公開日:2026年6月29日  更新日:2026年6月29日

「求人を出しても応募が来ない」 「採用してもすぐに辞めてしまう」 「採用後のミスマッチを防ぎたい」

人材確保に悩む中小企業の経営者・人事担当者の方なら、一度はこうした課題に直面したことがあるのではないでしょうか。

そんな悩みを解決する制度が「トライアル雇用助成金」です。就職が難しい求職者を一定期間お試しで雇用することで、国から助成金を受け取れる制度で、1人あたり月額最大4〜8万円が支給されます。

ただし、「コースが4つあって違いがわかりにくい」「申請手続きが複雑そう」と感じて、活用をためらう企業も少なくありません。

本記事では、トライアル雇用助成金の支給額・受給条件・申請方法を、2026年(令和8年度)の最新情報をもとに、企業の人事・総務担当者が知っておくべきポイントを解説します。

この記事で分かること

  • トライアル雇用助成金の仕組みと目的
  • 4つのコースの違いと自社に合う選び方
  • コース別の支給額といつもらえるか
  • 受給できる事業主・対象者の条件
  • 申請から受給までの流れと必要書類
  • 他の助成金と組み合わせて受給額を増やす方法

なお、障害者雇用にあたって「自社内で安定的に任せられる業務の設計に悩む」「定着率が上がらない」とお悩みの企業は、エスプールプラスの農園型障がい者雇用支援サービス「わーくはぴねす農園」もあわせてご検討ください。 2026年2月末現在で全国730社超の導入実績と約92%の定着率で、採用から定着までを継続して支援しています。

トライアル雇用助成金とは

トライアル雇用助成金は、就職が困難な求職者をお試しで雇用した企業に、国が助成金を支給する制度です。まずは制度の全体像から押さえていきましょう。

原則3か月間の試行雇用を通じて、企業と求職者の双方が適性を見極めたうえで、本採用(無期雇用)に進むかどうかを判断できます。「採用してみないと分からない」という不安を、助成金を受け取りながら解消できるのが大きな特徴です。

制度の目的と仕組み

トライアル雇用助成金は、求職者と企業の双方が抱える課題を同時に解決するために設けられた制度です。

この制度の目的は、職業経験の不足などから就職が困難な求職者等を、無期雇用契約へ移行することを前提に、一定期間試行雇用を行う事業主に対して助成することにより、求職者の早期就職の実現や雇用機会の創出を図ることと定められています。

つまり、次の2つの課題に同時にアプローチする仕組みです。

  • 求職者側:経験不足やブランクで就職しづらい人に、就業のチャンスを提供する
  • 企業側:採用ミスマッチを防ぎ、採用時の不安を軽減しながら、安定した雇用につなげやすい

トライアル雇用助成金の5つのステップ

  1. ハローワーク等を通じて求職者を紹介してもらう
  2. 原則3か月間の有期雇用契約を結ぶ
  3. 期間中に適性・能力を実際の業務で見極める
  4. 双方が合意すれば無期雇用へ移行する
  5. 要件を満たせば企業が助成金を受給する

書類や面接だけではわからない「実際の働きぶり」を確認できるため、入社後の「思っていた人材と違った」というミスマッチを大きく減らせます。

受給するのは事業主(求職者ではない)

トライアル雇用助成金でよくある誤解が、「お金をもらえるのは誰か」という点です。

結論として、助成金を受け取るのは事業主(企業)であり、求職者本人ではありません。 「トライアル雇用」という言葉から、求職者に支援金が支払われると勘違いされがちですが、助成金はあくまで、就職困難者を雇い入れた企業の負担を軽減するために支給されます。

登場人物それぞれの立場を整理すると、次のとおりです。

立場 役割
事業主(企業) 求職者を雇用し、助成金を受け取る
求職者 トライアル雇用で働く(助成金は受け取らない)
ハローワーク等 求職者を企業に紹介する
厚生労働省・労働局 制度を運営し、助成金を支給する

求職者本人にとってのメリットは、お金ではなく「就職の機会が得られること」「3か月間で職場が自分に合うかを見極められること」にあります。

この「受給するのは事業主」という大前提を押さえておくと、後述する受給条件や申請手続きの理解がスムーズになります。

トライアル雇用助成金の4つのコース

「自社が雇いたい人材は、どのコースに当てはまるのか?」----トライアル雇用助成金を検討するうえで、最初につまずきやすいのがコース選びです。

トライアル雇用助成金には、雇い入れる対象者や事業内容によって4つのコースが用意されています。まずは全体像を一覧で確認しましょう。

コース 主な対象者 月額 最長期間
①一般トライアル 就職が困難な求職者 4万円(※5万円対象者が母子家庭の母等・父子家庭の父の場合
)
3か月
②障害者トライアル 就職が困難な障害者 4万円(精神8万円) 3か月(精神6か月)
③障害者短時間トライアル 精神・発達障害者 4万円 12か月
④若年・女性建設労働者 35歳未満または女性の建設労働者 4万円 3か月

