更新日:2023年6月12日
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障害者雇用に関する法律について

障害者雇用促進法は、障害者の雇用義務等に基づいて雇用促進や障害者の職業の安定を図ることに関する方策が定められたものです。(参考リンク:障害者雇用促進法とは?

正式名称は「障害者の雇用の促進等に関する法律」ですが、一般的には障害者雇用促進法と呼ばれています。障害者雇用促進法では、事業主に対して雇用義務制度と納付金制度が課せられています。

障害者雇用率制度

事業主は、雇用している従業員の一定割合以上の障害者を雇用する必要があります。この一定割合が、障害者法定雇用率です。

ちなみに、障害者雇用率の対象となる民間企業の事業主の範囲は、従業員43.5人以上で、令和3年2月までの法定雇用率は、次のとおりです。

  • 民間企業 2.2%
  • 国、地方公共団体、特殊法人等2.5%
  • 都道府県等の教育委員会 2.4%

令和3年3月からは、この雇用率が0.1%引き上げられたため、以下の雇用率になりました。

  • 民間企業 2.3%
  • 国、地方公共団体、特殊法人等2.6%
  • 都道府県等の教育委員会2.5%

障害者雇用納付金制度

障害者雇用納付金制度は、障害者の雇用にともなう事業主の経済的負担の調整を図るものです。つまり、障害者雇用は、事業主が相互に果たしていく社会連帯責任という考えのもと、障害者雇用率に達していない事業主は、その分を障害者雇用納付金として納めることになっています。

雇用率未達成の企業は、障害者の不足1人につき、月額5万円の雇用納付金が徴収されます。適用対象は、常用労働者100人超の企業です。常用労働者100人以下の中小企業からは徴収していません。

徴収された納付金は、事業主が障害者雇用を促進するための作業設備や職場環境を改善する、雇用管理や能力開発等を行うなどの各種助成金や、雇用を多くしている事業主への調整金などに活用されています。雇用納付金については「障害者雇用納付金制度とは?助成金の種類についても解説」の記事で解説しています。

障害者雇用調整金は、雇用率達成した事業主を対象に、1人につき月額2万7千円が支給されます。調整金の適用対象は常用労働者が100人超の企業です。100人以下の事業主については報奨金が支給され、1人につき月額2万1千円となっています。

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障害者雇用促進法の改正で注意すべきポイント

改正障害者雇用促進法(2020年4月)の新制度として、事業主に対する特例給付制度と優良事業主としての認定制度の創設が定められました。

短時間障害者雇用の特例給付金制度では、週20時間未満の労働者を雇用する企業へ特例給付金が支給されます。

障害者雇用促進法では、週所定労働時間20時間未満で雇用される障害者は、雇用されても障害者雇用のカウント対象にならないため、雇用機会が得られないケースが多いという課題がありました。しかし、精神障害者の雇用が広がり、短時間でも働きたいというニーズも多く、厚生労働省では障害者雇用分科会の中で、多様な希望や特性に対応し働き方の選択肢を拡大することを検討してきました。そして、短時間就労の雇用機会として考えられたのが、この特例給付金です。

中小企業を対象とした障害者雇用優良認定制度は、「もにす制度」とも呼ばれています。優良企業に認定されると、自社の商品や広告等へ「認定マーク」を掲載することができ、障害者雇用の促進・安定に関する取り組みが優良な企業であることをアピールできるなどの特典があります。その他には、日本政策金融公庫の低利融資対象となることや、厚生労働省・都道府県労働局・ハローワークによる周知広報の対象となること、公共調達等における加点評価を受けられる場合もあります。

認定されるには、障害者雇用への取組(アウトプット)、取組の成果(アウトカム)、それらの情報開示(ディスクロージャー)の3項目について、項目ごとの合格最低点に達しつつ、合計で50点中20点(特例子会社は35点)以上を獲得することが必要です。認定の申請は、事業所を管轄する都道府県労働局となります。

障害者雇用促進法は、障害者雇用の状況や研究会等での検討に合わせて、雇用率や事業主の障害者雇用を促進する施策の変更が行われています。厚生労働省や労働局、ハローワーク等からの情報を定期的にチェックすることをおすすめします。

障害者雇用率の計算方法

障害者雇用率は、次の計算式によって決められています。

障害者雇用率の計算式

出典:障害者雇用率制度について(厚生労働省)

事業主が自社の障害者雇用が何人必要かを知るためには、次の計算式で求めることができます。

自社の法定雇用障害者数=(常用労働者数+短時間労働者数×0.5)×障害者雇用率

常時雇用労働者の定義とカウント方法

常用雇用労働者は、雇用期間の定めがない者および有期雇用であっても1年以上継続して雇用される者(見込みを含む)で、1週間の所定労働時間が20時間以上の労働者を指します。
そのうち1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者を短時間労働者、30時間以上の労働者を短時間労働者以外として区別します。
短時間労働者以外の常時雇用労働者の場合、労働者1人の雇用は「1カウント」です。

短時間労働者の定義とカウント方法

短時間労働者は、1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満である短時間労働者については、労働者1人の雇用をもって「0.5カウント」とカウントします。

