障害者雇用促進法にもとづき、企業には障がい者を雇用する義務が科せられています。この義務に違反すると、罰金や行政指導などのペナルティを受けることもあります。
ここでは、障がい者雇用に関する企業の義務と、それに違反した際の罰則の内容、ペナルティの基準となる条件やその対策などについて解説します。
障がい者雇用について定めた法律は、障害者雇用促進法と呼ばれます(正式名称:障害者の雇用の促進等に関する法律)。この法律では、企業の義務として以下の内容が明記されています。
障がい者雇用は、事業主が共同で達成していく社会連帯責任として定められています。企業が障がい者雇用に取り組むうえで生じうる負担は平等であるべきという考え方のもと、これらの義務を達成しない企業には納付金や行政指導が課せられます。
参照:厚生労働省|事業主の方へ
障害者雇用促進法によって定められた義務について、企業は真摯に取り組まなくてはなりません。もし、その義務が達成されない場合、罰則が科せられることがあります。
ペナルティのケースには以下の2つがあります。
法定雇用障がい者数が1人以上となる事業主(常時雇用労働者数40.0人以上)は、実際の雇用の有無に関わらず、毎年6月1日時点の障害者雇用状況を国に報告しなくてはなりません。これは国が障がい者の雇用状況を正確に把握し、統計として発表するためです。統計結果は1年に1回公表されます。
障害者雇用状況が未報告の場合、または虚偽申告をした場合には、それぞれ罰金が科せられます。
国は、障がい者に対しても安定した雇用の機会が提供されるようにするため、障害者雇用促進法にもとづいた法定雇用率を定めています。障がい者雇用は社会全体の果たすべき責任であるという理念のもと、事業主は、障がい者の実雇用率を法定雇用率以上にしなくてはなりません。
これが達成されていない企業には、金銭的な罰則のほか、指導や企業名公表などといった社会的信用に関わる罰則が科せられることもあります。
法定雇用障がい者数が1人以上となる事業主(常時雇用労働者数40.0人以上)は、毎年6月1日時点の障がい者雇用状況をハローワークに報告しなくてはなりません。これはロクイチ報告とも呼ばれています。
ロクイチ報告を行わなかった場合、または虚偽の報告をおこなった場合は、30万円以下の罰金の対象となります(障害者雇用促進法第86条第1号)。
法定雇用率とは、常時雇用する労働者のうち障がい者を雇用すべき人数の割合のことです。2026年3月現在、民間企業の法定雇用率は2.5%で、常時雇用40.0人以上の労働者を雇用しているすべての事業主は、法定雇用率相当の障がい者を雇用しなくてはなりません。
なお、2026年7月からは2.7%に引き上げられ、常時雇用37.5人以上の事業主が対象になります
法定雇用率を達成しない企業に対しては以下の項目が課せられます。
障がい者雇用を進める際は設備整備や環境整備などが必要な場合が多く、経済的な負担を伴います。法定雇用率を達成している企業とそうでない企業で、経済的負担に差が生じることとなります。この経済的負担を調整しながら、障がい者を雇用する企業に対して助成や援助を行うことで、障がい者の雇用促進と職業の安定を図るために設けられているのが、障害者雇用納付金制度です。
常時雇用する労働者が100人を超える事業主のうち、法定雇用率未達成の事業主からは、その企業が雇用すべき障がい者数に対して不足している人数1人あたり月額5万円を障害者雇用納付金として納める決まりとなっています。これを財源に、障がい者を多く雇用している事業主に対して調整金や報奨金などを支給することで、経済的負担を平等にしています。
法定雇用率未達成で、達成への取り組みが足りないと判断された企業に対しては、ハローワークからの行政指導が入ります。
行政指導では、まず2年の障がい者雇入れ計画の作成が命令されます(障害者雇用促進法第46条1項)。具体的には、以下のいずれかに該当する場合に障がい者雇入れ計画の作成が発出されます。
命令を受けた企業は、翌年の1月1日を始期とする2年間の雇入れ計画を作成し、推進していかなくてはなりません。計画期間の2年目の12月時点で進捗が不十分と判断された場合、ハローワークより計画適正実施の勧告を受けることになります(障害者雇用促進法第46条6項)。
2年間の雇入れ計画の期間が終了した時点で以下に該当する場合、障がい者雇用の状況が著しく悪いとみなされ、企業名公表を前提とした特別指導がおこなわれます。
特別指導をうけてもなお雇用率が達成できていない企業は、企業名が公表されます(障害者雇用促進法第47条)。企業名公表後も特別指導が続き、雇用が進んでいないと判断された場合には、企業名が再公表されることもあります。
直近では、令和6年3月27日に1社の企業名が公表されています。令和5年度における公表基準としては、「令和6年1月1日時点において実雇用率が令和4年の全国平均実雇用率(2.25%)未満の場合」としています。同年、企業名公表を前提とした特別指導の対象は32社でしたが、31社については状況が改善した、または猶予の対象となり企業名公表には至りませんでした。