一般トライアルコース

最も利用されているのが、この一般トライアルコースです。「どのコースを使えばいいか分からない」という場合、まず検討すべき基本のコースといえます。

対象となるのは、職業経験の不足などから就職が困難な求職者です。具体的には、次のいずれかに該当する人が対象になります。

  • 過去2年以内に2回以上、離職や転職を繰り返している
  • 離職している期間が1年を超えている
  • 妊娠・出産・育児を理由に離職し、ブランクが1年を超えている
  • 生活保護受給者や母子家庭の母など、特別な配慮を要する人
  • 60歳未満で生活保護受給者、母子家庭の母等、父子家庭の父、日雇労働者、季節労働者、中国残留邦人等永住帰国者、住居喪失不安定就労者など、就職にあたって特別な配慮を要する方

支給額は1人につき月額4万円で、最長3か月間です。ただし、対象者が母子家庭の母等または父子家庭の父の場合は月額5万円に増額され、最大15万円を受給できます。

障害者トライアルコース

障害者の採用を検討している企業向けのコースです。2026年7月に法定雇用率が2.7%へ引き上げられる予定もあり、法定雇用率の達成を目指す企業にとって有力な選択肢となります。

対象となるのは、就職が困難な障害者をハローワーク等の紹介で原則3か月間試行雇用するケースです。身体障害・知的障害・精神障害・発達障害など、障害の種類は問いません。

支給額は、対象者が精神障害者かどうかで大きく変わるのが特徴です。

対象者 支給額 最大受給額
精神障害者以外 月額4万円 × 最長3か月 12万円
精神障害者 月額8万円 × 3か月 + 月額4万円 × 3か月 36万円

精神障害者を雇用する場合、月額最大8万円を3ヶ月、月額最大4万円を3ヶ月の合わせて最長6ヶ月間支給されます。定着に時間がかかりやすい精神障害者の雇用を、手厚く支援する設計になっています。

障害者短時間トライアルコース

「いきなり週20時間以上のフルタイム勤務は難しい」という障害者を、短時間から段階的に雇用するためのコースです。

対象となるのは、精神障害者または発達障害者で、すぐに長時間勤務をするのが難しい人です。週10時間以上20時間未満で試行的に雇用し、同期間中に20時間以上の勤務を目指すことで、継続雇用につなげます。本人の体調や職場への適応状況を見ながら、勤務時間を増やしていく仕組みです。

支給額は月額最大4万円ですが、このコースの最大の特徴は支給期間が最長12か月間と長いことです。他のコースが最長3か月(精神障害者で6か月)であるのに対し、1年間にわたって支援を受けられます。その結果、最大受給額は48万円となり、4コースの中で最も総額が大きくなります。

若年・女性建設労働者コース

建設業界に特化した「上乗せ」コースです。人手不足と高齢化が進む建設業界で、若手や女性の確保を後押しします。

対象となる労働者の条件は、次の2つです。

  • トライアル雇用開始時点で35歳未満の若年者、または女性であること
  • 建設工事現場での現場作業(左官、大工、鉄筋工、配管工など)又は施工管理を行う者であること(設計、測量、経理、営業などは対象外)

支給額は1人につき月額最大4万円で、最長3か月間です。

ここで重要なのは、このコースが単独では申請できないという点です。「一般トライアルコース」または「障害者トライアルコース」のいずれかの支給決定を受けたことが要件となっています。たとえば一般トライアルコースと組み合わせると、次のように受給額を上乗せできます。

コース 月額 3か月合計
一般トライアルコース 4万円 12万円
若年・女性建設労働者コース(上乗せ) 4万円 12万円
合計 8万円 最大24万円

建設業で若手・女性を雇用する場合は、この上乗せを活用することで、より大きな支援を受けられます。

自社の状況に合うコースの判別方法

4つのコースの内容はわかったものの、「結局、うちの会社はどのコースを選べばいいのか?」と迷う方も多いでしょう。

コース選びは、難しく考える必要はありません。「誰を雇いたいのか」という1点から、ほぼ自動的に決まります。 ここでは、雇用予定者の属性からコースを判別する方法と、複数のコースに該当する場合の考え方を解説します。

