日本における社会保障費は年々増加しています。社会保障費に障がい者にかかる福祉費用も含みますが、障がい者福祉費用もまた年々増えています。

今回は、障がい者雇用が進むことで増加し続ける社会保障費にどのような影響があるのかを考察し、障がい者雇用の重要性・意義について解説します。

社会保障費における障がい者福祉の現状

日本の国家予算(2021年度予算案 一般会計歳出総額)は106兆円で、その33%にあたる約35兆円が社会保障費に割り当てられて社会保障給付額の一部となっています。その予算は公共事業や防衛費よりも大きく割かれています。

※出典:財務省「これからの日本の財政を考える」

社会保障費として給付される金額とはどれほどなのか、また何に使われているのかを確認したうえで、その社会保障費のうち障がい者福祉へ充てられる費用はどの程度なのか、そして障がい者福祉はどのような施策でおこなわれているのかについて見ていきます。

毎年増加する社会保障費とその内訳、財源について

社会保障とは、さまざまな理由で自立して生活できない人を社会全体でサポートしていく制度です。国や地方自治体などが現金やサービスを支給し、生活の安定のために支援します。

国民には、その誰もが平等に生活する権利が与えられています。それを可能にするために社会保障費は必要なものです。

厚生労働省の発表によると、日本における社会保障費は年々増加しています。しかし、人口の高齢化が進む一方で出生率は低水準の状況が続く日本では社会保障費を現役世代や若者だけで支えることが難しくなってきており、その構造的な問題がしばしば取り上げられています。
では、社会保障費は具体的に何に使われるのでしょうか。またその費用はどれほどなのでしょうか。

給付額(歳出)と財源(歳入)、使途の内訳は以下のとおりです。

社会保障費の給付額「歳出」について

日本における社会保障費の給付額、歳出は、2020年の予算ベースで126.8兆円です。社会保障費の給付額は年々増加しており、その増加のペースも早まっています。1980年に24.9兆円だった給付額は、2020年までの40年で約5倍に増えています。
※出典:厚生労働省「社会保障給付費の推移」

社会保障費の財源「歳入」について

一方、歳入についてどうでしょう。令和2年の数字を見てみると、給付額126.8兆円に対して国からの一般会計予算で割り当てられたのは35.8兆円(28.3%)。また地方(都道府県市町村)から15.2兆円(12.3%)が割り当てられますが、約6割となる73.6兆円(そのうち被保険者拠出額が38.9兆円、事業者拠出が34.7兆円)が保険料徴収によって賄われています。今後の少子高齢化を考えれば、国からの割当が十分であるとはとても言えません。

社会保障費の推移とその使途の内訳

社会保障費が充当される大まかな内訳は、以下の3つです。

  • 高齢者への年金給付(57.7兆円、45.5%)
  • 医療費(40.6兆円、32.0%)
  • 福祉その他(28.5兆円、22.5%)

1の年金給付とは、厚生年金、国民年金等の公的年金などへの給付です。2の医療費には、医療保険、後期高齢者医療の医療給付、生活保護の医療扶助等があります。3の福祉その他には、社会福祉サービスや介護対策に係る費用、生活保護の医療扶助以外の各種扶助等があります。

※出典:厚生労働省「社会保障給付費の推移」

障がい者福祉に関わる費用や具体的施策について

障がい者福祉とは、障がいのある方が生活していくために必要な手助けをし、同じ社会で共に暮らしていくために必要となる支援、社会的サービスのことです。国、地方自治体などによる支援がおこなわれています。
では、障がい者福祉に関わる費用はどれほどなのでしょうか。またその費用はどんなことに使われているのでしょうか。

障がい者福祉にかかる費用

障がい者福祉の費用は平成31年の数字で年間約1.5兆円となっています。その予算はやはり増加傾向にあり、平成19年から平成31年までの12年間で2.8倍に増えています。

費用増加の要因としては、障がい者の数が増えていることが挙げられます。平成31年4月の障がい者の数は119.2万人で、平成30年4月117.1万人から1年で5.9%(身体障がいは1.3%、知的障がいは3.0%、精神障がいは7.7%)増加しています。

※出典:厚生労働省「令和元年度 障害者福祉施策の動向について」

障がい者福祉の具体的な施策について

障がい者福祉の施策は、大別すると以下の2つがあります。

一つ目は「介護給付」です。介護給付とは、訪問介護や施設介護などのサービスを受けることです。障がいの程度に合わせて入浴、排泄、食事などの介護等を受けることができます。

二つ目は「訓練等への給付」です。これには自立訓練や就労支援制度などがあります。自立訓練は、自立した生活を送るための身体機能維持・向上のための訓練や、就労に必要な訓練を行うものです。就労支援制度には、障がい者が仕事に就く機会を提供し訓練する就労継続支援や、一般企業に就労するための訓練をする就労移行支援、就労が定着するように支援する就労定着支援などがあり、障がいの程度に応じて支援を受けることができます。

社会保障費から見る障がい者雇用の意義

障がい者の雇用が実現すると、具体的にどのような変化が起きるのでしょうか。その効果を考えてみましょう。

まず、障がい者の雇用が進むことで、増え続ける社会保障費の支出を抑えられると思われます。障がい者の方が持つ能力を発揮する場所を与えることができれば、彼らは自分の力で稼いでいくことができます。それによって障がい者に対する社会保障、支援が不要になることはありませんが、補償額の増加を抑制、もしくは縮小していくことが期待できます。

また、日本経済にも好影響を与えそうです。人口が減少し労働力が不足すると、日本経済の生産力が落ちていくことが想定されます。少子高齢化社会へと進んでいる日本ですが、この構造はさまざまな要因によって作られていて、これをすぐに崩して変化させていくことは簡単ではありません。しかし、障がい者雇用の促進により労働力が担保できれば、日本経済衰退の抑制に一役買うことにもつながるでしょう。

また、これは障がい者雇用の効果の副産物となりますが、自ら働き給与を得ることで障がい者一人ひとりの自尊心を向上させることもできるでしょう。なにより、社会に参画しているという実感が得られるはずです。


障がい者雇用を行おうとしても社内に知見を持った担当者がいなかったり、雇用管理に不安を抱えている企業もあるでしょう。そのような際には、障がい者雇用支援サービスを利用することも一つの手です。
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まとめ

ここまで、社会保障費の観点から障がい者雇用の意義を考えてきました。
日本の社会が直面している社会保障費の歳出の膨張という課題。障がい者の雇用促進は、その解決の一翼を担うものです。そして、障がい者も健常者も共に働き、生きる誇りを持ち、豊かに暮らす。そんなノーマライゼーションが浸透した社会の実現にもつながっていく取り組みでもあるのです。