更新日:2025年12月24日

障がい者雇用とは?

障がい者雇用とは、障害者雇用促進法で定められた障害者雇用率制度に基づく雇用のことです。従業員を40.0人以上雇用している民間企業は、1人以上の障がいのある方を雇用しなければなりません。公的機関にも同様に障がい者雇用率が定められています。

障がいのある方は、そうでない方と比べて就労の機会を簡単に確保できない傾向にあります。しかし、実際には障がいのある方もさまざまな能力を持っており、仕事で活躍できる場面は数多くあります。そこで、障がい者の自立や社会参加を目的に、一般的な労働市場とは別に障がいのある方だけを対象にした雇用の仕組みが整えられました。なお、障害者雇用制度における障がい者とは、原則として障害者手帳を持っている方として定義されています。

障害者雇用促進法については、「障害者雇用促進法とは?改正内容や企業の義務についてわかりやすくご紹介」の記事で解説しています。

法制度・最新情報の資料

障がい者雇用制度の背景

障がいのある方は長い間、雇用の困難さに直面してきました。雇用の機会を得られても賃金が低かったり、不安定な雇用だったりと、安心して働ける環境ではありませんでした。

高度経済成長期を迎えた1960年、障がい者の雇用を促進する国際的な流れを受け、障害者雇用促進法の前身である身体障害者雇用促進法が制定されました。このなかで初めて、事業主が雇用すべき障がい者の雇用率が設定されました。これが障がい者雇用制度の誕生です。この時設定された雇用率はあくまで努力義務であり、強制力に乏しいものでしたが、1976年の法改正により法定雇用率は義務としての強制力をもつようになりました。

1987年、身体障害者雇用促進法は現在の障害者雇用促進法として改正され、1998年には知的障がい者、2018年には精神障がい者も雇用制度の対象となりました。その後、今日に至るまで法定雇用率は少しずつ引き上げられており、障がい者の雇用の機会は広がってきています。

障がい者雇用の条件や対象者

障害者雇用制度を活用して働くことができるのは、以下のいずれかの手帳を所持している障がいのある方のみです。等級は問われません。

  • 身体障害者手帳
  • 療育手帳(地域によっては「愛の手帳」「緑の手帳」などと呼ばれる)
  • 精神障害者保健福祉手帳

民間企業や公共機関は、これらの手帳を所持している方を必要な人数分雇入れることで、法定雇用率を満たすことができます。

障がいのある方のなかには、診断は受けていても手帳を保持していないという方も一定数いらっしゃいます。しかし、障害者雇用制度上は診断名がついていたとしても手帳がなければ障害者雇用枠の対象とはなりません。手帳がない方は、障がい者雇用枠ではなく一般枠の求人に応募する必要があり、企業側は障がい者雇用としてはカウントできません。

障がいのある方が求人に応募するためのルートは主に3つです。まずは、就職情報サイト やハローワークなどの人材紹介機関を利用する方法、民間企業や自治体などの採用ホームページから応募する方法、そして、障がい者向けの企業説明会や合同企業説明会に参加する方法があります。

障がい者雇用で働く条件や応募方法についてさらに詳しく知りたい場合は、下記のページをご覧ください。

「障害者雇用で働くための条件や応募の方法について」

障がい者雇用と一般雇用の違い

障がい者手帳をもっている方のなかには、就職活動の際に障がい者雇用枠と一般雇用枠のどちらで応募するか迷っている方もいるかもしれません。

障がい者雇用も一般雇用も、採用試験を受けて採用されることは同じです。ただし、採用・就労にあたっては以下のような違いがあります。

一般雇用枠 障がい者雇用枠
採用 障がいの開示・非開示は本人の意思で決められる。障がいを開示していても一般的な就労基準で採用の可否が決まる。 障がい者手帳を提示した上で、応募する。障がいがあることを前提とした基準で採用の可否が決まる。
就労 一般的な就労基準で働くため、障がいへの合理的配慮は受けづらい。 障がいを前提とした合理的配慮が受けられ、通院や休憩などの融通も効きやすい。
待遇 募集職種は幅広く、給与は一般水準。 募集職種が限定的で、給与水準は一般雇用よりも低い傾向にある。

