「未経験者も採りたいけれど、ミスマッチが怖い」
「トライアル雇用とよく聞くが、試用期間と何が違うのか」
「助成金がもらえるらしいが、手続きが難しそう」
こうした採用の悩みに応えるのが「トライアル雇用」です。トライアル雇用とは、ハローワーク等の紹介を受けた求職者を原則3か月間試行雇用し、適性を見極めたうえで本採用(無期雇用)に移行する国の制度です。労働者と企業がお互いを理解した上で無期雇用へ移行できるため、ミスマッチを防ぐことができ、さらに条件を満たせば企業は助成金を受け取れます。
【この記事でわかること】
この記事により、「自社で使えるか」「何から始めればよいか」が明確になります。それでは、制度の基本から見ていきましょう。
なお、障がい者雇用支援サービスを提供するエスプールプラスでは、「わーくはぴねす農園」を通じて、業務の割り当てから採用・定着支援までを支援しています。2026年5月末現在、全国62施設・約750社の導入実績と職場定着率約92%で、「適した業務が見つからない」「採用してもすぐ辞めてしまう」といった企業の課題解決を伴走サポートしています。
トライアル雇用について、具体的な中身は曖昧という方も多いはずです。まずは制度の目的と、混同されやすい試用期間・研修期間との違いを整理します。
トライアル雇用は、原則3か月の試行雇用を通じて、無期雇用へ移行する前に適性や業務遂行可能性を確認する制度です。
厚生労働省とハローワークが主体となり、2003年4月よりトライアル雇用助成金制度がスタートしました。求人はあっても希望どおり就職できない求職者と、人材を確保したい企業のミスマッチを埋めることが狙いです。
なぜこの制度が設けられているのか、その背景から押さえましょう。
トライアル雇用の目的は、就職が困難な求職者と企業の橋渡しです。厚生労働省は、トライアル雇用を職業経験の不足などから就職が困難な求職者を原則3か月間試行雇用することにより、その適性や能力を見極め、期間の定めのない雇用への移行のきっかけとすることを目的とした制度と定義しています。
実績の面でも有効性は確認されており、厚生労働省の資料によると、トライアル雇用終了者のうち、常用雇用に移行した人の割合は70%を超えています。お試しとはいえ、企業にとって有力な人材確保の手段といえます。
なお、対象はハローワーク等の紹介を受けた求職者に限られ、自社で直接募集した人材は対象外です。この点は後の「注意点」で詳しく解説します。
トライアル雇用と試用期間の違いは、多くの企業担当者がつまずくポイントです。混同されやすい3つの制度を比較します。
最大の違いは、ハローワーク経由が必須か、助成金があるか、本採用の義務があるかの3点です。
| 比較項目 | トライアル雇用 | 試用期間 | 研修期間 |
|---|---|---|---|
| 位置づけ | 国の制度(有期雇用契約) | 企業が独自に設ける期間 | 企業が独自に設ける期間 |
| 期間 | 原則3か月 | 自由に設定(一般に1〜6か月) | 自由に設定 |
| ハローワーク等の紹介 | 必須 | 不要 | 不要 |
| 助成金 | あり(条件を満たせば) | なし | なし |
| 本採用の前提 | 義務ではない(見送り可) | 本採用が前提 | 本採用が前提 |
| 賃金 | 支払われる(最低賃金以上) | 支払われる | 支払われる |
試用期間との決定的な違いは、本採用を前提とするかどうかです。
試用期間は、企業が採用後に設ける適性確認の期間です。一方、トライアル雇用は、ハローワーク等の紹介を受けた対象者を一定期間試行雇用し、常用雇用への移行を目指す公的制度です。助成金の有無だけで選ぶのではなく、対象者要件や紹介経路、雇用後の支援体制まで確認したうえで活用しましょう。
トライアル雇用と一口に言っても、対象者によって使えるコースと助成金額は異なります。自社のケースで「どのコースが使えるか」「いくら受給できるか」を、4つのコースごとに確認しましょう。
トライアル雇用助成金には、主に次の4コースがあります。
| コース | 主な対象者 | 助成額の目安(1人あたり) |
|---|---|---|
| 一般トライアルコース | 就労経験の不足やブランクがある求職者 | 月額最大4万円 × 最長3か月(最大12万円) |
| 障害者トライアルコース | 障害のある求職者(週20時間以上) | 月額最大4万円 × 最長3か月(精神障害者は手厚い) |
| 障害者短時間トライアルコース | 週20時間未満から始める精神・発達障害者等 | 月額最大4万円 × 最長12か月 |
