障がい者の雇用に関する事項を定めた障害者雇用促進法。1960年にその前身となる法律が定められましたが、その後幾度も改正がおこなわれ、近年も法定雇用率の引き上げや、カウント方法の見直しなどさまざまなアップデートがされています。
ここでは、直近の改正内容と、それによる注意点などを解説します。
障がい者の雇用の創出と自立の促進は、現代社会が抱える大きな課題です。国は、そうした課題に対処する法律として、障害者雇用促進法(正式名称:障害者の雇用の促進等に関する法律)を定めています。
まず、障害者雇用促進法の成立に至るまでの歴史的過程やその意義など、基本的な概要を解説します。
障害者雇用促進法の歴史は約60年前まで遡ります。1960年、高度経済成長期を迎えた中で立案された自立と完全雇用の達成を目標とする経済計画や、障がい者の雇用を促進する国際的な流れを受け、身体障害者雇用促進法が制定されました。これが現在の障害者雇用促進法の前身です。
身体障害者雇用促進法では、事業主が雇用すべき障がい者の最低雇用率が初めて設定されました。しかし、その達成は努力目標に留まり、強制力に乏しいものでした。また、身体障害者雇用促進法は、その名が示す通り身体障がい者のみに対象を限定したものでした。
1976年、身体障害者雇用促進法は改正され、法定雇用率は実際に達成すべき義務として強制力を持つことになりました。また、合わせて雇用給付金制度が設置されました。この制度は、障がい者の法定雇用率を達成していない企業から納付金を徴収し、それを財源として、障がい者雇用に積極的な企業に調整金や助成金を給付するというものです。
法定雇用率の義務化と雇用給付金制度は、現在の障害者雇用促進法の基本骨子でもあります。国による障がい者雇用対策の原型は、このとき固まったといえるでしょう。
1987年、身体障害者雇用促進法は、現在に続く障害者雇用促進法へと改名され、法の対象となる障がい者の種類が拡張されます。1998年には知的障がい者が、2018年には精神障がい者が、この法の適用対象となりました。
障害者雇用促進法はこれまで何度も改正され、事業主が障がい者を雇用する際の負担を軽減する各種助成金を設置するなど、障がい者の雇用安定化を図る取り組みが進められています。社会情勢の変化に応じ、障害者雇用促進法の改正は今後も続くと考えられます。
厚生労働省は、障害者雇用促進法の目的を、「障害者の雇用義務等に基づく雇用の促進等のための措置、職業リハビリテーションの措置等を通じて、障害者の職業の安定を図ること」と規定しています。すなわち、障がいのある人が障がいのない人と同様に、その能力と適性にもとづいて職業に就き、自立した生活を送れるようにすることを目指すものであり、そこには共生社会の実現が大きな理念として掲げられています。
また、障害者雇用促進法の第4条には、障がい者が「職業に従事する者としての自覚を持ち、自ら進んで、その能力の開発及び向上を図り、有為な職業人として自立するように努めなければならない」と書かれています。つまり、国が目指す共生社会において、障がい者には、自立した一人の社会人として企業や社会に貢献することが求められています。
障がい者が安全に働ける職場環境を整え、その能力の発揮を促すことは、労働環境の改善や人材活用の面からも、企業や社会にとって大きな意義のあることなのです。
続いて、障害者雇用促進法が適用される対象を、雇用する企業と雇用される障がい者に分けて解説します。
障害者雇用促進法では、すべての事業主に対して、規定の法定雇用率以上となるよう障がい者を雇用するように義務づけています。ここでいう事業主には、民間企業はもちろん、国や地方自治体、各都道府県の教育委員会も含まれます。
2024年3月まで、障がい者の雇用義務がある民間企業は45.5人以上の従業員を有する企業でした。しかし、2024年4月に法定雇用率の引き上げが行われ、現在は40.0人以上の従業員を雇用するすべての企業に障がい者の雇用が義務付けられています。
現在、障害者雇用促進法の対象(法定雇用率の算定基礎)となっている障がい者は、A)身体障がい者、B)知的障がい者、C)発達障がいを含む精神障がい者に大別できます。