雇用予定者の属性から該当コースを見つける

コース選びで最も重要なのは、「雇い入れる人がどんな属性か」です。雇用予定者のタイプ別に、該当するコースを整理しました。

雇いたい人 該当コース
離職・転職を繰り返している人、長期離職者、育児ブランクのある人、フリーター(45歳未満)など 一般トライアルコース
障害があり、週20時間以上勤務できる人 障害者トライアルコース
精神・発達障害があり、まず短時間(週10〜20時間)から働きたい人 障害者短時間トライアルコース
35歳未満または女性で、建設現場作業に従事する人 若年・女性建設労働者コース(他コースに上乗せ)

判別の手順は、次の3つの問いに答えるだけです。

  1. 障害のある人を雇うか? → いいえなら、まず「一般トライアルコース」が基本
  2. 障害のある人が週20時間以上働けるか? → はいなら「障害者トライアルコース」、いいえなら「障害者短時間トライアルコース」
  3. 建設業で35歳未満または女性を現場作業で雇うか? → はいなら、上記に加えて「若年・女性建設労働者コース」を上乗せ申請

なお、対象者がトライアル雇用助成金の要件を満たすかどうかは、事前にハローワークの担当者が確認してくれるため、自社だけで判断に迷う必要はありません。求人を出す段階でハローワークに相談すれば、適切なコースを案内してもらえます。

複数コース該当時の優先順位を把握する

「うちの場合、複数のコースに当てはまりそう」というケースもあります。その場合は、コースに「併用できる組み合わせ」と「どちらか一方を選ぶ組み合わせ」がある点を押さえておきましょう。

併用できる組み合わせ

若年・女性建設労働者コースは単独申請できないため、必ず他のコースと組み合わせます。建設業で35歳未満の若手を現場作業として雇う場合は、次のように上乗せ受給が可能です。

  • 一般トライアルコース(月4万円) + 若年・女性建設労働者コース(月4万円) = 月最大8万円

これが、最も受給額を高められる組み合わせです。

どちらか一方を選ぶ組み合わせ

一方、障害者トライアルコースと障害者短時間トライアルコースは、同一の対象者について同時に受給することはできません。どちらを選ぶかは、本人が「最初から週20時間以上働けるか」で判断します。

本人の状況 選ぶコース 特徴
週20時間以上勤務できる 障害者トライアルコース 精神障害者なら最大月8万円・最長6か月
週20時間未満から始めたい 障害者短時間トライアルコース 月4万円・最長12か月

精神障害者の場合、「短期間で手厚く受給する(障害者トライアルコース)」か、「長期間にわたって支援を受ける(障害者短時間トライアルコース)」かで選び方が変わります。

判断に迷った場合は、本人の体調や就労意欲、勤務可能時間を踏まえて、ハローワークの担当者と相談しながら決めるのが確実です。

トライアル雇用助成金の支給額はいくら?

「トライアル雇用助成金で、結局いくらもらえるのか?」----これは、制度の活用を検討する企業が最も知りたいポイントでしょう。

支給額は1人あたり月額4〜8万円で、コースや対象者によって異なります。まずは全コースの支給額を一覧で確認しましょう。

コース 月額 最長期間 最大受給額
一般トライアル 4万円(母子父子5万円) 3か月 12万円(15万円)
障害者トライアル(精神以外) 4万円 3か月 12万円
障害者トライアル(精神) 8万円→4万円 6か月 36万円
障害者短時間トライアル 4万円 12か月 48万円
若年・女性建設(上乗せ) 4万円 3か月 12万円

それぞれ詳しく見ていきましょう。

一般トライアル:月4〜5万円

一般トライアルコースの支給額は、1人につき月額4万円です。最長3か月間支給されるため、最大で12万円を受給できます。

ただし、対象労働者が母子家庭の母等または父子家庭の父の場合は5万円に増額され、最大15万円(月5万円×3か月)が受給可能です。

注意したいのは、支給額が「実際に働いた日数」に応じて変動する点です。後述する出勤率による減額のルールがあるため、欠勤が多い月は満額が出ないこともあります。

障害者トライアル:月4〜8万円

障害者トライアルコースの支給額は、対象者が精神障害者かどうかで変わります。

  • 精神障害者以外:月額最大4万円(最長3か月間)→ 最大12万円
  • 精神障害者:月額最大8万円を3ヶ月、月額最大4万円を3ヶ月の合わせて最長6ヶ月間 → 最大36万円

精神障害者を雇用する場合は、最初の3か月間が通常の倍にあたる月額8万円となり、4〜6か月目は月額4万円となります。合計すると最大36万円で、4コースの中でも手厚い支給額です。