| 若年・女性建設労働者トライアルコース | 35歳未満の若年者・女性(建設業) | 上記コースへの上乗せ(単独利用不可) |
助成額はいずれも出勤日数に応じて変動し、就労予定日数に対する実就労日数の割合に応じて月額が決まります。
「一般トライアルコース」は障害の有無を問わず利用できる、最も基本のコースです。
「障害者トライアルコース」は障害のある求職者を試行雇用する場合のコースです。助成が手厚いのが特徴です。
制度上、精神障害者については支給額・支給期間が手厚く設定されています。
「障害者短時間トライアルコース」は週20時間以上の勤務がすぐには難しい方を、短時間から段階的に受け入れるコースです。
時間をかけて職場に慣れてもらいながら、本格的な雇用につなげたい場合に適しています。
「若年・女性建設労働者トライアルコース」は建設業で若手・女性を採用する場合の、上乗せ型コースです。
自社が雇い入れたい人材がどのコースに当てはまるかで、受給額は大きく変わります。
障害者雇用を検討する企業にとっては、障害者トライアルコースや障害者短時間トライアルコースを活用することで、段階的に適性確認や職場定着に向けた準備を進められます。
金額や要件は年度ごとに改定されるため、申請前に厚生労働省の最新リーフレットで確認してください。
トライアル雇用は求職者支援の制度というイメージがありますが、導入する企業側にも実利的なメリットがあります。「自社が使う意味はあるのか」という視点で、代表的な4つを確認しましょう。
最大のメリットは、採用前に「自社に合う人材か」を実際の業務で見極められることです。
書類選考と面接だけでは、入社後に「想像と違った」というミスマッチが起こりがちです。トライアル雇用なら、原則3か月かけて業務ぶり・職場との相性・人柄を確認したうえで本採用を判断できるため、早期離職を防ぎやすくなります。実際、終了者の7割超が常用雇用へ移行しており、見極めを経た人材の多くが定着しています。
求人にお金をかけても、なかなか採用に結びつかないと悩む企業は少なくありません。
トライアル雇用はハローワーク等の紹介でマッチングするため、人材の紹介を受けることで募集広告費などがかかりません。採用手法によっては、求人広告費や紹介手数料が発生する場合がありますが、その負担を軽減できます。
書類だけでは判断しにくい求職者について、面接や試行雇用を通じて適性を確認しやすくなります。
トライアル雇用助成金による直接的な金銭メリットも大きなポイントです。
条件を満たせば、一般コースで1人あたり月額最大4万円・最長3か月、障害者コースで精神障害者を雇用する場合は最大36万円まで受給できます。試行雇用中の賃金の一部を国が補助するため、採用・育成の金銭負担を抑えられます。広告費削減と合わせれば、通常の中途採用より少ない負担で採用を進められます。
採用の間口を広げ、これまで出会えなかった人材を獲得できる点も価値があります。
通常の書類選考では、職歴の空白や未経験というだけでポテンシャルのある人材を見送りがちです。トライアル雇用なら、書類では判断しづらい人材を実際に働いてもらいながら見極められます。人手不足で即戦力の獲得競争が激しくなるなか、未経験者をリスクを抑えて採用できることは、人材確保の選択肢を広げる有効な手段です。
このように、トライアル雇用は「ミスマッチ防止」「採用の負担」「助成金」「人材獲得の間口拡大」の4面で企業にメリットをもたらします。一方で、導入前に押さえるべきデメリット・注意点もあります。次章で確認しましょう。
メリットの多いトライアル雇用ですが、導入前に知っておくべき短所もあります。「自社に向くか」を正しく判断するために、制度の性質上避けられない3つのデメリットを確認しましょう。
最初に押さえたいのが、育成にかかる手間と負担です。
トライアル雇用の対象は、未経験者やブランクのある人材が中心です。そのため、業務に必要な知識や技術を一から教える必要があります。指導には時間がかかり、長期化しやすい傾向もあります。
具体的には、次のような負担が想定されます。
採用広告費は抑えられても、育成には負担がかかると考えておきましょう。
次に、制度の目的そのものに関わる注意点です。
トライアル雇用は、就職が困難な求職者の早期就職を支援する制度です。つまり、即戦力の確保を目的とした制度ではありません。
そのため、次のようなケースには向きません。
即戦力を求めるなら、条件を定めた通常の中途採用のほうが効果的です。トライアル雇用は「育てて戦力にする」前提の制度だと理解しておくことが大切です。
最後は、助成金を受け取るための事務負担です。
