更新日:2026年3月13日

障がい者雇用は社会全体の共通の責任として定められており、企業は法定雇用率以上の障がい者を雇用しなくてはいけません。しかし、障がい者の雇用や雇用率の達成に課題を抱えている企業も少なくないでしょう。

ここでは、障がい者雇用率が未達成の企業が確認すべきポイント、状況を打破するための対策をわかりやすく解説します。

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障がい者雇用率が未達成の場合どうなる?

障がい者の雇用は社会全体の責任として位置づけられており、企業には雇用の義務があります。その指標のひとつとなるものが障がい者の法定雇用率です。企業は法定雇用率を上回る割合の障がい者を雇用しなくてはいけません。これは障害者雇用促進法によって定められた義務であるため、法定雇用率の未達成の場合、法的なペナルティが課せられることになります。

具体的には、常時雇用する労働者が100人を超える事業主のうち、法定雇用率に満たない人数分の障害者雇用納付金の納付が必要となります。納付額は不足障がい者1人につき月額5万円です。例えば、法定雇用率達成まであと2人の障がい者を雇用する必要がある場合、5万円×2人分で月額10万円を納付することになります。

法定雇用率の未達成が続く場合、その企業には行政指導が入ります。ハローワークからの指示を受け、2年間分の障がい者雇入れ計画を策定し、それに沿って障がい者雇用をすすめていくことになります。この取り組みが著しく不足している企業に対してはさらに特別指導が入り、それでも状況が好転しない場合は企業名が公表されることになります。企業名公表後も特別指導は継続されます。

障がい者雇用におけるペナルティについて詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてください。
障がい者雇用における義務違反のペナルティとは?具体的な内容や対策について解説

障がい者雇用率が未達成の企業がまず確認すべきポイント

障がい者の雇用がなかなかすすまず、雇用率が達成できていないのではと不安な企業担当者の方もいるのではないでしょうか。障がい者雇用率が達成できているか不安な場合は、まず以下の2点を確認してみましょう。

自社は雇用義務の対象企業なのか

障がい者の雇用義務は、法定雇用率を基準に、一定以上の人数の労働者を雇用している企業にのみ課せられています。令和8年2月現在、民間企業の法定雇用率は2.5%で、常時雇用する労働者が40.0人以上の企業が対象となっています。雇用する労働者がこの人数に満たない企業は障がい者雇用の義務はなく、障がい者を1人も雇用していなくても問題ありません。

ただし、令和8年7月には法定雇用率の引上げがおこなわれ、民間企業の法定雇用率は2.7%になります。この引上げが実施されると、障がい者雇用の対象事業主の範囲は、常時雇用する労働者が37.5人以上のすべての企業となります。今現在対象ではない企業も、今後対象となる可能性があるので注意が必要です。

障がい者雇用の義務があるにも関わらず雇用率が達成していない場合は、まずは何人の雇用が足りていないかをしっかり確認しましょう。常時雇用する労働者数に法定雇用率をかけることで、雇用すべき障がい者数を算出できます。算出された人数と実際雇用している人数の差が不足数となります。

参照:厚生労働省|障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について

雇用率の未達成は今年だけなのか昨年に引き続きなのか

昨年まで法定雇用率を達成できていた企業が今年から法定雇用率を下回った場合、障がいのある方の退職や契約満了などがあったことが伺われます。この場合、それまで障がいのある方が就いていたポストや任せていた業務に空きがあるはずです。その業務に従事できる障がいのある方を雇用できれば、未達成の課題は解決できる可能性が高いでしょう。

一方、未達成が昨年やその前から中長期的に続いている企業の場合は違った考え方をしなくてはなりません。法定雇用率の未達成が続いている場合、採用や雇用計画に問題がある可能性があります。そもそも計画がたてられていない、切り出している業務が適切ではないなど、様々なケースがありますが、企業内だけで解決することが困難なケースもあるでしょう。適切な機関に相談しつつ、根本的な計画や考え方の部分から見直していくことを検討する必要があります。

障がい者雇用率が未達成のままになりやすい理由

障がい者雇用率の未達成が続いている企業には、共通する原因がいくつかあります。ここではそのうち代表的な3つをご紹介します。

業務の切り出しが進まない

業務の切り出しは、企業が直面しやすい課題のひとつです。特に、障がい者雇用に関するノウハウのない企業では、障がいのある方にどこまで業務を任せられるのか判断が難しい場合もあるでしょう。

業務の切り出しができず、具体的な仕事の割り当てが決まらないと、その先に進めません。結果として障がい者雇用に取り組めず、未達成の状態が続いてしまいます。

採用後の定着までのフォローが難しい

障がい者雇用も一般雇用と同様、採用して終わりではありません。一度採用した人材が長く働き続けられるような環境をつくっていかなければ、雇用の問題はいつまでもつきまとうことになります。