障害者短時間:月4万円×最長12ヶ月

障害者短時間トライアルコースの支給額は、月額最大4万円です。

このコースの最大の特徴は、支給期間が最長12か月間と長いことです。他のコースが最長3か月(精神障害者で6か月)であるのに対し、1年間にわたって支援を受けられます。そのため最大受給額は48万円(月4万円×12か月)となり、4コースの中で最も総額が大きくなります。

週10〜20時間の短時間勤務から始め、時間をかけて職場定着を図るための制度設計です。

若年・女性建設:上乗せ最大12万円

若年・女性建設労働者コースの支給額は、原則として月額最大4万円、支給期間は最長3ヶ月で、最大12万円です。

前述のとおり、このコースは一般トライアルコースまたは障害者トライアルコースへの「上乗せ」であり、単独では受給できません。建設業で35歳未満の若手を一般トライアルで雇用した場合は、一般トライアル(12万円)と合算して最大24万円を受給できます。

トライアル雇用助成金はいつもらえる?

「申請したら、いつ振り込まれるのか?」も気になるところです。結論として、雇用開始から受給までは半年以上かかると考えておくのが現実的です。

理由は、トライアル雇用助成金が「後払い」の制度だからです。お金を受け取るまでには、次のステップを踏みます。

  1. トライアル雇用の実施(原則3か月)
  2. トライアル期間終了後2ヶ月以内に支給申請書を提出
  3. 労働局による審査
  4. 支給決定後に振り込み

トライアル雇用そのものに3か月、その後の支給申請と審査にさらに数か月かかるため、雇用開始から実際に振り込まれるまでには、半年〜1年程度を見込んでおくとよいでしょう。

なお、支給は月ごとの分割ではなく、支給対象期間中の各月の月額の合計額がまとめて1回で支給されます。すぐにお金が入る制度ではないため、当面の人件費は自社で確保しておく必要があります。あくまで「採用後の負担を後から軽減してくれる制度」と理解しておくことが大切です。

トライアル雇用助成金を受給できる条件

「うちの会社は対象になるのか?」----せっかく申請しても、要件を満たしていなければ受給できません。

トライアル雇用助成金には、事業主側・対象者側の両方に条件があり、これを満たしていないと不支給になってしまいます。ここでは、受給の前提となる条件を「事業主側」「対象者側」に分けて整理し、最後に申請前に必ず確認すべき注意点をお伝えします。

事業主側の要件

まず、助成金を受け取る事業主が満たすべき主な要件は、次のとおりです。

  • ハローワーク等の紹介により雇い入れること
  • 雇用保険の適用事業主であり、対象者の雇用保険被保険者資格取得の届出を行っていること
  • 原則3か月のトライアル雇用をすること
  • 1週間の所定労働時間が、通常の労働者の1週間の所定労働時間(30時間以上)と同じであること(障害者短時間トライアルコースを除く)

特に見落としやすいのが、過去の解雇歴に関する要件です。基準期間に、雇用保険被保険者に該当する労働者を事業主都合で解雇・勧奨退職させたことがある事業主は、支給対象事業主の要件から外れ、トライアル雇用助成金を申請できません。

つまり、直近で会社都合の解雇や退職勧奨を行っている場合、受給できない可能性があります。この点は申請前に必ず確認しておきましょう。

このほかにも、雇用関係助成金に共通する要件(労働関係法令を守っている、労働保険料を適切に納付しているなど)があります。詳細は管轄の労働局またはハローワークに確認するのが確実です。

対象者側の要件

次に、雇い入れる「対象者」が満たすべき要件です。トライアル雇用助成金は誰を雇っても受給できるわけではなく、「就職が困難な求職者」であることが前提となります。

一般トライアルコースの場合、対象者は次の2つを満たしたうえで、さらに後述のいずれかに該当する必要があります。

  • 1週間の所定労働時間が30時間以上の無期雇用による雇入れを希望している者であって、トライアル雇用制度を理解した上で、トライアル雇用による雇入れについても希望していること
  • ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等に求職申込をしていること

そのうえで、次のいずれかに当てはまることが条件です。

  • 過去2年以内に2回以上、離職や転職を繰り返している
  • 離職している期間が1年を超えている
  • 妊娠・出産・育児を理由に離職し、安定した職業に就いていない期間が1年を超えている
  • 60歳未満で安定した職業に就いておらず、ハローワーク等で担当者制による個別支援を受けている
  • 生活保護受給者、母子家庭の母等、父子家庭の父など、特別な配慮を要する人

