「法定雇用率の達成が難しい」、
「一般部署での障がい者雇用に限界を感じている」、
「特例子会社という言葉は聞くけれど、実際どんな仕組みなの?」
こうした悩みを抱える人事・経営企画担当者も多いのではないでしょうか。2026年7月には法定雇用率が2.7%に引き上げられ、多くの企業で障がい者雇用の体制強化が急務となっています。
この記事では、特例子会社の仕組み・メリット・デメリット・設立方法・認定要件・事例までを、厚生労働省の最新データに基づいて解説します。
なお、エスプールプラスでは、企業向け貸し農園「わーくはぴねす農園」を通じて、採用・職場環境整備・定着支援を企業に伴走し、約730社の導入実績と定着率92%を実現しています。自社に合った障害者雇用の体制づくりを検討している企業のご相談を受け付けています。まずはお気軽にお問い合わせください。
特例子会社は、近年の法定雇用率引き上げを背景に注目を集める制度です。ここでは仕組みを「定義」「法定雇用率との関係」「最新データ」の3つの視点から整理し、全体像をわかりやすく解説します。
特例子会社とは、障害者雇用の促進と安定を目的に、障害者の雇用に特別の配慮をした子会社のことです。
通常、法定雇用率は個々の企業ごとに義務付けられています。しかし、一定要件を満たして厚生労働大臣の認定を受けた子会社に限り、その子会社で雇用する障害者を親会社やグループ全体で雇用しているものとみなして実雇用率を算定できる特例が認められます。
本制度は1987年の障害者雇用促進法改正で法定化され、2002年からはグループ適用も可能になったことで、設立数が大きく増加しました。
特例子会社制度の最大のメリットは、親会社やグループ全体の法定雇用率達成に直結することです。
近年、法定雇用率は段階的に引き上げられています。
| 時期 | 法定雇用率 | 対象企業規模 |
|---|---|---|
| 2023年まで | 2.3% | 常用労働者43.5人以上 |
| 2024年4月〜 | 2.5% | 常用労働者40人以上 |
| 2026年7月〜 | 2.7% | 常用労働者37.5人以上 |
たとえば従業員1,000人規模の企業では、2026年7月以降は27人以上の障害者雇用が必要です。法定雇用率を未達成の場合、常用労働者100人超の企業では、不足1人あたり月額5万円の納付金が発生するほか、未達成が継続し行政指導に従わない場合、企業名公表の対象となる可能性があります。
特例子会社を設立すれば、障害者雇用を1社に集約して管理できるため、安定的かつ計画的に雇用率を達成しやすくなります。
特例子会社は毎年増え続けています。
厚生労働省「令和7年障害者雇用状況の集計結果」によると、2025年6月時点の特例子会社は631社、雇用障がい者数は53,710.5人に達しました。
特に精神障害者の雇用が急増しており、1社あたりの平均雇用数も増加傾向にあります。法定雇用率の段階的な引き上げを背景に、今後も特例子会社の設立は加速すると予測されます。
特例子会社と一般企業の障害者雇用枠は、同じ「障害者雇用」でも、職場環境や働き方に大きな違いがあります。両者の特徴を整理して、自社の方針と合致するのはどちらかを判断する材料にしましょう。
一般企業の障害者雇用枠では、健常者と同じ職場で働くのが基本です。
特定の部署に配属され、その部署で求められる職務能力を満たすことが期待されます。職場全体に占める障害者の割合は低く、特例子会社のような大規模な設備投資や専任の指導員配置までは行われていないケースが一般的です。
そのため、配慮事項が多い障害者の雇用難易度が高くなりやすく、採用競争も比較的厳しくなる傾向があります。一方で、健常者と同じ評価制度・キャリアパスのもとで働くため、スキルアップや昇給の機会は得やすいという面もあります。
特例子会社では、障害特性に合わせた設備・体制が整っているのが最大の特徴です。
業務内容は定型業務を中心に、チーム単位で進める分業型が多く、専任の指導員や支援スタッフが配置されています。全従業員に占める障害者の割合が20%以上という認定要件があるため、同じ障害を持つ仲間と働けることも特徴です。
主な違いを表で整理すると次の通りです。
| 比較項目 | 特例子会社 | 一般企業の障害者雇用枠 |
|---|---|---|
| 障害者比率 | 20%以上(認定要件) | 法定雇用率に応じて(2.7%以上) |
| 設備・配慮 | 専用設備・配慮が手厚い | 部分的な配慮にとどまる |
