障がい者に対するいじめの現状

企業では障害者雇用促進法に基づいて障がい者雇用を行う必要がありますが、それと同時に、障がい者の虐待を防ぐための「障害者虐待防止法」を守ることも定められています。

「障害者虐待防止法」は、障がい者への虐待を禁止し、自立や社会参加の妨げとなるものへの予防と早期発見の取り組みについて記されています。

厚生労働省から出されている「使用者による障害者虐待の状況等」で障がい者へのいじめに関する報告がされています。令和元年度の発表から、見ていきましょう。

  • 通報・届出のあった事業所数・・・ 1,458事業所
  • 通報・届出の対象となった障がい者数・・・ 1,741人
  • 虐待が認められた事業所数・・・ 535事業所
  • 虐待が認められた障がい者数・・・ 771人

また、受けた虐待としては、経済的虐待が最も多く、次いで心理的虐待、身体的虐待となっています。

障がい者に対するいじめの種類と具体例

障害者虐待防止法の中では、次の5つが虐待とされています。

  • 身体的虐待
  • 性的虐待
  • 心理的虐待
  • 放置等による虐待
  • 経済的虐待

これらについて、詳しく見ていきましょう。

経済的虐待

経済的虐待は、障がい者の財産を不当に処分する、障がい者から財産上の利益を得るなどです。

具体的には、次のようなことが該当します。

  • 賃金等を支払わない
  • 賃金が最低賃金に満たない/li>
  • 本人の了解を得ずに現金を引き出す

心理的虐待

心理的虐待としては、障がい者に対する暴言や、拒否的な対応、差別的な言葉や行動、障がい者に心理的外傷を与える言動などが含まれます。

具体的には、次のようなことが該当します。

  • 脅迫する
  • 怒鳴る<
  • 悪口を言う
  • 拒絶的な反応をする

身体的虐待

身体的虐待は、障がい者の身体に怪我や傷を負わせること、また怪我や傷を生じる恐れのある暴行を加えること、正当な理由がないのに障がい者の身体を拘束することなどが含まれます。

具体的には、次のようなことが該当します。

  • たたく
  • 殴る
  • つねる
  • 異物を食べさせる
  • 監禁する
  • 危険・有害な場所での作業を強いる

放置等による虐待

放置等による虐待とは、障がい者を衰弱させるような食事の制限、長時間の放置、虐待されている障がい者を放置する等の行為です。

具体的には、次のようなことが該当します。

  • 食事を提供することになっているのに食事や水分を与えない
  • 仕事を与えない
  • わざと無視する
  • 病気やけがをしているにも関わらず、受診させない

性的虐待

性的虐待は、障がい者にわいせつな行為をおこなったり、わいせつな行為をさせたり、強要するなどが含まれます。

具体的には、次のようなことが該当します。

  • 障がい者の前でわいせつな会話をする
  • 性的暴力をふるう
  • 性的な行為や接触を強要する

障害者虐待防止法の内容

「障害者虐待防止法」は、正式名称を「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」といい、2012年10月1日から施行されてます。

「障害者虐待防止法」は、障がい者の尊厳を守り、虐待を禁止するものです。障がい者の自立や社会参加を進めるように、虐待の予防や早期発見への取り組み、障がい者を養護している人の対応方法などを規定します。

障害者虐待防止法の対象には、次の3つがあります。

  • 養護者による虐待
  • 障がい者福祉施設従事者による虐待
  • 使用者による虐待

3つ目の「使用者による障がい者虐待」とは、企業や事業主のことを指します。

そのため、使用者には、管理職、労務管理者、人事担当者をはじめとして、障がい者と一緒にはたらくあらゆる社員、職員、スタッフが含まれます。

虐待が発生していると判断されるのに、虐待者、被虐待者本人の自覚は問われません。時として、虐待者、被虐待者(虐待を受けている人)に自覚がない場合も含まれます。

例えば、虐待をしている人が「指導、しつけ、教育」という名のもとに虐待を行っている場合もあります。また、虐待を受けている人が、障がいの特性から自分が虐待を受けていると認識できないこともあります。

しかし、先ほど見てきたような「身体的虐待」「性的虐待」「心理的虐待」「放置等による虐待」「経済的虐待」に該当する行為は、虐待とみなされます。

職場でのいじめの防止と対策法

職場でのいじめを防止するためには、どのような予防が行えるのでしょうか。

【研修の実施】

まずできることは、労働者への研修の実施です。

障がい者虐待を防止に向けて、障がい者の人権への理解を深めることや、障がいの特性に配慮した接し方や仕事の教え方などを学べる機会を作りましょう。また、障がい者虐待の法律や、障がい者虐待に該当する行為などを具体的に学ぶことも大切です。

仮に、障がい者虐待を事業所で発見した場合には、どのような行動を取ることが望ましいのかを確認するとともに、そのような状況が起きる前に職場内で率直に意見交換できるような環境を作ることは、いじめ防止に役立ちます。

【苦情処理体制の整備】

雇用している障がい者やその家族が相談することができるように、相談窓口を開設します。そして、体制づくりをしていることの周知を図ります。

【不利益取扱いの禁止】

障がい者の雇用主は、労働者による通報を理由に、解雇やその他不利益な取り扱いをしてはならないと定めています。

いじめにあった場合の相談窓口

いじめにあった時の相談窓口として、障害者虐待防止法では、市町村または都道府県をあげています。障がい者虐待を受けていたり、虐待を受けた恐れのある障がい者を発見した場合には、市町村または都道府県の障がい者虐待対応窓口に連絡しましょう。

報告を受けた労働局は、労働基準法、障害者雇用促進法、男女雇用機会均等法など所管する法令に基づき、所轄の労働局、労働基準監督署または公共職業安定所の職員が事業所に出向くなどして、調査や必要な指導を行います。

いじめのあった業種や事業所の規模

厚生労働省が発表している令和元年度の障害者虐待等の結果によると、次のような業種や事業規模でのいじめがあったことが報告されています。

【業種】

製造業 147件 (27.5%)

医療、福祉 109件 (20.4%)

卸売業、小売業 69件  (12.9%)

サービス業(他に分類されないもの) 45件 (8.4%)

宿泊業、飲食サービス業 40件 (7.5%)

建設業 31件 (5.8%)

運輸業、郵便業 28件 (5.2%)

生活関連サービス業・娯楽業 28件 (5.2%)

【事業所規模別】

5~29人 259件  (48.4%)

5人未満 95件 (17.8%)

30~49人 84件 (15.7%)

100~299人 35件 (6.5%)

50~99人 28件 (5.2%)

出典:厚生労働省「令和元年度使用者による障害者虐待等の結果公表」

まとめ

障がい者雇用でのいじめの現状や「障害者虐待防止法」の内容や事業主の果たすべきことについて見てきました。

虐待は、虐待をしている人が、自分は虐待をしている意識や自覚がされていないことも多くあります。「指導」「しつけ」「教育」といいながら認識している場合もあるので、注意が必要です。

このようなことを避けるために、研修を実施したり、苦情処理体制の整備をおこなっていくことが大切です。研修の中では、障がい者の人権についての認識を深めることや、障がいの特性に配慮した接し方、どのようなことが虐待となるのかについて理解を図るような内容にすることができるでしょう。