更新日:2026年1月26日

事業主が雇用すべき障がい者の割合を定めた法定雇用率。これまで段階的に引き上げられてきましたが、2026年7月にも引き上げがおこなわれる予定です。この引き上げによって、それまで障がい者雇用の対象ではなかった事業主が新たに対象となる可能性もあります。

ここでは、法定雇用率の引き上げの背景や、2026年7月の引き上げによって障がい者雇用の対象となる企業の範囲などを解説します。

法制度・最新情報の資料

法定雇用率って?

法定雇用率とは、民間企業や国・地方公共団体に対して定められた、所属する労働者のうちに占めるべき障がい者の割合のことです。障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)第43条で定められており、法定雇用率制度とよばれています。

2024年4月からの法定雇用率は以下の通りです。

  • 民間企業:2.5%
  • 国・地方公共団体:2.8%
  • 都道府県等の教育委員会:2.7%

法定雇用率制度や実雇用率の計算方法などについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
「【2025年最新】法定雇用率とは?障害者雇用率制度の現状や雇用率の引き上げについて解説」

法定雇用率の引き上げはいつから?

障がい者雇用を取り巻く環境は時代と共に変化します。そのため、法定雇用率は少なくとも5年ごとに見直しをすることが、障害者雇用促進法第43条において定められています。直近の見直しは2023年におこなわれ、それまでは2.3%だった民間企業の法定雇用率が、2024年4月から2.5%になりました。2026年7月にはさらに引き上げが実施され、2.7%になる予定です。

過去の法定雇用率の推移は以下の表のとおりです。

期間 法定雇用率
~1987年 1.5%
1988~1998年 1.6%
1999~2012年 1.8%
2013~2017年 2.0%
2018~2020年 2.2%
2021~2023年 2.3%
2024~2026年6月 2.5%
2026年7月~ 2.7%

独立行政法人 労働政策研究・研修機構「図16 民間企業における障害者雇用状況の推移(各年6月1日現在)」

法定雇用率の引き上げによって対象となる企業

法定雇用率が2.5%の場合、常用雇用労働者数40.0人以上のすべての事業主に障がい者の雇用義務があります。これが2.7%に引き上げられると、常用雇用労働者数37.5人以上のすべての事業主が障がい者雇用の対象となります。

現在と引き上げ後、それぞれの障がい者雇用の対象になる範囲は、以下の表のとおりです。

~2026年6月 2026年7月~
民間企業 40.0人以上(2.5%) 37.5人以上(2.7%)
国・地方公共団体・特殊法人等 36.0人以上(2.8%) 33.5人以上(3.0%)
都道府県等の教育委員会 37.5人以上(2.7%) 34.5人以上(2.9%)

この場合の常用雇用労働者数とは、週の所定労働時間が30時間以上の労働者を指します。また、週の所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者は、短時間労働者として1人につき0.5人でカウントし、常用雇用労働者に加えます。

現在は雇用義務のない事業主でも、2026年7月の引き上げによって障がい者雇用義務の対象になる場合があるため、注意が必要です。

参照:厚生労働省「障害者雇用率制度について」

厚生労働省宮城労働局「障害者雇用率の達成と障害者雇用納付金制度」

法定雇用率が引き上げられる背景

障害者雇用促進法では、全労働者に対する障がい者の割合を基準に、法定雇用率を少なくとも5年ごとに見直すと定められています。

障がい者雇用対策の施策の理念として、厚生労働省は、「障害者等が希望や能力、適性を十分に活かし、障害の特性等に応じて活躍することが普通の社会、障害者と共に働くことが当たり前の社会を目指し、障害者雇用対策を進めています」と明記しています。今回の法定雇用率の引き上げは、この社会的理念にそっておこなわれています。

障害者雇用率制度は、障がい者に対し、一般労働者と同じ水準で働く機会の確保を保証する制度です。これを推進し、障がいの有無に左右されない、多様性のある労働社会を実現することは、少子高齢化による労働人口の減少への対応にもつながります。