助成金は自動的に支払われるものではありません。受給には、複数の書類提出と期限管理が必要です。
雇い入れる人数が増えるほど、手続きは煩雑になります。担当者の負担を考え、受け入れ人数を慎重に検討しておくとよいでしょう。
トライアル雇用を使ってみたいと思っても、何から始めればよいか分からない方も多いはずです。ここでは、求人の申し込みから助成金の受給までの一連の流れを、6つのステップに分けて解説します。
まず、求人の申し込みから始まります。
ここで重要なのは、必ずハローワーク等を経由することです。自社ホームページからの採用は認められておらず、助成金を受け取れません。この経路の要件は、後の「注意点」でも改めて触れます。
次に、紹介を受けた求職者と面接を行います。
通常の採用と異なり、ハローワークが条件に合う人材を紹介してくれるため、書類選考の手間を抑えられます。
採用が決まったら、トライアル雇用を開始します。
この3か月の間に、求職者の適性や職場との相性を見極めます。
雇用を開始したら、最初の重要な提出物があります。
あわせて注意したいのが、雇用保険の手続きです。実施計画書の提出までに、対象者の雇用保険被保険者資格取得の届け出をする必要があります。この届け出を忘れると申請に影響するため、早めに進めましょう。
トライアル雇用期間が終わったら、本採用を判断します。
ここで本採用を見送る場合の扱いは、後の「注意点」で詳しく解説します。
最後に、助成金を受け取るための申請を行います。
審査を経て、要件を満たしていれば助成金がまとめて支給されます。なお、途中で退職や無期雇用への移行があった場合は申請期限が変わることがあるため、早めにハローワークへ確認しましょう。
ここまでが、トライアル雇用の一連の流れです。手続き自体は難しくありませんが、提出期限の管理が成否を分けます。次の章では、こうした注意点を整理して解説します。
トライアル雇用には、知らずに使うと「助成金がもらえなかった」「トラブルになった」という落とし穴があります。事前に押さえておけば回避できるものばかりです。導入前に必ず確認しておきましょう。
まず注意すべきは、そもそも助成金の対象にならないケースがあることです。
入り口でつまずきやすいのが、採用の経路です。
さらに、自社の過去の対応によっても対象外になることがあります。
「採ってから対象外と分かった」とならないよう、自社が要件を満たすかを事前にハローワークへ確認しておくと安心です。
次に重要なのが、書類の提出期限です。
助成金には2つの提出期限があり、いずれも厳守が必要です。
申請期限を過ぎると助成金を受給できなくなります。期限を1日でも過ぎると、要件をすべて満たしていても不支給です。
注意したいのは、期限が雇用開始日・終了日によって変わる点です。
カレンダーやリマインダーで、提出期限を確実に管理しておきましょう。
3つ目は、助成金が必ずしも満額もらえるわけではない点です。
支給額は、予定していた出勤日数のうち、実際にどれだけ働いたかで変わります。欠勤が多いほど、支給額は下がります。
なお、有給休暇は出勤として扱われますが、それ以外の欠勤が多いと減額の対象になります。日々の出退勤を管理しておきましょう。
最後に、制度そのものが変わる可能性です。
トライアル雇用助成金の支給額や要件は、固定ではありません。
導入を検討する際は、過去の情報をそのまま使わないことが大切です。実施したいコースに制度改正の予定がないか、厚生労働省ホームページ等で事前に確認することをおすすめします。本記事の数値も参考にしつつ、申請前には必ず最新のリーフレットを確認してください。
トライアル雇用は、障害者雇用を始める有効な手段です。ただし、制度を使うだけでは解決しない課題も残ります。多くの企業が、次のような壁に直面します。
これらは、採用の入り口であるトライアル雇用だけでは乗り越えにくい課題です。
こうした課題に対し、エスプールプラスは企業の雇用方針や現場担当者との連携を前提に、農園を活用した障がい者雇用の選択肢を提供しています。
エスプールプラスは、農園型の障がい者雇用支援サービス「わーくはぴねす農園」を運営しています。企業は貸し農園を通じて雇用を行えるため、社内の仕事の割り当てが難しい場合でも障がい者雇用を進めることができます。
エスプールプラスは、農園という就業環境を活用しながら、企業が障がい者雇用に主体的に関わり続けられるよう支援するサービスです。
障害者雇用に不安がある企業でも、安心して一歩を踏み出せます。
障害者雇用の進め方に悩んでいる場合は、まず資料請求から検討してみてはいかがでしょうか。