障がいのある方を雇用する場合、そのフォローの仕方に悩みを抱えるケースも少なくありません。ひと口に「障がいがある」といっても、その特性や得意不得意は人それぞれ。求められる合理的配慮やフォローもさまざまですが、そのフォロー体制が不十分だと離職に繋がってしまいます。

障がいのある方が長く働くために重要なのは、コミュニケーションです。業務上必要な合理的配慮や、業務・環境に関する不安や困りごとを相談しやすい環境をつくることが大切です。相談先が明確でなかったり、相談の機会がとりにくかったりする場合、定着に繋がりにくく、結果として法定雇用率の未達成が続いてしまうことがあります。

人事・現場だけで抱え込んでしまう

障がいのある方の雇用計画を立てて進めていくのは人事の役割であり、実際に障がいのある方とともに働くのは現場の方です。しかし、障がい者雇用を人事や該当する現場だけのものとして捉えてしまうと、一部の関係者だけが課題を抱え込んでしまうケースがあります。

障がい者雇用は会社全体で推し進めていくべきものです。経営陣をはじめ、社員一人ひとりが当事者意識を持ち、それぞれのやり方で取り組む必要があります。実際に障がいのある方と同じ部署で働く社員はもちろんのこと、そうでない社員も障がい者雇用に対する理解や意識改革などをおこなっていくことが理想です。これを実現することで、会社全体で障がいのある方と働く環境が整い、部署を横断した受け入れ体制づくりが可能となります。

障がい者雇用率未達成を回避するための対策

障がい者雇用に難航している企業にとって、雇用率の達成は一朝一夕には難しいかもしれません。しかし、今すぐに取り組める対策もあります。ここでは、障がい者雇用率未達成を回避するための対策を4つご紹介します。

障がい者の採用から定着までの雇用計画を立てる

障がい者雇用が進んでいない企業のなかには、そもそもの雇用計画がないという企業も少なくありません。まずは中長期的な雇用計画を立てましょう。いつ頃までに・どのような職種で・何人の障がい者を雇用するかという点を明確にし、それに向けて順序を立てて計画をつくります。また、採用して終わりにするのではなく、その後の職場定着までを計画に組み込みましょう。

おおよその計画ができたら、さらにその内容を深堀りし、実際のアクションタスクに落とし込みます。計画を立てる際は細かい確認事項も多く大変ですが、これを丁寧に作ることで、その後に取り組むべき道筋がはっきりします。

現場連携・社内体制を見直す

現場の連携や社内体制を見直すことも重要です。障がいのある方を配置する予定の部署の体制を見直すことで、それまでとは違う業務の切り出しの可能性がみえてくることもあります。また、障がい者雇用に関わる関係者を増やせば、推進力や発想力が高まる効果も期待できます。

すでに障がいのある方を雇用している企業で、職場定着に課題がある場合も、社内体制に問題がある可能性があります。障がいのある方の相談役はしっかりと決まっているか、部署の同僚や上司に相談しやすい環境は整っているかなど、本人の意見も聞きながら見直してみましょう。

ハローワークや支援機関に早めに相談する

障がい者雇用は、企業内だけで解決しようとするには大変な取り組みです。早めに公的機関に相談するとよいでしょう。

ハローワークには障がい者雇用の相談窓口があり、利用できる助成金や支援制度について総合的に相談できます。また、障がい者専用の求人票を出すことも可能です。企業と障がいのある方向けの就職相談会も開かれており、これらを利用することで障がいのある方の採用の機会をひろげることができます。

また、障害者職業センターではジョブコーチ支援などを提供しています。ジョブコーチとは、障がいのある方と企業の双方に就労のアドバイスをしてくれる専門職員です。実際に企業に派遣されて現場を確認し、課題を洗い出す支援をします。

こういった公共機関の窓口を活用すれば、金銭的負担を減らしながら障がい者雇用を推進しやすくなります。早めに相談してみましょう。

参照:厚生労働省|「職場適応援助者(ジョブコーチ)支援」を活用しましょう‼

自社対応が難しい場合は外部支援の活用も検討する

障がい者雇用支援を専門とする民間のサービスも存在します。自社対応が難しい場合、こういった外部支援の活用も検討してみましょう。

エスプールプラスでは、貸農園を利用した障がい者雇用支援サービスを提供しています。全国各地にある貸農園「わーくはぴねす農園」を企業に貸し出し、そこを障がいのある方の雇用の場とするサービスです。農園で働く障がい者の方は企業と直接契約を結びます。障がいのある方のなかには自然と触れ合う農作業を得意とする方も多く、やりがいにもつながります。オフィスと近い農園を借りれば一般社員と障がいのある社員の交流も図りやすくなり、両者を分断せず、相互に関わり合いながらモチベーションをあげていくことも期待できます。

