障がいのある方の雇用創出と自立の促進は、現代社会において大切な課題のひとつです。
障害者雇用促進法により、各事業主に障がい者の法定雇用率の遵守が義務付けられていますが、事業主が広く障がい者の雇用を受け入れる為には、適切な職場環境の整備など事前の準備が必要です。
本記事では、障がい者を雇用する事業主に対して国から支給される各種の助成金・補助金について、その概要を解説します。
障がい者雇用に関する助成金・補助金とは、具体的にどのようなものでしょうか。助成金・補助金の種類、支給にあたっての条件、実雇用率についてなど、さまざまな決まりがあります。
障害者雇用促進法により、法定雇用率の達成が義務化され、障がい者の積極的な雇用が進んでいます。
雇用の際には、職場のバリアフリー化など、障がい者が安全に働けるよう職場環境を整える必要があります。また、さまざまな特性の障がい者を受け入れる為のサポート体制を整えることも重要です。事業主がこれらの環境整備をし、障がい者をスムーズに雇用できるよう、国ではさまざまな助成金制度を用意しています。
また、国が実施している助成金制度のほかに、各自治体で補助金制度を導入している場合もあります。これは障がい者雇用を推進するために各自治体が独自におこなうもので、施設の整備に関するものや雇入れに関するものなどがあります。自治体によっては「奨励金」として支給している場合もあるため、確認してみましょう。
障がい者雇用に関する助成金の受給対象となる事業主とはどんな企業なのでしょうか。
障がい者の雇用に関する助成制度は数多くあり、その受給要件も細かく設定されています。厚生労働省では、各助成金に共通する要件について、下記の3点を提示しています。
また、補助金制度を利用するためには、その制度を導入している自治体に居住している障がい者を雇用する、その自治体に事業所があるなどの条件を満たす必要があります。
障がい者の雇用に関する助成金はどんなものがあるでしょうか。
以下では、各種助成金の種類とその概要を網羅的に記載します。受給金額の目安についても参考にしてください。
障害者雇用助成金は、障がい者の雇い入れや雇用の継続にあたって、事業主が措置を講じる際に支給されます。助成金の種類はさまざまで、のちに紹介する障害者作業施設設置等助成金・障害者福祉施設設置等助成金やトライアル雇用助成金、障害者雇用納付金制度に基づく助成金などが障害者雇用助成金に該当します。
助成金の内容や支給要件などはさまざまですので、それぞれ確認してみてください。
障害者作業施設設置等助成金・障害者福祉施設設置等助成金は、障がい者の雇用に際して作業施設や福祉施設の設置を行う事業主に対して支給されます。
たとえば、保健施設、給食施設、教養文化施設などの福利厚生施設が該当します。
障害者作業施設設置等助成金 | |
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支給要件 | 障がい者を雇い入れる、または継続して雇用する事業主で、施設等の設置・整備をおこなわなければ障がい者の雇入れや雇用継続が困難と認められるもの |
支給額 | 設置等に要した費用の3分の2 |
対象障がい者 | 身体障がい者、知的障がい者、精神障がい者で、作業施設等の設置や整備をおこなわなければ雇入れや雇用の継続が困難と認められる方 (身体障がい者および知的障がい者の特定短時間労働者については、重度障がい者に限る) |
障害者福祉施設設置等助成金 | |
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支給要件 | 次の2つの要件に当てはまる事業主であること。
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支給額 | 対象障がい者1人につき225万円(重度身体障がい者・重度知的障がい者・精神障がい者以外の短時間労働者または特定短時間労働者の場合は1人につき112.5万円)を限度とし、設置等に要した費用の3分の1を支給。 ただし、同一事業主の団体につき一年度あたり2,250万円を限度とする |
対象障がい者 | 申請日の時点で雇用されている身体障がい者、知的障がい者、精神障がい者 |
障害者介助等助成金は、障がい者を雇用するにあたり、必要な介助者を職場に配置ないしは委嘱する事業主に対して支給されます。
後でご紹介する職場復帰支援助成金のほか、中途障害者等技能習得支援助成金や、手話通訳・要約筆記等担当者の配置助成金など、20の項目で助成金が設けられています。
支給額や支給要件についてはそれぞれ異なります。
重度障害者等通勤対策助成金は、通勤が特に困難であると認められる重度の障がい者に対し、雇用主が通勤対策をする際に支給されます。
重度障害者等通勤対策助成金 | |
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支給要件 | 対象障がい者を雇用し、通勤について必要な措置をおこなわなければ雇用の継続が困難と認められる事業主、またはその事業主の加入する事業主団体 |
支給額 | 実施する通勤対策によって異なる |