ここでの注意点は、Aなら身体障害者手帳、Bなら療育手帳、Cなら精神障害者保健福祉手帳の所持者のみがこの法の対象となることです。これらの手帳を所持していない障がい者については、障がい者の雇用率の算定において数に含められません。
さらに、1級および2級の身体障害者手帳を持つ人は重度身体障害者に、療育手帳の所持者のうち児童相談所などの知的障がい者判定機関で重度と判定された人は重度知的障害者に区分されます。精神障がい者については、2026年1月時点では重度の区分はありませんが、厚生労働省の研究会で議論されています。(第12回今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会)
事業主は、障がい者の雇用率を計算する際、まずは手帳の有無を確認することから始めるといいでしょう。
2022年の改正では、障がい者の職業能力の開発が事業主の責任のもとにあることの明確化や、多様なニーズを踏まえた障がい者の働き方の推進、企業による職場環境の整備のための助成金などの内容が盛り込まれました。
主な改正内容は以下の6点です。
国は長年、雇用施策と福祉施策を連携させながら障がい者就労支援に取り組んできました。その取り組みにより、障がい者雇用は着実に発展してきています。
障がい者雇用が発展するにつれ、さまざまな障がい者が就職を志す時代になってきました。働き方の多様化や障がい者就労を取り巻く状況の変化、あたらしい生活様式の定着を見据えた取り組みなどにより、障がい者雇用の可能性は今後も広がっていくことが予想されます。
一方、雇用施策と福祉施策の縦割り制度による弊害や、制度の谷間に陥って支援を受けられていない障がい者の存在など、さまざまな課題も残っています。障がい者がより働きやすい社会の実現のためにも、障がい者就労支援のさらなる充実と強化は必須とされ、課題解決に向けた具体的な対応策を検討していく必要が生じています。
そこで、2019年7月、厚生労働省において、障害者雇用・福祉連携強化プロジェクトチームが発足。障がい者就労支援のさらなる充実と強化に向けた課題の整理と今後の検討についての議論が重ねられました。2020年11月からは、より具体的な施策を検討するため、それぞれの施策の有識者などを構成員とした障害者雇用・福祉施策の連携強化に関する検討会を開催。2021年6月にその報告書が提出されました。
この報告書をふまえ、障がい者の職業能力の開発や向上が事業主の責務であることの明確化、障がい者の多様な就労ニーズを踏まえた特定短時間労働者や精神障がい者の雇用率算方法の改定、企業による障がい者就労環境の整備などのための助成金の拡充などを盛り込み、障害者雇用促進法が改正されました。
2022年に決定した改正内容は、2023年と2024年に分けて施行されました。このうち、2024年に施行された内容は以下のとおりです。
それぞれについて詳しく解説していきます。
障害者雇用促進法では、障がい者の法定雇用率について、少なくとも5年ごとに見直しを行うことが以前から定められています。そのため、2018年に2.3%への引き上げが行われてから5年が経った2023年のタイミングで、法定雇用率の再設定が行われました。
その結果、社会情勢などを踏まえ、2023年からの一般企業の雇用率は2.7%と設定されました。ただし、企業が計画的に対応できるよう、2.7%にむけて段階的に引き上げられることとなり、具体的には以下のスケジュールで一般企業の法定雇用率の引き上げが行われる計画が立てられました。
2026年以降については、2023年から5年が経過する2028年に、その時代の状況を踏まえて法定雇用率の再設定が行われる予定です。
また、国と地方公共団体などは3.0%、教育委員会は2.9%へ、一般企業と同様に段階的な引き上げが行われています。
2024年3月まで、週所定労働時間が20時間未満の労働者は、たとえ障がい者として雇用していたとしても、障がい者雇用率の算定には加算されませんでした。しかし、週に20時間働くためには、土日休みとした場合、平日1日4時間、月曜から金曜まで毎日働かなくてはなりません。一方、障がい特性により長時間の勤務が難しい方もいるため、そういった方々はこれまで特に労働の機会を得にくい状況にありました。
