更新日:2020年8月10日

障害者の就職について

障害者の方々が就職をする場合には、大きく分けて「一般採用枠(クローズ就労)」「障害者採用枠(オープン就労)」という2つの選択肢があります。

一般枠は障害を持っていることを企業に知らせずに行う就労枠、障害者枠は企業側に持っている障害を開示して行う就労枠となります。

障害者でも一般採用枠で就職をする場合(クローズ就労)

障害者採用枠で雇用をされるためには、いわゆる障害者手帳が必要です。
そのため、障害があっても、障害者手帳を持っていない方は、この一般採用枠での就労を目指すことになります。
もちろん、障害者手帳を持っている方でも、一般採用枠での就労は可能です。

クローズ就労の主なメリットは、

  • 障害者採用枠よりも職業の選択肢が多い
  • 障害者採用枠より給料の水準が高くなる傾向にある

といった点です。

一方で、デメリットとして

  • 自身の障害を隠しながら働かなければならない
  • 障害によって職務に支障をきたした際に配慮を受けにくい
  • 障害者雇用促進法による保護が受けられない

といった点も挙げられます。

障害者採用枠で就職をする場合(オープン就労)

一方、障害者採用枠での雇用を目指す場合、職場に自身の障害を明かして就職をすることになります。
オープン就労の主なメリットは、

  • 障害を職場に隠す必要がない
  • 障害が理由で職務に支障をきたした時に配慮を受けられる
  • 障害者採用に積極的な大企業に就職できる可能性がある
  • 障害者雇用促進法による保護を受けることができる

といった点です。

一方、主なデメリットとして、

  • 一般採用枠と比べ求人が少ないことがある
  • 給料水準が一般採用枠と比べ低い

といった点が挙げられます。

ただし、現在は『企業に対して、雇用する労働者の2.2%に相当する障害者を雇用すること』を義務付ける制度(障害者雇用率制度)が存在し、国が主導で障害者雇用を推進しています。そのため、障害者雇用枠を採用している企業は決して少なくありません。

また、給与水準に関しては、『平成30年5月の平均賃金をみると、身体障害者は21万5千円、知的障害者は11万7千円、精神障害者は12万5千円、発達障害者は12万7千円となっている』

(引用:厚生労働省『平成30年度障害者雇用実態調査の結果を公表します』

とされ、改善がみられています。
確かに一見低めとも取れるデータですが、これらは週30時間以上の勤務者から、20時間未満の時短勤務者までを対象に導き出した給与の平均額です。

一般採用枠と同等の勤務時間に換算すれば給与水準も上記のデータよりも高くなり、場合によっては遜色ない給与をもらえる可能性もあります。
障害者採用枠で就職した場合のメリットを含めて考えると、一般採用枠よりも障害者採用枠のほうが優遇点は多いと言えるかもしれません。

一方で、障害者採用枠での就職のためには障害者手帳が必須となります。障害者手帳にはいくつかの種類があり、また取得にも一定の条件があります。
以下の記事にて詳しく紹介していますので、確認をしてみてください。

「障害者手帳とは?種類ごとの申請方法と受けられるサービスについて」

障害者の雇用に関わる法律にも注意が必要

先ほどからいくつか名前も出ていますが、障害者の雇用に関して法律が制定されています。
そのなかでも『障害者雇用促進法』は代表的な法律です。ここでは、この法律について簡単に触れていきましょう。

その他、障害者の雇用に対してさまざまな法律があります。
その詳細に関しては、障害者雇用に関わる法律についてまとめた以下の記事にてご紹介しています。ぜひ参考にしてください。

「障害者雇用とは?法律や事例、支援制度などを整理」

障害者雇用促進法

障害者雇用促進法とは、

  • 事業主(雇用主)に対しての一定数の障害者雇用義務とそれに対する補助
  • 障害者に対する就職・生活支援などを含めた職業生活自立の支援

を定めた法律です。
各事業主は定められた障害者雇用率に応じて障害者を雇用しなければなりません。雇用人数が規定数に満たない場合、障害者雇用納付金として不足人数1人あたり月額4万円から5万円が徴収されます。