参照:厚生労働省「障害者雇用対策」

厚生労働省「最近の障害者雇用対策について」

法制度・最新情報の資料

法定雇用率引き上げによる企業への影響

法定雇用率の引き上げでは、それまで雇用の対象外だった事業主だけでなく、今まで法定雇用率を達成していた事業主も、引き上げ後の法定雇用率を引き続き達成できているか確認する必要があります。

法定雇用率をもとにした、事業主が雇用すべき障がい者数は、以下の計算式で算出できます。

雇用すべき障がい者数=(常用雇用労働者数+短時間労働者数×0.5)×法定雇用率

※端数は切り捨てます。

雇用障がい者数がこの計算結果よりも多ければ、その事業主は法定雇用率を達成しているとわかります。ただし、雇用障がい者数にはカウントルールがあり、それに則って人数を数えなくてはなりません。カウントルールは以下の表のとおりです。

週所定労働時間 30時間以上 20時間以上30時間未満 10時間以上20時間未満
身体障がい者 1(重度:2) 0.5(重度:1) 0(重度:0.5)
知的障がい者 1(重度:2) 0.5(重度:1) 0(重度:0.5)
精神障がい者 1 1 0.5

このルールのもとで雇用障がい者数を数え、その人数が法定雇用率によって算出された雇用すべき障がい者数よりも少ない場合には、さらなる障がい者雇用を進める必要があります。

参照:労働局「障害者雇用率制度について」

法定雇用率未達成の企業はどうなる?

法定雇用率を満たしていない事業主には、障害者雇用納付金制度に基づく金銭的な負担が発生し、定められた雇用率に対して不足している障がい者数に応じ、納付金を国に支払います。対象は常用雇用労働者が101人以上いる企業です。不足している障がい者1人あたり月額5万円を納付することになり、未達成の人数が多いほど企業の負担が増すことになります。

この納付金は単なる罰則ではなく、障がい者雇用を積極的に進めている企業に対して支給される調整金や、雇用環境の整備を支援する各種助成金の財源として活用されます。そのため、制度全体としては企業間の負担の公平性を確保しつつ、障がい者雇用の促進にもつながる仕組みとなっています。

さらに、以下のいずれかに該当する場合には、ハローワークから行政指導(障害者雇入れ計画作成命令)が行われます。

  • 不足数5ポイント以上かつ実雇用率が全国平均(2.41%)未満
  • 法定雇用者数が3~4ポイントで、1名も雇用していない
  • 不足数10ポイント以上

具体的には、障がい者雇用に関する具体的な計画書の提出や、その計画内容の実施状況についての報告が求められます。その後、計画に沿った改善が見られない場合は、適正実施勧告や特別指導が行われます。それでも雇用が進まない場合、企業名公表となります。

企業名の公表では、社会的な評価や取引先からの信頼に悪影響を及ぼすおそれがあり、経営面で大きなリスクとなります。常に法定雇用率を達成している状態が望ましいですが、仮に指導対象となってしまった場合でも、問題を放置せず、早期に雇用体制の見直しや改善策の実行に取り組むことが重要です。

参照:JEED「障害者雇用納付金」

法定雇用率が未達成の企業での課題

障がい者の雇用義務があるにもかかわらず法定雇用率の未達成が続いている企業もなかにはあるでしょう。障がい者雇用は一般雇用とは異なる課題や難しさがあり、経験やノウハウがないと着手しにくかったり、取り組みが進まなかったりする場合もあります。

障がい者雇用において企業が抱えがちな課題には、以下のようなものがあります。

  • 障がいのある方に任せる仕事がない
  • 短期離職が多い
  • 障がい者雇用に対する社員の理解が得にくい
  • 障がいのある方の得意分野をみつけにくい など

ひと口に障がい者といっても、障がいの種別や度合い、特性などはそれぞれであり、画一的に対処できることばかりではありません。それゆえ課題の解決がなかなかできず、法定雇用率が未達成になってしまうケースは、決して珍しくないことです。法定雇用率の引き上げを控える今、雇用率達成に苦慮している企業には、あらためて課題解決に向けた計画を見直す必要があります。