2023年の法改正ではこの点に着目し、長時間勤務に困難のある障がい者の雇用機会を増やすための改定が行われています。具体的には、2024年4月1日より、精神障がい者、重度身体障がい者、重度知的障がい者で週所定労働時間が10時間以上20時間未満の特定短時間労働者について、実雇用率上0.5人としてカウントできるようになりました。
この改定によって新たに規定されたカウントルールに則った、障がい者ひとりあたりのカウント数を以下の表にまとめました。
【障がい種別・労働時間別 カウント数一覧】
| 障がい種別 | 30時間以上 | 20時間以上 30時間未満 |
10時間以上 20時間未満 |
|---|---|---|---|
| 身体障がい者 | 1 | 0.5 | 0 |
| 重度身体障がい者 | 2 | 1 | 0.5 |
| 知的障がい者 | 1 | 0.5 | 0 |
| 重度知的障がい者 | 2 | 1 | 0.5 |
| 精神障がい者 | 1 | 0.5 | 0.5 |
なお、2024年3月31日までは特定短時間労働者を雇用している企業に対し特例給付金が支給されていましたが、雇用人数算定方法の変更にともない、2024年4月1日からは廃止されています。
精神障がい者は知的障がい者や身体障がい者に比べ、職場定着率が低い状況にありました。一方、週20~30時間の短時間労働の精神障がい者は職場定着率が比較的高く、また定着後に労働時間を延ばせる割合が高い傾向もありました。
そこで導入されたのが、精神障がい者の算定特例です。短時間労働の精神障がい者について、カウントの原則に基づくと1人につき0.5カウントの扱いになりますが、2023年度末までは、雇入れからの期間などについて一定の要件を満たした場合に限り、短時間労働の精神障がい者1人につき1カウントとする算定特例が設けられていました。
2023年の改正では、この精神障がい者のカウント特例措置を当面の間継続し、それまであった一定の要件を排除する形に変更されています。つまり、2024年4月1日よりすべての短時間労働の精神障がい者が1人につき1カウントで算定されているということです。
出典:厚生労働省|令和4年障害者雇用促進法の改正等について
出典:精神障害者である短時間労働者に関する算定方法の特例措置 Q&A
労働者数が100人を超える企業に対しては、法定雇用率を超えて雇用している障がい者の人数に対して障害者雇用調整金が支払われます。また、労働者数が100人以下の企業において各月の雇用障がい者数の年度間合計数が一定数を超えている場合、超えている人数に対して報奨金が支払われます。
2023年の改定では、この調整金・報奨金の見直しが行われました。具体的には以下のように調整されています。
上記の内容を表にまとめると、以下のとおりです。なお、記載の金額は雇用労働者1人あたりの月額支給額です。
【障害者雇用調整金・報奨金の支給単価(1人当たり/月)】
| 施行時期 | 調整金 | 報奨金 |
|---|---|---|
| 2023年3月31日まで | 2万7,000円 | 2万1,000円 |
| 2023年4月1日から | 2万9,000円 | 変更なし |
| 2024年4月1日から |
2万9,000円 ※支給対象人数10人以下
2万3,000円
※支給対象人数10人を超えた分 |
2万1,000円 ※支給対象人数35人以下
1万6,000円
※支給対象人数35人を超えた分 |
調整金、報奨金のどちらにおいても、支給人数が基準よりも多い企業に対して、超過している人数1人あたりの支給額を減額調整しています。
調整金・報奨金は、企業が障がい者を雇用する際に必要となる費用の助成という立ち位置で支給されてきました。しかし、企業の障がい者雇用の実態として、障がい者雇用人数が増えるほど雇用に要する1人あたりの費用負担は小さくなる傾向にあります。それを踏まえ、一定の基準以上の障がい者を雇用している企業に対しては、超過分の人数に対する費用補助を減額して調整することになったのです。
調整金・報奨金を減額調整したことによって生まれた財源は助成金の充実に充てられ、事業主支援の強化を目指しています。
出典:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構|障害者雇用納付金制度の概要
出典:厚生労働省|障害者雇用調整金・報奨金の支給調整について