一方で、対象外となる人もいます。個人事業主や学生、すでに安定した職業についている人、事業主や取締役の3親等以内の親族に該当する場合は、助成の対象外です。「自社の社長の親族を雇いたい」というケースでは受給できないため、注意が必要です。

申請前に確認すべき注意点

要件を満たしていても、思わぬ落とし穴で不支給になることがあります。申請前に、特に次の3点を確認しておきましょう。

1. 直接応募者は対象にならない

最も多い誤解がこの点です。ハローワーク等を経由せず、事業者の紹介等で雇い入れる場合は対象外となります。自社サイトや知人の紹介、求人サイトからの直接応募で採用した人を、後からトライアル雇用扱いにすることはできません。

2. トライアル雇用中も労働関係法令が適用される

「お試し雇用だから簡単に辞めさせられる」という認識は誤りです。トライアル雇用期間中も労働基準法が完全に適用されます。給与は最低賃金以上を支払う必要があり、時間外労働には割増賃金も発生します。「試用期間」とは法的に異なる点を理解しておきましょう。

3. 求人提出のタイミングに注意

トライアル雇用助成金は、「先に求人を出してから採用する」のが大原則です。採用してから後付けで申請することはできません。求人をハローワーク等に提出し、その紹介を受けて雇い入れる----この順序を守ることが、受給の絶対条件です。

これらの注意点を踏まえ、不安があれば申請前にハローワークや社会保険労務士に相談しておくと、不支給のリスクを大きく減らせます。

トライアル雇用助成金の申請から受給までの流れ

「申請手続きが複雑そう」というイメージから、活用をためらう企業は少なくありません。しかし、流れを5つのステップに分けて理解すれば、決して難しいものではありません。

特に重要なのが、「2週間以内」と「2か月以内」という2つの提出期限です。これを守らないと不支給になるため、しっかり押さえておきましょう。まずは全体の流れを確認します。

ステップ 内容 重要な期限
STEP1 トライアル雇用求人を提出 --
STEP2 対象者の紹介を受けて採用・面接 --
STEP3 実施計画書を提出 雇用開始から2週間以内
STEP4 トライアル雇用を実施 原則3か月
STEP5 支給申請書を提出 期間終了後2か月以内

それでは、各ステップを順に解説します。

STEP1:求人提出

最初のステップは、ハローワーク等への「トライアル雇用求人」の提出です。

ここで重要なのは、通常の求人とは別に「トライアル雇用求人」として出す必要がある点です。求人票に「トライアル雇用併用」の希望を記載して提出します。すでに出している求人を、トライアル雇用求人に変更することも可能です。

繰り返しになりますが、この「求人提出が先」という順序が絶対条件です。採用してから後付けで申請することはできないため、トライアル雇用を活用したい場合は、採用活動の最初の段階でハローワークに相談しましょう。

STEP2:採用・面接

求人を出すと、ハローワークから対象労働者の紹介を受けます。紹介された求職者と面接を行い、採用するかどうかを判断します。

採用する場合は、労働条件を明確にしたうえで、トライアル雇用期間中の雇用契約書(または雇入れ通知書)を作成し、雇用契約を締結します。契約は原則3か月の有期雇用です。

この段階で、対象者がトライアル雇用助成金の要件を満たすかどうかはハローワーク側で確認されます。要件に不安があれば、紹介の段階で担当者に相談しておくとよいでしょう。

STEP3:計画書提出(2週間以内)

トライアル雇用を開始したら、最初の重要な期限がやってきます。

「トライアル雇用実施計画書」はトライアル雇用の開始日から2週間以内に、対象労働者と十分に話し合い、同意を得た上でハローワークに提出します。この実施計画書は「共通様式第1号」と呼ばれる書類です。

計画書を提出する際には、次の書類も添付します。

  • トライアル雇用期間に係る雇入れ通知書または雇用契約書など、労働条件が確認できる書類
  • 対象者が母子家庭の母等・父子家庭の父に該当する場合は、それを確認できる書類

この「2週間以内」の期限を過ぎると、原則として助成金を受給できなくなります。雇用開始と同時に、すぐ計画書の準備に取りかかりましょう。

STEP4:トライアル雇用実施

計画書を提出したら、原則3か月間のトライアル雇用を実施します。

この期間中は、計画書に基づいて通常の業務に従事してもらい、対象者の適性や能力を見極めます。前述のとおり、トライアル雇用中も労働基準法などの労働関係法令が適用されるため、給与は最低賃金以上を支払い、勤怠管理も適切に行う必要があります。

支給額は出勤日数に応じて変動するため、出勤簿(タイムカード)や賃金台帳は正確に記録・保管しておきましょう。これらは後の支給申請で必要になります。また、トライアル雇用期間中に離職・休職・本採用などの減額条件が発生した際は、すみやかにハローワークへ連絡する必要があります。

