更新日:2024年10月16日
法制度・最新情報の資料

障がい者雇用に関する法律について

障害者雇用促進法は、障がい者の雇用義務等に基づいて雇用促進や障がい者の職業の安定を図ることに関する方策が定められたものです。
(参考リンク:障害者雇用促進法とは?

正式名称は「障害者の雇用の促進等に関する法律」ですが、一般的には障害者雇用促進法と呼ばれています。障害者雇用促進法では、事業主に対して雇用義務制度と納付金制度が課せられています。

障害者雇用率制度

事業主は、雇用している従業員の一定割合以上の障がい者を雇用する必要があります。この一定割合が、法定雇用率です。

法定雇用率は、5年ごとに見直しがおこなわれています。令和5年におこなわれた見直しでは、それまで2.3%であった法定雇用率を2.7%まで引き上げることが決定しました。

ただし、この引き上げは令和6年4月と令和8年7月の2回に分けて、段階的におこなわれることとなっています。

令和6年4月からの法定雇用率は、次のとおりです。

  • 民間企業 2.5%
  • 国、地方公共団体、特殊法人等2.8%
  • 都道府県等の教育委員会 2.7%

この法定雇用率に基づき、従業員数が40名以上のすべての企業は、障がい者を1人以上雇用する義務があります。

令和8年4月からは法定雇用率がさらに引き上げられ、従業員数が37.5名以上のすべての企業で、以下の法定雇用率を満たす人数の障がい者を雇用する必要が出てきます。

  • 民間企業 2.7%
  • 国、地方公共団体、特殊法人等3.0%
  • 都道府県等の教育委員会2.9%

(参考リンク:厚生労働省|障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について

障害者雇用納付金制度

障害者雇用納付金制度は、障がい者の雇用にともなう事業主の経済的負担の調整を図るものです。つまり、障がい者雇用は、事業主が相互に果たしていく社会連帯責任という考えのもと、法定雇用率に達していない事業主は、その分を障害者雇用納付金として納めることになっています。

雇用率未達成の企業は、障がい者の不足1人につき、月額5万円の雇用納付金が徴収されます。適用対象は、常用労働者100人超の企業です。常用労働者100人以下の中小企業からは徴収していません。

徴収された納付金は、事業主が障がい者雇用を促進するための作業設備や職場環境を改善する、雇用管理や能力開発等を行うなどの各種助成金や、雇用を多くしている事業主への調整金などに活用されています。納付金については「障害者雇用納付金制度とは?助成金の種類についても解説」の記事で解説しています。

障害者雇用調整金は、常用労働者が100人を超える企業のうち、雇用率を達成した事業主を対象に支給されるものです。法定雇用率を超えて雇用する障がい者1人につき、月額2万9千円が支給されます。ただし、支給対象人数が10人を超えた分については、1人あたり2万3千円になります。

常用労働者が100人以下の事業主に対しては報奨金が支給されます。支給額は、法定雇用率を超えて雇用する障がい者の人数1人につき月額2万1千円です。ただし、支給対象人数35人を超えた分については、1人あたり1万6千円になります。

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中小企業向け認定制度「もにす認定制度」

障害者雇用促進法の制度として、事業主に対する優良事業主としての認定制度があります。

中小企業(常時雇用する労働者が300人以下の事業主)を対象とした障害者雇用優良認定制度は、「もにす認定制度」とも呼ばれています。優良企業に認定されると、自社の商品や広告等へ「認定マーク」を掲載することができ、障がい者雇用の促進・安定に関する取り組みが優良な企業であることをアピールできるなどの特典があります。その他には、日本政策金融公庫の低利融資対象となることや、厚生労働省・都道府県労働局・ハローワークによる周知広報の対象となること、公共調達等における加点評価を受けられる場合もあります。

認定されるには、障がい者雇用への取組(アウトプット)、取組の成果(アウトカム)、それらの情報開示(ディスクロージャー)の3項目について、項目ごとの合格最低点に達しつつ、合計で50点中20点(特例子会社は35点)以上を獲得することが必要です。認定の申請は、事業所を管轄する都道府県労働局となります。

障害者雇用促進法は、障がい者雇用の状況や研究会等での検討に合わせて、雇用率や事業主の障がい者雇用を促進する施策の変更が行われています。厚生労働省や労働局、ハローワーク等からの情報を定期的にチェックすることをおすすめします。

障害者雇用率の計算方法

障害者雇用率は、次の計算式によって決められています。

障害者雇用率の計算式

出典:障害者雇用率制度について(厚生労働省)