あらゆる立場の障がい者が雇用の機会を得やすくなるよう、障害者雇用納付金助成金の新設と拡充が行われました。
まず、加齢により職場に適応することが難しくなった35歳以上の障がい者の雇用継続のために、以下の助成が拡充されました。
また、助成金のわかりやすさなどを考慮し、障害者介助等助成金のメニューの整理や拡充を実施しました。これにより、事務仕事以外を行う視覚障がい者のための支援員など、それまで助成金支給の対象外だった介助者の配置も助成の対象となりました。
さらに、職場適応援助者助成金の増額、重度障害者等通勤対策助成金の拡充などを通して、障がいのある方が働きやすい職場環境を企業が整備しやすいにようにしています。
その他、中小企業等に対して採用や雇用管理に関する相談援助の事業を行う者への助成金(障害者雇用相談援助助成金)も創設されました。
障がい者雇用に取り組みたいと考えつつ、その方法や導入について課題や不安を抱えている企業は少なくありません。そういった企業向けに、2024年4月から、障害者雇用相談援助事業が利用できるようになりました。
障がい者雇用の経験やノウハウがないために取り組みに踏み出せない企業を対象に、都道府県労働局長の認定を受けた事業者が相談役となり、雇入れや雇用管理全般に関する相談援助をおこなう事業です。具体的には、法定雇用率未達成企業や中小企業、除外率設定業種の企業などが支援対象になります。
相談援助の目的は以下の2点です。
これらの目的を達成するために、経営陣や従業員の理解促進、雇用推進体制の構築、採用・雇用の方針や環境の整備など、一連の雇用管理について相談援助がおこなわれます。支援を受けたあとにはアンケートの回答が求められますが、支援自体は無料でうけられます。
除外率とは、障がい者雇用の一律の雇用率の適用になじまない性質の業種に適用される制度です。障がい者の雇用義務人数を計算する際、もととなる労働者の人数から除外率相当分の人数を控除できるとされています。
もととなる労働者の人数が減るため、そこに雇用率をかけて算出する障がい者の雇用義務人数も減り、障がい者の雇用義務の軽減につながります。
この制度は、ノーマライゼーションの観点から2002年の法改正で廃止が決定し、2004年より経過措置として段階的な引き下げ・縮小がおこなわれています。これまで、2004年と2010年に一律10%の引き下げが実施されました。
2025年4月には、さらに一律10%の引き下げがおこなわれました。これにより、それまで除外率が設定されていた倉庫業や空港運輸業など5つの業種が除外率の適用外となりました。もっとも除外率が高い業種は船員等による船舶運航等の事業で、2025年4月以降は70%の除外率が適用されます。
除外率について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
障害者雇用の除外率制度とは?設定されている業種と計算方法について解説
2013年に制定された障害者差別解消法では、障がいのある方に対する不当な差別的取扱いの禁止や合理的配慮の提供について定められました。合理的配慮の提供は事業主の努力義務としていた同法律が改正され、2024年4月1日からは事業主の義務として定められました。
合理的配慮の提供とは、障がいのある方が社会的な障壁を感じ、それを取り除いてほしいと意思表示をした場合に、事業主は過重な負担ではない範囲でそれを取り除くための合理的な対応をすることです。商店等に来店する障がい者など外部への配慮に加え、自社で雇用する障がい者に対しても同様の対応が求められます。例えば、車椅子のままテーブルを利用できるよう既存の椅子の場所を移動させたり、難聴の方のために筆談をおこなったりすることが、合理的配慮の一例として挙げられます。
障がいの特性は人それぞれ異なるため、感じる社会的障壁もさまざまです。その障壁を取り除くために事業主が合理的配慮を提供するためには、障がいのある方と事業主の対話(建設的対話)が大切になります。
障害者雇用促進法は、2023年以前にも何度か改正を重ねてきました。