対象障がい者 | 重度身体障がい者・知的障がい者・精神障がい者・通勤が特に困難と認められる身体障がい者 |
具体的には、以下の8種類の助成金が設けられています。
重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金は、重度の障がい者を継続的に多数雇用している事業主が、これらの障がい者のために事業施設の設置や整備を行う際に利用できる助成金です。
重度障害者等通勤対策助成金 | |
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支給要件 | 対象障がい者を多数雇用し、今後も安定した雇用継続が認められる事業主で、以下の2つの要件に該当し、支給対象事業施設の設置や整備をおこなうこと
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支給額 | 5,000万円を限度額とし、支給対象費用(※)の3分の2を支給 (特例の場合は1億円を上限とし、支給対象費用の4分の3を支給) |
対象障がい者 | 重度身体障がい者(特定短時間労働者を除く)・知的障がい者(重度知的ではない短時間労働者および特定短時間労働者を除く)・精神障がい者(特定短時間労働者を除く) |
※支給対象費用=支給対象面積×対象施設の1平方メートルあたりの建築等単価
障害者職場実習支援事業は、障がい者を雇用したことのない事業主が、ハローワークなどと協力して職場実習を実施した際に支給されます。
重度障害者等通勤対策助成金 | |
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支給要件 | 以下の項目に該当する事業主 【すべてに該当】
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支給額 |
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対象障がい者 | ハローワークに求職登録している方、障がい者職業センター等で支援を受けている方、就労支援事業所の利用者、特別支援学校の生徒のうち、次のいずれかに該当する方
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トライアル雇用助成金は、障がい者を原則3ヵ月間試行雇用する「トライアル雇用」を実施する企業に支給されます。
トライアル雇用は、障がい者の雇用機会を増やす試みとして設置されました。この助成金には、障害者トライアルコースと障害者短時間トライアルコースの2つがあります。
障害者トライアルコースは、一週間の所定労働時間が正規雇用の従業員と同程度の30時間以上と設定されています。
障害者トライアルコース | |
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支給要件 | ハローワーク等の紹介により対象障がい者を雇入れ、トライアル雇用等の期間について雇用保険被保険者資格取得の届出をおこなうこと |
支給額 | 対象の労働者が精神障がい者の場合は、最初の3ヵ月間は月額最大8万円、次の3ヵ月間は月額最大4万円を支給。それ以外の障がい者の場合は、月額最大4万円を3ヵ月間支給 |
対象障がい者 | 継続雇用を希望したうえで障害者トライアル雇用についても希望している障がい者のうち、以下のいずれかに該当する者
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障害者短時間トライアルコースは、最初は週10時間以上20時間未満の勤務から開始し、勤務者の状況に合わせて最終的に週20時間以上の勤務に引き上げることを目標にしています。
障害者短時間トライアルコース | |
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支給要件 | ハローワーク等の紹介により対象障がい者を雇入れ、3ヵ月から12ヵ月間の短時間トライアル雇用をすること |
支給額 | 支給対象者1人につき最大4万円/月(最長12ヵ月間) |
対象障がい者 | 継続雇用を希望したうえで障害者トライアル雇用についても希望している精神障がい者または発達障がい者 |
特定求職者雇用開発助成金は、特定の条件を満たした求職者を新たに雇用した企業に支給される助成金です。
障がい者の雇用に関するコースとしては以下の3つがあります。
※特定求職者雇用開発助成金(障害者初回雇用コース)は、令和3年3月31日をもって廃止されました。
特定就職困難者コースは、障がい者や高齢者などの就職困難者を、ハローワークなどを介して雇用する事業主に対する助成です。本コースの助成金を受給するには、対象の労働者を継続的に雇用することが求められます。
特定就職困難者コース | |
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支給要件 | 対象労働者をハローワークまたは民間の職業紹介事業所などの紹介により雇入れ、対象労働者の年齢が65歳以上に達するまで継続して雇用し、かつ、当該雇用期間が継続して2年以上であることが確実だと認められること |
