障がい者を雇用する際に割り当てる業務を決める「業務の切り出し」は大切なプロセスの一つです。障がい者の能力や特性に合った業務を切り出すことで、障がい者本人にとってはもちろん、企業にとっても有益な障がい者雇用を実現できます。しかし、業務の切り出しが難しいと感じている担当者の方も多いでしょう。
ここでは、業務の切り出しの方法やポイント、切り出しが難しい場合の対処法などを解説します。
新たに障がい者を雇用するうえで最大のネックは「担当してもらう仕事がない(切り出せない)こと」という企業は少なくありません。
仕事を切り出す際の考え方として重要なポイントは、職種や業務単位で考えず、作業単位で仕事を切り出すことです。外注している仕事、派遣社員が担当している仕事の一部や全部などのなかに、障がい者が担える仕事はないかを確認してみましょう。
また、社員が担当している仕事のなかにも、障がい者が担える仕事として切り出せるものがある可能性は十分にあります。量が多いため時間外の作業となってしまっている仕事や、専門的な知識を必要としない仕事などは、障がい者に任せられる可能性があります。
初めて業務の切り出しに取り組む場合、どこからはじめれば良いかわからないと悩んでしまうこともあるでしょう。
業務の切り出しには、それを効率的におこなうための手順があります。以下の手順に沿っておこなうことで、初めての場合でも効率的に業務の切り出しができます。
ひと口に会社といっても、そのなかにはさまざまな部署があり、業務を分担しているはずです。まずは障がい者を配属する部署を決めましょう。
部署の選定にあたっては、障がい者が取り組みやすい業務の有無や働く環境などを考慮することが大切です。障がい特性にあった業務があるか、合理的配慮をしやすいかどうかなど、現場の従業員に確認しながら選定をしましょう。
障がい者を配属する部署が決まったら、そこでおこなわれている業務を洗い出しましょう。まずは部署内の業務を一つひとつ書き出し、さらにそれを細分化します。そうすることで一つひとつの作業内容がわかりやすくなり、どのような能力を持った人がその業務にあたれるかの判断がしやすくなります。
このような流れで障がい者にとって取り組みやすい業務をリストアップしていき、精査することで、適切な切り出しの実現につながります。
障がい者雇用において業務の切り出しは大切な作業の一つです。ただし、業務を切り出す際には注意しなくてはいけないこともいくつかあります。その注意点を3つ解説します。
障がい者に業務を割り当てる際に、いくつかの部署にまたがって業務を割り当てる場合もあるでしょう。そういった場合であっても、業務に関する窓口や担当者は一本にまとめるようにしましょう。窓口を一本化することで、働く障がい者の方は業務の不明点を相談しやすくなり、働きやすさにつながります。また会社としても、窓口を一本化することで、連絡漏れのリスク減や現場の業務軽減といったメリットが得られます。
障がい者の能力や特性は人それぞれです。切り出した業務を機械的に割り分けるのではなく、その方に合っている業務を割り当てるように心掛けましょう。難しすぎる業務を割り当てると作業が滞りますし、簡単すぎる業務を割り当ててしまうとやりがいが感じられなくなってしまう恐れがあります。任せる仕事が適切かどうか、本人とも話し合ったうえで決定すると良いでしょう。
障がい者に割り当てる業務のマニュアルを作成しましょう。マニュアルがあれば安心して働けるという障がい者の方は少なくありません。図や写真などを多く用いる等、特性に配慮しながら、わかりやすいマニュアルを心掛けて作成しましょう。
マニュアルを作成することは、障がい者本人にとってだけでなく、ほかの従業員にとっても良い点がたくさんあります。マニュアルがあれば無駄な業務を省くことができ、業務効率化に繋がるでしょう。一人ひとりの業務を効率化できれば、会社全体の業績向上も期待できます。
障がい者の業務は切り出して終わりにしてはいけません。切り出した業務に取り組み始めた後も継続的なフォローが大切です。ここでは、業務を切り出したあとに意識すべきポイントを2点解説します。
割り当てた業務が始まったあとは、定期的に進捗確認をしましょう。業務が障がい者の能力や特性に合っているか、不明な点がないかなどをチェックしていきます。日頃からの声掛けやコミュニケーションを意識して取り組みましょう。
また、定期的に面談を実施することも大切です。仕事にやりがいを感じているか、困っていることや体調の変化がないかなどをしっかりと聞く時間を設けましょう。1対1で対話する時間を定期的に設けることは信頼関係の構築にもつながり、日々のコミュニケーションもスムーズになります。
障がいの特性によっては、口頭での情報の理解が難しい方もいます。そういった方々でも理解しやすくなるよう、大切な情報は口頭と文章で伝えるようにしましょう。口頭と文章を併用することで、耳からの情報を処理することが苦手な方に対してもスムーズに情報を伝えることができます。
また、情報を文章にすることで、誰にどのような情報を与え、どのような指示を出したのかがひと目でわかるようになります。それによって、障がい者だけでなく会社全体に情報が届けやすくなり、伝達漏れによるミスの軽減などが期待できます。
ここまで、障がい者雇用における業務の切り出しについて解説してきました。しかし、会社の種類によってはどうしても業務の切り出しが難しいという場合もあるでしょう。そうした場合には、外部の支援会社にも相談してみましょう。
業務の切り出しに限らず、採用から定着までの中で、障がい者雇用がうまくいかない要因を客観的に認識することで、より良い進め方を見つけることができます。
障がい者雇用に取り組む企業において業務の切り出しは大きな課題です。障がい者を配属する部署の選定、作業単位での業務のリストアップ、業務開始後の継続的なフォローなど、さまざまな作業と配慮が必要となります。
もし、企業内に切り出せる業務がない、障がい者雇用に取り組む余裕がないという場合には、外部の支援会社に相談してみることも一つの方法です。さまざまな可能性を探りながら、より良い障がい者雇用の実現を目指していきましょう。