障害者雇用促進法の前身となる身体障害者雇用促進法が制定されたのは1960年ですが、このときの対象は身体障がい者に限られ、法定雇用率もあくまで努力目標として設定されていました。1976年には1.5%の法定雇用率の達成義務がスタートしましたが、この時点でもまだ対象は身体障がい者のみでした。障害者雇用促進法に名前が変わった1987年に対象が発達障がい者にまで拡充。さらに、知的障がい者は1998年に、精神障がい者は2018年に雇用が義務化されました。またこの間、法定雇用率は10年~15年ごとに引き上げられてきました。
2020年の改正では、優良事業主の認定制度(もにす認定制度)の制定、特例給付金の設置、国および地方公共団体の障がい者雇用の促進への措置などが決定しました。
日本の障がい者雇用の法律は、60年以上の歴史のなかで改正が重ねられてきました。共生社会の実現のため、これからも改正が続いていくでしょう。
障害者雇用促進法は、企業に対して以下の5つの義務を課しています。
それぞれ詳しく解説していきます。
障害者雇用促進法では、企業が障がい者を雇用しなくてはいけない割合として、法定雇用率を定めています。
法定雇用率は5年おきに見直しがおこなわれます。直近では2023年4月に見直しがおこなわれ、2026年までの段階的な引き上げが決定しました。
それまで2.3%だった法定雇用率は2024年4月に2.5%に引き上げられ、さらに2026年7月には2.7%に引き上げられることが決まっています。
2025年4月現在は従業員数40.0人以上、2026年7月以降は従業員数37.5人以上のすべての企業が、法定雇用率以上の障がい者を雇用する義務を負うことになります。
雇用の分野において、障がいを理由とした差別的扱いは禁止されています。例えば、「バリアフリーに対応していない職場環境だから車いすを使用している方は採用しない」という考え方は差別にあたります。職場内の施設利用や福利厚生などに障がいを理由とした制限をかけることも差別にあたるため、禁止されています。企業は、障がいの有無ではなく、個々人の能力に基づいて平等に雇用の機会を与えなくてはなりません。
また、障がい者を雇用する企業は、障がい特性によって起こり得る支障を改善するための合理的配慮を提供しなくてはいけません。例えば、車いすを使用している方に合わせて床のコード類の配線を変える、机の高さを調整するなどが合理的配慮にあたります。また、耳からの情報の処理が苦手な方に対して図や文書を用いた説明をおこなうことも合理的配慮の一例です。これらは障がいのある方が働くうえで必要とされる配慮であり、企業はこれを求められた場合、または必要と考えられる場合には、企業に過重な負担を及ぼさない範囲で適切に提供する義務があります
合理的配慮に関する詳細は、「合理的配慮とは?義務化や職場での対応例を分かりやすく解説」をご覧ください。
障がい者を雇用する義務のあるすべての企業は年に一度、障害者雇用状況報告書を提出する必要があります。これは、毎年6月1日時点での障がい者雇用状況を7月15日までにハローワークに提出するもので、ロクイチ報告とも呼ばれています。ここでの報告結果が障害者雇用状況の集計結果として毎年報告されており、そこで全国の障がい者雇用率が発表されます。
ロクイチ報告は、仮に障がい者の雇用人数が0人であっても、雇用義務のあるすべての企業が提出しなくてはいけません。
ロクイチ報告に関する詳細は、以下の記事をご覧ください。
ロクイチ報告とは?障害者雇用状況報告書の書き方について
障がい者を解雇する場合、企業は速やかにハローワークに解雇届を提出し、解雇の旨を報告しなくてはなりません(障害者雇用促進法81条第1項)。これは、一般の求職者と比べて再就職が難しいとされている障がい者に対して 、早期再就職へ向けたスムーズな支援がおこなえるようにするためです。短時間勤務のように、障がい者雇用人数にカウントされない常時雇用する障がい者を解雇する場合も届出が必要なので注意しましょう。
障害者職業生活相談員(以下相談員)とは、企業が雇用した障がい者の職業生活全般の相談役や指導役を担う企業内の担当者のことです。障がい者の職場定着と十分な能力発揮の実現を目的として選任されます。具体的には、障がい者への業務の割り当てに加え、業務内容や職場環境、人間関係、余暇活動に関する相談を受けたり、指導をおこなったりします。