給与について、令和5年6月におこなわれた厚生労働省の「障害者雇用実態調査」の結果報告書によると、障がい者雇用の平均賃金は、身体障がい者が23万5,000円、知的障がい者が13万7,000円、精神障がい者が14万9,000円となっています。一般雇用の令和5年の平均月給は31万8,300円となっていますので、これをみても障がい者雇用の給与が低いことがわかります。

参照:厚生労働省|令和5年度障害者雇用実態調査結果報告書
参照:厚生労働省|令和5年賃金構造基本統計調査 結果の概況 賃金の推移

障害者雇用促進法とは

障害者雇用促進法

障がい者雇用において最も知られている法律が、障害者雇用促進法(正式名称:障害者の雇用の促進等に関する法律)です。

障害者雇用促進法は、障がいのある方の雇用の安定化を図るために設置されています。1960年に制定された身体障害者雇用促進法を前身としており、事業主が雇用すべき障がい者の雇用率を定めたものとなっています。

現在では、身体障がいのみならず、知的障がい者・精神障がい者も法律の適用対象となり、各種助成金の設立などに伴い改正が重ねられてきました。

続いて、障害者雇用促進法の中でも特に押さえておくべき3つのポイントを解説します。

法定雇用率の設定

障害者雇用促進法では、企業や国・地方公共団体に対して、一定の割合で障がい者を雇用する義務を定めています。2025年12月時点の事業主別の法定雇用率は、

  • 民間企業:2.5%
  • 国・地方公共団体:2.8%
  • 都道府県等の教育委員会:2.7%

となっています。

また、法定雇用率は段階的な引き上げが決定されており、2026年7月には以下のように引き上げられます。

  • 民間企業:2.7%
  • 国・地方公共団体:3.0%
  • 都道府県等の教育委員会:2.9%

この引き上げが実施されると、従業員数37.5人以上のすべての企業に障がい者の雇用義務が発生します。

障害者雇用促進法は今後も5年に一度見直しが行われることになっています。

参照:厚生労働省|障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について

障害者雇用納付金制度

法定雇用率を達成できていない企業に対しては、納付金の支払いが課せられます。これは障害者雇用納付金といわれるもので、徴収された納付金は法定雇用率を達成している企業に分配されます。納付金の金額は、不足1名に対して月額5万円です。

特例給付金の設置

近年の法改正によって、短時間しか働けない障がい者の雇用についてもサポートする必要があるとの見方から、週10時間以上20時間未満で働く障がい者の雇用については特例給付金が設置されていました。要件を満たした対象の障がい者を雇用した事業主のうち、100人超の企業には1人あたり月額7,000円、100人以下の企業には月額5,000円が支給される制度でした。

令和6年4月1日からは、週10時間以上20時間未満で働く重度身体障がい者、重度知的障がい者、精神障がい者は法定雇用率の算定に入ることになりました。それに伴い、特例給付金の支給は廃止されましたが、令和6年3月31日までに雇い入れられた週所定労働時間が10時間以上20時間未満の重度以外の知的障がい者および身体障がい者については、1年間の経過措置がとられています。

障がい者雇用の現状

障がい者の雇用義務のあるすべての事業主は、毎年6月1日時点の障がい者雇用状況をハローワークに報告する義務があります。厚生労働省は、毎年この報告をまとめ、「障害者雇用状況の集計結果」として公開しています。ここでは、「令和6年障害者雇用状況の集計結果」をもとに障がい者雇用の現状を解説します。