STEP5:支給申請(2ヶ月以内)

トライアル雇用期間が終了したら、2つ目の重要な期限です。

期間終了日の翌日から「2ヶ月以内」に、管轄の労働局またはハローワークへ「結果報告書兼支給申請書」を提出する必要があります。この書類は「共通様式第2号」と呼ばれます。

この「2か月以内」の期限も、助成金支給の可否を分ける重要な期限です。期限を過ぎると受給できなくなるため、トライアル雇用の終了日を確認し、申請期限をカレンダーに記入しておくことをおすすめします。

申請後は労働局による審査が行われ、問題がなければ事業主の指定口座に助成金が振り込まれます。

必要書類一覧

支給申請の際に必要となる主な書類は、次のとおりです。

書類 内容・提出タイミング
トライアル雇用実施計画書(共通様式第1号) 雇用開始から2週間以内に提出
結果報告書兼支給申請書(共通様式第2号) 期間終了後2か月以内に提出
支給要件確認申立書 役員等一覧を含む、支給申請の都度提出
出勤簿(タイムカード)の写し トライアル期間中の出退勤記録
賃金台帳の写し 支払った賃金の記録
雇用契約書の写し 労働条件が確認できる書類
支払方法・受取人住所届 初回申請時、または届出内容に変更が生じた場合に提出

申請書類や添付書類の様式は、厚生労働省の「トライアル雇用助成金の申請様式ダウンロード」ページから取得できます。コースによって様式が異なるため、自社が申請するコースの様式を使用してください。

書類に不備や添付漏れがあると受理されないため、提出前にチェックリストで確認することが大切です。手続きに不安がある場合は、社会保険労務士に申請を依頼するのも一つの方法です。

併用できる助成金と注意点

トライアル雇用助成金は、単体で使うだけでなく、他の助成金と組み合わせることで受給額を大きく伸ばせる点が見逃せません。

トライアル雇用だけだと最大12万円(一般コース)ですが、組み合わせ次第では1人あたり数十万円以上の受給も可能になります。ここでは、代表的な組み合わせと、その注意点を解説します。

組み合わせ可能な助成金一覧

トライアル雇用助成金と組み合わせやすい主な助成金は、次のとおりです。

助成金 どんなとき 主な対象
キャリアアップ助成金(正社員化コース) トライアル後に正社員化したとき 全業種
特定求職者雇用開発助成金 就職困難者・高齢者などを継続雇用したとき 障害者・高齢者・母子父子家庭等
若年・女性建設労働者コース 建設業で若手・女性を雇用したとき 中小建設事業主

基本的な流れは「トライアル雇用で採用 → 本採用(常用雇用)へ移行 → 別の助成金を申請」という形です。それぞれ詳しく見ていきましょう。

キャリアアップ助成金との組み合わせ

最もポピュラーな組み合わせが、キャリアアップ助成金(正社員化コース)との併用です。

トライアル雇用で3か月間お試し雇用した人を、その後に正社員へ転換すると、キャリアアップ助成金の対象になります。流れは次のとおりです。

  1. トライアル雇用(3か月)で採用 → トライアル雇用助成金(最大12万円)
  2. 有期雇用として継続
  3. 正社員へ転換 → キャリアアップ助成金(正社員化コース)

キャリアアップ助成金(正社員化コース)の支給額は、令和7年度から「重点支援対象者」に該当すれば80万円、それ以外は原則半額という仕組みに変わりました。中小企業の場合、重点支援対象者なら最大80万円が、正社員化から6か月後に40万円、さらに6か月後に40万円の2期に分けて支給されます。

ただし注意したいのは、トライアル雇用助成金では3ヶ月間の取り組みに過ぎないのに対し、キャリアアップ助成金では1年間にわたって取り組む必要がある点です。受給額は大きいものの、長期間の労務管理が求められます。

特定求職者雇用開発助成金との組み合わせ

障害者や高齢者など、就職が特に困難な人を継続雇用する場合は、特定求職者雇用開発助成金との組み合わせが有効です。

たとえば障害のある方を一定期間雇用した後に本採用とする場合、「トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース)」と「キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)」の併給が可能です。

ただし、ここには重要な注意点があります。障害者トライアルコースと特定求職者雇用開発助成金の間には併給調整があり、特定求職者雇用開発助成金第1期分が受給出来なくなります。つまり、単純に両方を満額もらえるわけではなく、一部が調整される仕組みです。