▶サービス資料を無料でダウンロード
▶お問い合わせ・無料相談はこちら
最後に、トライアル雇用について企業からよく寄せられる質問を、Q&A形式でまとめました。これまでの内容の要点整理としてもご活用ください。
A. ハローワーク等の紹介を受けた求職者を、原則3か月間試行雇用する国の制度です。
実際に働いてもらいながら適性を見極め、本採用(無期雇用)に移行するかを判断します。労働者と企業がお互いを理解した上で無期雇用へ移行できるため、ミスマッチを防ぐことができます。就労経験の不足やブランクのある求職者の早期就職を支援することが目的です。
A. もらえます。トライアル雇用中も、通常どおり賃金が支払われます。
賃金の扱いは、次のとおりです。
「お試し」という名称ですが、無給や特別に低い賃金が許されるわけではありません。一般の従業員と同じく、労働の対価が支払われます。
A. 「期間満了で本採用しないこと」と「期間中の解雇」は別物です。混同しないことが重要です。
それぞれの扱いは、次のように異なります。
つまり、3か月の満了時に本採用を見送るのは可能ですが、期間の途中で自由に解雇できるわけではありません。本採用を見送る場合も、理由は誠意をもって説明することが望まれます。
A. 最も大きな違いは、ハローワーク経由が必須か、助成金があるか、本採用が前提かの3点です。
簡単に整理すると、次のとおりです。
詳しい比較は、記事前半の「研修期間・試用期間との違い」で表にまとめています。あわせてご確認ください。
A. あります。助成金は、欠勤が多いと減額されることがあります。
支給額は、予定していた出勤日数のうち、実際にどれだけ働いたかで決まります。たとえば、欠勤が少なく予定どおり出勤すれば満額、欠勤が多いほど支給額は下がる仕組みです。
減額の目安は、次のとおりです。
また、トライアル期間の途中で対象者が離職した場合や、早めに本採用へ移行した場合も、働いた日数に応じた額に調整されます。満額を前提にせず、日々の出退勤を管理しておくことが大切です。
トライアル雇用は、採用前のミスマッチを「お試し期間」で見極められる、企業にとって有効な制度です。最後に、本記事の要点を振り返ります。
【この記事の要点】
トライアル雇用をうまく活用すれば、未経験者やブランクのある人材も、リスクを抑えて見極めながら採用できます。まずはハローワークへの求人提出から、一歩を踏み出してみましょう。
一方で、障害者雇用については、トライアル雇用だけでは「業務の割り当て」「定着」「現場の負担」といった課題が残ります。こうした悩みを抱える企業には、エスプールプラスの「わーくはぴねす農園」がおすすめです。
「障害者雇用を何から始めればよいか分からない」「採用しても定着しない」とお悩みの方は、ぜひ一度、資料請求や農園見学からご検討ください。ミスマッチのない、長く続く障害者雇用の実現を、エスプールプラスが伴走します。
▶サービス資料を無料でダウンロード
▶お問い合わせ・無料相談はこちら

![]()
障害者雇用で使える補助金・奨励金を2026年版で解説。助成金との違い、自治体別の制度例、金額の目安、対象条件、申請の流れと注意点をわかりやすく紹介します。
![]()
トライアル雇用助成金の支給額・受給条件・申請方法を2026年版で解説。4つのコースの違いや申請期限、併用できる助成金、企業が注意すべきポイントをわかりやすく紹介します。
![]()
障害者雇用における義務違反のペナルティ(罰則)や、企業名公表・障害者雇用納付金などの具体的な内容、対策方法を解説します。法定雇用率未達成や報告義務違反時に課される罰金や行政指導のリスク、企業名公表による社会的影響も詳しくご紹介。障害者雇用の義務を守るために必要な対策もまとめました。
![]()
障がい者雇用に取り組んでいる事業主の方のなかには、「もにす認定」という制度を耳...
![]()
障がい者雇用の助成金を上手に利用することで、費用の負担を減らしながら障がい者雇用を行うことができます。対象者や雇用形態によって利用できる助成金は異なるため、事前にしっかりと情報を調べて助成金を使っていきましょう。
![]()
障害者雇用促進法の基礎知識から、2024年4月および2026年7月の法改正内容までを詳しく解説します。法定雇用率の段階的引き上げ(2.5%から2.7%へ)や、週10時間以上の短時間雇用のカウント開始、合理的配慮の提供義務化など、企業が対応すべき最新情報を網羅。義務違反による罰則や社名公表のリスク、活用できる助成金制度についても紹介し、実務的な対策をサポートします。