一方で、雇用人数が規定人数を超過している場合、人数に応じて障害者雇用調整金が支給されます。
現状、こうした法律のお陰で障害者採用枠は広がりを見せています。

それぞれの障害ごとに就職で気を付けるべきポイント

障害者と一口に言っても、その症状はさまざまです。障害の症状などによってそれぞれ就職における注意点が変わってきます。

精神障害の方が就職で気を付けるべきポイント

精神障害の方の就職において、大きな問題となるのが、就職定着率です。
障害者職業総合センターが2017年に発表した『障害者の就業状況等に関する調査研究』では、精神障害の方の職場定着率が他の障害を持つ方々の定着率と比べ低いことが見て取れます。
精神障害の方の職場定着率は2017年時点で、3ヶ月で69.9%、1年では49.3%と半分を切ります。

精神的な障害は、ストレスや人間関係に起因して悪化したり、再発したりする可能性が高いです。職場環境が合わないといった理由で、なかなかひとつの職場に定着しにくいという傾向も見られます。
そのため、精神に障害のある方は、他の障害を持つ方以上に、就職する先の環境や人間関係が自身に合っているかどうかの見極めが重要です。

特に、精神障害の方が一般採用枠で就職をした場合、障害の有無が外から見えにくい分、無理な残業や職務を課されることもあるでしょう。
それがストレスとなって、仕事が続けにくい状況に陥っては元も子もありません。このようなケースで重要になるのは、障害のある方にとって無理のない範囲で職務を行えることです。

その他、精神障害の方の就職における注意点などについて、以下の記事で詳しくまとめていますので、ご参考にしてください。

「精神障害の方の就職のポイントとは?」

発達障害の方が就職で気を付けるべきポイント

発達障害は障害の度合いによって、a型・b型などと分類をされます。分類については、別途下部に添付の記事にまとめてありますが、障害のある方がどこに分類されるのかは就職前にしっかり確認しておきましょう。

発達障害の方の就職において重要なのは、自身の得意なこと、苦手なことを認識し、能力を発揮することができる職場を見つけることです。
発達障害といっても症状は異なり、それぞれに個性や能力があります。一概には言えませんが、一般的には軽作業や事務系の仕事が向いているとされます。

より詳しくは、以下の記事を参考にしてみてください。

「発達障害の方の就職のポイントとは?」

てんかんの方が就職で気を付けるべきポイント

てんかんとは、慢性的な脳の病気とされ、身体の一部がけいれんしたり、場合によっては意識を失ったりすることもある障害です。
しかし、継続的な治療を続けつつ十分に注意を払うことで、てんかんの方が就業することは難しくありません。

そうはいっても、急な発作が起こる可能性のある病気です。職場の理解を求め、きちんとした配慮を受けられるような環境で働いていくことを心がけましょう。

発作が起きにくい方の場合、一般採用枠での就職も選択肢のひとつに入るでしょう。けれども、急に発作が起きる可能性も外してはなりません。
障害者手帳を持っているなら、障害者採用枠での就職を目指すほうが、かなり有利な職場環境を手に入れられるでしょう。

てんかんについて、またてんかんの方の就職の注意点などについては、以下の記事にてより詳細にまとめています。ぜひ参考にしてみてください。

「てんかんの方の就職のポイントとは?」

法律的観点からすると、障害者の方々が就労することは以前と比べて容易になりました。
できる限り自身に合った職場環境を手に入れて、末永く働き続けていくことが理想といえるでしょう。

まとめ

障害者の方々が就職をする際は、一般採用枠および障害者採用枠どちらで就職を目指すのか、自身の障害に合わせてどのような職場を選ぶのか、といった判断が重要になります。
特に、精神障害のある方にとっては、良好な職場環境は押さえておくべき重要な判断基準です。

障害者採用枠での就職を目指す場合、障害者手帳の有無や、障害者雇用に関わる法律など事前に確認しましょう。
それらについての詳細も、あわせて該当する記事などを参考にしてみてください。