どの組み合わせが自社にとって適切かは、対象者の属性や雇用計画によって変わります。併給調整のルールは複雑なため、事前にハローワークや社会保険労務士に確認することをおすすめします。

申請時の注意点

助成金を組み合わせる際は、次の3点に注意しましょう。

  • 申請の順序とタイミングを守る:助成金ごとに申請期限が異なります。トライアル雇用助成金は期間終了後2か月以内、キャリアアップ助成金は正社員転換6か月後など、それぞれの期限を管理する必要があります。
  • 併給調整の有無を確認する:前述のとおり、組み合わせによっては一部が減額されます。「両方満額」とは限らない点に注意しましょう。
  • 労務管理を徹底する:複数の助成金を申請するほど、出勤簿・賃金台帳・就業規則などの整合性が厳しくチェックされます。書類に不備があると不支給につながります。

組み合わせは受給額を伸ばせる一方で、手続きが複雑になります。確実に受給するためには、専門家のサポートを受けるのも有効な選択肢です。

トライアル雇用のメリット

ここまで制度の詳細を見てきましたが、改めて「トライアル雇用を活用すると、企業にとって何が良いのか」を整理しておきましょう。トライアル雇用には、助成金以外にも実務上の大きなメリットがあります。

実務での働きぶりから採用判断ができる

最大のメリットは、実際に働いてもらってから本採用を判断できることです。

通常の採用では、履歴書や数回の面接だけで採用を決めなければなりません。しかし、書類や面接の印象と、実際の働きぶりが一致しないことは珍しくありません。「面接では好印象だったのに、入社したら期待と違った」というミスマッチは、多くの企業が経験しています。

トライアル雇用なら、原則3か月間という実際の勤務を通じて、対象者の適性・能力・職場への馴染み具合をじっくり見極められます。書類選考だけでは分からない本人の実力や人柄を確認したうえで本採用を判断できるため、ミスマッチを避けられます。

ミスマッチ時の対応を事前に整理しやすい

もう一つのメリットは、ミスマッチがあった場合の対応を事前に整理しやすいことです。

トライアル雇用は原則3か月の有期雇用契約です。トライアル雇用終了後、常用(無期)雇用に移行しなくても特に問題になりません。事業主及び対象労働者も契約期間満了で雇用を終了することができます。

通常の正社員採用では、一度雇うと簡単には解雇できず、ミスマッチがあっても雇用を続けざるを得ないケースがあります。一方、トライアル雇用なら、適性が合わないと判断した場合、契約期間の満了をもって雇用を終了できます。

ただし、これは「簡単に辞めさせられる」という意味ではありません。トライアル雇用中も労働基準法は適用され、期間途中での一方的な解雇には正当な理由が必要です。あくまで「契約期間満了による自然な終了がしやすい」という点が、通常採用との違いです。

トライアル雇用のデメリット

メリットの多いトライアル雇用ですが、当然デメリットや注意すべき点もあります。導入を検討する際は、これらも理解したうえで判断しましょう。

求職者層が未経験者中心になる

1つ目のデメリットは、応募してくる求職者が未経験者中心になりやすいことです。

トライアル雇用助成金の対象者は、そもそも「職業経験の不足などから就職が困難な求職者」です。具体的には、長期離職者、転職を繰り返している人、ブランクのある人などが中心となります。

そのため、即戦力となる経験豊富な人材を求めている企業にとっては、期待する人材像と合わない可能性があります。「すぐに現場で活躍できるベテランを採用したい」という場合には、トライアル雇用は必ずしも最適な手段とはいえません。あくまで「これから育てる人材を、リスクを抑えて採用する」制度だと理解しておく必要があります。

通常の中途採用より育成負担が大きい

2つ目のデメリットは、教育・育成にかかる負担が大きいことです。

未経験者やブランクのある人が中心となるため、基本的な業務知識やビジネスマナーから教える必要があるケースも少なくありません。場合によっては、教育担当者を配置したり、教育体制を整えたりする負担が発生します。

「助成金がもらえるから安く人材を確保できる」と単純に考えるのではなく、育成にかける時間と負担も含めてトータルで判断することが大切です。

教育体制が整っていない企業が無理に活用すると、現場の負担が増え、かえって定着率が下がってしまう恐れもあります。自社に受け入れ・育成の余力があるかを見極めたうえで、活用を検討しましょう。

障がい者雇用支援サービスのエスプールプラス

ここまで読んで、「障害者トライアルコースを活用して障害者雇用を始めたいが、自社内で安定的に任せられる業務の設計に悩む」「採用してもすぐ辞めてしまわないか不安」と感じた方もいるのではないでしょうか。