支給額 | 雇用されるのが重度障がい者等を除く身体・知的障がい者の場合は、年額120万円(50万円)を2年間(1年間)、重度の身体・知的障がい者、45歳以上の身体・知的障がい者及び精神障がい者は年額240万円(100万円)を3年間(1年6ヵ月)支給 短時間労働者の場合は障がいが重度であるかの区別はなく、年額80万円(30万円)を2年間(1年間)支給 ※カッコ内は中小企業以外の事業主についての内容 |
対象障がい者 | 身体障がい者・知的障がい者・精神障がい者 |
発達障害・難治性疾患患者雇用開発コースは、発達障がい者または難治性疾患患者を継続雇用する事業主に対する助成です。業主には、雇用した労働者に対する配慮事項を報告する義務が課され、雇用から約半年後にハローワーク職員による職場訪問を受けることになります。
発達障害・難治性疾患患者雇用開発コース | |
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支給要件 | 対象労働者をハローワークまたは民間の職業紹介事業所などの紹介により雇用保険一般被保険者として雇入れ、対象労働者の年齢が65歳以上に達するまで継続して雇用し、かつ、当該雇用期間が継続して2年以上であることが確実だと認められること |
支給額 | 中小企業の場合、対象の短時間労働者1人あたり80万円/年(2年間)、それ以外の労働者の場合は120万円/年(2年間)を支給 中小企業でない場合、短時間労働者1人あたり30万円/年(1年間)、それ以外の労働者1人あたり50万円/年(1年間)支給されます |
対象障がい者等 | 発達障がい者・難病患者 |
障害者初回雇用コースは、これまで障がい者雇用の経験がない中小企業が初めて障がい者を雇用した際に申請できる助成金です。
障害者初回雇用コース※令和3年3月31日をもって廃止 | |
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支給要件 | 過去3年間に対象障がい者の雇用実績がなく、初めて対象障がい者を雇入れ、最初の対象障がい者を雇入れた翌日から3ヵ月間に法定雇用率を達成する中小企業(常時労働者数43.5~300人)の事業主であること。 |
支給額 | 120万円 |
対象障がい者等 | 身体障がい者・知的障がい者・精神障がい者 |
障害者雇用安定助成金は、以前は障害者職場適応援助コース、中小企業障害者多数雇用施設設置等コース、障害者職場定着支援コースの3つのコースがありました。しかし、令和3年度より助成金の整理・統廃合が行われ、大幅に変更されています。
キャリアアップ助成金とは、障害の有無に関係なく、非正規雇用者のキャリアアップのため、正社員化などを実施した事業主に対して助成金を支給するものです。そのうち障害者正社員化コースが、令和2年度まであった障害者雇用安定助成金の正規・無期転換の分野を引き継いだものとなります。
キャリアアップ助成金 | |
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支給要件 | 対象障がい者等を雇用している事業主が、以下のいずれかの措置を継続的に講ずること
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支給額 | 【重度身体・知的障がい者および精神障がい者】
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対象障がい者 | 身体障がい者・知的障がい者・精神障がい者・発達障がい者・難病患者・高次脳機能障がいと診断された者 |
障がい者の雇用定着のため、業務をするうえで必要な援助や支援を行う職場支援員を雇用、または委託した事業主に対し助成されるものです。
職場介助者等助成金(職場介助者の配置又は委託助成金) | |
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支給要件 | 対象障がい者が主体的に業務を遂行するために職場介助者の配置または委嘱をおこなわなければ雇用継続を図ることが困難な事業所の事業主であること |
支給額 | 配置1人あたり15万円/月、委嘱1回あたり1万円・年間150万円を上限とし、配置または委嘱に要した賃金は費用の4分の3を支給 |
対象障がい者 | 重度視覚障がい者または重度四肢機能障がい者で、雇用継続のために職場介助者の配置または委嘱が必要だと認められる方 |
中途障がい者に対し、療養後の職場復帰において本人の能力にあった職務の開発や職場環境の整備等を実施した事業主に支給されます。事故や病気により障がいを負った雇用者の職場復帰の推進や雇用の継続が目的です。
障害者介助等助成金(職場復帰支援助成金) | |
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支給要件 | 以下のすべての要件に該当する事業主
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支給額 | 中小企業の場合6万円/月(1年間)、中小企業以外の場合4万5,000円/月(1年間)を支給 |