企業規模別の雇用状況

企業規模別にみた障がい者雇用状況は以下の表のとおりです(カッコ内は前年の数値)。

企業規模 雇用障がい者数 実雇用率 法定雇用率達成企業の割合
規模計 67万7,461.5人(64万2,178.0人) 2.41%(2.33%) 46.0%(50.1%)
40.0~100人未満 7万8,280.0人(7万302.5人) 1.96%(1.95%) 44.3%(47.2%)
100~300人未満 12万4,637.0人(12万2,195.0人) 2.19%(2.15%) 49.1%(53.3%)
300~500人未満 5万7,178.5人(5万4,084.5人) 2.29%(2.18%) 41.1%(46.9%)
500~1,000人未満 7万6,515.5人(7万3,435.5人) 2.48%(2.36%) 44.3%(52.4%)
1,000人以上 34万850.5人(32万2,160.5人) 2.64%(2.55%) 54.7%(67.5%)

令和6年4月に法定雇用率の引き上げがあったため、法定雇用率達成企業の割合は低下傾向にあります。しかし、実雇用率および雇用障がい者数をみると、どの企業規模においても雇用が増えていることがわかります。企業規模が大きくなるほど実雇用率は高い傾向にあり、企業規模1,000人以上の大企業では実雇用率が法定雇用率を上回る水準にあります。

参照:厚生労働省|令和6年 障害者雇用状況の集計結果

産業別の雇用状況

産業別にみた障がい者雇用状況は以下の表のとおりです(カッコ内は前年の数値)。

産業区分 法定雇用障害者数の算定の基礎となる労働者数(常用労働者数) 実雇用率 法定雇用率達成企業の割合
産業計 2万8,162,399.0人(2万7,523,661.0人) 2.41%(2.33%) 46.0%(50.1%)
農林漁業 4万6,319.0人(4万3,442.5人) 2.35%(2.38%) 52.7%(59.8%)
鉱業、採石業、砂利採取業 1万645.5人(1万728.0人) 2.27%(2.09%) 53.3%(49.3%)
建設業 89万1,418.5人(85万8,432.0人) 2.13%(2.09%) 47.5%(51.5%)
製造業 712万821.5人(704万2,740.5人) 2.37%(2.32%) 51.9%(57.0%)
電気・ガス・熱供給・水道業 20万9,207.5人(21万2,582.5人) 2.47%(2.41%) 41.5%(50.7%)
情報通信業 183万9,544.5人(175万5,423.0人) 1.98%(1.91%) 26.8%(29.9%)
運輸業、郵便業 161万6,259.0人(159万3,487.0人) 2.45%(2.39%) 52.6%(56.4%)
卸売業、小売業 440万8,787.5人(433万2,651.5人) 2.28%(2.21%) 36.7%(40.5%)
金融業、保険業 110万6,385.0人(110万4,449.5人) 2.36%(2.29%) 34.6%(39.9%)
不動産業、物品賃貸業 52万3,376.5人(51万4,089.0人) 1.99%(1.96%) 31.5%(37.9%)
学術研究、専門・技術サービス業 143万8,895.0人(133万713.0人) 2.29%(2.20%) 32.6%(35.2%)
宿泊業、飲食サービス業 82万5,715.0人(77万1,805.5人) 2.32%(2.23%) 44.7%(48.8%)
生活関連サービス業、娯楽業 50万3,833.0人(48万6,023.0人) 2.50%(2.46%) 40.8%(45.7%)
教育、学習支援業 53万5,617.5人(52万4,152.5人) 1.89%(1.81%) 33.2%(36.7%)
医療、福祉 323万6,935.5人(317万3,138.5人) 3.19%(3.09%) 58.3%(62.1%)
複合サービス事業 28万7,957.5人(28万8,991.0人) 2.43%(2.23%) 40.7%(46.8%)
サービス業 356万681.0人(348万812.0人) 2.39%(2.30%) 45.4%(48.6%)

これをみると、すべての業種で前年よりも雇用されている障がい者数が増加していることがわかります。しかし、業種間の実雇用率は差が大きく、情報通信業、不動産業・物品賃貸業・教育・学習支援業は実雇用率が2.0%を下回っている状況です。

