障がい者が企業で働くときには、何らかの支援が必要なケースがあります。例えば、職場環境を整えたり、課題へ専門的な支援を行ったり、職場への定着支援などです。このようなケースで専門的な役割を担う人をジョブコーチ(職場適応援助者)と呼びます。
ジョブコーチ(職場適応援助者)として活動できる人は、障がい者雇用や就労支援の経験があり、職場適応援助者養成研修を修了している人です。
ジョブコーチ(職場適応援助者)は、以下の3つの種類に分類できます。
それぞれのジョブコーチの違いについてみていきましょう。
訪問型ジョブコーチは、社会福祉法人等に所属するジョブコーチです。職場適応援助者養成研修の受講を修了し、就労支援に必要な経験や能力を持つ人が実施します。所属する機関で就労を目指す障がい者にジョブコーチを行うほか、地域障害者職業センターから依頼があったときにも活動します。
企業在籍型ジョブコーチは、支援する障がい者と同じ企業に所属するジョブコーチです。職場適応援助者養成研修の受講を修了し、企業の中で障がい者と一緒に働いた経験や知識がある人が担います。
配置型ジョブコーチは、地域障害者職業センターに所属するジョブコーチです。地域障害者職業センターに依頼のあった各企業への支援、訪問型ジョブコーチや企業在籍型ジョブコーチと連携しての支援などを行います。他のジョブコーチと連携する場合は、必要なアドバイスやサポートを中心に行います。
ジョブコーチの支援を受けられる対象者は、身体障がいや知的障がい、精神障がい等のある方で、仕事に対する悩みや困難さがある方です。
例えば、就職したものの、仕事や職場に慣れず、仕事が思うように進まなかったり、職場において障がいの特性に合った配慮をどのように示していけばよいか具体的な支援がほしいような場合に活用できます。
ジョブコーチ支援を受けるためには、条件があります。条件は、ジョブコーチの支援を受け、週20時間以上の労働を目指すことです。
地域障害者職業センターの配置型ジョブコーチを活用する場合は、企業がある地域の障害者職業センターやハローワークに問い合わせてください。採用が集中する時期は、申込みが増えますので、早めに連絡がおすすめです。
また、企業在籍ジョブコーチを活用する場合は、ジョブコーチになる予定の人が職場適応援助者養成研修を修了し、地域障害者職業センターと支援計画の作成・承認がされた後に開始できます。
ジョブコーチを活用する場合には、事業主の意向だけでなく、障がい者本人がジョブコーチの支援への同意が必要です。
ジョブコーチは、障がいのある人が職場で仕事がしやすいよう、また職場で接する人たちがすべき配慮など、必要なアドバイスやサポートを行います。
障がい者の方に対しては、仕事を進めるための手順やマニュアルを整備する、職場におけるマナーやルールを教える、などの職場に適応できるような支援を実施します。
また、障がい者と一緒に働く事業所や従業員の方に対しては、対象障がい者の障がい特性や、働くときに必要な配慮を研修で伝えたり、働きやすい体制づくり、雇用管理などのアドバイスを行います。
ジョブコーチは、対象の障がい者や事業主のどちらにも支援を行いますが、サポートは継続的に行うものではありません。一定期間の支援後は、ナチュラルサポートと呼ばれる一緒に働く上司や同僚の方がサポートできるように、ジョブコーチが指導を行います。
ジョブコーチ支援に関する助成金は、企業在籍型職場適応援助者養成研修を修了した方が、職場適応援助者 (ジョブコーチ)として障がい者へ支援を実施する場合に申請できます。申請する助成金は 「障害者雇用安定助成金(障害者職場適応援助コース)」です。
助成金を受ける支援内容は、対象となる障がい者が働きやすい環境を作るための支援やアドバイス以外にも、関係機関との連携や、対象となる障がい者と家族への支援なども含まれます。
支給金額は、対象障がい者1>人あたりの支給額に、支援計画に基づいて支援が行われた期間をかけたものとなります。支給対象期間は上限が6ヶ月となっており、実施する支援の回数や対象障がい者の出勤割合などの条件を満たす必要があります。
助成金を受給するときには、支援計画の開始より3ヶ月以内に、受給資格認定書と必要な書類を揃えて労働局かハローワークに提出します。また、支給申請には、支給対象期間から2ヶ月以内に支給申請書と必要な書類を揃えて労働局かハローワークに申請します。
ジョブコーチになるには、職場適応援助者養成研修の受講が必要です。研修では、集合研修として講義中心の座学研修と演習からジョブコーチの役割、作業の方法、障がい特性と職業上の課題などを学びます。また、職場のある地域の障害者職業センターにて、ケーススタディや職場実習などを中心とした実技研修などを学びます。
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構で主催される研修は無料で受講できますが、厚生労働省で定める民間の研修機関で受ける職場適応援助者養成研修の受講は有料となります。
民間の研修機関には、次のところがあります。
民間の研修期間の受講であっても要件を満たすと、障害者雇用安定助成金(障害者職場適応援助コース)の助成金の対象となり、受講料の2分の1が支給されます。要件は、職場適応援助者養成研修の受講料を事業主がすべて負担すること、また、養成研修の修了後6ヶ月以内に職場適応援助者支援を行うことが必要です。
ジョブコーチ(職場適応援助者)にはどのような役割があるのか、また、ジョブコーチの活用方法や対象支援者などをみてきました。
企業でのジョブコーチを活用するときには、地域障害者職業センターの配置型ジョブコーチを依頼するケースと、社内でジョブコーチを育成してから活用するケースがあります。社内のジョブコーチを活用する場合には、事前に企業在籍型職場適応援助者養成研修を受講する必要があります。
ジョブコーチは、障がい者雇用に活用できる制度の一つです。職場の必要や人材育成といった面も検討しながら活用するとよいでしょう。