株式会社アイ・エス・ビー
代表取締役社長 若尾一史 様
執行役員 人事部長 平岡智信 様
人事部 人事課 主任 浅野有美 様
「モビリティサービス」 「官公庁や企業の業務システム」 など、幅広い分野への統合ソリューションを提供している株式会社アイ・エス・ビー。創業50周年の2020年、次の半世紀に向け積極的に事業展開している同社は、 「わーくはぴねす農園さいたま川越」と「わーくはぴねす農園柏第3」で3チーム、計9名の障がいのある方を雇用しています。当初は法定雇用率のクリアを第一の目的としてスタートした農園でしたが、今では同社が推進する 「サステナビリティ経営」 に欠かせない部署へと成長しつつあるそうです。当初から農園プロジェクトをリードされてきた、代表取締役社長の若尾一史様、執行役員の平岡智信様、人事部の浅野有美様に、導入当初の苦労話やその成果をお聞きしました。
「かつて障がい者雇用に関して抱えていた課題と、農園事業を推進された決め手を教えて下さい」
弊社ではこれまでも、主に事務管理系で障がいのある方の雇用を行ってきました。しかし約2000名の従業員を抱える会社として、法定雇用率に見合った人数の雇用の場の創出は厳しく、画期的なソリューションを常に求めていたのです。ハローワークとの連絡を密にし、同業他社の事例研究や特例子会社の設立も検討しました。本業での採用も検討しましたが、弊社の業務はお客様のオフィスで作業するケースがあり、そういったビジネスモデルや事業内容と障がいのある方とのマッチングは困難であると判断せざるを得ませんでした。
そんな折 「わーくはぴねす農園」 の存在を知りました。安全面の配慮がありリスクが低く、ある程度の人数を同時に雇用可能なスキームに魅力を感じました。収益事業とは意識せず、農園を公の会社としての社会的責任を果たす場所と位置づけました。そして何より、農園を運営する意義と弊社の経営理念の合致が開設の決め手となったのでした。
創業50周年を契機に策定した弊社の経営理念が 「心豊かに暮らす笑顔溢れる社会づくりに貢献する」 です。社会における存在意義をミッションとする弊社にとって、多様性の時代にさまざまな環境で生活される方々の働く機会の創出は重要な責務です。農園はまさにふさわしい取り組みで、プロジェクトも積極的に検討され進みました。 「農業と本業では世界観がかけ離れていないか?」 といった議論も議論されましたが、弊社が手掛けるICTは、近年センシング技術やドローンの活用など 「スマート農業」 の推進に必要不可欠な存在です。弊社と農業の親和性は高く、農園導入は大変スムーズに進捗し実行されました。
「現在のファーム運営概要をお聞かせください」
2020年秋のオープン以降間もなく丸2年を迎えますが、定着率も高く運営は順調です。スタッフは精神障がいのある方が比較的多く、各チームに重度の方を1名ずつ配置しています。年齢層は20歳代から60歳代の方まで幅広く、作業中に 「お父ちゃん(※愛称)、教えて!」 なんて明るい声が農園に響いています。雰囲気はとても良好です。
人事担当者が定期的に農園を訪問し、スタッフとのコミュニケーションに努めています。農場長にはスマートフォンを支給し、毎日連絡を取り合っています。ちょっとした課題は日々さまざまに発生しますので、円滑な運営の実現には農場長とのスムーズな連携が必須だと実感しています。農場長も農業はほぼ未経験の方で、日々スタッフと一緒になって勉強しながら成長しています。その農場長の採用に当たっては、スタッフの面倒見のよさ、指導力などの人間性をより重視しました。
これまでに栽培した野菜は全部で20種類近くになります。スタッフに無理な納期やノルマを設けて過度なプレッシャーをかけたくないので、あえて本社側から細かい納期や収量の指定はしていません。何を育てるかはスタッフと農場長が相談して決めています。野菜を育てながらスタッフの自主性も成長してくれれば良いと捉えています。栽培はトマト、ピーマン、キャベツ、カブなどから始まりましたが、今年はスイカやメロンなど難易度のより高い作物にチャレンジしています。メンバーの技術も大分習熟しましたので、今年は挑戦の年としてより高度な栽培に挑戦しているのです。スタッフもそのことを良く理解しており、各チームが具体的な目標を掲げ栽培に打ち込んでいます。
チーム目標は 「元気よくあいさつする」 「みんなで一緒に行動する」 といった基本的なものですが、40歳代以上で構成された大人のチームからは 「互いに助け合って、美味しい野菜作りに努める」 といった立派な品質管理目標が掲げられ、頼もしい限りです。
