「うちの会社も、いよいよ障害者雇用の対象になるのか...」
「法定雇用率って今、何%なんだろう?2026年7月に変わったって本当?」
「未達成だとペナルティがあるって聞いたけど、具体的に何が起きるの?」
こうした不安や疑問を抱えている人事・労務担当者の方は多いのではないでしょうか。
2026年7月に2.7%へと、障害者の法定雇用率は段階的に引き上げられました。これにより、これまで対象外だった従業員37.5人以上の企業も、新たに障害者雇用の義務を負うことになりました。
未達成の状態が続く場合には、障害者雇用納付金の納付に加え、ハローワークによる指導や雇入れ計画の作成命令の対象となることがあります。さらに、改善が見られない場合には、最終的に企業名が公表される可能性もあります。
しかし、適切な知識と早めの対応があれば、決して達成は不可能ではありません。
なお、法定雇用率の達成には、雇用環境の整備と採用後の活躍・定着の支援の両面が重要です。エスプールプラスでは、企業向け貸し農園「わーくはぴねす農園」を通じて、障がい者の採用から定着までをサポートしており、約750社の導入実績と定着率92%を実現しています。導入相談も受け付けているので、まずはお問い合わせください。
この記事では、以下の内容をわかりやすく解説します。
「法定雇用率」という言葉はよく聞くものの、その正確な意味や仕組みまで把握している方は意外と少ないのではないでしょうか。
このセクションでは、法定雇用率の基本から、混同しやすい「実雇用率」との違い、そして2026年7月の引き上げまでをわかりやすく解説します。
法定雇用率とは、企業や国・地方公共団体が達成を義務付けられている、従業員全体に占める障害者の割合のことです。
この制度は「障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)」に基づいて定められており、障害者の雇用機会を確保し、職業を通じた自立と社会参加を支援することを目的としています。
法定雇用率の歴史を簡単に振り返ると、以下のような変遷があります。
社会環境の変化に応じて、対象となる障害の範囲は広がり、法定雇用率もおおむね5年ごとに見直されてきました。法定雇用率は、企業に課された社会的責任であると同時に、誰もが活躍できる共生社会の実現に向けた重要な制度なのです。
法定雇用率と並んでよく出てくる言葉に「実雇用率」があります。この2つは混同されやすいですが、意味は明確に異なります。
簡単に言えば、「法定雇用率は守るべきルール」「実雇用率は自社の現状を示す数字」という関係です。
毎年6月1日時点での実雇用率をハローワークに報告することが義務付けられており、これを通称「ロクイチ報告」と呼びます。自社の実雇用率が法定雇用率を下回っていないかを把握することが、障害者雇用の出発点になります。
民間企業の法定雇用率は、2026年7月に2.7%へ引き上げられました。
引き上げは段階的に行われており、これまでの推移は以下の通りです。
| 適用時期 | 民間企業の法定雇用率 | 対象企業の規模 |
|---|---|---|
| 〜2024年3月 | 2.3% | 従業員43.5人以上 |
| 2024年4月〜 | 2.5% | 従業員40人以上 |
| 2026年7月〜 | 2.7% | 従業員37.5人以上 |
注目すべきポイントは、法定雇用率の引き上げと同時に、対象企業の範囲も広がったことです。
2026年7月以降は、これまで対象外だった従業員37.5人以上の中小企業も、新たに障害者雇用の義務を負うことになりました。「うちは小さい会社だから関係ない」と考えていた企業も、対応が必要になっています。
なお、民間企業以外の法定雇用率は次の通りです。
| 区分 | 2024年4月〜 | 2026年7月〜 |
|---|---|---|
| 民間企業 | 2.5% | 2.7% |
| 国・地方公共団体 | 2.8% | 3.0% |
| 都道府県等の教育委員会 | 2.7% | 2.9% |
公的機関は民間企業よりも高い水準が求められており、社会全体で障害者雇用を推進する姿勢が示されています。
なぜ法定雇用率は段階的に引き上げられてきたのでしょうか。背景には、大きく3つの要因があります。
共生社会の実現に向けた国の方針
障害の有無にかかわらず、誰もが社会の一員として活躍できる「共生社会」の実現が国の重要政策として位置づけられています。
障害者の就労意欲と能力の高まり
就労支援制度の充実により、働く意欲と能力を持つ障害者が増加しています。特に精神障害者の雇用ニーズは急速に拡大しています。
算定対象の拡大
