障害者総合支援法は、日常生活や社会生活の総合的な支援を目的としています。
障がいのある人や子どもたちは、必要と認められた福祉サービス等を障害者総合福祉法によって受けられます。福祉サービスは、市区町村、都道府県などの地方公共団体によって提供されます。
障害者総合支援法のサービスは、自立支援給付と地域生活支援事業の2つに分かれます。障がいの種類や程度、介護者、当事者のサービス利用への意向等から区別されています。
自立支援給付は、介護給付、訓練等給付、相談支援、自立支援医療などが含まれ、国がサービスの類型や運用ルールを定めています。
法律上は全体費用の「9割」を給付(本人は1割負担)、住民税が非課税の世帯の場合には全額(10割)が給付されています(本人の負担はなし)。
自立支援給付のサービスには、就労移行支援や就労継続型支援(A型、B型)、就労定着支援等のサービスが含まれます。
地域生活支援事業は、都道府県、市区町村が主体となって実施するもので、大まかな枠組みは国から示されますが、サービスの類型や運用ルールは都道府県、市町村が地域の実状に応じて定めるものとなっています。
市町村及び都道府県は、それぞれの地域で生活する障がいのある人のニーズを踏まえた柔軟な事業を実施していくことが望まれています。そのため自治体の創意工夫により事業の詳細を決定し、効率的・効果的な取り組みを行えるように設計されています。
対象者、利用料など事業内容の詳細については、それぞれの自治体によって異なりますので、最寄りの窓口に問い合わせてください。
障害者総合支援法は、「法に基づく日常生活・社会生活の支援が、共生社会を実現するため、社会参加の機会の確保および地域社会における共生、社会障壁の除去に資するよう、総合的かつ計画的に行われること」を基本理念として掲げています。
(引用:厚生労働省「地域社会における共生の実現に向けて新たな障害保健福祉施策を講ずるための関係法律の整備に関する法律について」)
また、障害者総合支援法の第一条には法律の目的が明記されています。それによると、この法律の目的は、障がいのある大人や子どもが基本的人権をもつ個人として日常生活や社会生活を営むことができるよう、障がいの有無に関わらず国民がお互いに人格と個性を尊重して安心して暮らすことのできる地域社会の実現を目指すことにあります。
そのために必要な障害福祉サービスに係る給付や、地域生活支援事業、その他の支援を総合的に行い、福祉の増進を図ることが、障害者総合支援法では定められています。
障害者総合支援法が対象とする障がい者の範囲は、従来の障害者手帳のある人たちに加えて、制度の谷間となって支援の充実が求められていた難病等のある人も含まれています。また、精神障がいの中には、発達障がいも含まれます。
障害者総合支援法の第四条での障害者は、以下の人です。
厚生労働省が作成した「障害者総合支援法等の改正について(第134回 社会保障審議会障害者部会) 」によれば、改正の概要として以下の6つの柱が掲げられています。
グループホームの支援内容として、1人暮らしの入居希望者に対する相談や退居後の相談も含まれることが法律上明確化されました。また、障がい者が安心して生活できるよう、基幹相談支援センターや緊急時の対応、施設から地域への移行の推進を行う地域生活支援拠点などの整備が市町村の努力義務とされました。さらに、自治体における精神保健に関する相談支援対象者の範囲を精神障がい者に限らず広げ、適切な支援を提供できるようにすることが明確化されました。
障がい者の就労に対して「就労選択支援」が創設されました。ハローワークはこの支援を受けた人に対して、アセスメント結果を参考に職業訓練等を実施します。また、障がい者を雇用する事業主に関係の深い内容として、障害者雇用調整金の支給方法の見直しや雇用義務のある障がい者の範囲の拡大などにより、障がい者雇用の促進や職場定着を推進する内容となりました。
家族以外であっても市町村長の同意があれば医療保護入院ができるようになりました。また、「入院者訪問支援事業」を創設し、入院者の体験や気持ちを聴いて必要な情報提供を行えるようになりました。加えて、精神科病院における従事者への研修や普及啓発を行い、虐待通報の仕組みも整備することが決まりました。
