「うちの会社も、いよいよ障害者雇用の対象になるのか...」
「法定雇用率って今、何%なんだろう?2026年7月に変わるって本当?」
「未達成だとペナルティがあるって聞いたけど、具体的に何が起きるの?」
こうした不安や疑問を抱えている人事・労務担当者の方は多いのではないでしょうか。
2024年4月に2.5%、2026年7月に2.7%へと、障害者の法定雇用率は段階的に引き上げられています。これにより、これまで対象外だった従業員37.5人以上の企業も、新たに障害者雇用の義務を負うことになります。
未達成の状態が続く場合には、障害者雇用納付金の納付に加え、ハローワークによる指導や雇入れ計画の作成命令の対象となることがあります。さらに、改善が見られない場合には、最終的に企業名が公表される可能性もあります。しかし、適切な知識と早めの対応があれば、決して達成は不可能ではありません。
なお、法定雇用率の達成に向けて障害者雇用を促進していくにあっては、雇用環境の整備と定着支援の両面が重要です。エスプールプラスでは、企業向け貸し農園「わーくはぴねす農園」を通じて、障がい者の採用から定着までを伴走サポートしており、約730社の導入実績と、障がい者定着率92%を実現しています。導入相談も受け付けているので、まずはお問い合わせください。
障害者雇用率制度とは、民間企業や国・地方公共団体に対して一定以上の割合で障害者を雇用するよう義務づけた制度のことです。
労働市場において、障害者は一般の就労者に比べて雇用機会を得づらくなっています。そこで、一定割合の障害者の雇用を義務づけることで障害者の雇用機会を確保できるよう、障害者雇用率制度が導入されています。
法定雇用率とは、企業や国・地方公共団体が達成を義務付けられている、従業員全体に占める障害者の割合のことです。対象となる障害者数と労働者数などを考慮し、以下の計算式で算出されます。
出典:厚生労働省「障害者雇用率制度について」
法定雇用率は事業主の区分によって異なりますが、2025年12月現在の法定雇用率は次のようになっています。
法定雇用率は労働市場や経済状況を反映するため、およそ5年毎に引き上げられる傾向があります。民間企業では、2013年に2.0%、2018年4月に2.2%、2021年3月からは2.3%と、0.1~0.2%ずつ引き上げがおこなわれてきました。
2023年の見直しでは、法定雇用率が2.7%まで引き上げられることが決まりました。この引き上げは2回に分けて段階的におこなわれることになっています。すでに2024年4月に2.5%に引き上げられており、2026年7月に2.7%に引き上げられる予定です。
2025年12月現在の民間企業の法定雇用率は2.5%ですが、これは従業員を40人以上雇用している事業主に対して適用されます。
2026年7月に法定雇用率が2.7%になると、雇用義務のある企業は今より増え、従業員を37.5人以上雇用するすべての企業が雇用義務の対象となる見込みです。
すでに解説したとおり、法定雇用率とは、企業や国・地方公共団体が達成すべき障害者の雇用率です。それに対し、企業や国・地方公共団体が実際に障害者を雇用している割合を実雇用率といいます。2025年12月現在の法定雇用率が2.5%なので、実雇用率が2.5%以上になるように障害者を雇用しないといけないということです。
実雇用率は、常用労働者・短時間労働者全体の人数と、障害者である常用労働者・短時間労働者の人数から求めることができます。
障害者の雇用義務がある企業が実際の雇用義務数を調べる際は、法定雇用率を利用し以下の式で求められます(小数点以下切り捨て)。
また、実雇用率は以下の式で求められます。
企業は雇用義務数以上の障害者を雇用し、実雇用率が法定雇用率を上回るように努めなければなりません。
障害者雇用に関する計算の際、労働者の人数は労働時間によってカウントの方法が異なります。基本的には、1年以上継続して雇用されており1週間の所定労働時間が20時間以上の労働者を常用労働者として1名につき1カウントしますが、そのうち労働時間が週20時間以上30時間未満の短時間労働者は短時間労働者として区別し、労働者1名につき0.5カウントとして算定します。