実人員で常時5名以上の障がい者を雇用する企業は、5名以上の障がい者を雇用した時点から3ヵ月以内に相談員を選任しなくてはなりません。選任後はすみやかにハローワークへ障害者職業生活相談員選任報告書を提出しましょう。
障害者雇用促進法では、雇用義務に違反した場合、主に以下のように罰則を設け、法令の遵守を図っています。
従業員が40.0人以上の企業は、毎年6月1日時点の障がい者の雇用状況をハローワークに報告する義務があります。事業主がこの報告義務を果たさなかった場合、あるいは虚偽の報告をした場合は、30万円以下の罰金が科せられます。
法定雇用率が未達成の場合、事業主には障害者雇用納付金の納付義務が生じます。この納付義務は常用労働者が101人以上の企業に課せられ、法定雇用率に照らして、不足する障がい者数1人につき毎月5万円を国に納付する必要があります。この納付金は、障がい者を積極的に雇用する企業に分配される調整金や助成金などの財源となります。
納付金制度については、「障害者雇用納付金制度とは?雇用調整金や助成金の種類についても解説」をご確認ください。
また、雇用率未達成が慢性化している場合、ハローワークから、障がい者の雇用に関する計画書の提出命令や、その計画の実施についての勧告などが出されます。これらの勧告に不当に従わなかった場合、企業名の公表も含めた特別指導が入ります。企業名の公表は社会的信用を低下させるものです。指導が入ったら速やかに改善に努めましょう。
法定雇用率を達成している企業には、調整金や報奨金が支給されます。
まず、常時雇用労働者数が 101名以上で法定雇用率を超過した企業には、1人につき毎月2万9,000円の調整金が支給されます。
また、障がい者を多数雇用する中小企業には別途報奨金が支給されます。常用雇用労働者数が100人以下の中小企業で障がい者の雇用率が4%を超える場合、もしくは障がい者の年度間雇用合計人数が72人を超える場合、義務数を超えて雇用している障がい者数1人につき2万1,000円が報奨金として支給されます。
さらに、障がい者を雇用するにあたって特別な措置を講じる場合は、その経済的負担に対して助成金が支給されます。例えば、障がいに配慮した作業施設の設置や整備、重度障がい者の雇用を維持するための職場介助者の手配などが挙げられます。
自社雇用以外に、通勤が困難であったり、職場で働くことが合ってなかったりという理由から、在宅で業務にあたっている障がい者も多くいます。そうした在宅で働く障がい者に仕事を発注する企業に対しては、在宅就業障害者特例調整金・報奨金が支給されます。支給額は以下の計算式によって算出されます。
その他、障がい者を雇用したことがない事業主向けの障害者職場実習支援事業など、企業が障がい者を雇用しやすくなるための各種の助成が設置されています。障がい者が働きやすい職場をつくるために、積極的に活用しましょう。
調整金・報奨金制度については、以下の記事をご覧ください。
「障害者雇用納付金制度とは?雇用調整金や助成金の種類についても解説」
障害者雇用促進法の違反による納付金や行政指導、社名公表は、金銭的な負担だけでなく、企業の社会的信用にも関わるものとなります。どの企業も雇用義務違反は可能な限り避けたいものです。そのためにも、障害者雇用促進法には全面的に対応しなくてはいけません。
ここでは、障害者雇用促進法に対応するために企業がすべきことをご紹介します。
まずは自社の実雇用率を確認しましょう。自社で雇用が必要な障がい者は何人なのか、足りていない場合にはあと何人雇用する必要があるのかを明確にします。この記事でご紹介したルールに沿って、雇用すべき障がい者の数をカウントしましょう。
実雇用率が確認できたら、雇用の具体的な計画を立てます。雇用計画には、いつまでに何人雇用するのか、そのためにどのようなタイムスケジュールで採用活動を進めるのかを組み込みます。その際に使える助成金や補助金があれば、あわせて盛り込みましょう。
今までの計画で障がい者雇用が進んでいない場合は、業務設計や配置する部署の見直しなどが必要です。改めて社内の業務を洗い出し、個々の特徴を活かせる業務を見つけることを意識してみましょう。
障がい者の雇用イメージがつかめたら、実際に雇用する前に受け入れ環境や体制をしっかりと整えましょう。