障がい者雇用の難しさやその対処法について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
「障がい者雇用が難しい・進まない理由は?円滑に進めるためのポイントも解説」

法定雇用率達成が難しい場合の選択肢

法定雇用率の達成が難しいからといって、その課題をそのままにしておくと、事業主にとってさまざまな不利益につながります。障がい者雇用がうまくいっていない、進まないと感じる場合には、早急に手を打たなければなりません。

しかし、障がい者雇用の経験やノウハウがない企業では、自社内だけで対応できることに限度があるはずです。そんなときは、以下のような外部機関を積極的に活用することをおすすめします。

ハローワークなど支援制度の活用

障がい者雇用は国をあげての取り組みであるため、さまざまな公的機関の支援制度が存在します。特にハローワークでは、企業・求職者の双方に対して幅広い支援を提供しています。企業に対しては、職域開拓から雇用管理、職場環境整備などをとおした雇用継続まで、一貫した相談に対応しています。また、各種助成金についての情報提供や受理などもハローワークが窓口となっており、必要な助成を受けながら障がい者雇用をすすめられます。

もちろん障がい者雇用枠の求人票を出すことも可能です。ハローワークは就労移行支援事業所や特別支援学校とも連携しているため、働くための訓練を積んだ人材とマッチングしやすいことも利点のひとつです。

ハローワークのほかにも、障害者就業・生活支援センターや独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構など、障がい者雇用のための支援を提供している公共機関があります。これらの多くは事業主の金銭的負担をおさえつつ活用できる仕組みになっているので、お困りの際はぜひ一度相談してみましょう。

障がい者雇用支援サービスの活用

公的機関のほかに、障がい者雇用支援サービスを提供している民間企業もあります。企業のニーズに合った求職者を紹介してもらいやすい傾向があり、採用までの時間短縮につながります。また多くのサービスで、障がいの専門知識をもったスタッフによるアドバイスを受けられます。

エスプールプラスでは、農園を活用した障がい者雇用サービスを提供しています。農園を障がい者雇用に取り組む企業に貸し出し、そこが障がいのある方の就労の場となる仕組みです。

障がい者仕様の設備・業務設計を施した「屋外農園」と「屋内農園」があります。「屋外農園」は、都会の喧騒からも距離をおけるので、狭い場所や人の多さが苦手な方も利用しやすいことが特徴です。また、重度障がい者も無理なく働くことができる環境です。「屋内農園」であれば、寒暖差などの気候の変化が苦手な方でもストレスなく就労できます。また、農業は作業工程がマニュアル化されており企業がスムーズに雇用開始しやすく、障がいのある方にとっても自らの手で農作物を育てることでやりがいや成長を感じやすいです。

エスプールプラスが運営するわーくはぴねす農園は、関東、東海、関西を中心に展開しています。本社から近い農園を借りれば、本社社員と農園社員の交流も十分に可能です。農園で採れた作物を社内販売会で直接販売したり、社食で活用したりすれば、会社の福利厚生にもつながります。

農園には障がいの専門知識をもったスタッフや農業に関するサポートもあり、安心・安全な雇用ができる体制が整っています。求人募集から雇用継続まで伴走支援があり、定着率は約92%と高い水準を維持しています。

まとめ

事業主が雇用すべき障がい者の割合を定めた法定雇用率は、共生社会の実現という理念のもと、定期的な引き上げがおこなわれています。法定雇用率が達成できていないと、納付金の負担や行政指導など、事業主にとってデメリットが多く発生します。これらを避けるためにも、事業主は、自分の企業に障がい者の雇用義務があるのか、ある場合には何人の障がい者を雇用すればよいのかを確認しておく必要があります。

2026年の法定雇用率引き上げに限らず、法定雇用率を達成できない可能性がある場合は、早めに対策をうっておくことをおすすめします。ハローワークなどの公的機関のほか、民間の障がい者雇用支援サービスも存在します。これらのサービスを積極的に活用すれば、よりスムーズに障がい者雇用を推進できるでしょう。

会社アンケート資料