一方、実雇用率が法定雇用率を上回っている業種は、医療・福祉(3.19%)のみです。

参照:厚生労働省|令和6年 障害者雇用状況の集計結果

都道府県別の雇用状況

都道府県別の雇用状況をみると、全体的な実雇用率の前年比は増加していますが、青森県、三重県、奈良県の3県では実雇用率がやや低下しています。

実雇用率が2.7%を上回っているのは、奈良県(3.00%)、和歌山県(2.78%)、島根県(2.89%)、山口県(2.77%)、佐賀県(2.87%)、長崎県(2.88%)、大分県(2.77%)、宮崎県(2.87%)、沖縄県(3.39%)の9県です。特に奈良県と沖縄県は、実雇用率が3.0%を上回る高水準にあります。

参照:厚生労働省|令和6年 障害者雇用状況の集計結果

障がい者雇用のメリット

障がい者雇用のメリット

障がい者を雇用することは法律で義務付けられていますが、会社にとってもメリットが多々あります。ここでは主な4つのメリットをご紹介します。

ブランドイメージ向上・売上増大

法定雇用率の達成によって社会的責任を果たしていることを明らかにすれば、ブランドイメージの 毀損を防ぐだけではなく、向上につなげられる可能性もあります。企業のブランドイメージ向上は、企業名や店名の認知度の向上、顧客の獲得、売上の増大につながります。

業務パフォーマンス改善・人材不足対策

障がい者を雇用すると、さまざまな条件や制約をクリアして人材が活躍できる場が生まれ、多様性を尊重する土壌が企業全体に育まれます。健常者の心理的安全性も高まり、業務パフォーマンスの改善につながります。また、垣根を超えた採用活動の実践は、人材不足という経営課題の解決にも役立ちます。

業務効率化

障がい者雇用を進める際には、業務を適切に配置するためにも、業務全体の見直しや業務フローの再設計が不可欠です。既存の業務を見直せば、省ける業務やより効率的な手順が見つかることもあるでしょう。

障がい者が作業しやすい業務フローを作ることは、ほかの従業員の作業のしやすさにもつながります。結果的に業務全体が整えられ、組織全体の生産性が高まることが期待できます。

税制優遇の適用、助成金の受給

障がい者を雇用する企業には、さまざまな金銭的支援があります。例えば、法定雇用率を上回って 障がい者を雇用している企業には調整金や報奨金が支給されます。また、障がい者を多数雇用する事業主に対しては不動産取得税と固定資産税の減税特例があります。さらに、障がい者を多数雇用している事業所では、事業所税の特例措置により税額が控除されます。これらの制度を利用することで、障がい者雇用の促進だけでなく、企業経営の安定にもつながります。

参照:独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構|障害者雇用納付金制度の概要
参照:厚生労働省|障害者雇用に係る税制上の優遇措置

障がい者を雇用しないデメリット

障がい者の雇用義務があるにもかかわらず雇用を進めずにいると、さまざまなデメリットをこうむることになります。ここでは3つのデメリットをご紹介します。

納付金の発生

障がい者雇用にともなう企業間の経済的負担の調整を図るため、法定障がい者雇用率を達成していない場合は、障害者雇用納付金として不足している障がい者1人あたり月5万円が徴収されます。雇用納付金の徴収は従業者100人以上の企業が対象です。

行政指導への対応コスト発生やブランドイメージ毀損

法定雇用率が大幅に未達成の企業に対しては、計画書の作成命令が行われることがあります。それでも計画通りに進まない場合は行政指導が入ります。計画書の作成や行政指導の対応により通常外の業務が発生すると、人件費をはじめとしたコストの増大につながってしまいます。

企業名の公表によるブランドイメージや取引先への悪影響

行政指導が行われても改善が見られない場合は、社名公表措置がとられます。社名が公表されると、ブランドイメージの毀損や取引先からの不信といった悪影響が生じる恐れがあります。