2018年に精神障害者が雇用義務の対象に加わったことで、算定基準が広がり、雇用率の引き上げが実施されています。
厚生労働省は2023年1月の労働政策審議会で、法定雇用率を2.7%まで引き上げることを正式に決定しました。これは段階的に行われ、2024年4月の2.5%、2026年7月の2.7%へと着実に進み、現在に至っています。
法定雇用率は今後も社会情勢に合わせて見直しが続く可能性が高く、企業は中長期的な視点で障害者雇用の体制づくりを進めることが重要です。
「自社の従業員にも障害者手帳を持つ人がいるけれど、法定雇用率のカウント対象になるのだろうか?」と疑問に思う方は多いはずです。
法定雇用率の対象となる障害者には、明確な要件が定められています。さらに、障害の種別や勤務時間によってカウント方法も異なるため、正しく理解しておくことが重要です。
法定雇用率の対象となるのは、原則として以下の3種類の障害者手帳のいずれかを所持している方です。
| 手帳の種類 | 対象となる障害 |
|---|---|
| 身体障害者手帳 | 身体障害者(視覚・聴覚・肢体不自由・内部障害など) |
| 療育手帳(または判定書) | 知的障害者 |
| 精神障害者保健福祉手帳 | 精神障害者(発達障害・高次脳機能障害を含む) |
ポイントは、以下の方々も対象に含まれることです。
カウント対象は原則「手帳の所持」が条件です。
つまり、法定雇用率のカウントには「手帳の所持」(知的障害者は判定書でも可)が条件となります。診断を受けていても手帳を取得していない方は、原則として対象外となる点に注意が必要です。
障害者本人のプライバシーに配慮し、本人の同意を得た上で手帳の所持を確認する必要があります。
障害者のカウント方法は、障害の種別・程度・勤務時間によって異なります。
基本的なカウントルールは以下の通りです。
| 区分 | 週30時間以上(常用) | 週20〜30時間(短時間) | 週10〜20時間(特定短時間) ※令和6年度〜 |
|---|---|---|---|
| 身体障害者 | 1人 | 0.5人 | 算定対象外 |
| 重度身体障害者 | 2人 | 1人 | 0.5人 |
| 知的障害者 | 1人 | 0.5人 | 算定対象外 |
| 重度知的障害者 | 2人 | 1人 | 0.5人 |
| 精神障害者 | 1人 | 1人※特例 | 0.5人 |
このカウントルールには、押さえておきたい3つのポイントがあります。
ポイント1:重度障害者は2倍カウント(ダブルカウント)
重度身体障害者・重度知的障害者は、フルタイム勤務であれば「1人=2人」としてカウントされます。短時間勤務でも「1人=1人」となります。
ポイント2:精神障害者の算定特例
本来、短時間労働者は0.5人としてカウントされますが、精神障害者については当面の間、短時間労働者でも「1人」としてカウントできる特例が設けられています。これは精神障害者の雇用促進と職場定着を支援する目的で導入され、現在も継続されています。
ポイント3:特定短時間労働者の算定
令和6年度から、週10時間以上20時間未満の重度身体障害者・重度知的障害者・精神障害者は、0.5人としてカウントできるようになりました。これにより、これまで算定対象外だった短時間勤務者も雇用率に反映できるようになっています。
特定短時間労働者の算定には例外があります。
就労継続支援A型事業所の利用者は、特定短時間労働者の算定対象外となります。
正確なカウントを行うためには、自社で雇用している障害者の障害種別・等級・勤務時間を一人ひとり丁寧に確認することが重要です。
ここでは、具体的な計算式と従業員数別の早見表、そしてケース別の計算例を紹介します。
法定雇用障害者数(自社が雇用すべき障害者の最低人数)は、次の計算式で求められます。
法定雇用障害者数 = (常用労働者数 + 短時間労働者数 × 0.5) × 法定雇用率
計算結果の小数点以下は切り捨てとなります。
「常用労働者」と「短時間労働者」は次のように定義されます。
| 区分 | 定義 |
|---|---|
| 常用労働者 | 1年を超えて雇用される(または雇用見込みの)、週30時間以上勤務の労働者 |
| 短時間労働者 | 1年を超えて雇用される(または雇用見込みの)、週20時間以上30時間未満勤務の労働者 |
従業員数別・必要雇用人数の早見表
2026年7月以降の2.7%で必要雇用人数を計算したものです。
| 常用労働者数 | 2.7%適用時の必要雇用人数 |
|---|---|
| 40人 | 1人 |
| 50人 | 1人 |
| 80人 | 2人 |
| 100人 | 2人 |
| 120人 | 3人 |
