更新日:2021年4月15日

障害者手帳なしで就職・転職する方法

障がい者として働くには、いくつかの方法があります。障害者手帳を持っていても、障害者手帳を提示して就職するだけなく、障害者手帳を提示しないで働く選択肢もあります。どのような方法があるのかを見ていきます。

障がい者雇用全般については、障害者雇用とは?障がい者雇用にはどんな仕事がある?の記事をご覧ください。

オープン就労

オープン就労とは、障害があることを提示して、配慮を求める方法です。一般的には、オープン就労は、障害者手帳を使って、障がい者雇用枠での雇用となる場合が多いです。また、中には障害者手帳を使わないでオープン就労する人もいます。

例えば、「障害者手帳を持ちたくない」と考えている場合や、障がいが軽いために障害者手帳を取得できない場合、配慮されるべきことはあっても、配慮以上に成果をあげられる能力やスキルを持っており、それを雇用する会社が認めている場合などです。

しかし、企業が障がい者雇用を進める理由の多くは、法律で障がい者を一定の割合で雇用することが定められていて、その法律を遵守したいという目的があるからです。そのため、障害者手帳を使わないことは、かなりハードルがあがるということを理解しておくことは大切です。また、雇用する企業があなたを雇用したいと思えるようなアピールをするための準備も必要でしょう。

クローズ就労

クローズ就労とは、障がいがあることを伝えずに就職する方法です。雇用する企業には、障がいがあることは伝わっていませんので、当然、障がいに対する配慮は、期待することができません。

しかし、障がい者枠で求人を探す際のデメリットとして考えられている求人数の少なさや、仕事の幅や職種の選択肢が少ないなどの問題は軽減されます。

障害者手帳なしで働くメリット・デメリット

ここで、障害者手帳なしで働くメリット、デメリットについて、見ていきたいと思います。

メリット

メリットとしてあげられる点は、障がい者枠で働くよりも選べる求人が多いということです。一般枠と比べると、障がい者求人はどうしても、企業や、職種が偏ることがあります。しかし、一般求人は、業種や職種がたくさんあり、仕事内容も適性や責任に応じたものを選びやすくなります。

また、ポジションや責任ある仕事を任されることも多くなり、必然的に給与も高くなりがちです。仕事に対する達成感や働きがいを感じやすいと感じる人もいます。

デメリット

デメリットは、障がい者であることを職場の人は知りませんので、障がいに対する配慮がないことです。障がい者雇用の場合、勤務時間や残業、仕事内容などで配慮が示さることが多くあり、配属でも配慮が行われることがあります。例えば、残業が少なかったり、医療機関に通ったり、症状に合わせて勤務時間の調整がつきやすい部門に配属されることもあります。

しかし、一般枠で働くことは、このような配慮はありません。そのため、仕事の負荷がかかりやすく、体調面での管理が難しくなりがちになります。また、通院などでの配慮も示されることがないので、仕事が休みの日に通うことになり、そのことが職場の人に知られることを心配する人も少なくありません。

結果的に、自分のペースで働くことができない、仕事で無理をしてしまうことも多く、長期的に働くことが難しい傾向がよく見られます。

一般雇用と障がい者雇用の給料

前述の通り、一般雇用と障がい者雇用を比較すると、障がい者雇用の場合、給与が低い傾向があります。

原因としては、一般雇用と比べて職種が限られており、高い専門性やスキルを求められない仕事内容が多いことや、非正規社員の割合が高いことが挙げられます。

障がい者雇用の給与については、以下の記事で詳しく解説しています。
障がい者雇用の給料・年収は高い?低い?最低賃金法や減額特例許可制度についても解説

障害者手帳なしでも利用できる支援

就職活動を無料でサポートしてくれる機関がいろいろあります。基本は、障害者手帳を持っている方を対象としているものが多いですが、障害者手帳がなくても活用できる支援機関もあります。どのような機関があるのかを見ていきましょう。

就労移行支援

就労移行支援事業所は、障害者総合支援法の就労系障害福祉サービスの1つに位置づけられています。障害者手帳なしでも利用できますが、代わりに「障害福祉サービス受給者証」が必要になります。「障害福祉サービス受給者証」は、医師の診断書(意見書)などの書類を近くの行政窓口に提出することでもらえます。