また、障害者に交付される手帳の判定で障がいの程度が重度と判定された重度身体障害者と重度知的障害者については、障害者雇用人数のダブルカウントが適用されるため、重度身体/知的障害者の雇用1名につき2名分カウントされます。その障害者が30時間以上の勤務なら1カウント×2で2カウント分、20時間以上30時間未満の勤務なら0.5カウント×2で1カウント分となります。
精神障害者については等級によるカウントの違いはありませんが、短時間労働の精神障害者の算定特例が設けられており、週20時間以上30時間未満の短時間労働であっても雇用1人につき1カウントとして算定されます。
2024年4月からは、障がい上の理由などにより週20時間に満たない時間で働く障害者について、一定の条件を満たした場合に雇用人数としてカウントできるようになりました。具体的には、週10時間以上20時間未満で働く重度知的障害者・重度身体障害者・精神障害者を特定短時間労働者とし、1人につき0.5カウントとして算定できます。
例えば、常用労働者50人、短時間労働者100人の企業における障害者雇用義務数は以下の通りです。
障害者雇用義務数 = (50 + 100 × 0.5) × 2.5% = 2.5人
この企業が常用労働の障害者を1人、短時間労働の障害者を4人雇用している場合の実雇用率は以下の通りです。
実雇用率 = (1 + 4 × 0.5) ÷ (50 + 100 × 0.5) = 3.0%
短時間労働の障害者は1人につき0.5カウントなので、この企業は障害者を3人(1+4×0.5)雇用していることになります。障害者雇用義務数が2.5人なので、雇用義務を上回っていることがわかります。また、実雇用率は3.0%なので、この点からも法定雇用率2.5%を上回って雇用していることを確認できます。
障害者雇用の労働者数カウント方法について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
障害者雇用の等級によるカウント方法の違いとは?
実雇用率を計算する際は以下の点に注意しましょう。
常用労働者とは以下の労働者を指します。
雇用率を計算する際、単に常用労働者という場合は、上記の労働者のうち1週間の所定労働時間が30時間以上の労働者を指します。
雇用率の計算の際、短時間労働者とは、常用労働者のうち週所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者を指します。短時間労働者は1人につき0.5カウントなので、人数に0.5をかけて計算します。
雇用障害者数を数えるときにはカウント方法に注意しましょう。障害者のカウント方法については前項で説明しましたが、特に注意が必要なのは以下の点です。
複数の事業所がある場合、実雇用率は企業全体で計算することが可能です。特例子会社がある場合には、子会社と親会社の雇用人数を合算できます。また、常用労働者で所定労働時間を満たしていれば、勤務形態に関わらずカウントすることができ 、テレワークで働く障害者も実雇用率に加算できます。
除外率制度とは、障害者の就業が一般的に難しいと認められる業種について、障害者の雇用義務を軽減することを目的に制定された制度です。雇用する労働者数を計算する際、除外率に相当する労働者は控除されます。
なお、この制度はノーマライゼーションの観点から廃止されましたが、段階措置としてしばらくの間、除外率設定業種ごとに除外率を設定するとともに、廃止の方向で徐々に除外率を引き下げることとされています。
直近では、2023年1月の労働政策審議会での議論を経て、除外率の引き下げが決まり、2025年4月から除外率が設定されているすべての業種について、一律10%ずつ引き下げがおこなわれました。これにより、それまで除外率の対象であった除外率が10%以下の業種は除外率の対象外になりました。また、除外率が高い業種は「船員等による船舶運航等の事業」で、除外率70%です。
今後も段階的な引き下げ・廃止が実施される予定ですが、具体的なスケジュールは未定となっています。
厚生労働省が発表した「令和7年 障害者雇用状況の集計結果」によると、民間企業に雇用されている障害者の数は70万4,610.0人で前年より4.0%増加し、過去最高を記録しています。