事業主が自社の障がい者雇用が何人必要かを知るためには、次の計算式で求めることができます。

自社の法定雇用障害者数=(短時間労働者を除く常用労働者数+短時間労働者数×0.5)×障害者雇用率

常時雇用労働者の定義とカウント方法

障害者雇用制度における常時雇用労働者は、雇用期間の定めがない者および有期雇用であっても1年以上継続して雇用される者(見込みを含む)で、1週間の所定労働時間が20時間以上の労働者を指します。

そのうち1週間の所定労働時間が30時間以上の労働者を1人につき「1カウント」として算定します。

短時間労働者の定義とカウント方法

障害者雇用制度における短時間労働者とは、常時雇用労働者のうち、1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満である労働者のことを指します。これらの短時間労働者については、常時雇用労働者のなかでも労働時間が短いため、労働者1人の雇用をもって「0.5カウント」とカウントします。

週所定労働時間が20時間未満の労働者がいる場合には、その労働者については常時雇用労働者としてみなされません。そのため、自社の法定雇用障がい者数を計算する際には、一部の障害種別や等級を除き、カウントしないこととなっています。

法定雇用障害者の計算の例

では、実際に何人の障がい者を雇用する必要があるのかを計算してみましょう。

自社の法定雇用障害者数=(短時間労働者を除く常用労働者数+短時間労働者数×0.5)×障害者雇用率

この計算式に当てはめると、短時間労働者を除く常用労働者が300人で、週20~30時間勤務のパート従業員が50人いる事業主の場合、

(300+50×0.5)×2.5%(雇用率)=8.125

となります。小数点以下の端数は切り捨てとなるため、8カウント分の障がい者雇用が求められることになります。

短時間労働者を除く常用労働者が80人で、週20~30時間勤務のパート従業員が10人いる事業主の場合は、

(80+10×0.5)×2.5%(雇用率)=2.125

となります。小数点以下の端数は切り捨てとなり、2カウント分の障がい者雇用が求められることになります。

障害種類別・等級別のカウント方法

障がい者雇用では、障害者手帳をもつ障がい者を雇用することで、障がい者を雇用しているとカウントされます。

障害者手帳は障がいのある方に交付される手帳で、「身体障害者手帳」「精神障害者保健福祉手帳」「療育手帳」の3つの種類があります。交付される手帳には、生活における支障の程度や症状などに応じた「障害等級」と呼ばれる区分が設けられています。

障害種別のカウント方法は、次の表のとおりです。

週所定労働時間 30時間以上 20時間以上30時間未満 10時間以上20時間未満
身体障がい者 1 0.5 -
重度身体障がい者 2 1 0.5
知的障がい者 1 0.5 -
重度知的障がい者 2 1 0.5
精神障がい者 1 1(当面の間) 0.5

出典:障害者雇用率制度について(厚生労働省)

身体障がい者を雇用する場合のカウント方法

身体障がい者のカウント方法は、重度身体障がい者かそれ以外の身体障がい者かによって分けて考えます。

身体障がい者の等級は1級~7級に分かれています。そのうち、1級・2級の障がいがあるか、または3級に該当する障がいが2つ以上重複してある人が重度身体障がい者です。

重度ではない身体障がい者を雇用する場合、週の労働時間が30時間以上の場合は1カウント、短時間労働(週の労働時間が20~30時間未満)の場合は0.5カウントとなります。

一方、重度身体障がい者を雇用する場合、1人の雇用で2人分としてカウントする「ダブルカウント」が適応されます。重度身体障がい者を1人雇用する場合、週の労働時間が30時間以上の場合は2カウント、短時間労働(週の労働時間が20時間以上30時間未満)の場合は0.5×2で1カウントとなります。

また、令和4年の障害者雇用促進法の改定により、重度身体障がい者のうち、それまでカウントの対象外だった週所定労働時間10時間以上20時間未満の方も「特定短時間労働者」として算定可能になりました。この場合、1人につき0.5カウントとなります。

特定短時間労働者の算定が可能になった背景には、障がい上の理由などにより短時間での労働を望む障がい者が一定数いる現実があります。週20時間未満の労働時間の場合には障がい者雇用の算定に含まれないため雇用機会が少なく、就業に結び付きにくいことが実際の状況としてありました。短時間での労働を望む障がい者の雇用の確保が重要であるという観点により、特に短時間労働のニーズが多い重度身体障がい者、重度知的障がい者、精神障がい者について、特定短時間労働者の算定が適用されたのです。

特定短時間労働者の算定に伴い、週所定労働時間が20時間未満の障がい者を雇用している事業主に給付されていた「特例給付金」は、令和6年3月をもって廃止されました。

参考リンク:厚生労働省|特定短時間労働者の雇用率算定について(案)

知的障がい者を雇用する場合のカウント方法

知的障がい者を雇用する場合も、身体障がい者と同様、重度知的障がい者かそれ以外の障がい者かによってカウントの方法が異なります。

知的障がい者の場合、療育手帳の等級により重度かそれ以外かを判断しますが、療育手帳の表記は地域ごとに異なります。A1、A2、B1...と表記される地域もあれば、1級、2級...と数字のみで表記される地域もあります。

