制が向上します。

ハローワーク「精神・発達障害者雇用サポーター」

ハローワークには、精神障害・発達障害のある方の就職支援や職場定着支援を行う「精神・発達障害者雇用サポーター」が配置されています。

精神・発達障害者雇用サポーターは、求職者への専門的な職業相談・職業紹介だけでなく、事業主に対しても、採用方針や職種の相談、求人条件の整理、求人作成支援、求職者とのマッチング、雇用管理に関する助言、採用後の定着支援などを行っています。

また、精神障害・発達障害について社内理解を深めたい場合は、労働局やハローワークが実施する「精神・発達障害者しごとサポーター養成講座」を活用できます。企業からの要請に応じて、講師が職場へ出向く出前講座が実施される場合もあります。

利用できる支援内容や実施方法は地域によって異なるため、詳細は管轄のハローワークに確認することが重要です。

その他の支援制度

参考までに、他にも活用できる制度を簡単に紹介します。

  • ジョブコーチ支援事業:地域障害者職業センターから専門スタッフを派遣
  • 障害者作業施設設置等助成金:施設・設備を整備した場合の費用補助
  • 障害者介助等助成金:雇用管理のための専門職配置への助成

助成金は申請手続きや要件が複雑なため、社労士や障害者雇用支援サービスのアドバイスを受けると確実です。また、地方公共団体の補助金との併用にも制限がある場合があるため、活用前にハローワークや労働局へ相談しましょう。

発達障害者の雇用についてよくある質問

Q. 障害者雇用で不採用になる理由は何ですか?

A. 主な理由は、業務適性のミスマッチ自己理解・説明の不足です。

  • 募集職種に必要なスキル・経験が不足している
  • 自分の特性や必要な配慮を明確に説明できない
  • 配慮事項が多すぎる、または具体性に欠ける

特に発達障害のある方の場合、「何ができて何が苦手か」を自分の言葉で伝えられるかが重視されます。

なお、企業側に発達障害の受け入れ体制が整っていないケースもあります。雇用実績のある企業を選ぶことも判断材料の一つです。

Q. 発達障害者の雇用の給料は?

A. 厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査」によれば、1ヶ月の平均賃金は13万円です。

労働時間 平均月額賃金
週30時間以上 15万5,000円
週20時間以上30時間未満 10万7,000円
週10時間以上20時間未満 6万6,000円

フルタイム勤務であれば月15万円台が相場。専門スキルを活かせるポジションや正社員雇用の場合、これを大きく上回るケースもあります。

Q.発達障害のある方の雇用後、職場で課題が生じた場合どこに相談すべきですか?

A. 1社で抱え込まず、外部の専門機関に早めに相談するのが鉄則です。主な相談先は以下の通りです。

相談先 主な支援内容
ハローワーク(精神・発達障がい者雇用サポーター) 雇用相談・職場定着支援
地域障害者職業センター ジョブコーチ派遣・職場適応援助
就労移行支援事業所 採用・定着支援

特に入社後3ヶ月以内の早期相談が、定着率を大きく左右します。「もう少し様子を見て...」と先送りすると、二次障害や早期離職につながりやすいので注意が必要です。

Q. 発達障害の障害者雇用率は?

A. 発達障害単独での雇用率はありませんが、精神障害者保健福祉手帳を取得することで法定雇用率にカウントされます。

民間企業の法定雇用率は2026年7月から2.7%(従業員37.5人以上)です。

精神障害者保健福祉手帳を持つ発達障害者は、週20〜30時間の短時間勤務でも1人としてカウントできる特例措置があり、短時間からの段階的な雇用にも活用しやすい仕組みです。

写真:岡本 暁
記事監修|岡本 暁(おかもと あきら)
株式会社エスプールプラス 事業本部 経営企画室 室長
創業三期目の株式会社エスプールに入社。 2014年より株式会社エスプールプラスにジョイン。 農園運営部門の責任者、障がい者の就労支援部門の責任者を経て、 現在は経営企画室の室長として行政、福祉関係者と関わり、 当社理念(一人でも多くの障がい者雇用を創出し、社会に貢献する)の実現に向けた活動に専念。

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