対象障がい者等 | 常時雇用されている労働者のうち、身体障がい者・精神障がい者・難病等患者・高次脳機能障がいがある方で、医師の意見書により1ヵ月以上の療養のための求職等が必要とされている方 |
障害者雇用納付金制度は、障がい者の法定雇用率を達成している企業を対象に、調整金や報奨金を支給するものです。常時雇用している労働者が100人を超え法定雇用率よりも多く障がい者を雇用している企業については調整金、常時雇用労働者が100人以下で障がい者を一定数以上雇用している企業については報奨金を支給します。
障害者雇用納付金制度 | |
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支給要件 |
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支給額 | 【調整金】 雇用率を超えて雇用している障がい者数1人あたり2万9,000円/月(ただし支給対象人数が年120人を超える場合、1人あたり2万3,000円) 【報奨金】 一定数を超えて雇用している障がい者1人あたり2万1,000円/月(ただし支給対象人数が年420人を超える場合、1人あたり1万6,000円) |
対象障がい者等 | 身体障がい者・知的障がい者・精神障がい者 |
人材開発支援助成金は、労働者のいわゆるキャリアアップを促進するための助成金です。中でもこのコースは、障がい者が仕事において必要な能力を得るための教育訓練を行う施設を設置・運用する企業を対象としています。
なお、人材開発支援助成金は令和6年度から独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が支給業務を行う障害者雇用納付金制度に基づく助成金へ移管し「障害者能力開発助成金」となりました。
障害者能力開発助成金については、以下よりご確認ください。
https://www.jeed.go.jp/disability/subsidy/s_noukai_joseikin/index.html
人材開発支援助成金(障害者職業能力開発コース)※令和6年度から廃止 | |
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支給要件 | 対象障がい者等に対し、障がい者職業能力開発訓練事業をおこなうこと またはそのため訓練の施設や設備の設置や整備などをすること |
支給額 |
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対象障がい者 | 身体障がい者・知的障がい者・精神障がい者・発達障がい者・高次脳機能障がいのある方・難治性疾患を有する方のなかで、ハローワークからの受講通知書が事業主に通知されている方 |
障がい者雇用の補助金は、有無も含め、自治体によってさまざまです。ここでは、補助金の例と対象地域、概要などをご紹介します。
岡山県高梁市などで導入されている制度です。高梁市では、「障害者雇用促進補助金」に以下の内容の補助金や奨励金を含めて設定しています。
支給決定を受けた特例子会社(障がい者の雇用の促進・安定を図るために企業が設立する、障がい者への特別な配慮をおこなう子会社)に対し、障がい者雇用1人につき、1年目は月額1万円、2年目は月額7,000円、3年目は月額4,000円が支給されます。ただし、対象障がい者が特定求職者雇用開発助成金の支給対象となっている場合、対象期間については支給されません。
交付決定を受けた特定子会社に対し、市内に居住している障がい者の通勤のための送迎に要した費用が交付されます。交付額は、送迎の人数や頻度により、1人あたり100円または210円です。
支給決定を受けた障がい者雇用事業所や社会福祉法人などに対し、障がい者の雇用のためにおこなった機器整備や施設整備などの費用のうち一部が補助金として支給されます。支給額は、整備に要した費用の2分の1の額が基本となります。
支給決定を受けた障がい者雇用事業所や社会福祉法人などに対し、障がい者の市内グループホームへの定住促進、または就労機会の提供をした場合に奨励金が支給されます。支給額は、障がい者1人につき、1年目は月額1万円、2年目は月額7,000円、3年目は月額4,000円です。
参考:高梁市補助金等交付規則の規定による補助金等の名称等を定める規程
京都府で導入されている制度です。以下の2つの補助金によって構成されています。
京都府内の事業所のうち、障がい者の就労継続に必要な施設や設備の整備をおこなう事業所に対して補助金が支給されます。
障害者雇用施設整備事業費補助金 | |
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支給要件 | 以下の要件のいずれかに該当すること
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支給額 |
100万円を上限とし、補助対象経費の30%(15%)を支給 ※カッコ内は常時雇用労働者が1,000人以上の事業主 |