例えば、東京都の場合は1度と2度が重度で3度以降が中軽度、埼玉県ではⒶ(特A)とAが重度でB以降が中軽度、大阪府ではAが重度でB以降が中軽度となっています。

重度以外の知的障がい者の雇用では、対象者の週の労働時間が30時間以上の場合は1カウント、短時間労働(週の労働時間が20~30時間未満)の場合は0.5カウントです。

一方、重度知的障がい者を雇用する場合は、重度身体障がい者と同様のダブルカウントが適応されます。週の労働時間が30時間以上の重度知的障がい者を1人雇用する場合は2カウント、短時間労働(週の労働時間が20時間以上30時間未満)の場合は1カウントとなります。

また、週所定労働時間が10時間以上20時間未満の重度知的障がい者は特定短時間労働者として扱われ、1人につき0.5カウントとなります。

精神障がい者を雇用する場合のカウント方法

精神障がい者を雇用する場合、等級によるカウントの変化はありません。週の労働時間が30時間以上の場合は1カウントです。

また、精神障がい者の職場定着率は週所定労働時間が20時間以上30時間未満の場合でもっとも高いというデータを踏まえ、短時間労働の精神障がい者については、令和6年4月現在、算定特例が設けられています。これにより、当面の間、本来0.5カウントである短時間労働の精神障がい者1人について、1カウントとして算定することが可能です。

さらに、週所定労働時間が10時間以上20時間未満の精神障がい者については、その等級に関係なく、特定短時間労働者として0.5カウントとすることができます。

参考リンク:厚生労働省|精神障害者である短時間労働者に関する算定方法の特例措置 Q&A

200社アンケート資料

障害者雇用率の計算・カウントシミュレーション

いくつかのケースで障害者雇用率の計算方法をシミュレーションしてみましょう。

短時間労働者以外の常用労働者のみを50人雇用する一般企業の場合

法定雇用障害者数=50×2.5%=1.25人
小数点以下は切り捨てとなるため、この企業の法定雇用障がい者数は1人となります。この場合、重度身体障がい者か重度知的障がい者を短時間労働で1人雇用するか、重度以外でも身体障がい者および知的障がい者、または精神障がい者を短時間労働以外で1人雇用するか、重度身体障がい者か重度知的障がい者を短時間労働で1人雇用することで、法定雇用障害者数の雇用を達成することができます。

あるいは、重度以外の身体障がい者か知的障がい者を短時間労働で2名雇用することでも達成可能です。

短時間労働者以外の常用労働者のみを300人雇用する一般企業の場合

法定雇用障害者数=300×2.5%=7.5人

小数点以下は切り捨てとなるため、この企業の法定雇用障がい者数は7人となります。雇用の組み合わせは何通りか考えられるため、例をあげて計算します。

⮚身体障がい者2名+精神障がい者3名+重度知的障がい者1名
=2カウント+3カウント+2カウント=7カウント・・・法定雇用率達成

⮚重度身体障がい者2名(短時間)+知的障がい者3名+精神障がい者2名(短時間)
=2カウント+3カウント+2カウント=7カウント・・・法定雇用率達成

⮚重度身体障がい者2名(短時間)+重度知的障がい者2名(特定短時間)+知的障がい者2名+精神障がい者2名(短時間)
=2カウント+1カウント+2カウント+2カウント=7カウント・・・法定雇用率達成

⮚身体障がい者2名(短時間)+重度身体障がい者1名(特定短時間)+重度知的障がい者2名+精神障がい者1名
=1カウント+0.5カウント+4カウント+1カウント=6.5カウント・・・法定雇用率未達成

まとめ

事業主に求められている障がい者雇用は、障害者雇用促進法という法律で定められており、障害者雇用率制度と雇用納付金制度が設けられています。

雇用率は、定期的に引き上げられています。令和6年4月からは民間企業で2.5%に引き上げられ、障がい者雇用の対象となる事業主の範囲が従業員40人以上の企業に広がりました。

次の引き上げは令和8年7月の予定です。引き上げによって、それまで障がい者雇用の対象ではなかった事業主についても雇用の義務が発生する可能性もあるため注意が必要です。短時間の精神障がい者を雇用する場合には、特例措置が適用されます。また、特定短時間労働者についても算定可能になったため、これまで以上にさまざまな障がい特性の方の雇用を検討することができるでしょう。

障がい者雇用のカウントには、障害者手帳をもつ障がい者を雇用することが必要です。障がい種別や労働時間によってカウント方法が異なるため、しっかり把握しておくようにしましょう。