更新日:2020年8月10日

精神障害とは

脳内で生物学的な変化が起こり、さまざまな症状が引き起こされている状態を精神障害と呼びます。原因によって心因性・外因性・内因性などに分類されますが、複数の原因が影響しあって発症する場合もあります。

精神障害は「気の持ちよう」「本人の心がけ」といった類のものではなく「脳の病気」ですが、見た目では分かりにくいため、本人の状態に関して周囲の理解が得られないことも少なくありません。精神障害には、次のようなものが挙げられます。

統合失調症

100人に1人弱がかかると言われている病気です。幻覚や妄想などの陽性症状と、意欲が低下して疲れやすくなるなどの陰性症状が見られます。

気分障害

気分の波が主な症状です。うつ状態のみであればうつ病、過剰に気持ちが高揚する躁状態とうつ状態を繰り返すときは双極性障害と呼びます。

てんかん

一時的に脳の一部が過剰に興奮し、発作が起きます。発作にはけいれんを伴うもの、突然意識を失ってしまうものなど、さまざまなタイプがあります。

依存症

その行為を繰り返さないと満足できず、自力で止められないために心身や生活に悪影響が出ている状態を言います。アルコール、薬物、ギャンブルが代表的な依存対象です。

高次脳機能障害

事故や病気によって脳にダメージを負うことで生じます。記憶障害・注意障害・遂行機能障害・社会的行動障害などの症状に分類されます。

精神障害者の雇用状況について

厚生労働省の資料「障害者雇用の現状等」(2017年)によると、2016年6月1日の時点で民間企業における障害者の雇用者数は47.4万人でした。
内訳は身体障害者が32.8万人、知的障害者が10.5万人、精神障害者が4.2万人となっています。精神障害者の雇用に関しては厳しい状況だったと言えるでしょう。

しかし、2018年に改正された障害者雇用促進法によって精神障害者の雇用が義務化され、それに伴い障害者の雇用率も引き上げられました。さらに2020年4月には、フルタイム勤務が困難な障害者の雇用を支援する法律が施行されます。
ここ数年で短時間勤務者の割合は増加しており、特に精神障害者は短い時間で働くことが多いという結果が出ています。法改正によって就労のチャンスは増えつつあるのです。

その一方で、大きな課題もあります。障害者職業総合センターの「障害者の就業状況等に関する調査研究」(2017年)によれば、精神障害者の1年後の定着率は49.3%で、約半分が1年未満で退職しています。

身体障害者は60.8%、知的障害者は68.0%ですので、とりわけ精神障害者の定着が難しい状況にあります。自分に合った職場選びはもちろん、長く働き続けるための工夫が必要となるでしょう。

精神障害者の就職の3つのポイント

続いて、精神障害のある方々が就職する上で重要なポイントを3つの視点に分けて解説します。

障害の程度や症状をしっかりと把握しよう

精神障害には総合失調症やうつ病などさまざまな分類があり、診断名が同じであっても症状は人によって異なります。
採用する立場としては、どのような業務を任せられて、どんな配慮が必要なのかを具体的に知りたいと考えます。
就職活動を始める前に、自らの障害の程度や症状をしっかりと把握し、他人にわかりやすく説明できるようにしておきましょう。

障害者枠(オープン就労)と一般枠(クローズ就労)、どちらを狙うのかを決めよう

障害を持っている方の就職には2つの方法があります。
企業に障害を持っていると明らかにして、障害者の雇用枠にエントリーするのが「オープン就労」。
障害があると伝えずに一般枠で就労するのが「クローズ就労」です。
精神障害者はクローズ就労を選ぶケースが多いという報告がありますが、どちらがよいかは一概には言えません。いずれにもメリットとデメリットがあります。それらをよく理解した上で、自分に合ったほうを選びましょう。

●障害者枠の場合は精神障害者保健福祉手帳が必要!

前提として、障害者枠に応募するには精神障害者保健福祉手帳が必要です。それでは手帳を所持しているからといって必ず障害者枠を利用しなければいけないのかというと、決してそうではありません。手帳を持っている方は障害者枠・一般枠のどちらにもエントリーができ、こちらから伝えなければ手帳の有無は企業に知られません。

●障害者枠(オープン就労)のメリットとデメリット

自分が持っている障害を開示して働く最大のメリットは、周囲の理解を得た上で働けることです。
勤務形態や仕事の内容を企業側に相談しやすく、治療のための通院や服薬に関しても配慮してもらいやすいと考えられます。
また、支援機関を利用していると、トラブルが起きたときに企業との間に入って調整してもらえるのも利点です。
デメリットは、一般枠に比べると選べる仕事が少なく、賃金も低い傾向にあることです。また、エージェントを利用せず自分だけで障害者枠の求人を探すのは難しいでしょう。