障がい者雇用は今、社会全体で取り組むべき課題とされています。障がい者雇用のポイントや最新の雇用状況などについては、こちらの記事も参考にしてください。

「障害者雇用を行うメリット、行わないデメリット」

障がい者雇用の手順

障がい者雇用は、段階的に雇用を進めることで、雇用する側とされる側の双方が働きやすい環境を作りやすくなります。以下はその一例です。初めて障がい者雇用に取り組む場合は、この例を参考にしつつ、ハローワークなどの専門機関に相談しながら取り組むことをおすすめします。

障がい者雇用の理解を深める

初めて障がい者雇用に着手する企業の担当者は、まずは障がい者雇用とはどのようなものなのか、どのような目的でおこない、どのようなことに気をつけるべきなのかといった、障がい者雇用全般の理解を深める必要があります。

障がい者雇用の最初の相談先としては、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構などの専門機関やハローワークなどが挙げられます。ハローワークでは誰でも参加できるセミナーも開講しているので、まずはセミナーに参加してみるのもよいでしょう。また、特別支援学校や就労移行支援施設、実際に障がい者を雇用している企業を見学することなども、障がい者雇用のイメージをつくるうえで効果的です。

配置部署や職務を選定する

障がい者雇用について理解が深まったら、実際に雇用するための準備を始めます。まずは、障がい者をどの部署に配置するかを検討しましょう。障がい特性にあった業務の有無や合理的配慮がしやすいかなどをもとに部署を検討します。実際にその部署ではたらく従業員の意見も取り入れながら選定するとよいでしょう。

部署が決まったら、実際に障がいのある方に担当いただく業務を選定します。まずは部署内の業務を洗い出し、一つ一つを細分化します。そのなかで、障がい特性も考慮しつつ、障がい特性もふまえながら、取り組みやすい業務をリストアップ・精査します。

業務の切り出しについて詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

「障がい者の業務の切り出し方とは?」

受け入れ態勢を整え、労働条件などを決める

障がい者に任せる業務が決まったら、受け入れ態勢を整えます。求められる職場環境の合理的配慮は障がい特性によってさまざまですが、基本は、障がいの有無に関わらず働きやすい環境をつくることです。段差などの目に見える障壁はもちろんのこと、整理整頓してものの位置をわかりやすくする、業務の見える化をすることなども大切です。

また、同時に労働条件を決めていきます。業務の内容などを考慮したうえで適正に決めましょう。

採用活動をおこなう

労働条件まで決まったら、実際の採用活動に取り組みます。採用活動においてもハローワークに積極的に相談するとよいでしょう。ハローワークでは、求人票の作成支援や求職者探しのほか、面接会なども定期的に開いています。

また、雇入れや職場定着措置のための助成金制度を活用すれば、コストをおさえつつ障がい者雇用に取り組みやすくなります。これらの情報もハローワークで得られるので、活用できる支援や助成金の有無も含めて相談することをおすすめします。

また、障がい者を3カ月間試験雇用する、障害者トライアル雇用という制度もあります。これも助成金の支給を受けながら活用できる制度で、最初から本採用は不安だという企業にぴったりです。専用の求人票をハローワークに提出することで活用できます。

障害者トライアル雇用について詳しくしりたい方は以下の記事も参考にしてください。

「障害者トライアル雇用とは?企業側・求職者側のメリット・デメリットを紹介」

参照:厚生労働省|障害者関連窓口

職場定着

無事に雇用できたら、障がい者の職場定着を図ります。また、職場環境が働きやすい状態になっているか、担当してもらう業務が本人の特性に合っているかなどを定期的に見直すため、面談やカウンセリングを実施し、必要に応じて業務内容や働き方を調整していきましょう。

企業には、従業員から求められた合理的配慮を実施する義務があります。障がい者から配慮を求められる場面においては、可能な範囲で対応できる方法を検討し、本人と話し合いながら進めましょう。

職場定着においても、活用できる支援はたくさんあります。

  • ジョブコーチ支援
  • 職場支援員の配置助成金
  • キャリアアップ助成金
  • 職場適応援助者助成金

これら適切な支援を受けつつ職場定着を図っていくことが大切です。

参照:令和3年度以降「障害者雇用安定助成金」が変わります!

