更新日:2020年8月10日

発達障害とは?症状・症例について整理

発達障害は、生まれつき脳機能の一部に障害があることが原因で引き起こされるものです。
例えば、「発達障害者支援法」によると「発達障害」は「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害、その他これに類する脳機能障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」と定義されています。

このようにいくつかのタイプに分類されていますが、一口に発達障害といっても個人差が大きいのもこの障害の特徴です。どのタイプも「能力の凸凹」と言われるような、得手不得手の差が大きい傾向にあります。

このため、発達障害の人の就労にあたっては、障害名よりもその人の得意不得意や、どのような支援があれば能力を活かすことができるかについて注目することが重要だと言えるのです。

発達障害のうち代表的なものの一つである自閉症スペクトラム障害では、相互的な対人関係の障害、コミュニケーションの障害、興味や行動の偏りの三つが典型的なものと言われています。
また、注意欠如・多動性障害(ADHD)においては、年齢に合わない落ち着きのなさや不注意が代表的な症状です。

学習障害(LD)では、読み書きや計算など特定の能力が他の能力に比べて劣る症状が見られます。そのため、幼少期からの正確な診断と学習支援が必要となるでしょう。

発達障害の方が就職するときに考えるべきポイント

つぎに、発達障害の方が就職の際に考慮すべきポイントについて具体的に解説していきます。

一般雇用(クローズ就労)・障害者雇用(オープン就労)どちらを選択するか

発達障害の方が就職を考える場合、得意なことを活かすためには一般雇用を、不得意を目立たせないためには障害者雇用を選択するという方法があります。
どちらを選択する場合もメリットとデメリットがあるので、検討の上、長い目で見て働きやすい選択をすることが必要です。

また、一般雇用と障害者雇用は途中で切り替えることもできます。一般雇用で入社したものの、問題が生じたため障害者雇用に移行したいという希望も叶えられるので、この点を念頭に置いて就職するのもいいでしょう。

●一般雇用(クローズ)のメリットとデメリット

発達障害があることを明らかにしたくないなら、一般雇用での就職をするしかありません。
この方法を選択した場合、選択できる職種の幅が広がり、得意分野に準じた職業に従事できるというメリットがあります。給与も障害者雇用よりも優遇されるため、経済的な自立も確保されるでしょう。
ただし、発達障害を公表しないということは、障害に対する配慮が一切なされないことにもなります。

そのため、人間関係や職務内容について精神的な負荷を負うことにつながりやすく、せっかく就職を果たしても、退職の憂き目に追いやられることも予想されます。特に中小企業では、一般的に発達障害のある方が苦手とされるマルチタスクが求められる業務も多いです。
同じ職場で長く働くことを目指すのであれば、前述したとおり、一般雇用で入社後、様子を見ながら障害を開示して働くという選択肢も検討しましょう。

●障害者雇用(オープン)のメリットとデメリット

障害者雇用の場合は障害に対する配慮をしてもらいながら安心して働けるのが何よりも大きなメリットです。
障害者雇用の枠を設けているのは大企業やその系列の企業が多いため、基盤が安定しており、環境も整っているのでゆっくり職場に馴染むことができるでしょう。

一方で、職種の幅に制限が設けられていることが多く、一般的には昇給・昇級などがしにくいとも言われています。
ただし、最近ではこれらの傾向を打破しようと試みている企業も増えつつあります。適正などを考慮され配置される、希望次第ではスキルアップの機会が与えられる、といった改善がなされているのが現状です。

一般雇用と障害者雇用の境界があいまいになるよう、企業側も日々努力しているのです。

正規雇用・非正規雇用どちらを希望するか

正規雇用のメリットは、何といっても福利厚生の手厚さと給与水準の高さでしょう。
選択できる仕事の幅も広いため、自分にとって興味のある仕事に携わることもできます。一方で、デメリットとして、責任の重さや休みの取りにくさなどが挙げられます。
この点については、非正規雇用のほうがプライベートを優先できるなど、働き方にゆとりが生まれやすいです。

ただし、賃金が低く雇用も不安定になりがちというデメリットも知られています。
多くの場合、障害者雇用は契約社員からのスタートとなりますが、これは障害者の離職率の高さから企業側が足踏みをしているというのが実情です。
安定して勤務をしてくれると見なされれば、契約を打ち切られることは少なく、正社員として採用される例も多くあります。

これらの事実を踏まえた上で、どちらが自身に適しているかを見極めながら正規雇用と非正規雇用のどちらを希望するか決めましょう。

●正社員登用制度の有無を確認しよう!