●一般枠(クローズ就労)のメリットとデメリット

障害を持っていない方と同じ枠での就労を選ぶメリットは、求人数が多く、障害者枠よりも賃金水準が比較的高いことです。
デメリットとしては、障害に応じた配慮を求めるのが難しいという点が挙げられます。通院や服薬はもちろん、障害によって勤務形態や業務内容に問題が生じたとしても、企業側に相談できずトラブルにつながるかもしれません。加えて、障害を隠さなければいけないというストレスも心の負担になってしまいます。
ただ、職場とマッチして長く働き続けられれば障害者枠に比べて多くの収入を得られる場合もあるため、多角的に検討することが重要です。

正規雇用で問題ないかを検討しよう

精神に障害がある方の場合、フルタイムの勤務が負担になってしまうケースがあります。結果として症状が悪化し、短期間で辞めざるを得ない状態になっては元も子もありません。無理なく働き続けるためにも、正規雇用にこだわらず、パートやアルバイトも検討してみましょう。

企業が採用時に精神障害者の方々を見る3つのポイント

続いては、精神障害のある方の採用や選考の際のポイントを整理します。

症状が落ち着いているか

企業にとって、応募者の症状が落ち着いているか否かはとても重要です。不安定な状態を見せてしまっては採用の確率が低くなります。
また、何度か面接試験があるような場合、面接のたびに様子が違うと企業側も不安を覚えてしまいます。精神障害の症状には好調と不調の波がありますが、できるだけその波が穏やかになるように、症状を安定させてから就職活動を始めるようにしましょう。

意思疎通が可能か

採用担当者は、無断欠勤や突然辞められてしまうことを懸念しています。そのような事態になる前に相談してほしいと考えるでしょう。
職場環境や体調について問題が起こったとき、1人で抱え込まず打ち明けてくれるかどうかを企業側は見ています。
そもそも障害の有無にかかわらず、働く上で報告・連絡・相談は欠かせません。周囲とコミュニケーションが取れ、自分の状態や意思をきちんと伝えられるとアピールすることが大切でしょう。

家族や支援者が協力的か

精神障害者を雇う際、採用担当者は応募者が家族や支援者の協力を得ているかどうかも重視します。
何かトラブルがあったとき、本人をよく知る相手にサポートしてもらいたいと考えるからです。就労に関してあらかじめ家族に話しておき、その点を面接時に伝えるようにしましょう。支援機関を利用している場合も同様です。

精神障害者の方々が就職後に気をつけるべきポイント

さいごに、精神障害のある方々が就職後、どのような点に気をつければよいのかをシチュエーション別に整理しました。ぜひ参考にしてください。

慣れるまでは休憩を多めに取ろう

精神障害がある方は、障害がない方よりも新しい環境や人間関係に慣れるまで時間がかかりがちです。始めのうちは休憩を多く取れるよう、企業側に相談してみましょう。ゆっくりでも、着実に職場に馴染むことが大切です。

周りの理解を得られるよう努めよう

障害者枠で採用されている場合は、比較的周りも障害に理解があると考えられます。ですが人によって症状は異なるため、より働きやすい環境を得るためには、積極的に周囲とコミュニケーションを取る必要があります。

業務内容について上司や支援者と話し合おう

神障害者は、仕事の向き不向きが大きく分かれる傾向にあります。自分の得意分野と不得意な分野を把握して、上司や支援者と情報共有しましょう。

外部のカウンセリングサービスなどを利用しよう

一般枠で就労すると、社内で支援を受けるのが難しいという問題があります。もし症状が悪化したり、人間関係の問題が発生したりすると、1人で背負わなければなりません。カウンセラーなど社外に相談先を作っておくことが重要です。

業務が大変な場合は時短勤務が可能か相談しよう

仕事の負担が大きくフルタイムの勤務が困難なときは、無理をせずに短時間勤務を検討しましょう。社内にそうした制度がなくても、配慮してもらえるケースもあります。上司などに一度掛け合ってみてください。

まとめ

法改正によって精神障害者の就労のチャンスは増えつつありますが、定着率の低さが課題です。
障害者枠(オープン就労)と一般枠(クローズ就労)のそれぞれのメリットとデメリットを理解し、自分に適した方法で就職活動を行いましょう。
フルタイム勤務が難しい状態であれば、正規雇用にこだわらずパートやアルバイトとして働くのも一つの選択です。

就職後は、仕事に慣れるまで休憩を多く取ったり、一般枠で雇用された場合は社外に相談先を持ったりするなどして、長く働ける環境を整えましょう。