障害者の実雇用率は2.41%、法定雇用達成企業の割合は46.0%となっています。
令和7年の法定雇用率未達成企業は6万5,033社あり、そのうち63.9%(4万1,544社)は不足数が0.5人または1人と、法定雇用率達成間近の企業が過半数を占めています。
また、障害者を1人も雇用していない企業は3万7,262社であり、未達成企業の57.3%を占めている状況です。
出典:厚生労働省|「令和7年 障害者雇用状況の集計結果」
法定雇用率の引き上げは定期的におこなわれています。
2021年3月、2.2%から2.3%への引き上げがおこなわれました。本来は1月に実施予定だったものが、新型コロナウイルス感染症の流行の影響で2ヵ月後ろ倒しの施行となりました。
その後、第123回労働政策審議会障害者雇用分科会にて、法定雇用率を2.7%まで引き上げることが決まりました。事業主の負担も踏まえ、段階的な引き上げがおこなわれています。
第一段階の引き上げは2024年4月1日に実施され、法定雇用率は0.2ポイント上乗せの2.5%になりました。これにより、従業員数40.0人以上のすべての事業主に適用されます。
2026年7月1日にはさらに引き上げ、法定雇用率は2.7%になる予定です。これが実施されると、障害者の雇用義務は従業員数37.5人以上のすべての事業主にまで対象が拡大され、それまで雇用の義務がなかった事業主も対応を求められることになります。
参照:厚生労働省|事業主のみなさまへ 障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について
法定雇用率の引き上げが決定した2023年1月の第123回労働政策審議会障害者雇用分科会では、法定雇用率以外でも以下のような点が変更されました。
参照:厚生労働省|労働政策審議会(障害者雇用分科会)
参照:厚生労働省|第123回 労働政策審議会障害者雇用分科会 議事次第
企業にとって、障害者を雇用することは、法定雇用率達成以上のメリットがあるのです。その大きなメリットを4つご紹介します。
障害者雇用に積極的に取り組んでいる企業には、社会的責任を果たす企業としてよい印象を持たれます。例えば、ユニクロを経営している株式会社ファーストリテイリングでは、1店舗につき1名以上の障害者雇用を目標として掲げ、その目標をほぼ達成しています。障害者雇用率は4.89%と高水準で、これを公表することで企業ブランディング向上にもつながっています。
社内で多様な人材がともに働き活躍することで、それまでになかった新しいアイディアや価値の創出に結びつきます。社内の多様性が促進されれば、人材不足の解消や組織の活性化にもつながり、企業の長期成長を後押しします。
障害者の雇用に対して必要な措置をおこなった場合、障害者雇用納付金制度にもとづき助成金が支給されます。
具体的には、作業施設などの整備に関する費用の一部を助成する障害者作業施設設置等助成金、障害者福祉施設設置等助成金や、雇用管理のために必要な介助などをおこなった場合に支給される障害者介助等助成金などがあります。これらを活用することで、費用の負担を軽減しながら環境整備に取り組めます。
厚生労働省は、障害者雇用の促進のため、特に積極的に取り組んでいる中小企業を優良企業として認定する、もにす認定制度と呼ばれる制度を設けています。もにす認定を受けると以下のようなメリットが得られます。
もにす認定は、単に優良な取り組みをアピールできるだけでなく、企業の安定的な経営にも役立ちます。
参照:厚生労働省|障害者雇用に関する優良な中小事業主に対する認定制度(もにす認定制度)
今まで障害者を雇用したことのない企業にとって、障害者雇用を始めるハードルは高いでしょう。しかし、だからといって障害者雇用の努力をせず、法定雇用率の未達成が続いてしまうと、さまざまなリスクが生じてしまいます。
労働者が100名以上の民間企業で法定雇用率が未達成の場合、未達成の人数に応じた納付金を支払わなくてはなりません。具体的には、法定雇用障害者数に対して不足している障害者数1人あたり月額5万円を納付します。これは障害者雇用に関する企業間の平等性を保つことを目的としており、集められた納付金は障害者雇用調整金や報奨金、各種助成金の財源となっています。