(企業向け)障がい者雇用に関するその他の法律

法律

障がい者雇用に関係する法律は、障害者雇用促進法以外にもいくつかあります。ここではその一例をご紹介します。

なお、障がい者雇用に関する法律や制度についてより詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

「障害者雇用で知っておくべき法律や制度について」

障害者基本法

障害者基本法は、障がい者の自立や社会参加を支援する基本理念を定めた法律です。昭和45年に心身障害者対策基本法として制定されて以来、改正を重ねながら、障がい者雇用の基礎として存在し続けています。

参照:厚生労働省|障害福祉に関する制度沿革・概要

障害者差別解消法

障害者差別解消法は、障がいがある方への不当な差別的取り扱いを禁止する法律です。令和6年4月1日の改正では、事業者による障がいのある方への合理的配慮の提供が義務化されました。これにより事業主は、障がいのある方から社会のなかにあるバリアへの対応を求められた際、負担が重すぎない範囲で対応することが求められるようになりました。

参照:内閣府|改正障害者差別解消法が施行されました

(企業向け)障がい者雇用を推進するための相談先

企業内だけで障がい者雇用を進めようとしても、ノウハウがない場合、何から始めればいいか迷ってしまったり、不明点を解決できなかったりすることもあるでしょう。

障がい者雇用をスムーズに推進するためには、専門機関に相談することが大切です。相談先としては、大きく分けて以下の4つがあります。それぞれ詳しくみていきましょう。

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構

障がい者雇用を専門に扱っている機関はいくつかありますが、代表的なものの一つが、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構です。主に障がい者と高齢者の就労支援や職業能力開発を行っています。東京都に中央障害者雇用情報センター、全国各地に地域障害者職業センターを設置し、事業者からの相談に対応しています。

相談内容は幅広く、障がい者の新規雇入れから雇用継続、キャリアアップまで相談可能です。また、必要に応じて事業主支援計画を作成してもらい、専門的な支援を受けることもできます。マニュアルや障がい者雇用事例などの情報提供もおこなっています。

参照:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構|事業概要2025

ハローワーク

ハローワークも障がい者雇用の相談先の一つです。ハローワークといえば求人のイメージが強いかもしれませんが、企業に対する雇用支援も充実しています。企業のニーズに合わせて地域の関係機関と連携し、雇用準備から定着支援まで一貫した支援を受けることが可能です。

ハローワークは障がいのある求職者の方が多く利用しているため、企業の求人情報が届きやすいというメリットがあります。障がい者雇用を始めたい企業向けのセミナーも定期的に開催していますので、障がい者雇用に着手する前に一度ハローワークに相談してみるとよいでしょう。

参照:厚生労働省|障害者関連窓口

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは、都道府県ごとに設置されている、障がいのある方の就労に関する専門機関です。障がいのある方に対する専門的な職業リハビリテーションサービスや、事業主・地域の関係機関からの相談対応などをおこなっています。

地域障害者職業センターには障害者職業カウンセラーなどが配置されており、ハローワークなどの関係機関と密接に連携している点が特徴です。障がい者雇用を検討している事業主とそれを支援する関係機関の双方の相談役・支援機関としての機能を果たしています。

参照:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構JEED|地域障害者職業センター

(企業向け)障がい者雇用において活用できる助成金制度

助成金制度とは、前述の特定求職者雇用開発助成金、トライアル雇用助成金、障害者雇用安定助成金などを指します。これらは、障がい者雇用にかかる費用の負担を軽減し、障がい者雇用を促進することを目的とした仕組みです。企業が制度を利用する際は、必要書類を用意し、全国各地のハローワークや労働局へ申請します。