また、企業と求職者のマッチングも支援に含まれており、求職者とは事前にヒアリングを重ねています。こうすることで就労後のミスマッチが少なく、職場定着率も向上します。就労後も、専門知識をもったスタッフが、働く方と企業の双方のフォローを続け、不安があればその都度相談できる体制を整えています。

障がい者雇用に行き詰っている場合、このようなサービスを活用すれば、企業内の負担を最小限に抑えつつ法定雇用率を達成できるうえ、長期的な障がい者雇用を実現できる可能性も高くなるでしょう。

障がい者雇用率未達成に関するよくある質問

最後に、障がい者雇用率未達成の企業が抱きやすい疑問とその回答を3つご紹介します。

障がい者雇用率が未達成の企業はどのぐらいある?

厚生労働省が発表した「令和7年障害者雇用状況の集計結果」によると、令和7年の法定雇用率未達成企業は6万5,033社あります。法定雇用率を達成している企業が46.0%であるため、半数以上の割合の企業が法定雇用率を達成できていないことになります。

また、未達成企業のうち不足数が0.5人または1人と答えた企業は64.0%に上っています。雇用障がい者数が0人の企業は57.3%という結果となっています。

参照:厚生労働省|令和7年障害者雇用状況の集計結果

障がい者雇用率が未達成の企業の業種や企業規模に偏りはある?

仕事内容などによっては障がい者雇用が難しい業種もあり、法定雇用率の達成状況には業種や企業規模の偏りがあります。

厚生労働省が発表した「令和7年障害者雇用状況の集計結果」によると、法定雇用率達成企業の割合は産業によって大きく異なります。「医療、福祉」(55.4%)や「製造業」(53.9%)は比較的高い一方、「情報通信業」(28.5%)、「教育、学習支援業」(31.9%)、「不動産業、物品賃貸業」(34.0%)、「学術研究、専門・技術サービス業」(34.1%)などは達成企業の割合が低い水準にとどまっています。

また、企業規模別にみたときの法定雇用率達成状況は以下の表のとおりです。

企業規模 法定雇用率達成企業の割合
40.0人~100人未満 44.7%
100人~300人未満 48.6%
300人~500人未満 40.3%
500人~1,000人未満 44.5%
1,000人以上 57.5%

なお、1,000人以上規模の企業は実雇用率が法定雇用率を上回っており、障がい者雇用に関して良い取り組みができているケースが多いようです。逆に、従業員40.0人~100人未満の企業のうち89.8%の企業は障がい者の雇用数が0人であり、障がい者雇用に着手できていない企業が多い状況が伺えます。

参照:厚生労働省|令和7年障害者雇用状況の集計結果

未達成の場合にどのタイミングで対策を検討したらよい?

障がい者の雇用が進まず、法定雇用率が未達成の場合、早急に対策を検討する必要があります。

法定雇用率の未達成には法的ペナルティもあり、企業の金銭的負担も発生します。また、法定雇用率の引上げは今後も続いていくことが予想され、企業には障がい者雇用の推進が今後も継続して求められます。取り組みを後回しにすると、採用活動の面でもほかの企業に遅れをとる恐れがあり、メリットはなにもありません。

未達成に気がついた段階で、なぜ未達成なのか、どこを解決すればいいのかを社内でよく確認し、持続可能な障がい者雇用に取り組みましょう。

まとめ

法定雇用率の達成に課題を抱える企業は数多くあります。雇用の義務がありながら一人も障がい者を雇用できていない企業も少なくありません。しかし、法定雇用率が未達成だと、納付金が課せられるほか、行政指導や企業名公表などの措置が取られる恐れもあります。

法定雇用率が未達成の企業は、なぜ未達成なのか、どこに課題があるのかを明確にし、速やかに雇用率達成のための取り組みを始める必要があります。ハローワークなどでは相談窓口を設置していますので、そうした関係機関を活用しつつ、早めに取り組みをすすめましょう。

障がい者雇用のノウハウが少なく、社内だけでの取り組みが難しい場合には、民間の障がい者雇用サービスを利用する方法もあります。環境の整備や業務の切り出しといった作業の必要なく、雇用から職場定着まで、継続したサポートを受けることができます。

自社に足りていない取り組みや必要なサポートは何かを明確にし、民間のサービスの活用も視野に入れながら、法定雇用率の達成をめざしていきましょう。

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