| 150人 | 4人 |
| 200人 | 5人 |
| 300人 | 8人 |
| 500人 | 13人 |
| 1,000人 | 27人 |
※短時間労働者がいない場合の概算。実際は短時間労働者数×0.5を加算して計算
【計算例1】従業員50人(全員常用労働者)の企業の場合
50人 × 2.7% = 1.35人 → 切り捨てで「1人」
→ 2.5%適用時・2.7%適用時ともに、1人以上の障害者雇用が必要
【計算例2】算定基礎労働者数120人(常用100人+短時間労働者40人)の企業の場合
{100人 +(40人 × 0.5)} × 2.7% = 120人 × 2.7% = 3.24人 → 切り捨てで「3人」
→ 2.5%適用時・2.7%適用時ともに、3人以上の障害者雇用が必要
【計算例3】従業員200人(全員常用労働者)の企業の場合
200人 × 2.7% = 5.4人 → 切り捨てで「5人」
→ 2.5%適用時・2.7%適用時ともに、5人以上の障害者雇用が必要
計算時の注意点
自社の従業員数が引き上げのボーダーライン上にある場合は、特に注意が必要です。たとえば従業員37人の企業は対象外ですが、増員して37.5人を超えれば即座に雇用義務が発生します。
採用や組織変更のタイミングで、自社の法定雇用障害者数を再計算する習慣をつけておきましょう。
「もし法定雇用率を達成できなかったら、どうなるのだろう?」
経営者や人事担当者にとって、最も気になるのがこの点ではないでしょうか。法定雇用率は単なる目標ではなく、未達成の場合には具体的なペナルティが課される法的義務です。
未達成企業に課される主なペナルティは、以下の3つです。
それぞれのペナルティについて、詳しく見ていきましょう。
法定雇用率を下回っている企業のうち、常用労働者100人超の企業は、障害者雇用納付金を支払う義務が生じます。
納付金の金額は次の通りです。
| 企業規模 | 不足1人あたりの納付金額 |
|---|---|
| 常用労働者100人超 | 月額50,000円 |
たとえば、不足人数別の年間負担額をシミュレーションすると、以下のようになります。
| 不足人数 | 月額納付金(100人超企業) | 年間納付金 |
|---|---|---|
| 1人 | 50,000円 | 600,000円 |
| 3人 | 150,000円 | 1,800,000円 |
| 5人 | 250,000円 | 3,000,000円 |
| 10人 | 500,000円 | 6,000,000円 |
不足人数が増えるほど、企業の納付金は膨らんでいきます。
ここで注意すべきポイントがあります。障害者雇用納付金は「罰金」ではなく、「企業間の経済的負担を調整する仕組み」として位置づけられています。 障害者雇用には設備改修や職場環境整備などが必要になるため、雇用していない企業から徴収した納付金を、達成企業の調整金や報奨金の原資にしているのです。
逆に、法定雇用率を超えて障害者を雇用している企業には、超過1人につき以下の支給があります。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 調整金 | 常用労働者100人超の企業 / 月額29,000円(超過1人あたり) |
常用雇用労働者100人以下の事業主については、法令で定める一定数を超えて障害者を雇用し、所定の要件を満たした場合、申請により報奨金が支給されます。
つまり、納付金制度は「未達成企業からの徴収」と「達成企業への支給」の両面で機能しているのです。
納付金を支払っても、雇用義務は免除されません。
納付金を払い続けても法定雇用率の達成義務は残り、行政指導や企業名公表のリスクも回避できません。根本的な解決には雇用の実現が必要です。
法定雇用率を大きく下回っている企業に対しては、ハローワークから「障害者の雇入れに関する計画」の作成命令が出されます。
雇入れ計画作成命令の対象となる主な基準は次の通りです。
雇入れ計画の流れは以下の通り進みます。
企業は、計画期間中、ハローワークから助言や指導を受けながら、障害者雇用の改善に取り組むことになります。担当者の負担は大きく、計画が予定通り進まない場合は次の段階へと進むことになります。
行政指導を受ける前に雇用を進めておくことが重要です。
雇入れ計画の実施を怠り、特別指導にも従わない企業は、厚生労働大臣によって企業名が公表されます。
厚労省のサイト上で公表された場合、企業に与える影響は計り知れません。
| 影響範囲 | 具体的なリスク |
|---|---|
| ブランドイメージ | 「障害者雇用に消極的な企業」というレッテルが貼られる |