「農園が生み出した具体的な成果をお聞かせ下さい」
収穫された野菜は、個別包装されて各事業所やグループ会社各社に順次配布しています。多い時には100袋ほどの配布となりますが、出社人数が制限されている時期にもかかわらず、毎回きれいに無くなる人気振りです。配布会の告知は毎回社内の掲示板や社内ポータルサイトで行いますので、最近では社内の認知度もアップし、 「今度はいつですか」 といった問い合わせが届くなど、楽しみにしてくれる社員も増えてきました。
食味の評判も上々です。新鮮で衛生的な上、 「レストラン並みのクオリティのおいしさを家族で楽しんでいます」 といった声も寄せられています。こうした社員から農園へのメッセージは、社内報の 「わーくはぴねす農園レポート」 でしっかり詳細に紹介し、農園メンバーは毎号楽しみにしています。こうした社員と農園をつなぐトピックの可視化は、スタッフのモチベーションの向上に大変有益となっています。
年に一回、人事担当者と本人、ご家族様や支援員様と雇用継続面談を行っています。実績、評価、改善についての話し合いですが、「農園での話題を嬉しそうに報告してくれる」 「一緒に料理をして楽しんでいる」 など、スタッフの充実した生活がうかがえる話題もお聞きでき、思わず頬が緩みます。
創業50周年を契機に、会社を挙げて 「社会貢献」 「多様性の推進」 への取り組みが始まりました。農園の存在も経営の大切な一環であるとして、社内認知度も高まっています。先日弊社社長、役員が農園を訪問し、スタッフと一緒に汗を流し交流を楽しみました。その様子は社内報で全社に周知され、農園の意義に多くの社員が認識する契機となりました。スタッフが先生となり経営陣を手取り足取り指導する姿に、社内は大いに盛り上がりました。スタッフにとっても大変光栄との声も上がり貴重な経験となり、モチベーションが一層上がったことは言うまでもありません。
最近、東京都葛飾区で子ども食堂などを運営している 「NPO法人レインボーリボン」 様への野菜の寄付を開始しました。こちらも創業以来の理念で、現在の基本方針 「地域社会への貢献」 の実践に他なりません。法定雇用率のクリアを当初の目標に開設した農園でしたが、今では次の50年の指針を担う重要な部署へと成長しつつあります。
だからでしょうか、農園の見学を希望する社員の数が増えています。野菜を通じたコミュニケーションは、明らかに社員のノーマライゼーションの進化をもたらしました。交流を更に活発にするため、農園で各種研修を行う、配布会に農園スタッフを招待する、採用ブランディングに農園を活用するなど、今から多くの新型コロナウィルス明けの企画が検討されています。農園の取り組みを持続的に発信し、その意義への理解を深めることで、全社員のエンゲージメントの向上にもつなげていければと期待しています。
「ファームが目指す次のステップとは?」
弊社では昨年 「サステナビリティ基本方針」 を策定し、次の50年を見据えた新たな歩みを始めました。 「社会貢献」 「社員エンゲージメントの向上」 などさまざまな方針を掲げていますが、 「多様性のある職場環境の実現」 は中でも創業以来弊社が大切に育んできたテーマであり、これからも障がいのある方の雇用を積極的に推進していきたいと考えています。
この他、より多くの外国籍の方々の受け入れにも取り組んでいきたいと考えています。現在でも、本業に東南アジアの方を迎えていますが、皆さん多様性豊かなパワーをお持ちです。そのパワーを弊社で存分に発揮していただき、将来は得られた経験を活用して母国の更なる成長に貢献してもらえれば良いと思っています。そして、農園にも障がいのある外国籍の方々をお迎えし、そこで学んだノウハウを、将来的には母国の障がい者雇用の実践に大いに役立ててもらいたいと願っています。
この4月初めて農園で、グループ会社の新人研修を行いました。弊社が目指す基本方針を学ぶのに農園は最適の教室です。次の半世紀に向けての歩みは始まったばかりですが、貴重かつ持続的な情報発信を農園に期待しています。そのためにはエスプールプラス社様との協業は必須であり、これまで以上の連携とご指導を期待しています。
2022年5月20日インタビュー
本文中の企業名、役職、数値情報等は、インタービュー当時のものです。
会社名 | 株式会社アイ・エス・ビー |
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事業内容 | 情報処理/インターネット関連 |
URL | https://www.isb.co.jp/ |