ここでは、代表的な助成金の一例を表にまとめてご紹介します。なお、障がい者雇用の補助金や助成金について詳しく知りたい方は、以下のページも参考にしてください。

障がい者雇用の助成金・補助金とは?種類や条件について解説

特定求職者雇用開発助成金 高齢者や障がい者など、就職に困難を抱える方を、ハローワークなどからの紹介により継続して雇用する労働者として雇い入れる事業主に対して助成されます。
支給額は障がいの程度や労働時間により異なり、30万円~240万円の間で支給されます
トライアル雇用助成金 障がいのある方を原則3ヵ月間試行雇用することで適正や能力を見極め、継続雇用のきっかけをつくる制度です。
トライアル雇用を行い一定の条件を満たした場合、対象者1人当たり月額最大4万円の支給を受けられます。
精神障がい者を初めて雇用する場合は月額最大8万円。いずれの場合も支給期間は最長で3ヵ月間です
障害者雇用安定助成金 キャリアアップ助成金
(障害者正社員化コース)
障がいのある有期雇用労働者などを正規雇用労働者などに転換した事業主に対して助成されます。
支給総額は対象者1人あたり33万円~120万円です
職場支援員の配置助成金 雇用する障がい者の職場定着を図るために職場支援員を配置した事業主に対して助成されます。
支給月額は1.5万円~4万円 で、最大支給期間は3年です
職場復帰支援助成金 中途障がいを負った方などに対して職場復帰のために必要な措置を講じた事業主に対して助成されます。
支給月額は4.5万円または6万円で、最大支給期間は1年です
採用方法8選資料

(障害者手帳をお持ちの方へ)障がい者雇用枠で就労するためには

障がい者雇用枠(オープン就労)で就労する際は企業選びが大切です。企業によってはこれまでの障がい者雇用の実績を公開しています。どのような障がいのある方をどのような職務で採用してきたのかをチェックしておきましょう。

また、就労環境や給料といった待遇面は企業によって異なるため、こちらも確認しておくことをおすすめします。

就職活動の進め方としては、一般採用と障がい者採用を同時期に行うケースが一般的です。企業選びやエントリーなど必要な準備や手続きが多いため、早い時期から備えておきましょう。

就職のポイントについては下記のページでもご紹介しています。

「障がい者の方が就職する際のポイント」

障害者雇用率制度に関する最新の動向

最新動向

令和4年6月17日、厚生労働省の労働政策審議会障害者雇用分科会において、今後の障がい者雇用施策の拡充・強化について意見書が提出されました。それをもとに、内閣は「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律などの一部を改正する法律案」を作成し、令和4年10月14日に閣議決定。10月26日に国会に提出され、可決されました。その内容を見てみましょう。

障がい者雇用率に算定する障がい者の範囲拡大

以前の法定雇用率制度においては、週所定労働時間が20時間未満の障がい者雇用は対象とされていませんでした。しかし、週20時間未満の労働者は障がいの区分を問わず存在しており、特に精神障がい者においてその割合が増加傾向となっていることが問題視され、法改正に盛り込まれました。

令和6年4月1日より、週所定労働時間が10時間以上20時間未満の精神障がい者、重度身体障がい者及び重度知的障がい者も、雇用人数0.5人として算定が可能となりました。

精神障がい者の算定特例の延長

精神障がい者の職場定着を進める観点から、精神障がい者の実雇用率の算定に関して、令和4年度末までは、0.5カウントであった20時間以上30時間未満の短時間労働者を1カウントとする特例措置がありました。この措置については、障がい者雇用分科会の意見書を踏まえ、令和5年4月1日以降も当面の間延長されています。

障害者雇用調整金や納付金の変更

これまでの事業主への援助は、障がい者雇用の数を評価する調整金・報奨金の支出が大半を占める一方、障がい者雇用の質の向上に向けた助成金の支出は少なく、事業主に対する援助が十分に行きわたっていないことが課題となっていました。

