ハリマ化成グループ株式会社、ハリマ化成株式会社
上席執行役員 人事グループ長 岸本泰久 様
人事グループ 次長 龍 清訓 様
人事グループ 担当課長 伊原裕人 様
人事グループ 人事課 ハリマファーム運営係長 北原宏隆 様
松から得られるロジン(松やに)、脂肪酸、テレピン油などを利用して印刷インキ用樹脂、塗料用樹脂、粘接着剤用樹脂、製紙用薬品、電子材料などの化学物質を生産する「パインケミカル」の国内トップメーカー「ハリマ化成株式会社」。企業理念や行動基準に「潤いのある、豊かな社会の創造を使命とする」、「高い倫理観を持って社会的責任を果たしていく」を掲げる同社は、2021年9月、大阪府摂津市でエスプールプラスが運営する「わーくはぴねす農園Plusおおさか摂津」に、「ハリマファーム」をオープンしました。開設から約半年を迎えたばかりですが、生き生き働く障がいのあるスタッフが手がけた野菜は、同社加古川製造所の社員食堂をはじめ、国内拠点9ケ所に提供され、従業員の健康づくりに貢献し、かけがえのない部署へと成長しつつあります。地域交流や社会貢献に積極的に取り組んでいる同社で、ファーム導入を積極的に推進された皆さんに、ファームへの想いや将来のイメージをお聞きしました。
「現在のファーム運営概要と、開設前に抱えていた課題をお聞かせ下さい」
2021年9月にオープンした「ハリマファーム」は、スタッフを指導する女性農場長と男性スタッフ3人で運営しています。スタッフそれぞれに知的、精神などの障がいがあり、仕事に慣れるのに少し時間がかかりましたが、今ではすっかり打ち解け笑顔が絶えない職場になっています。彼らの心をほぐすために先ず行ったのが簡単なルール作り。「何かをしてもらったら、ありがとう」、「あわてて行動しない」、「迷った時はすぐ相談しよう」。この3ケ条をファームに掲示して心の交流を促進したところ、徐々にコミュニケーションが増え、明るい職場の誕生へと結びつきました。
ファームは「水耕栽培」で、葉野菜を中心に育てています。室内全天候型で雨や風の影響を受けにくいですし、温度や湿度管理も容易なので、大変恵まれた環境だと考えています。サンチュ、レッドリーフ、レタス、水菜、二十日大根、菊菜、小松菜など15種ほどを栽培していますが、特にチンゲンサイがおいしいと好評です。
弊社の加古川製造所に隣接する「マリーゴールド園」は、弊社が創業以来大切に守り続ける地域や社会への「貢献」精神の象徴として、四季を通じた近隣の皆様の憩いの場として作られました。「ハロウィン」や「クリスマス」など季節の演出やライトアップは、すっかり地域の恒例行事として愛されています。ファームには野菜の生産工場としての役割だけでなく、「マリーゴールド園」のように、弊社の「社会貢献」事業の一翼を担ってほしいと願っています。就業場所は離れていますが、ファームスタッフは一般従業員と同じユニフォームを着て、同じハリマの社名を背負って働いています。かけがえのない私たちの仲間として、ファームの中で完結することのないハリマ化成らしい障がい者雇用の形を確立して行きたいですね。
弊社は、時代の要請に先んじて障がい者雇用を積極的に推進し、30年以上前から障がいのある方を採用し、事務作業や出荷業務、敷地内の緑化作業などを担当していただきました。法定雇用率も長年にわたりクリアしてきましたが、従業員数が年々増加したことに伴い、障がい者雇用率が若干減少しました。今回、ハリマファームをオープンしたことで、目標数値の3%を達成できました。実は弊社では以前も雇用の場として自社ファームの設立に挑戦しましたが、必要とされる初期投資額の大きさ、労務や安全管理の難しさなど、ノウハウ不足により断念せざるを得ませんでした。幸いエスプールプラス社との出会いに恵まれ、障がい者雇用のプロならではの実績と綿密なコミュニケーションに大いに助けていただきました。