納付金については企業向けのこちらの記事もご覧ください。
参照:厚生労働省|障害者雇用納付金制度の概要
企業は毎年6月1日に障害者の雇用状況をハローワークに報告することになっています。これを「ロクイチ報告」とよびます。この報告をもとに、以下の基準のいずれかに該当する企業には、ハローワークから障害者雇入れ計画作成命令が発出される場合があります。
<障害者雇入れ計画の作成発出基準>
障害者雇入れ計画作成命令が発出されたら、企業は翌年の1月1日から2年間の障害者雇入れ計画を作成しなければなりません。作成後は計画に基づいて障害者の雇入れを進める必要がありますが、計画を怠っていると判断された場合などには、ハローワークから計画の適正実施勧告が出されます。
さらに雇入れが進まない場合、労働局と厚生労働省による9ヵ月間の特別指導がおこなわれ、特別指導を受けてもなお改善が見られない場合は、厚生労働省のホームページに障害者雇用率未達成の企業として企業名が掲載される可能性があります。
一度企業名が公表されると、その後障害者雇用が進んだとしても過去のデータとして残り続けます。社名検索で上位に表示されてしまう恐れもあるなど、長期にわたって会社のイメージダウンに影響を及ぼすことがあります。
納付金の支払いは経済的負担になるうえ、企業名の公表は取引先や関係企業に対して大きくマイナスのイメージを植え付けるものです。そうした意味でも、企業は障害者雇用に向けて積極的に取り組む必要があるのです。
納付金や障害者雇用義務違反についてはこちらの記事もご覧ください。
雇用義務があるにも関わらず障害者の採用が進まず、何から始めればいいのかわからないという事業主の方もいらっしゃるでしょう。
ここでは、障害者雇用を進める際に効果的な方法を4つご紹介します。
障害者雇用に取り組む際、最初の相談先として有力なのがハローワークです。
ハローワークでは、障害者雇用全般に関する相談を受け付けており、雇用に向けたさまざまな支援制度や助成金制度などの紹介も受けられます。また、求職中の障害者へ向けた求人票の掲載も可能で、障害者雇用に関する総合的なサポートを受けることができます。
障害者雇用においても、一般的な採用活動と同様、転職サイトに求人を出すことは効果的な方法です。
特に、障害者雇用に特化した求人サイトに掲載すると、仕事を探している障がいのある方にピンポイントで情報を届けることができます。
なお、一般的な求人サイトでも障害者雇用の求人を掲載できます。その場合には、求人広告にわかりやすく「障害者雇用」と明記しましょう。
特別支援学校の高等部では、主に知的障がいや身体障がいなどのある高校生が障害者就労に特化した作業を中心に学んでいます。毎年一定数の生徒が特別支援学校を卒業後に就労を目指しているため、こういった学校と連携することで、若く作業が得意な人材の雇用につなげられます。
また、就労移行支援事業所では、就労を目指すさまざまな年代の障がいのある方が就業のための訓練をしています。専門知識をもった支援員も在籍しているため、企業で活躍できる可能性のある人材を紹介してもらうことも可能です。
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本記事では、障害者雇用の法定雇用率について、最新動向から具体的な対応ステップまで詳しく解説しました。重要なポイントを最後に整理します。
【記事のポイント】
2026年7月の引き上げまでに残された時間は限られています。「うちはまだ大丈夫」と先送りにせず、まずは自社の法定雇用障害者数の再計算から始めましょう。
特に、これまで対象外だった従業員37.5〜43人台の企業は、新たに雇用義務が発生します。早めの準備が、法令遵守と安定した障害者雇用体制構築のカギとなります。
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障がい者雇用の助成金を上手に利用することで、費用の負担を減らしながら障がい者雇用を行うことができます。対象者や雇用形態によって利用できる助成金は異なるため、事前にしっかりと情報を調べて助成金を使っていきましょう。
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