そこで、令和6年4月1日より、障がい者の雇用人数が一定数を超える場合、超過人数分の調整金支給額を6,000円、報酬金支給額を5,000円減額することになりました。調整金・報酬金の減額の代わりに既存の助成金を拡充するほか、以下のような新たな助成金を新設しました。

障害者雇用相談援助助成金

労働局によって認定を受けた認定事業者がほかの事業主に対して障がい者の雇入れや雇用管理に関する相談援助事業を行った際に助成金が支給されます。

こうした助成金による障がい者の職業人生全体を通した支援の強化の背景には、雇用の確保だけでなく、質の高い雇用を提供しようとする事業主の取り組みを支援する狙いもあります。

障がい者雇用の事例紹介

障がい者雇用が会社全体によい影響をもたらしている企業もあります。障がい者雇用を軌道にのせている事例をご紹介します。

法定雇用率を大幅に上回る障がい者を雇用し、主体的な働き方を実践

企業や組織の理念に多様性や公平性、包括性を盛り込み、あらゆる人材が互いに尊重しながら活躍できる環境を構築する概念、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の実践を推進し、多様な人材活用に積極的に取り組むある企業。障がいのある方が働きやすい農園を雇用の場とし、現在3拠点を運営しています。

農園で育てる野菜は、障がいのある農園スタッフたちが主体的に決めていきます。栽培が容易な葉野菜からはじまり、スタッフのスキルアップに伴いジャガイモやカブなどの根野菜の栽培も始めました。

すでに法定雇用率を上回っていますが、DE&Iの観点からも、障がいの種別に関わらず、より多くの障がいのある方に広く就労の機会を提供すべく、障がい者雇用を推進しています。

多様な個性が楽しく働く農園から生まれる、サステナビリティ経営の原動力

まとめ

障がい者雇用とは、障害者雇用促進法に基づき、障がいのある方の雇用機会を確保し、安定した就労を支援するために設けられた制度です。一般雇用とは異なり、合理的配慮の提供や勤務条件の調整など、個々の特性に応じた支援を行う点が特徴となります。企業にとっては、法定雇用率の遵守のみならず、助成金・支援制度を活用しながら職場環境を整備することで、企業のブランドイメージ向上や組織のダイバーシティ強化につながる意義があります。

企業の担当者も就労を希望する方も、制度を最大限に活用するために、その仕組みを正しく理解しておくことが重要です。

障がい者雇用に関するよくある質問

障がい者雇用の対象者は?
主に身体障がい、知的障がい、精神障がいのある方で、障害者手帳を保有されている方が障がい者雇用の対象となります。障がいのある方でも、障害者手帳を保有されていない場合は対象となりません。
なぜ障がい者を雇用する必要があるの?
誰もが活躍できる社会の実現のためには、障がいのある方が働ける場所を作ることは重要です。また、障害者雇用促進法に定められた法定雇用率を達成できない場合、企業には納付金を納めることが義務付けられているため、社会的な意義と経済的な負担の両面から、障がい者雇用を行う意義があります。
障がい者雇用の事例は?
エスプールプラスでは、野菜作りを通じて障がいのある方が活躍できる場のご提供とともに、法定雇用率の達成を実現した事例が多数ございます。農業での障がい者雇用は障がいのある方でも働きやすい環境であると厚生労働省も推薦しています。多くの企業のご担当者様から障がい者雇用に関するご相談をいただいております。詳しくは障がい者雇用の事例をご覧ください。
写真:岡本 暁
記事監修|岡本 暁(おかもと あきら)
株式会社エスプールプラス 事業本部 経営企画室 室長
創業三期目の株式会社エスプールに入社。 2014年より株式会社エスプールプラスにジョイン。 農園運営部門の責任者、障がい者の就労支援部門の責任者を経て、 現在は経営企画室の室長として行政、福祉関係者と関わり、 当社理念(一人でも多くの障がい者雇用を創出し、社会に貢献する)の実現に向けた活動に専念。