法定雇用障害者の計算の例

実際に、何人の障害者を雇用する必要があるのかを計算してみましょう。

自社の法定雇用障害者数=(常用労働者数+短時間労働者数×0.5)×障害者雇用率

常用労働者が300人で、週20~30時間勤務のパート従業員が50人いる事業主の場合、(300+50×0.5)×2.2%(雇用率)=7.15

小数点以下の端数は切り捨てとなり、7人の雇用が求められることになります。

障害種類別・等級別のカウント方法

障害者雇用では、障害者手帳をもつ障害者を雇用することで、障害者を雇用しているとカウントされます。

障害者手帳とは、障害のある人に交付される手帳のことで、「身体障害者手帳」「精神障害者保健福祉手帳」「療育手帳」の3つの種類があります。交付される手帳には、生活における支障の程度や症状などに応じた「障害等級」と呼ばれる区分が設けられています。

障害種別のカウント方法は、次の表のとおりです。

週所定労働時間 30時間以上 20時間以上30時間未満
身体障害者 1 0.5
重度身体障害者 2 1
知的障害者 1 0.5
重度知的障害者 2 1
精神障害者 1 0.5

※ 精神障害者である短時間労働者は、算定特例として、1人をもって1カウントとみなす。

出典:障害者雇用率制度について(厚生労働省)

身体障害者を雇用する場合のカウント方法

身体障害者のカウント方法は、重度身体障害者かそれ以外の身体障害者かによって分けて考えます。

身体障害者の等級は1級~7級に分かれています。そのうち、1級・2級の障害があるか、または3級に該当する障害が2つ以上重複してある人が重度身体障害者です。

重度身体障害者を雇用する場合、1人の雇用で2人分としてカウントする「ダブルカウント」が適応されます。

重度ではない身体障害者を雇用する場合、週の労働時間が30時間以上の場合は1カウント、短時間労働(週の労働時間が20~30時間未満)の場合は0.5カウントとなります。
一方、重度身体障害者を1人雇用する場合、週の労働時間が30時間以上の場合は2カウント、短時間労働(週の労働時間が20~30時間未満)の場合は0.5×2で1カウントとなります。

知的障害者を雇用する場合のカウント方法

知的障害者を雇用する場合も、身体障害者と同様、重症知的障害者かそれ以外の障害者かによってカウントの方法が異なります。

知的障害者の場合、療育手帳の等級により重度かそれ以外かを判断しますが、療育手帳の表記は地域ごとに異なります。A1、A2、B1...と表記される地域もあれば、1級、2級...と数字のみで表記される地域もあります。

例えば、東京都の場合は1度と2度が重度で3度以降が中軽度、埼玉県ではⒶ(特A)とAが重度でB以降が中軽度、大阪府ではAが重度でB以降が中軽度となっています。

重度以外の知的障害者の雇用では、対象者の週の労働時間が30時間以上の場合は1カウント、短時間労働(週の労働時間が20~30時間未満)の場合は0.5カウントです。

一方、重度知的障害者を雇用する場合は、重度身体障害者と同様のダブルカウントが適応されます。週の労働時間が30時間以上の重度知的障害者を1人雇用する場合は2カウント、短時間労働(週の労働時間が20~30時間未満)の場合は1カウントとなります。

精神障害者を雇用する場合のカウント方法

精神障害者を雇用する場合、等級によるカウントの変化はありません。週の労働時間が30時間以上の場合は1カウントです。
短時間労働(週の労働時間が20~30時間未満)の場合は0.5カウントとなりますが、令和5年5月現在、精神障害者の短時間雇用の算定特例が設けられており、短時間労働の精神障害者について、当分の間、雇入れからの期間等に関係なく1カウントとして算定できます。

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障害者雇用率の計算・カウントシミュレーション

いくつかのケースで障害者雇用率の計算方法をシミュレーションしてみましょう。

短時間労働者以外の常用労働者のみを50人雇用する一般企業の場合

法定雇用障害者数=50×2.3%=1.15人
小数点以下は切り捨てとなるため、この企業の法定雇用障害者数は1人となります。
この場合、重度以外の身体障害者および知的障害者、または精神障害者を短時間労働以外で1人雇用するか、重度身体障害者か重度知的障害者を短時間労働で1人雇用することで、法定雇用障害者数の雇用を達成することができます。

あるいは、重度以外の身体障害者か知的障害者を短時間労働で2名雇用することでも達成可能です。

短時間労働者以外の常用労働者のみを300人雇用する一般企業の場合

法定雇用障害者数=300×2.3%=6.9人
小数点以下は切り捨てとなるため、この企業の法定雇用障害者数は6人となります。雇用の組み合わせは何通りか考えられるため、例をあげて計算します。

⮚身体障害者2名+精神障害者2名+重度知的障害者1名
=2カウント+2カウント+2カウント=6カウント・・・法定雇用率達成

⮚重度身体障害者2名(短時間)+知的障害者2名+精神障害者2名(短時間)
=2カウント+2カウント+2カウント=6カウント・・・法定雇用率達成

⮚身体障害者1名(短時間)+重度知的障害者2名+精神障害者1名
=0.5カウント+4カウント+1カウント=5.5カウント・・・法定雇用率未達成

まとめ

障害者雇用の等級によるカウント方法について説明してきました。

事業主に求められている障害者雇用は、障害者雇用促進法という法律で定められており、障害者雇用率制度と雇用納付金制度が設けられています。雇用率は、定期的に引き上げられており、令和3年3月からは0.1%引き上げられ、障害者雇用率の対象となる事業主の範囲が従業員43.5人以上の企業に広がりました。

障害者雇用のカウントには、障害者手帳をもつ障害者を雇用することが必要です。障害種別や労働時間によってカウント方法が異なりますので、注意が必要です。短時間の精神障害者を雇用される場合には、特例措置が適用されますので、検討することができるでしょう。