| 採用活動 | 求職者からの応募減少、優秀な人材の流出 |
| 取引関係 | 取引先からの契約見直し、ESG重視企業との取引停止 |
| 金融機関 | 融資条件の悪化、ESG投融資からの除外 |
| 株主・投資家 | 株価への悪影響、機関投資家からの議決権行使 |
| メディア報道 | ネガティブ報道による更なる風評被害 |
近年はESG経営やD&I推進が重視されていることもあり、企業名公表は、企業イメージや採用活動、取引関係に影響を与える可能性があります。 厚生労働省の「令和7年 障害者雇用状況の集計結果」によると、法定雇用率未達成企業のうち、不足数が0.5人または1人の企業は64.0%でした。
「うちは製造業だから、機械や設備の関係で障害のある方の雇用が難しい...」 「鉱業や建設業では、安全面の制約で雇える障害者が限られるのでは?」
このような事情を抱える特定の業種に対しては、「除外率制度」という雇用義務の軽減措置が設けられています。
ただし、この制度は段階的に縮小される方向で見直しが進んでおり、2025年4月には大きな変更が行われました。自社が対象業種に該当する場合は、制度の概要と最新の変更内容を正しく理解しておくことが重要です。
除外率制度とは、障害者の就業が一般的に困難と認められる業種について、雇用すべき障害者数の算定基礎となる労働者数から、一定の割合を除外できる制度です。
簡単に言えば、「業種特性上、障害者雇用が難しい職場では、雇用義務の対象となる労働者数を一定割合減らしてカウントしてよい」という仕組みです。
たとえば、除外率20%の業種で常用労働者が500人いる場合、計算は次のようになります。
算定基礎となる労働者数 = 500人 ×(1 − 0.20) = 400人
法定雇用障害者数 = 400人 × 2.7% = 10.8人 → 切り捨てで「10人」
通常であれば「500人 × 2.7% = 13.5人 → 13人」が必要ですが、除外率20%が適用されることで、必要な障害者雇用数は10人に軽減されます。
ただし、除外率制度は「ノーマライゼーション」の理念に反する措置であるとして、段階的な廃止に向けて縮小が進められています。
2025年4月1日から、除外率が一律で10ポイント引き下げられました。
これは、障害者の就業機会を拡大し、共生社会の実現を進めるための措置です。除外率制度はもともと2002年の改正で「段階的廃止」の方針が決まっており、これまでに何度か引き下げが実施されてきました。
過去の主な引き下げの推移は以下の通りです。
| 改正時期 | 引き下げ幅 |
|---|---|
| 2004年4月 | 一律10ポイント引き下げ |
| 2010年7月 | 一律10ポイント引き下げ |
| 2025年4月 | 一律10ポイント引き下げ |
引き下げによる影響は、対象業種の企業にとって決して小さくありません。
たとえば、除外率20%だった鉄鋼業の企業を例にとると、以下のような変化が起こります。
【鉄鋼業・常用労働者500人の企業の場合】
2025年3月まで:除外率20% 500人×(1−0.20)=400人 400人×2.5%=10人
2025年4月~2026年6月:除外率10% 500人×(1−0.10)=450人 450人×2.5%=11.25人 → 11人
このように、除外率の引き下げにより、これまで以上に多くの障害者を雇用する必要が生じる企業が出てきます。
さらに見落としやすいポイントとして、2026年7月の法定雇用率2.7%への引き上げと組み合わさることで、影響はさらに大きくなっています。
【鉄鋼業・常用労働者500人の企業の場合】2026年7月以降の試算
算定基礎労働者数 = 500人 ×(1 − 0.10) = 450人
法定雇用障害者数 = 450人 × 2.7% = 12.15人 → 切り捨てで12人
つまり、除外率引き下げと法定雇用率引き上げという2つの変化が重なっているため、対象業種の企業は早急な対応が必要です。
自社が除外率制度の対象業種に該当する場合は、以下のチェックを行いましょう。
除外率の引き下げは段階的な措置であり、将来的な廃止が決まっています。「業種特性上、障害者雇用は難しい」という前提に頼るのではなく、業務内容の見直しや特例子会社の立ち上げの検討、支援会社の活用など、対応手法を検討する時期に来ていると言えるでしょう。
「法定雇用率の計算方法は分かったけれど、実際にどう進めればいいのだろう?」
障害者雇用を進める際は、まず「どのような体制で雇用するか」を決めることから始まります。
自社単独で雇用するのが基本ですが、企業グループを持つ企業には、グループ全体で障害者雇用を推進できる特例制度も用意されています。