新しいプロジェクトを立ち上げる際は、往々にして「意義とコスト」、所謂「費用対効果」の検証が必須となります。弊社もかねてから農業を障がい者雇用に利用するアイデアの素晴らしさを認識していました。自然と相対した障がいのある方たちの生き生きと働く姿は、一歩進んだ障がい者雇用の可能性を感じさせるのに充分な体験でした。それが弊社のパートナー企業である、エスプールプラス社との協業により実現したのは喜ばしい限りです。
これまでの障がい者雇用とは、本業の中で就業が可能なスキルを有した障がいのある方を雇用し、いかに法定雇用率をクリアするかに主題が置かれていました。しかし、今日私どもが社会から求められている障がい者雇用とは、障がい特性により職種が制限されてしまう方々の雇用であり、そういった方々が健常者と同様に生き生きと働ける場の提供に他なりません。決して社業とダイレクトに結びつく職種ではないかもしれません。しかし新しいスキームの構築は、これからの企業の責務です。「ハリマファーム」とは、弊社が時代の要請に対応し、SDGsの精神を具現化したひとつの解答であると認識しています。
現在のファームは、利益に直結する部門ではありません。ファーム単体でコストを回収するのは至難の業です。しかしSDGs精神の発信など、ファームが持つ可能性への期待は大きく、費用対効果は充分高いと弊社は考えファーム事業を推進しております。
「ファームが生み出した具体的な成果をお聞かせ下さい」
収穫された野菜は、加古川製造所の社員食堂で食材として活用され、また全国9ヶ所ほどの拠点に提供しています。食堂ではメニュー看板に「○○にはハリマファームの野菜が使用されています」と告知され、配布される野菜にはファームスタッフの手書きメッセージなどが添えられ、あっという間に配布が終了することも珍しくはありません。ファームの野菜を味わった社員からは、お礼のメッセージが多く届いています。お礼のメッセージはすべてファームスタッフ内に共有され、モチベーションアップに大いに役立っています。ファームスタッフ間には社員として認められている嬉しさ、会社に貢献できている自信が日々芽生えており、ご家族からも「明るくなりました」と嬉しい情報が寄せられています。
実は小松菜の成長具合が他の野菜と比べて著しいのですが、スタッフたちが小松菜に日々「大きくなれ大きくなれ」と語りかけているのです。行為自体が野菜にどのような好影響を与えているかは不明ですが、彼らの野菜をいつくしむ気持ちとやる気が大きな成果に結びついているのだと確信しています。このようなファームでの活動や面白いエピソードなど、ファームスタッフが手作りした「ハリマファーム通信」で月一回全社員の目に届いており、ファームへの期待は日々高まっています。
「ファームが目指す未来像とは?」
コロナ禍収束の暁には、近隣の子ども食堂に野菜を提供し、地域貢献の一助となりたいですね。現在四季を通じて安定供給を実現するために研究中ですが、弊社の経営理念にまさに合致する企画だけに、何としても実現したいと願っています。また一般社員から、ファーム見学希望が増えています。スタッフもぜひ自分達の働きぶりを見てほしいとやる気満々です。ファームが社内の和をより育む存在へと進化することを願って止みません。
新型コロナ禍で困窮する方々などへの一助にもなれたらと切望しています。もしそれが実現し社内提供分の野菜が足りなくなったとしても、本望です(笑)。そしてマリーゴールド園のような、ファームを舞台に地域の方々と一つになれる試みにも挑戦したいですね。「日本の障がい者雇用のトップランナーを目指す!」 ハリマファームはそう願う弊社のSDGs推進に欠かすことのできない存在なのですから。
2022年2月18日インタビュー
本文中の企業名、役職、数値情報等は、インタービュー当時のものです。
会社名 | ハリマ化成グループ株式会社、ハリマ化成株式会社 |
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事業内容 | 松から得られるロジン(松やに)、脂肪酸、テレピン油などを使って化学素材を製造・販売 |
URL | https://www.harima.co.jp/ |