前述したとおり、発達障害の方が最初から正社員を目指すのは現状として難しいところがあります。
契約社員として入社をしても、そもそもその企業に正社員登用の制度がなければ、いつまで経っても雇用形態は変わりません。

また、最初は短時間雇用を希望したとしても働いているうちに正社員として働きたくなる可能性もあります。そうなった場合の選択肢を確保するために、応募する会社の正社員登用制度の有無や実績を確認しておきましょう。

自分の特性を知ることが重要

発達障害には特性と言われる様々な特徴があります。
個人的要素はありますが、例えば、自閉症スペクトラムの方は、特定の感覚に過敏であったり、特定の物事に関心が強い傾向にあったりします。

ADHDの方の場合は、関心の対象がめまぐるしく移り変わったり、注意を払える事柄と払えない事柄が発生したりします。
また、これらの障害には、複数の症状が重なって現れるケースも珍しくありません。
就職の際には、こうした特性に応じて仕事の向き不向きも考えましょう。一般的に発達障害の方が苦手とされる仕事は、電話対応や接客、営業など対人業務と言われています。

反対に、向いているとされる職業も抱えている障害によって様々です。自閉症スペクトラムの方ならIT関係や経理・事務作業に、ADHDならクリエイティブ関係などに大きな強みをもたらします。
個人差が大きい発達障害の特性ですが、それらを活かし、必要な配慮を得るためにも、まず自分の特性を知ることが大切です。

発達障害のある方が仕事を選ぶ上で大切なこと

発達障害のある方は得意なことと苦手なことの差が障害のない方よりも大きいのが特徴です。苦手な作業が必要とされる職場では生きづらさが強調されますが、得意な部分を活かすことができれば誰よりも大きな戦力になる可能性もあります。

ポイントは、短い期間で判断するのではなく、10年先にどうなっていたいか、今後のライフデザインを思い描くことです。このことをできるだけ明確に想像した上で就職活動を行いましょう。

発達障害のある方が仕事をする上での工夫

発達障害のある方が長く仕事していくためには、自分の障害を理解して周りに伝えていくことが必要となります。
例えば、指示の仕方や作業環境などについて具体的に、どのようなことが苦手か、どのようなことに配慮してもらいたいか、について紙にまとめると伝えやすいです。
この際、一方的にこちらの希望を伝えるのではなく、自分でも歩み寄れそうなことを合わせて考えておくと、よりスムーズに環境に馴染めるよう手配してもらえるでしょう。

体調を含めて困りごとが生じたら、上司などにこまめに相談して共有してもらい、一緒に解決してもらえるようにするのも、仕事がしやすくなるためのポイントです。
また、仕事で失敗が続く場合は、仕事の理解や実行やコミュニケーションなど、どの部分で問題が起きているのかつきとめ、繰り返さないよう分析をすることが重要です。
このような工夫をすることで、仕事上のトラブルは格段に減少していくことでしょう。

発達障害は目に見える障害ではないために、そのままでは理解してもらいにくいのが難点です。
周りに求めるだけではなく、自身で働きかけていくことで、よりよい職場環境を手に入れましょう。

まとめ

自閉症スペクトラム、ADHD、学習障害といった発達障害を持つ方は、症状には個人差があるものの、一般的に得意な分野と不得意な分野の能力差がひらく傾向にあります。
得意な部分を活かした就職活動ができれば、それは大きな強みです。そのために、まずは自分をしっかりと理解しましょう。

その上で、制度として一般雇用と障害者雇用、正規雇用と非正規雇用などの違いやメリットとデメリットを知り、自分の特性や今後の人生のビジョンに沿って、無理なく長く働ける仕事を選択しましょう。