【障害者雇用の3つの体制】
| 体制 | 導入までの期間 | 初期コスト | 運用負担 | こんな企業に向く |
|---|---|---|---|---|
| ①自社で雇用する | 短い | 低 | 中〜高 | 規模を問わずすべての企業 |
| ②特例子会社を設立する | 長い | 高 | 高 | 大企業・グループ会社 |
| ③企業グループ算定特例を活用する | 中程度 | 中 | 中 | グループ企業を持つ中堅〜大企業 |
それぞれの体制について詳しく見ていきましょう。
最も基本的な体制が、自社で直接障害者を雇用する方法です。
特別な制度の申請や子会社の設立を必要とせず、既存の組織の中で障害者を採用し、受け入れます。企業規模を問わず、すべての企業が取れる選択肢です。
自社雇用で整えるべき4つのポイント
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 業務設計 | 障害特性に合わせた業務の割り当て |
| 受け入れ体制 | 職場環境の整備、指導担当者の配置 |
| 社内理解 | 全社員への障害者雇用に関する理解促進 |
メリット
デメリット
自社雇用は、すべての企業にとっての出発点となる体制です。次に紹介する特例制度も、自社雇用と併用することが一般的です。
特例子会社とは、障害者雇用の促進を目的として設立され、一定の要件を満たすことで厚生労働大臣の認定を受けた子会社のことです。
認定を受けることで、特例子会社で雇用されている障害者を親会社などの実雇用率の算定に含めることができます。
事業内容は企業によって異なり、親会社から委託された業務を担うケースが多く見られますが、独自の事業を展開する特例子会社も存在します。
特例子会社の主な認定要件
メリット
デメリット
特例子会社の設立は、従業員規模が大きく、グループ経営を行う大企業向けの選択肢です。設立までに通常1〜2年以上の準備期間が必要となります。
企業グループ算定特例とは、親会社が一定要件を満たす場合に、グループ会社の労働者を合算して実雇用率を算定できる制度です。
特例子会社を設立しなくても、グループ全体で障害者雇用を推進できる制度です。
制度の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 親会社と一定要件を満たす関係子会社 |
| 効果 | グループ全体の労働者数・障害者雇用数を合算して算定 |
| 認定要件 | 親会社が関係会社の意思決定機関を支配していることなど |
メリット
デメリット
企業グループ算定特例は、すでにグループ企業を持ち、その中で連携して障害者雇用を推進できる中堅〜大企業に向いた制度です。
なお、中小企業向けには「事業協同組合等算定特例」という同様の制度もあります。これは中小企業が事業協同組合を設立し、組合全体で雇用した障害者を各組合員企業の実雇用率に算定できる制度です。地域や業界の協同組合で連携できる企業は、こちらの活用も検討する価値があります。
雇用の体制が決まったら、次に検討すべきは、「どうやって障害者を雇用するか」という具体的な方法です。
障害者の採用ルートには、公的機関の活用から民間サービス、教育機関との連携まで、複数の選択肢があります。それぞれ特徴が異なるため、自社に合った方法を選ぶことが重要です。
【採用手法の比較】
| 採用方法 | 採用までの期間 | 特徴 |
|---|---|---|
| ①ハローワーク | 中程度 | 公的機関、地域密着型 |
| ②人材紹介サービス | 短い | 候補者の紹介、企業側の負担軽減 |
| ③就労移行支援事業所 | 中〜長い | 訓練を受けた候補者、実習から採用へ |
| ④特別支援学校 | 中〜長い | 若手人材、育成型採用に適する |
それぞれの採用方法を詳しく見ていきましょう。
ハローワーク(公共職業安定所)は、障害者雇用における最も基本的な採用ルートです。
全国のハローワークには障害者専門の窓口が設置されており、無料で求人を掲載できます。
ハローワーク活用の特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 費用 | 無料 |
| 求人掲載 | 障害者専用求人として掲載可能 |
| サポート | 専門の職業相談員によるマッチング支援 |
| 併用制度 | 障害者トライアル雇用、各種助成金の案内 |
メリット
デメリット
ハローワークは、負担を抑えて障害者雇用を始めたい企業に適した選択肢です。多くの企業が最初に活用する採用ルートといえます。