就労移行支援事業所が活用できるのは、障がいのある65歳未満の人で、一般企業への就職を目指す人です。就労移行支援事業所に通うことで、就職に必要な知識やスキル、面接対策などのサポートを受けられます。なお、就労移行支援事業所の活用は2年間が上限となっています。

就労定着支援

就労定着支援も、障害者総合支援法の就労系障害福祉サービスの1つに位置づけられています。就労移行支援事業所などの就労系障害サービスから就労した人が活用することができます。

就労定着支援では、職場で出てきた悩みや問題について、スタッフと面談などを通して、課題解決していきます。障がいをオープンにしていて、本人、職場の理解ができている場合は、職場での訪問や面談も可能です。クローズにしている場合には、就業時間外で個別に相談などができるでしょう。

ハローワーク

ハローワークでは、障がい者雇用で働きたい人を支援する、障がい者就労に特化した専門援助部門というものがあります(地域によってはない場合もあります、その時は、一般の窓口を活用します)。

専門援助部門は、基本的には、障がい者雇用の求人を紹介し、企業につなげる部門です。しかし、障害者手帳がない場合には、そのことを伝えた上で、紹介してもらうこともできるでしょう。

ハローワークでは、企業に紹介する時に、企業の確認をとった上で紹介状を発行します。そのため、一人で就職活動して障がいについて説明するよりも、一度ハローワークから確認してもらうことで、面接してもらえる可能性が高くなることがあります。

また、ハローワークでは、障がい者雇用の状況や企業からの問い合わせ、各種就労支援機関の窓口となっているため、さまざまな情報が入ってきます。窓口で相談することによって、情報収集とともに、アドバイスや相談にのってもらうこともできるでしょう。

障害者職業センター

障害者職業センターは、各都道府県に1ヶ所以上、全国にあります。障がいのある人が、職業準備支援や職業評価、就労適性などについての訓練やアドバイスを受けることができる機関です。

最近では、リワークなどの訓練も充実しており、精神面の不調から休職している人が、職場復帰のプログラムなどを活用するケースも多く見られます。障害者手帳がなくても活用できますので、特にリワークで活用したい場合には、活用を検討してみるとよいでしょう。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、障がい者の就職や生活の相談やサポートをしてくれる機関です。名前にあるように、就労や生活面でのサポートもしており、幅広い場面で活用できます。就労に関しては、就職に向けた準備支援や、就職活動の支援などを行っています。

障害者職業センターよりも設置されている数が多いため、より多くの地域で使いやすくなっています。就職を希望する障がい者や、働いている障がい者の悩みや課題に対するサポートを他の支援機関と連携して行なっています。

障害者手帳なしでも対象となる「発達障害者雇用開発助成金」

障がい者雇用に関する助成金は、いろいろな種類のものがあります。とはいっても、助成金を申請、受給するのは、雇用する事業主なので、直接、障がい者の方に関係しないかもしれません。しかし、障害者手帳がなくても受給できる助成金もありますので、知識として知っておくとよいかもしれません。

「発達障害者雇用開発助成金」は、障害者手帳がなくても助成金の対象となるものです。対象は、発達障害者支援法第2条に規定されている発達障がい者の診断を受けている方が対象となります。自閉症、アスペルガー症候群などの広汎性発達障がい、学習障がい、注意欠陥多動性障がい等の発達障がいの診断を受けている方が含まれます。

助成金受給には、事業主に対して、雇い入れた発達障がい者への配慮事項等の報告する必要と、雇入れから約6ヶ月後にハローワーク職員等が職場訪問をおこないます。

この助成金を受給するためには、次の要件を満たすことが必要となります。

  • ハローワーク等の紹介から雇用されること
  • 雇用保険一般被保険者として雇用され、継続して雇用されることが認められること

まとめ

障害者手帳を使わずに就職・転職する方法について見てきました。障がい者雇用は、基本は障害者手帳を持っていることが求められますが、障害者手帳を持っていなくても、障がい者が活用できる支援機関を利用することや、職場でも障がい特性を理解してもらって働ける場合もあります。

しかし、その割合は多くはありませんので、自分の障がいについて理解して、セルフコントロールができることや、職場の人と上手に付き合っていくことが大切です。また、障害者手帳がなくオープン就労を行う場合には、障害者手帳がなくても雇用したいと、企業側に思ってもらえるようなスキルや能力が求められるでしょう。一人で就職活動していくことが難しいと感じるのであれば、支援機関などに相談やアドバイスを受けながら進めていくようにするとよいでしょう。

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