難病患者及び小児慢性特定疾病児童等に対する医療費助成の助成開始日を前倒しし療養生活の負担を軽減できるようになりました。また、「登録証」の発行によりサービスの円滑な利用やデータ登録を促進し、難病相談支援センターと福祉・就労の支援者が連携をとるなど、自立支援事業を強化することが定められました。
障害DB、難病DB、小慢DBについて、福祉サービスや療養生活の質の向上のため、第三者提供の仕組み等の規定を整備することが定められました。
都道府県知事が行う事業者指定の際に市町村長が意見を申し出る仕組みを創設することで、市町村障害福祉計画に整合した福祉サービス事業者を指定できるようになりました。
障がい者の就労については、これまでも「就労移行支援事業所」や「就労継続支援A・B型事業所」などのサービスを利用して就労支援が図られてきました。しかし、本人の希望や能力、職業適性に適った就労に結びついていないといった課題があります。
その解決手段として「就労選択支援」サービスが創設される予定です。障がい者本人の就労能力等をさまざまな側面から評価・把握する「就労アセスメント」の手法を活用し、職業選択を支援するというものです。
ハローワーク等の職業支援サービスを提供する機関は、アセスメント結果に基づいて職業指導等を実施します。
重度身体障がい者・重度知的障がい者、精神障がい者については、週所定労働時間が10時間以上20時間未満のものであっても雇用率の算定対象となります。
現在の障害者雇用促進法では、週所定労働時間が20時間以上の労働者の雇用が義務となっています。また週所定労働時間が10時間以上20時間未満の短時間労働者は、雇用率の算定対象ではありませんでした。
しかし障がいの特性により長時間の勤務が難しく、週20時間未満での勤務をしたいというニーズも多くあり、雇用率の算定基準が変更されることとなりました。これに伴い、特例給付金も廃止されます。
このほか「雇用する障害者の数」で評価する調整金・報奨金についても見直しがされ、「雇用の質」の向上に向けた助成金制度を創設する方針も掲げられています。
障害者総合支援法で受けられるサービスは多岐にわたります。サービスを受けたい方に対しては80項目に及ぶ調査を行い、それに応じて必要なサービスの利用ができます。
例えば、自立支援給付には大きく5つの項目があります。
これらに加え、「地域生活支援事業」として、相談支援や成年後見人利用支援、意思疎通支援などを受けることができます。
障がい児に対しては、都道府県による福祉型障害児入所施設と医療型障害児入所施設への入所支援や、市町村が行う児童発達支援、放課後等デイサービスなどの通所支援が提供されます。
障害者総合支援法のサービスを利用するには、次のような流れになります。
利用者負担の金額は、サービスの利用と所得から負担額が決まります。
障害福祉サービスの定率負担は、所得に応じて負担上限月額が設定されます。負担上限月額以上の負担は発生しません。
以下のように区分されます。
区分 | 世帯の収入状況 | 負担上限額 |
---|---|---|
生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
低所得 | 市町村非課税世帯 | 0円 |
一般1 | 市町村民税課税世帯(所得割16万円未満)※入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者を除きます。 | 9,300円 |
一般2 | 上記以外 | 37,200円 |
障害者総合支援法の制度や対象者について見てきました。
障害者総合支援法は障がい者福祉に関する法律ですが、障がい者雇用は、障がい福祉施策と関連する点がたくさんあります。そのため障害者総合支援法の基本的なことは、知っておくと役立つでしょう。例えば、2018年4月の改正障害者総合支援法に基づく就労定着支援などについて知っておくと、職場内で問題や課題がでてくるときに活用できるかもしれません。
障がい者雇用は、企業が行うものですが、それをサポートする就労を支援してくれる機関はたくさんあります。企業だけで解決することが難しいと思われる場合には、このような支援機関と連携することも大切になってきます。