障害者雇用に特化した人材紹介サービスを利用することで、自社の条件に合った候補者の紹介を受けられます。
人材紹介サービスの特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 費用 | 成功報酬型が一般的 |
| 候補者 | 自社の条件に合った人材 |
| サポート | 求人票作成、面接調整、条件交渉の代行 |
| 期間 | 短期間での採用が可能 |
メリット
デメリット
人材紹介サービスは、障害者雇用の専門知識を持つ第三者の視点を取り入れながら採用を進めたい企業に適した方法です。
就労移行支援事業所は、障害のある方に就労に向けた訓練を提供する福祉サービス事業所です。
事業所と連携することで、職業訓練を受けた候補者と出会える可能性が高まります。
連携から採用までの流れ
メリット
デメリット
就労移行支援事業所との連携は、ミスマッチを避け、定着率の高い採用を実現したい企業に適した方法です。
特別支援学校の高等部では、生徒が一般就労を目指して低学年から職場実習を行っています。
学校と連携することで、若手人材の採用と育成を長期的な視点で進められます。
特別支援学校との連携の特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 高等部の生徒 |
| 実習 | 在学中から複数回の職場実習を実施 |
| 採用時期 | 卒業時の新卒採用が中心 |
| サポート | 進路指導担当教員によるフォロー |
メリット
デメリット
特別支援学校との連携は、長期的な視点で人材を育成したい企業に適した方法です。
ここまで、障害者雇用の体制と採用方法について解説してきました。
しかし、「特例子会社の設立コストは負担できない」「グループ企業がない」「採用したくても応募が来ない」「採用しても定着しない」といった課題を抱える中小企業にとっては、より実践的な解決策が必要です。
「採用しても応募が来ない」「すぐに辞めてしまう」「専任の人事担当者がいない」「障がい者雇用の体制を整えるのが難しい」
こうした課題への対応策のひとつとして、農園を活用した障がい者雇用支援サービスを活用する企業も増えています。株式会社エスプールプラスが提供する「わーくはぴねす農園」も、その代表的なサービスのひとつです。
これまで全国の750社以上の企業に利用され、5,200名以上の障がいのある方に働く場所を提供してきた、多くの企業に導入されているサービスです。
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「2026年7月の引き上げを受けて、何から手をつければいいのか分からない」
そう感じている人事・労務担当者の方に向けて、障害者雇用を達成するための5つのステップを解説します。
今すぐ動き出すことが、安定した雇用体制を築くカギとなります。
それぞれのステップを詳しく見ていきましょう。
最初に行うべきは、2026年7月以降の法定雇用率2.7%に基づいて、自社が雇用すべき障害者数を再計算することです。
これまで対象外だった企業も、2026年7月からは「従業員37.5人以上」が対象です。「うちは関係ない」と思い込まず、必ず再計算を行いましょう。
再計算の手順
【再計算が特に必要な企業】
再計算は、今すぐ行うことをおすすめします。早く把握するほど、対応のための時間的余裕が生まれます。
次に、自社の現状の実雇用率を算出し、目指すべき法定雇用率とのギャップを把握します。
ギャップ把握の例
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 常用労働者数 | 200人(短時間労働者なし) |
| 現在の障害者雇用数 | 3人 |
| 法定雇用障害者数(2.7%適用時) | 5人 |
| 不足人数 | 2人 |
| 月額納付金(未達成の場合) | 100,000円 |
| 年間納付金(未達成の場合) | 1,200,000円 |
このように、「ギャップ何人分」「年間いくら」と数字で可視化することで、対応の優先度や予算確保の判断がしやすくなります。
ギャップが0または1人の場合は、追加採用1〜2人で達成可能な状況です。一方、ギャップが3人以上ある場合は、より戦略的なアプローチが必要となります。
ギャップを把握したら、自社に合った達成アプローチを選定します。
ここまでで紹介してきた4つのアプローチ(直接雇用、就労支援機関連携、特例子会社、算定特例)に加えて、農園を活用した障害者雇用サービスも選択肢の1つです。
アプローチ選定の判断軸
| 判断軸 | 該当する場合の推奨アプローチ |
|---|---|
