更新日:2021年4月14日
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障がい者雇用で残業させても問題ないのか

障がい者の雇用であっても労働契約で残業できるものになっていれば、残業してもらうこと自体に問題はありません。

しかし、障がい者雇用という働き方を選んでいるということは、何らかの配慮をしてほしいと考えて、障がい者雇用を選んでいると考えられます。そのため、残業することに対して本人の意思や、体調に影響がないかを確認することは大切です。

労働基準法の36協定は順守を

障がい者雇用においても一般雇用と同じように、1日8時間、週40時間を超えて働かせる場合は、36協定(さぶろくきょうてい)を結ぶことが求められています。これを行わないで行なうと法律違反することになりますので、注意してください。

36協定とは、「時間外・休日労働に関する協定届」です。36協定は、会社が法定労働時間を超える時間外労働及び休日勤務などを命じる場合、労組などと書面による協定を結び労働基準監督署に届け出ることが労働基準法第36条によって義務付けられています。

一般的には、企業が36協定を結んでいて、就業規則にも残業を命じるなどの記載がされているのであれば、例外を除いて断ることができません。例外としては、健康上の配慮や、明らかに業務と関係ない事で残業の指示を受けた場合などが適用されます。

合理的配慮にもとづいて、障がいを考慮して残業してもらう

もし、残業が必要な場合でも、障がいの特性や健康上の問題がないかを確認した上で行なうことが大切です。

残業が発生しそうな業務で雇用する場合には、多くの場合、採用面接などで、残業が可能かどうかを確認していることでしょう。採用時の面接のときには「問題ない」と答えていても、実際に働く前と働き始めてからでは、障がい当事者が考えていた状況と異なることも考えられます。そのため実際に残業させるときには、本当に問題がないのかを、障がい者本人に確認することが大切です。

本人が不安そうな場合や、実際におこなってみて厳しいと感じたのであれば、残業させないほうがよいでしょう。状況によっては、体調を崩したり、症状が悪化する可能性があるからです。

障がいのある方の残業・雇用管理で気を付けるべきポイント

障がい者の残業が発生するときに、企業側が気をつけたい雇用管理のポイントについて、障がい別に考えていきたいと思います。

知的障がいの方の残業で注意すべきポイント

知的障がいの方の中には、急な予定変更が苦手だったり、自分の生活リズムを崩されると不安的になることがあります。そのような特性やこだわりがある場合には、早めに残業の予定を示すことができるでしょう。見通しがたたないと不安な人もいるので、何時まで、何をするのかをわかりやすく伝えることも大切です。

また、頼まれると断れずに、何でも引き受けてしまう人もいます。「大丈夫」という言葉の表現が、必ずしも「大丈夫」ではないときもありますので、本人の意思を確認するようにしてください。

知的障がいの方は、体力的には特別な配慮をそれほど必要としない方も多くいますが、その日は大丈夫でも、翌日以降に支障が出ることもあります。また、残業を続けることによって、疲れが体調に出てしまうこともあります。

身体障がいの方の残業で注意すべきポイント

身体障がいといっても、障がいの程度、職務内容、勤務条件等は、一人ひとり状況は異なりますので、基本的には身体的に負荷がかかりすぎないように配慮し、必要に応じて医療機関と連携をとりながら行なうことができるでしょう。

職場で残業することに加え、障がいによっては、通勤時間なども考慮しなければなりません。職場での残業は問題がなくても、普段と違う時間帯での交通機関を使っての通勤は、いつもと状況が異なり困難さを感じさせるものとなることがあります。

例えば、視覚障がい、聴覚・言語障がいがある場合には、通勤時間が異なると、交通機関の混雑状況や通勤にかかる負担が変わることがあります。健常者にとっては、少し混んでいるくらいと思えることでも、状況が把握しにくい障がいをもつ人にとっては、その影響が非常に大きなものにもなることがあります。

精神障がいの方の残業で注意すべきポイント

精神障がいの特性として、疲れやすい、緊張しやすい、精神症状の変化により仕事に波があるなどの傾向が見られることがあります。また、自分の体調変化に気づきにくかったり、自分から体調の変化を伝えにくいことが原因で、本人が無理をしてしまうこともあります。

そのため精神障がいの方に残業させるときには、事前に十分コミュニケーションを図って、残業に問題がない状況か、また本人の意向を確認するようにします。

精神の方は、一見すると問題がないように見えることも多いのですが、疲れやすく、体調管理に気をつけている方もたくさんいます。仕事ができるから、今まで大丈夫だったからと、こちらが判断しないように気をつけてください。

本人の体調は当事者しかわかりませんし、判断は本人に任せましょう。もし、「大丈夫」と本人が答えたとしても、疲れている様子が見られたり、仕事の効率が落ちているのであれば、無理をさせないようにしたほうがよいでしょう。

残業をなくすために企業ができる行動とは

仕事をしているうえで、スケジュール通りに進まないことはよくあるものです。そのためいろいろな事情から、残業が生じてしまうことはあります。

しかし、それが日常的に発生しているのであれば、残業が発生してしまう原因を突き止め、それらを根本的に解決していくことが必要です。

適切な仕事の切り出しを行う

残業が発生する業務はどのようなものなのか、どんなときに発生するのか、その業務の流れを見ていくことは大切です。

一般的に、一連の業務の確認や最終段階の仕事は、それ以前の仕事を担っている人の業務の進捗によって影響を受けがちです。もし、可能であるなら、仕事のフローでのはじめの部分で関われる業務や、他の人の業務から影響を受けにくいところを切り出せるかもしれません。

また、仕事全体のスケジュールや業務量を見ていくことも必要です。仕事をしている人のマンパワー、能力、スキル以上の業務を抱えているなら、当然、勤務時間内で処理することが難しくなり、残業が発生することになります。業務に関わる人の能力やスキルを把握し、適切な仕事を割り当てることができるでしょう。

コミュニケーションや職場環境の改善で残業を予防する

残業が発生している原因を探ってみると、職場内のコミュニケーション不足のために、必要ない仕事をしてしまっていたり、伝え方があいまいで仕事に取り掛かるまでの時間がかかっているような状況が見つかるかもしれません。

ある職場では、障がい者を採用するにあたり、指示を明確に、やるべきことを効率的にすることを心がけたところ、結果的に業務を効率的に行えるようになり、残業が減ったそうです。

また、それぞれの仕事内容をホワイトボードなどに示すことによって、誰が何をするのかがわかりやすくなり、仕事で遅れているところを早めにフォローしやすくすることができました。

職場環境としては、仕事をフォローして欲しいと気軽に話せるような雰囲気を作ることも大切です。社員同士が協力しやすいような雰囲気や、チームで仕事をしているということを意識することによって、働きやすい職場となりますし、結果として業務の効率化にも貢献することになります。

まとめ

障がい者に残業をさせることは、法律的や契約に反するものでなければ、問題はありません。しかし、障がい者雇用として働いていることは、何らかの配慮を必要としていることを忘れないようにしてください。

障がいの程度や、必要とする配慮は、一人ひとりそれぞれ異なります。この障がいだから、残業できる、できないと言うものではありません。残業が必要な時には、本人の状況や意思を確認し、体調に負荷のかからない程度にすることが大切です。

また、日常的に残業が発生しているようであれば、その問題が何かを考え、それを解決していくことも必要です。残業すれば、経費もかかります。業務全体の効率化をはかり、できるだけ残業のない職場を作るようにすることも考えていくことができるでしょう。

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