| 業務内容 | 定型業務・分業型が中心 | 部署ごとの一般業務 |
| 指導員 | 専任指導員を配置 | 配置義務はない |
| 定着率 | 高い傾向 | 部署や職場環境に依存 |
このように、特例子会社は障害特性への配慮を最優先した雇用形態であり、一般企業の障害者雇用枠は通常の業務環境に組み込む雇用形態と整理できます。自社の業務内容や受け入れ体制に応じて、どちらが適しているかを検討することが重要です。
特例子会社の設立には、法定雇用率の達成だけでなく、雇用管理の効率化や企業価値の向上など、多面的なメリットがあります。ここでは6つの観点から解説します。
障害者雇用に必要な設備・人員・業務を1か所に集約できる点も大きなメリットです。
複数部署にバラバラに障害者を配置すると、それぞれの部署で配慮や設備を整える必要があり、コストも管理工数も増えます。特例子会社に集約すれば、設備投資のスケールメリットが働き、業務マニュアルや定着支援の仕組みも一元化できます。結果として、雇用管理の効率と質が同時に高まります。
特例子会社は親会社とは別の独立した法人のため、障害特性に合わせた独自の制度設計が可能です。
就業規則・勤務時間・人事評価制度を、雇用する障害者の特性に応じて柔軟に設計できます。たとえば、短時間勤務やフレックス制度、職務能力に応じた段階的な評価基準など、一般企業では導入ハードルが高い仕組みも実装しやすくなります。これにより、適正な評価とスキルアップの機会提供が両立します。
同じ障害を持つ仲間と働ける環境は、職場定着率の向上に直結します。
一般企業で働く障害者の早期離職の主な理由として、「職場での孤立」や「仕事のやりがい不足」が挙げられます。特例子会社では、似た特性を持つ仲間が多く、心理的な安心感を得やすい環境が整っています。一方で、キャリアの幅が限定されるという指摘もあります。
特例子会社では、採用・定着・業務設計など障害者雇用のノウハウが体系的に蓄積されます。
蓄積されたノウハウは、親会社や他のグループ企業での障害者雇用にも応用できます。グループ全体の障害者雇用を推進するハブ機能としての役割を果たすことで、企業全体の雇用責任を効果的に果たすことが可能です。
特例子会社の設立は、企業のCSR・ダイバーシティ推進の象徴的な取り組みとして社内外に発信できます。
近年、ESG投資やサステナビリティ報告書の文脈で、障害者雇用の取り組みが企業評価の重要指標になっています。特例子会社の存在は、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)を実践している企業としてのブランドイメージを高め、採用活動や投資家との関係構築にも好影響を与えます。
社員のエンゲージメント向上にもつながり、組織全体の多様性を尊重する文化醸成に貢献するでしょう。
特例子会社にはメリットが多い一方、設立・運営には相応のリスクや負担も伴います。ここでは、5つの主なデメリットを解説します。
特例子会社の設立から認定取得までには、通常1〜2年の準備期間と多額のコストが必要です。
定款作成・登記手続き・施設整備・人材採用・業務設計など、対応すべきタスクは多岐にわたります。さらに、運営開始後も設備維持費や人件費が継続的に発生します。短期的な雇用率達成のためだけに設立すると、投資対効果が見合わないケースもあるため注意が必要です。
特例子会社は独立した法人として決算を行うため、収支が明確に可視化されます。
業務内容が定型業務中心であることや、障害特性への配慮による生産性の制約から、特例子会社単独での黒字化は容易ではありません。実際には親会社からの継続的な財政支援によって運営されているケースが多く、事業の持続可能性をどう設計するかが大きな課題となります。
特例子会社では、現場の障害者従業員に加え、指導員やマネジメント層の人件費も発生します。
業務指導や定着支援を担う健常者スタッフの配置が必須となるため、固定費は一般雇用より高くなりやすい構造です。親会社が業務委託費や経営支援の形で人件費を負担するケースが多く、グループ全体の財務に影響を与えることもあります。
特例子会社の運営を継続するには、安定した業務量を確保し続ける必要があります。
しかし、グループ内から定型業務を切り出す作業は容易ではなく、業務量が減れば従業員の稼働率が下がり、雇用維持が難しくなります。逆に業務量が増えすぎると、障害特性に合わせた業務設計が崩れる可能性もあります。継続的な業務割り当ての仕組みづくりが、運営成功の鍵となります。