障がい者の雇用にあたっては、まず執行役員や管理職が積極的に取り組む姿勢を示すことが重要です。そのうえで、障がい者雇用に取り組むことを社内に周知し、社内研修やワークショップなどを通して社員の理解を深めます。この際、上層部が率先して学びの姿勢を見せ、障がい者雇用に前向きな考えを発信するなどすれば、会社全体の意識向上につながります。
また、ハード面での環境整備も大切です。段差をなくす、手すりをつけるといった設備に関することのほか、業務内容について順序だててわかりやすいマニュアルをつくることなども環境整備の一環です。評価基準や合理的配慮の提供ルールの整理、相談役の配置なども必要です。
いずれも、障がいのある方が安心して働き続けられるために重要な取り組みとなります。
障がい者雇用を自社のみで進めようとすると、金銭的・人員的負担が大きくなりすぎてしまうこともあります。また、ノウハウが少ない企業の担当者のなかには、「そもそもどのように取り組めばいいのかわからない」という方もいらっしゃるでしょう。
障がい者雇用をスムーズに進めるためには、積極的に公的機関の支援を活用することが肝心です。ハローワークでは障がい者用の求人票を出せるほか、雇用全般の相談にのってくれます。必要に応じて専門機関や助成金・補助金の紹介をしてもらうことも可能です。また、地域障害者職業センターには、障がい者の職場適応を目的としたジョブコーチを派遣してくれる制度もあります。これらのサービスの多くは無料で利用できますので、まずは相談に行ってみましょう。
社内に切り出せる業務がない、障がい者雇用に割ける人員的・時間的余裕がないなどとお悩みの場合には、障がい者雇用を専門に行う支援サービスを活用するのも一つの方法です。そうしたサービスでは、障がい者雇用の理解を深めるところから、業務の創出、採用後の雇用継続のためのフォローなどの支援が受けられます。障がい者が活躍するための新たな業務を創出することも可能です。
「障がい者雇用に取り組みたいけど、どうしても進まない」とお悩みの際は、ぜひ一度専門サービスの利用を検討してみましょう。
企業が障がい者の雇用率を算定する場合は、以下の2点に気を付ける必要があります。
1.算定カウントについて
すでに解説したとおり、雇用率の算定方法は、障がいの種別や程度、労働時間等によって異なります。1人に対してダブルカウントや0.5カウントを適用する場合もあり、雇用人数をそのまま使用して雇用率を算出すると、誤った計算結果になってしまいます。
障がい者の雇用率を自社で算定する際には、必ず最新のカウントルールを確認してから、それに則って計算するように気を付けましょう。
2.法定雇用率
すでにお伝えしたとおり、法改正に伴い、2026年7月1日以降、障がい者の法定雇用率が引き上げられます。民間企業の場合は2.7%が法定雇用率となり、37.5人以上の規模の企業に障がい者の雇用義務が発生します。
これまで雇用義務の対象外だった企業であっても、この引き上げによって雇用義務が発生している可能性があるため、確認してみてください。
企業における障がい者の雇用義務を定めた障害者雇用促進法は定期的に改正されています。これによって、法定雇用率や除外率、助成金や支援内容、企業の義務の範囲など、変更される点も多々あります。
変更を見逃していると、気づかないうちに法令違反を犯してしまう危険性もあります。障がい者の雇用義務がある企業は、常に障がい者雇用をとりまく情勢をチェックしておかなければなりません。
改めて、この記事を機に障がい者雇用促進法の内容を正しく把握し、法律を守りながら無理のない形で障がいのある方を受け入れられるよう、体制を整えていきましょう。

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2026年7月に実施される、民間企業の法定雇用率「2.7%」への引き上げについて徹底解説します。今回の改定により、障がい者雇用の義務対象が「従業員数37.5人以上」の企業へ拡大。引き上げの背景、雇用すべき人数の計算方法、未達成時の「納付金」や「企業名公表」のリスク、そして円滑に雇用を進めるための外部機関や支援サービスの活用法まで、人事担当者が今すぐ知っておくべき情報を網羅しました。
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