対象障がい者 | 身体障がい者・知的障がい者・精神障がい者 |
京都府内の事業所のうち、カウンセラーの配置や管理ソフトの導入など、障がい者の就労定着に必要な支援事業をおこなう事業所に対して補助金が支給されます。
障害者定着支援事業費補助金 | |
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支給要件 | 以下の要件のいずれかに該当すること
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支給額 |
100万円を上限とし、補助対象経費の30%(15%)を支給 ※カッコ内は常時雇用労働者が1,000人以上の事業主 |
対象障がい者等 | 身体障がい者・知的障がい者・精神障がい者 |
参考:京都市 京都府障害者雇用施設整備事業等事業費補助金(令和6年度分
長野県須坂市で導入されている制度です。障がい者が作業するために必要な施設の新築や改築などに必要な費用、また作業に必要な機械や備品の改造をするために必要な費用のうち、50万円を限度とし2分の1以内の額が補助されます。
障害者作業施設等整備事業補助金 | |
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支給要件 | 須坂市内に事業所があり、障がい者を常時労働者としてこようしていること |
支給額 | 50万円を限度とし、障がい者の作業施設および設備の新築や整備等に要する額の2分の1を支給 |
対象障がい者等 | 65歳未満の身体障がい者・療育手帳の交付をうけている方・そのほかハローワークが障がい者として認めた方 |
障がい者の雇用に関する助成金はこのように、たくさんの種類があります。では実際にこれらの助成金を申請する際の注意点は何でしょうか。以下では大切な2つの事についてお伝えします。
障害者雇用促進法の改正により、平成28年から雇用分野における障がい者の「差別の禁止」と、職場での障がい者の支障を改善するための「合理的配慮の提供」が義務付けられました。
障がいの種類や程度、あるいは個々人の適性によって、雇用した障がい者に、「できないこと」が出てくるかもしれません。しかし、そうした際、不当な差別や職場いじめなどに発展させてはいけません。
障がい者を雇用する上では、障がい者の「できること」に積極的に目を向け、周囲の方が適切に仕事を割り振りしたり、サポートしたりすることが重要です。もしも、そうした見極めが難しければ、関係機関に相談したり、上記でも触れた「ジョブコーチ」を手配したり、といった手段もあります。
障がい者を雇用する際には、職場のバリアフリー化など、物理的な整備も重要ですが、職場全体で障がい者の雇用に関する関心と理解を共有することも大切です。
障害者雇用促進法においては、40.0人以上(令和6年4月時点)を雇用している事業主に対して障がい者の法定雇用率の達成を義務付けています。自社がその要件を満たしているかどうか、その実雇用率を計算する際にはいくつかの注意点があります。というのも、障がいの種類や程度、あるいは雇用形態によって、計算する際の基準が異なるからです。
まず、雇用形態についてですが、所定労働時間が週30時間以上の常時雇用労働者は「1人」としてカウントされます。所定労働時間が週20時間以上30時間未満の労働者は短時間労働者として「0.5人」としてカウントされます。これが実雇用率における基本的な数え方です。
しかし、障がい者の法定雇用率の算定基礎となる身体的障がい者、知的障がい者、精神的障がい者のうち、重度の身体的障がい者、知的障がい者は1人で2人分としてカウントされるうえ、週所定労働時間が10時間以上20時間未満の場合でも「0.5人」としてカウントされます。つまり、重度の障がい者を常時雇用労働者として雇用した場合は「2人」、短時間労働者として雇用した場合は「1人」、週所定労働時間が10時間以上20時間未満で雇用した場合は「0.5人」雇用したこととして実雇用率において計算するのです。
また、精神障がい者については、短時間労働者として雇用した場合は「1人」、週所定労働時間が10時間以上20時間未満の場合は「0.5人」雇用したこととして実雇用率において計算します。
実雇用率を計算する際にはこれらの点に注意し、正確な数値を算出しましょう。
また、カウント方法については以下の記事で詳しく解説をしています。
障がい者雇用の等級によるカウント方法の違いとは?
本記事で解説してきた助成金について、大きく分けると、
の4種類があります。各助成金の詳細や具体的な手続きについては厚生労働省のホームページなどを参考にしてください。
また、補助金については自治体によって扱いが変わるため、事業所がある自治体やその周辺の地域などでどのような制度があるかを確認しておくと良いでしょう。
障がい者を雇用する事業主は、いま雇用している障がい者、あるいは雇い入れようとしている障がい者にとって働きやすい職場を作り、周囲の方も合理的配慮をする義務があります。
こうした配慮は、安全性などの向上はもちろん、生産性の向上にも繋がります。ここでご紹介した各種の助成金を積極的に活用し、障がい者の雇用拡大に努めていきましょう。