上場企業の場合、特例子会社の業績がグループ全体の評価に影響を与える可能性があります。
赤字が長期化すれば、株主から経営判断やガバナンスについて説明を求められる場面も想定されます。単なる雇用促進策としてではなく、経営戦略・ガバナンス・サステナビリティの観点から総合的に判断することが重要です。
特例子会社はすべての企業に適した選択肢ではありません。自社の規模・業務特性・経営方針を踏まえて、適切に判断することが大切です。
特例子会社による雇用が適しているのは、次のような企業です。
特に法定雇用率2.7%引き上げを控え、毎年継続的に多くの障害者を採用する必要がある大企業では、特例子会社による集合配置型雇用がコスト・管理面ともに合理的な選択となります。
一方、次のような企業には一般部署での障害者雇用枠の活用が適しています。
特例子会社の設立にこだわらず、自社に合う形を選ぶことが何より大切です。設立が難しい場合でも、企業グループ算定特例や障害者雇用支援サービスなど、代替の選択肢が存在します。後の章で詳しく紹介します。
特例子会社として認定を受けるには、厚生労働省が定める要件を満たし、所定の手続きを経る必要があります。ここでは、認定要件の全体像を整理して解説します。
特例子会社の認定は、親会社・子会社それぞれに定められた要件をすべて満たすことで取得できます。
要件は大きく「親会社の要件」と「子会社の要件」の2つに分かれます。すべての要件を満たした上で、親会社の所在地を管轄する公共職業安定所長に申請を行い、厚生労働大臣の認定を受けます。
要件を満たさない状態で申請しても認定は下りないため、設立計画の段階から要件を逆算して準備を進めることが重要です。具体的な要件は次の通りです。
親会社には、子会社に対する支配関係が求められます。
具体的な要件は次の通りです。
この要件は、特例子会社が親会社のグループとして実質的に一体運営されていることを担保するためのものです。資本関係が明確で、親会社が経営方針を決定できる立場にあることが前提となります。
子会社側には、人的関係・雇用人数・雇用管理体制など、複数の要件が課されています。
主な要件は次の5点です。
これらの要件は、特例子会社が形式的な存在ではなく、実態として障害者の雇用環境を整えた事業体であることを担保するものです。とくに「雇用障害者5人以上・20%以上」という比率要件は、特例子会社の根幹をなす条件であり、設立規模を検討する際の出発点となります。
特例子会社の設立から認定取得までは、通常1〜2年の準備期間を要します。手続きの全体像を9つのステップに分けて解説します。
最初に行うのは、自社が特例子会社の認定要件を満たせるかの確認です。
親会社・子会社双方の要件を整理し、不足している要素があれば設立計画に組み込みます。あわせて、特例子会社単独で進めるのか、企業グループ算定特例などの代替制度を活用するのかも検討します。この段階で、ハローワークや地域障害者職業センターに相談しておくと、要件解釈や手続き面のアドバイスを受けられます。
設立後の認定申請に向けて、必要書類のリストアップと準備を進めます。
| 主な提出書類 |
|---|
|
書類は多岐にわたるため、早めに着手して漏れなく整えることが重要です。
社内に特例子会社設立のプロジェクトチームを発足し、設立プランを策定します。
事業内容・雇用計画・組織体制・予算・スケジュールなどを具体化し、役員会・取締役会の承認を得ます。設立目的や経営戦略上の位置づけを明確にすることで、社内の合意形成と部門横断の協力体制が構築しやすくなります。
会社設立に必要な定款を作成し、公証役場で認証を受けます。
定款には、商号・事業目的・本店所在地・資本金額などの絶対的記載事項を含める必要があります。作成・認証は行政書士・司法書士・弁護士に依頼するとスムーズです。特例子会社は障がい者雇用を主な事業目的とするため、事業内容の記載にも工夫が必要です。
定款認証後、出資金の払い込みから2週間以内に登記所へ設立登記を申請します。
登記が完了すると、法人として正式に成立します。審査に数日かかるため、後続の手続きを見越して早めに進めましょう。
会社設立後、各官庁への届出を期限内に行います。
主な届出先と書類は次の通りです。
提出期限を過ぎるとペナルティが発生する書類もあるため、漏れなく対応しましょう。
雇用予定の障害者の特性に合わせて、業務内容と社内制度を設計します。