特に、2026年7月には法定雇用率が2.7%へ引き上げられ、障害者雇用への取り組みは多くの企業にとって急務となっています。しかし、いざ進めようとすると「社内で安定的に任せられる業務の設計ができない」「ノウハウがない」といった壁に直面しがちです。

そうした企業の課題を解決するのが、株式会社エスプールプラスの障がい者雇用支援サービス「わーくはぴねす農園」です。

わーくはぴねす農園は、企業が障がいのある方を直接雇用し、農園内の業務に従事する仕組みを提供する障がい者雇用支援サービスです。

このサービスが多くの企業に選ばれている理由を、2つのポイントに整理しました。

強み 内容
業界随一の実績 2011年の立ち上げ以来、2026年2月末現在でご利用企業730社以上、雇用創出5,000名以上
高い定着率 入社1年後の定着率が92%という業界トップクラスの数値

特に注目すべきは、入社1年後の定着率92%という高い数値です。一般的な障害者雇用では早期離職が課題となりますが、わーくはぴねす農園では3名の障がい者スタッフに対して1名のサポートスタッフを配置し、雇用前のマッチングを丁寧に行うことで、長期的な就労を実現しています。

「障害者雇用を進めたいが、何から始めればよいか分からない」という企業は、まず資料請求や相談から検討してみるとよいでしょう。

よくある質問

Q.トライアル雇用の助成金はいくらですか?

A. 一般トライアルコースの場合、1人につき月額4万円(母子家庭の母等・父子家庭の父は月額5万円)が、最長3か月間支給されます。 最大で12万円(母子父子家庭は15万円)を受給できます。

コースによって金額は異なり、精神障害者を対象とした障害者トライアルコースでは最大36万円、障害者短時間トライアルコースでは最大48万円(月4万円×最長12か月)が受給可能です。

Q.トライアル雇用助成金は誰がもらえるのですか?

A. 助成金を受け取るのは、対象者を雇い入れた事業主(企業)です。求職者本人ではありません。

ただし、受給するには事業主側の要件(ハローワーク等の紹介で雇用する、雇用保険の適用事業主であるなど)と、対象者側の要件(就職が困難な求職者であるなど)の両方を満たす必要があります。

Q.トライアル雇用の助成金は若年者にも支給されますか?

A. はい、支給されます。 一般トライアルコースの対象には、45歳未満のニートやフリーター等も含まれます。

また、建設業で35歳未満の若年者を現場作業として雇用する場合は、若年・女性建設労働者コースを一般トライアルコースに上乗せして受給することも可能です。年齢だけでなく、離職期間や就労状況などの要件を満たしているかが判断のポイントとなります。

Q.トライアル雇用助成金の支給額はいくらですか?

A. コースと対象者によって異なります。 基本は1人あたり月額4万円ですが、対象者の属性によって増額されます。

コース 月額 最大受給額
一般トライアル 4万円(母子父子5万円) 12万円(15万円)
障害者トライアル(精神) 8万円→4万円 36万円
障害者短時間トライアル 4万円 48万円
若年・女性建設(上乗せ) 4万円 12万円

なお、実際の支給額は出勤率によって変動します。欠勤が多い月は、実際に就労した日数の割合に応じて減額される点に注意しましょう。

まとめ

トライアル雇用助成金は、就職が困難な求職者をお試しで雇用することで、企業が助成金を受け取れる制度です。最後に、本記事の重要ポイントを振り返ります。

ポイント 内容
支給額 1人あたり月額4〜8万円。コースにより最大12万〜48万円
受給するのは事業主 ハローワーク等の紹介が絶対条件。直接応募者は対象外
2つの提出期限 雇用開始から2週間以内に計画書、終了後2か月以内に支給申請
メリット 実際の働きぶりで採用判断でき、契約満了で終了しやすい
デメリット 未経験者中心になりやすく、育成負担がある

トライアル雇用助成金は、採用コストを抑えながら人材を確保し、ミスマッチのリスクを減らせる、中小企業にとって心強い制度です。「人手不足を解消したい」「採用の失敗を避けたい」という企業は、ぜひ活用を検討してみてください。

まずは、最寄りのハローワークに「トライアル雇用求人を出したい」と相談するところから始めましょう。制度の活用に不安がある場合や、複数の助成金を組み合わせたい場合は、社会保険労務士などの専門家に相談すると、スムーズかつ確実に進められます。

特に障害者雇用を検討している企業は、助成金の活用と並行して、エスプールプラスの「わーくはぴねす農園」のような専門サービスを利用することで、ノウハウがなくても安心して雇用をスタートできます。自社の状況に合った方法で、ぜひ一歩を踏み出してみてください。

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