過去の企業名公表企業数の推移は以下の通りです。
| 年度 | 平成26年度 | 平成27年度 | 平成28年度 | 平成29年度 | 平成30年度 | 令和元年度 | 令和2年度 | 令和3年度 | 令和4年度 | 令和5年度 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 企業数 | 8 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 1 | 6 | 5(3) | 1(1) |
※カッコ内は内数としての再公表企業数
障がい者雇用にはさまざまなノウハウや費用が必要となり、自社内のみの取組みで法定雇用率を達成することが難しい場合も少なくありません。
調整金や報奨金といった支援制度をうまく利用しながら、法定雇用率達成のための取り組みを行うことが大切です。
具体的な対応としては、以下のようなものがあります。
障がい者雇用に係る金銭的な負担を解消するためには、助成金制度を積極的に活用しましょう。
雇入れに関する助成金としては、特定求職者雇用開発助成金やトライアル雇用助成金などがあります。また、施設の整備などをおこなった場合にその費用の一部を助成する制度や、障がい者を非正規雇用から正規雇用に転換した場合に支給されるキャリアアップ助成金などもあります。
そのほか、法人税・所得税・事業所税については税制優遇措置を受けることも可能です。こうした助成金や補助金、税制優遇措置を活用すれば、障がい者雇用に関する経済的負担や不安感を軽減できるでしょう。
障がい者雇用をサポートしてくれる機関を活用しましょう。代表的な機関としては、ハローワークが挙げられます。ハローワークでは障がい者専用の求人票を掲載できるほか、雇用についての助言や専門機関の紹介、助成金の案内などを受けることができます。また、障がい者雇用のための就職面接会も開催されています。
ハローワーク以外にも障がい者雇用をサポートしてもらえる機関はいくつかあります。地域障害者職業センターでは、雇用管理に関する専門的な助言のほか、ジョブコーチの派遣による支援をうけることも可能です。また、障害者就業・生活支援センターでは、障がい者の就業面・生活面における支援をおこなっています。
これらの専門機関のサポートの多くは無料で受けられます。障がい者雇用に取り組もうとしている企業の担当者の方はぜひ相談してみてください。
障がい者雇用支援サービスを提供している民間の専門業者もあります。社内に切り出せる業務がない、障がい者雇用に割ける人員的・時間的余裕がないとお悩みの場合には、障がい者雇用を専門に行う支援サービスを活用するのも一つの方法です。
こうしたサービスでは、障がい者雇用の理解を深めるところから、業務の創出、採用後の雇用継続のためのフォローまで支援を受けることができます。障がい者が活躍するための新たな業務を創出することも可能です。
障がい者雇用の罰則に関して事業主が抱きやすい疑問と、その回答をご紹介します。
誤って申告した場合でも、それが虚偽とみなされた場合、罰則の対象になる恐れがあります。しかし、一般的にはハローワークからの是正指導や口頭注意で終了となります。報告書の内容に間違いがあった場合には、速やかに訂正した報告書を提出するようにしましょう。
障がい者雇用の罰則は、企業規模や従業員数に関わらず平等に科せられます。ただし、企業規模が大きいほど雇用すべき障がい者数も多くなるため、不足数も多くなりがちで、行政指導の対象となる恐れも高くなる傾向にあります。
障がい者雇用についての相談先は基本的にハローワークです。不安がある場合は、まず一度ハローワークに相談してみましょう。
障がい者雇用は、すべての事業主が取り組むべき社会連帯責任です。その理念のもと、障がい者雇用に関する義務に違反する企業には罰則が科せられます。
障がい者雇用に積極的に取り組んでいる企業だけが負担を負うことは、社会連帯責任としての障がい者雇用の在り方とは異なります。障がい者雇用への取り組みが不十分な企業に対する納付金の納付義務や行政指導は、障がい者を多く雇用している事業主の負担を軽減し、事業主間の負担の公平を図りつつ、障がい者雇用の水準を高めることを目的として導入されています。
障がい者雇用率における企業の義務を果たすためには、助成金を活用する、公的機関の支援を受ける、障がい者雇用支援サービスを活用する、などといった方法があります。それぞれの企業に合った支援を受けながら障がい者雇用を進め、法定雇用率の達成に留まらず、よりよい形での障がい者雇用を実現しましょう。

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