| 採用ノウハウあり、業務割り当て可能 | ハローワーク・自社媒体での採用 |
| 育成型採用に取り組める時間がある | 就労支援機関との連携採用 |
| 大企業・グループ会社、設立コスト負担可能 | 特例子会社の設立 |
| グループ企業を活用できる | 企業グループ算定特例 |
| 採用難・定着難・業務割り当て困難 | 農園を活用した障害者雇用サービス |
「自社の状況だと、どのアプローチが最適か判断できない」という場合は、複数のアプローチを並行して進めることも可能です。達成アプローチの選定は、経営層・人事部門・現場部門の三者で合意を取ることが重要です。一部門だけで決めると、後の体制構築段階で進まなくなる可能性があります。
アプローチが決まったら、実際の採用活動と受け入れ体制の構築を進めます。
採用活動の主なタスク
受け入れ体制構築の主なタスク
| 領域 | 主なタスク |
|---|---|
| 物理的環境 | 職場のバリアフリー化、設備調整 |
| 業務設計 | 障害特性に応じた業務割り当て、マニュアル整備 |
| 人的サポート | 担当者・指導員の配置、ジョブコーチ活用 |
| 社内理解 | 全社員向けの障害者雇用研修、配慮事項の周知 |
| 制度整備 | 通院配慮、合理的配慮、相談窓口の設置 |
活用したい公的支援
採用と体制構築は並行して進めるのがポイントです。「採用してから環境を整える」のではなく、「環境を整えながら採用を進める」ことで、採用後の早期離職を防げます。
法定雇用率の対象企業は、毎年6月1日時点の障害者雇用状況をハローワークに報告する義務があります。これが通称「ロクイチ報告」です。
ロクイチ報告の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 報告日 | 毎年7月15日まで(6月1日時点の状況を報告) |
| 報告先 | 事業所を管轄するハローワーク |
| 報告内容 | 雇用障害者数、障害種別、勤務時間、実雇用率など |
| 対象 | 法定雇用率の対象企業(従業員40人以上、2026年7月以降は37.5人以上) |
ロクイチ報告を行うための準備
ロクイチ報告は単なる事務作業ではなく、自社の障害者雇用の現状を毎年確認する重要な機会です。報告内容に基づいて、翌年度の雇用計画を見直していきましょう。
法定雇用率の達成は、一度クリアして終わりではありません。法定雇用率は今後も引き上げが続く可能性が高いため、継続的にモニタリングと改善を行う体制を整えることが重要です。
5つのステップを順に進めていけば、引き上げにも対応できる体制が整います。「何から手をつければいいか分からない」という段階を脱して、まずはステップ1の再計算から始めてみてください。
A. 現在(2026年7月〜)の民間企業の法定雇用率は2.7%です。
事業主の区分別の法定雇用率は以下の通りです。
| 区分 | 法定雇用率(2026年7月時点) |
|---|---|
| 民間企業 | 2.7% |
| 国・地方公共団体 | 3.0% |
| 都道府県等の教育委員会 | 2.9% |
民間企業では、従業員37.5人以上の事業主に1人以上の障害者雇用義務があります。
A. いいえ、納付金を支払っても雇用義務は免除されません。
障害者雇用納付金は「罰金」ではなく、障害者を雇用する企業とそうでない企業との間で、経済的負担を調整するための制度として位置づけられています。 納付金を払い続けても、以下のような状況は変わりません。
法定雇用率の達成義務は引き続き残る
ハローワークからの行政指導の対象となる可能性がある
改善が見られない場合、企業名公表のリスクが残る
取引先や金融機関からの評価低下リスクも継続
障害者雇用納付金は、事業主間の経済的負担を調整するための制度です。納付しても法定雇用率以上の障害者を雇用する義務が免除されるわけではありません。早期に法定雇用率を達成することが、最善の選択となります。
A. 民間企業で従業員37.5人以上が障害者雇用の対象となったのは、2026年7月からです。
対象企業の規模の変遷は以下の通りです。
| 適用時期 | 法定雇用率 | 対象企業の規模 |
|---|---|---|
| 〜2024年3月 | 2.3% | 従業員43.5人以上 |
| 2024年4月〜2026年6月 | 2.5% | 従業員40人以上 |
| 2026年7月〜 | 2.7% | 従業員37.5人以上 |
A. 民間企業の法定雇用率が3%になる時期は、現時点では正式に決定されていません。
ただし、参考情報として以下の動向があります。
