お知らせ News
お知らせ News
「ソーシャルファーム わーくはぴねす農園 Plus 東京板橋」で働く竹田千秋さん(44歳)。2~3歳の時に親御様が幼児特有の「指さし」などの行動が少ない事に気が付いたことがきっかけで大学病院に診察に行き、知的障がいとの診断を受けました。
その後は区立の福祉園や保育園に通い、特別支援学級に進学し、中学卒業を機に地元のメッキ工場に入社。以降26年間しっかりと勤続を続けたものの、コロナの影響で勤め先の会社が存続不可能に。そんな就業意欲の高い彼女が転職先を探している時に出会ったのが「ソーシャルファーム わーくはぴねす農園」での仕事でした。
竹田さんがどのようにして農園に出会ったのか、農園での仕事を通してどのような変化があったのか、そして今の仕事のモチベーションに繋がるお話をご本人のお母様と竹田さんの農園への転職を体験実習の段階からサポートしてきたエスプールプラス社の農園スタッフにお聞きしました。
2~3歳の時に受けた診断結果から保育園、小学校、中学校までは福祉のサポートを受けながら生活していましたが、私にとっては「人より少し手のかかる子」という程度の認識。"自分のことは自分で出来るようになろうね"という気持ちを合言葉に、洗濯から日々の家の片づけ、料理の手伝いなど、一通りのことを出来るように育ててきました。
中学の時の特別支援学級でお世話になった先生のご紹介で、地元で3代続くメッキ工場に一般就労という形で就職が決定。家族にとっても嬉しい出来事でしたし、彼女自身にとっても自信に繋がる大きな第一歩になったと思います。
メッキ工場での仕事は一人で黙々と作業を進めていくタイプの業務だったこともあり、「一度教わって覚えたことは集中して取り組める」タイプの娘には最適だったのかもしれません。結果的に26年間勤続させてもらうこともでき、その間社員旅行や会社のイベントなど、"会社で仲間と働く喜び"はしっかりと感じられたと思っています。
その会社を退職することになった理由は新型コロナウィルスの影響での業績の悪化。娘にとっては落ち込む出来事なのかと最初は心配もしましたが、「コロナで大変だから会社を辞めなきゃいけないんだって」「次はどこで働こうかな」と前向きな言葉を口にしていたことで安心しました。
娘の転職先を探すためにハローワークに出向いた際に最初にご紹介いただいたのが、「ソーシャルファーム わーくはぴねす農園 Plus 東京板橋」でした。「野菜を作るんだって!」「なんだか楽しそう!」という娘の意見を聞けたので、体験実習に参加することにしました。
体験実習では実際に野菜の種まきから収穫などの作業を体験することができ、野菜に直接触れたり、新鮮な野菜の収穫方法を教わったり、楽しい時間を過ごせました。
娘の転職先を見る親目線での意見としては"名前を聞いたことがあるような大企業が参画している農園である事とその大企業と雇用契約を結べること"が安心材料となり、転職を後押ししてあげたいという気持ちになった事を覚えています。
1回目にチャレンジしたの体験実習後の振り返り面談では"少し大きな声を出してしまう時がある事"と"メモを取り過ぎてしまう所"の2カ所を改善できれば就業可能というお返事を頂けたので、その日から家で娘とトレーニングを開始。"農園で働きたい"という目標が出来たこともあり、1か月後にはしっかりと課題をクリアできるまでに成長しました。
もう一度、体験実習に申し込み、今回は企業の面接まで進むことができました。結果は見事に採用。娘はもちろんのこと、私自身もほっとしたことを覚えています。
農園に転職して娘が一番大きく変わったことは、家で楽しみながら料理できるようになったこと。毎日のように農園で栽培した野菜を「おみやげだよ!」と持って帰ってきてくれるんです。「今日はラディッシュとレタスを収穫したからサラダを作るね」など、農園で教えてもらったのか、その野菜に合った調理方法でメニューを考えて料理を楽しんでいる姿を見れることが、家族にとっても嬉しい瞬間。今では仲の良いご近所さんにまで配っているみたいで、「娘さんからお野菜頂きましたよ。ありがとう。」とお礼の言葉までいただいくほどなんです。
昔から人に喜んでもらうことが大好きな性格の娘にとっては、「野菜を作る」→「人に食べてもらう」→「美味しかったと喜んでもらえる」ことがとても嬉しいみたいで、転職が上手くいったことを本当の意味で実感しました。
娘の契約条件での勤務時間は朝9時から16時まで。残業はもちろんありませんし、毎日17時には家についています。また、職場環境に関しても屋内農園ということもあり、とってもきれい。娘はきれい好きなので、たぶんその辺も気に入ったポイントなのかもしれませんね。
給与に関しても一般就労ですし、働く時間が短い分を差し引いて考えれば十分に満足しています。なので、同じ境遇の方には是非お勧めしたいくらい良い職場だと思っています。
今家族で話しているのは、コロナ過が落ち着いたらみんなで旅行しようという話題。娘の仕事も決まり、安定して働けているのでそんな楽しみを考える余裕まで生まれてきました。「親孝行をしたい」という娘の気持ちを受け取れるまでに成長させて下さった就労先企業の皆様や、就業をサポートしてくださっているエスプールプラス社の皆様へは感謝の気持ちでいっぱいです。
社会福祉士と精神保健福祉士の資格を持ち、メディカルソーシャルワーカーとして知的障がい者施設の指導員としての経験があるスペシャリストとして勤務
私たちの使命は、就労先の企業様に胸を張って紹介できる人材を見極めること。また、今回の竹田さんのように、"何が課題で、何を改善すれば就労可能か"を見つけてあげることです。
竹田さんの場合の就労への障壁となっていた1つ目の課題は、時に声のボリュームが大きくなってしまうこと。屋内農園の場合、区画ごとに契約企業様が隣り合うこともあるので、大きな声で他の作業者の集中力に影響が出る等、迷惑が掛かってしまうこともあるんです。屋外のビニールハウス農園でなら大きな問題にならないのですが、今回は屋内農園での募集。このように、個別事案に合わせた課題を見極めることも私たちの役割の一つになっています。
2つ目の課題は教えられたことを何でもすぐに書き出してしまう癖の部分。"何かをしだすと止まらなくなる"という性格が就労の妨げになる可能性を感じたので、体験実習後の振り返り面談の際に親御さんにお話しさせて頂きました。
体験実習のように短い期間中にしっかりとした見極めが出来るかどうかが、私の役割を果たす上ではとても重要で難しいことなんです。
私の場合はこの農園での仕事に就職する前、知的障がい者施設での経験があったので、その時の経験を活かして働くことができています。社会福祉士や精神保健福祉士などの保有資格はもちろんのこと、現場での経験の有無も人材を紹介される企業様側にとってはとても大事で安心できるポイントだと思っています。そういった責任を背負うことが、自分の仕事に対するやりがいに繋がっています。
私自身の仕事に対するモチベーションは、「一人でも多くの障がいのある方々の一般就労を実現したい」という気持ち。一緒に仲間として働いてくれる人材を探す企業様と、少しの課題解決で就労が可能になる障がいのある方々との調整役・懸け橋になる仕事が出来ればと考えて、日々取り組んでいます。