割り当てた業務をマニュアル化し、勤務時間・休日・賃金・契約期間などを明確にした就業規則を整備します。さらに、職務能力に応じた人事評価制度を設計することで、適正な評価とスキルアップ支援が両立できます。業務標準化の徹底は、後の定着率と生産性に直結する重要なステップです。
就業環境が整った段階で、採用活動を開始します。
ハローワーク、就労移行支援事業所、障害者向け転職エージェントなど複数の採用ルートを併用し、母集団を形成します。書類選考・面接・実習を組み合わせて選考し、自社の業務とのマッチングを丁寧に確認することが、入社後の定着につながります。
採用した障害者の入社後、親会社の所在地を管轄するハローワークで特例子会社の認定申請を行います。
ステップ2で準備した申請書類一式を提出し、要件を満たしていることが確認されると、厚生労働大臣の認定が下ります。認定取得後は、雇用される障害者を親会社・グループ全体の雇用としてカウントできるようになります。
なお、認定後も毎年6月1日時点での障害者雇用状況報告書の提出が義務付けられているため、運営フェーズにおいても継続的な対応が必要です。
特例子会社の設立は有効な選択肢ですが、コストや時間、業務割り当ての難しさから「自社単独での設立は難しい」と感じる企業も少なくありません。そんな企業に活用されているのが、株式会社エスプールプラスが運営する農園型障害者雇用支援サービス「わーくはぴねす農園」です。
わーくはぴねす農園は、企業向けの貸し農園により、障がい者が能力を発揮できる環境を、企業とともに整えるサービスです。
サービスの主な特徴は次の通りです。
業務内容は野菜作りを中心とした農作業で、危険な農機具を使わず無理なく働けるため、就労が難しいとされる重度知的障害・精神障害のある方でも安心して長期就業できる環境が整っています。収穫した野菜は社員の福利厚生として社内販売したり、子ども食堂への寄付に活用したりと、企業のCSR・SDGs・ダイバーシティ推進にも幅広く貢献できます。
A. 親会社の要件と子会社の要件の両方を満たす必要があります。
親会社には子会社の意思決定機関を支配していること(議決権の過半数を保有等)が求められます。子会社には、親会社との人的関係が緊密であること、障害者を5人以上雇用し全従業員の20%以上を占めること、雇用される障害者に占める重度身体障害者・知的障害者・精神障害者の割合が30%以上であること、専任の指導員の配置や施設整備など雇用管理を適正に行う能力があること、株式会社であることが求められます。
A.1977年に認定を受けたシャープ株式会社の特例子会社である早川特選金属工場が 日本初です。
この制度ができた時には既に多くの障害者を雇用し実績をあげていたことから、いち早く認定され日本における「特例子会社認定第一号」となりました。
A.障害者雇用の促進と安定を目的に、障害者の雇用に特別の配慮をした子会社です。
厚生労働大臣の認定を受けることで、特例子会社で雇用する障害者を親会社やグループ全体の雇用としてカウントできます。2025年6月時点で全国631社が認定を受けています。
A.います。指導員・支援員・マネジメント層として健常者が働いています。
専任の指導員配置は認定要件のひとつであり、現場では障害者と健常者が協働しています。社会福祉士・精神保健福祉士・ジョブコーチなどの資格を持つ専門職の配置も一般的です。
A. 知的障害のある方も多く働いています。
特例子会社の認定要件として、雇用される障害者に占める重度身体障害者・知的障害者・精神障害者の割合が30%以上である必要があるため、知的障害の方は特例子会社で活躍する中心的な存在です。業務は定型業務を中心とした分業型で、特性に応じた配慮がなされています。
特例子会社は、障害者雇用の促進と安定を実現しながら、親会社やグループ全体の法定雇用率達成を可能にする有効な制度です。2026年7月の法定雇用率2.7%への引き上げを控え、企業規模が大きいほど特例子会社の重要性は高まっています。
本記事の要点を改めて整理します。
特例子会社の設立か、農園型サービスの活用か、自社の規模・業務特性・経営方針に応じて最適な選択肢を見極めることが重要です。判断に迷う場合は、わーくはぴねす農園のような業界実績の豊富なパートナーに相談することで、自社に合った進め方が見えてきます。
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