民間企業の法定雇用率が3%となる時期は、現時点では決定されていません。今後の労働政策審議会や厚生労働省の発表を確認する必要があります。
A. 常用労働者と短時間労働者の定義は、以下の通りです。
| 区分 | 定義 |
|---|---|
| 常用労働者 | 1年を超えて雇用される(または雇用見込みの)、週30時間以上勤務の労働者 |
| 短時間労働者 | 1年を超えて雇用される(または雇用見込みの)、週20時間以上30時間未満勤務の労働者 |
| 特定短時間労働者 | 1年を超えて雇用される(または雇用見込みの)、週10時間以上20時間未満勤務の労働者(令和6年度〜) |
法定雇用障害者数の計算では、これらの労働者数を以下のように合算します。
算定基礎労働者数 = 常用労働者数 + 短時間労働者数 × 0.5
雇用形態別のカウントを正確に行うことが、法定雇用率の正しい算定の第一歩となります。
A. 法定雇用率は「達成すべき目標値」、実雇用率は「企業が実際に達成している実績値」です。
両者の違いを整理すると以下の通りです。
| 項目 | 法定雇用率 | 実雇用率 |
|---|---|---|
| 性質 | 国が定めた義務(目標値) | 企業の実績値 |
| 数値 | 2.7%(2026年7月〜) | 企業ごとに異なる |
| 計算方法 | 国が告示する一定の率 | (障害者数 ÷ 算定基礎労働者数)×100 |
| 役割 | 企業が達成すべき基準 | 自社の現状把握 |
法定雇用率を上回る実雇用率を維持することが、企業に求められる障害者雇用の達成状態となります。なお、令和7年(2025年)時点での民間企業全体の実雇用率は2.41%で、当時の法定雇用率2.5%にはわずかに届いていない状況です。
A. 国・地方公共団体の法定雇用率は2026年7月以降は3.0%です。
公務員の区分別の法定雇用率は以下の通りです。
| 区分 | 2024年4月〜 | 2026年7月〜 |
|---|---|---|
| 国・地方公共団体 | 2.8% | 3.0% |
| 都道府県等の教育委員会 | 2.7% | 2.9% |
公的機関は民間企業よりも高い水準が求められており、社会全体で障害者雇用を推進する役割を担っています。
A. 医療機関(医療業)は、除外率制度の対象業種に該当するため、雇用義務が一部軽減されます。
医療業の除外率は、2025年4月以降は20%(従来30%から10ポイント引き下げ)となっています。
具体的には、医療機関では算定基礎労働者数の20%を除外して法定雇用障害者数を計算できます。例えば、常用労働者500人の医療機関の場合、以下のような計算になります。
算定基礎労働者数 = 500人 ×(1 − 0.20) = 400人
法定雇用障害者数 = 400人 × 2.7% = 10.8人
ただし、除外率は今後も段階的な引き下げが予定されているため、医療機関も中長期的には他業種と同水準の障害者雇用が求められるようになる見通しです。
A. 法定雇用率は、厚生労働省の公式サイトおよび独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)のサイトで公表されています。
主な情報源は以下の通りです。
| 情報源 | 内容 |
|---|---|
| 厚生労働省 | 法定雇用率の最新動向、改正情報、リーフレット |
| JEED公式サイト | 障害者雇用率制度の詳細解説、申請書類 |
| 厚生労働省「障害者雇用状況の集計結果」 | 毎年の達成企業割合、実雇用率の動向 |
また、毎年6月1日時点の障害者雇用状況集計結果は、厚生労働省から例年12月頃に公表され、翌年の障害者雇用施策の基礎資料となっています。最新情報は公式サイトで定期的に確認することをおすすめします。
A. 法定雇用率の達成は、ペナルティの回避だけでなく、企業経営に多くのメリットをもたらします。
主なメリットは以下の通りです。
法定雇用率の達成は「義務だから守る」というネガティブな取り組みではなく、企業価値を高める戦略的な経営判断として位置づけることが重要です。
本記事では、障害者雇用の法定雇用率について、最新動向から具体的な対応ステップまで詳しく解説しました。重要なポイントを最後に整理します。
【記事のポイント】
2026年7月の引き上げはすでに行われました。まずは自社の法定雇用障害者数の再計算から始めましょう。
特に、これまで対象外だった従業員37.5〜43人台の企業は、新たに雇用義務が発生します。早めの準備が、ペナルティ回避と安定した障害者雇用体制構築のカギとなります。
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