写真:株式会社エスプール

農園での経験から生まれた障がい者雇用の理想形と、互いを思い理解しあう企業文化

株式会社エスプール

執行役員 人事本部 本部長 米川幸次 様
人事本部 人材開発部 野菜を食べて健康になろう課 課長 井上覚美 様
人事本部 人材開発部 人材開発課 D&I推進グループ 岳野大助 様
人事本部 人材開発部 人材開発課 D&I推進グループ 赤星ひかる 様

イメージ:株式会社エスプールインタビュー
利用目的
  • 農園を活用した障がい者雇用から得られた経験を全社的な社員雇用の質向上に役立てる
抱えていた課題
  • 当時は障がい者雇用の経験や知識がなく、ハローワークから指導を受けて採用を模索していた
  • 雇用を開始したが、ノウハウがなく離職率の高さに悩んでいた
利用効果
  • 農園活用で障がい者雇用の基礎を学べたことで、定着率があがり、パフォーマンスを発揮する社員が増えた
  • 障がいのある方との交流を通じて、全社的なノーマライゼーション・ダイバーシティ意識が育まれた
  • 農園活動から得られた知見、ノウハウが全社的な障がい者雇用の質向上に大いに貢献している

「わーくはぴねす農園」を運営するエスプールプラスのホールディングカンパニーであり、「ビジネスソリューション事業」「人材ソリューション事業」などを通じたアウトソーシングの活用で、さまざまな社会や企業の課題解決の「仕組み」を提供している株式会社エスプール。同社は「わーくはぴねす農園」を始め、現在では積極的に障がい者雇用に取り組んでおり、本年度の障がい者雇用率は約3%に達する予定です。しかしそんな同社でも創業当初は障がい者雇用に対する知識はないに等しく、雇用もままならない中さまざまな困難を経験されたのだとか。1999年の創業以来、わずか20余年で障がい者雇用のトップランナーに成長した同社の当時抱えていた課題、取り組みの実態、そして障がい者雇用への想いなどを、人事本部本部長・米川幸次様、人材開発部の井上覚美様、岳野大助様、赤星ひかる様にお聞きしました。

「知見もノウハウもゼロから障がい者雇用をスタートしました」米川様

かつて障がい者雇用に関して抱えていた課題と、農園事業を推進された決め手を教えて下さい

当社は1999年に創立されましたが、その後急成長を達成し2006年には上場を果たしています。社員数もそれにつれて急増しましたが、恥ずかしながら当時の社内には障がいのある方の雇用に関する知識がなく、採用も行っていませんでした。そして2007年にはハローワークから指導が入り、改めてその重要性を認識する機会となりました。

早速、本業での障がい者雇用を実施し、先ず北海道の北見市にある募集管理センターや物流倉庫を中心に、身体障がいのある方、精神障がいのある方々を受け入れました。しかし、知識もノウハウもない運営では、スタッフの定着は難しく離職者が後を絶ちません。離職と採用のいたちごっこに人材開発部は疲弊状態に陥りました。障がいのある方の高い職場定着率が期待できる画期的なソリューションはないものだろうか。2009年、こうして全社を挙げた検討と様々な取り組みが開始されたのです。

2010年にエスプールプラスで誕生した「わーくはぴねす農園」での障がい者雇用もその中の一つでした。主に、働く機会に恵まれない知的障がいのある方の職域拡大を実現することができる。また、農園で得られた雇用ノウハウや知見は、全社的な経営戦略の策定、人的資源の活用、地域社会貢献などへの活用も期待できる。このように「農園」は会社全体に限りないプラスの連鎖を生み出せる、障がい者雇用のゲームチェンジャーであると実感しています。

「農場長のリーダーシップに感謝する毎日です」井上様

現在のファーム運営概要をお聞かせください

はじめは1チームで始まった農園ですが、現在は3ヶ所の農園で障がいのある方々が野菜栽培に励んでいます。育てる野菜はレタス、水菜、大葉、キャベツ、トマト、枝豆など、季節に合わせてスタッフと農場長が相談し、自主的に選定しています。最近では栽培スキルの向上も目覚ましく、ニンニクなどへの挑戦も始まりました。

収穫した野菜は週1回のペースで従業員に社内販売しています。全国に約60ヶ所ある拠点をローテーションしていますが、どの事業所でも大人気でわずか5分ともたずに販売会が終了することも珍しくありません。野菜一袋20円とし、その収益金は寄付として「TABLE FOR TWO」にお届けしています。また、地域の子ども食堂や通所介護施設への寄付、街イベントでの配布の再開を心待ちにしている現在です。

農園では主に知的・精神障がいのある方々が働いています。中には重度の方もいますが、農場長の適切な指導で農園の運営や雰囲気は良好です。私たち人事本部内では、農園マネジメントの管理部署である「野菜を食べて健康になろう課」を設立しています。農場長とは常に密接な連携を心がけており「安心・安定・安全」な運営をしておりますが、毎日スタッフと直に接している農場長の指導力や優しさがあってこそ、農園は成り立つのだと感じています。農園のキーパーソンは間違いなく農場長ですね。素晴らしい方々と出会えたことに感謝しています。

「農園との交流から社内エンゲージメントの向上が生まれる」井上様

農園が生み出した具体的な成果をお聞かせ下さい

社内販売される野菜には、必ずスタッフや農場長からのコメントやおすすめレシピが同封されています。いただいた従業員からもありがとうメッセージや色紙などが農園に送られ、自然と交流の場が生まれました。時には料理の写真をメールで送ってくれる従業員もいて、スタッフの楽しみになっています。また社内販売の際には社内イントラネットで関係者に情報を配信し、「送りますね」「ありがとうございます」といった言葉のキャッチボールを心がけています。本社との交流は農園スタッフのモチベーション向上に寄与し、従業員のノーマライゼーション意識を進歩させました。障がいのある方をより身近で自然な存在として考えられるようになり、「自分たちの職場にも迎えてみたい」といった声が聞かれるようになりました。農園は従業員の障がいのある方に対する見方を確実に進歩させ、社内エンゲージメントの高まりを生んでいるのです。今後は全社員が閲覧可能な交流メディアを立ち上げたり、コロナ禍でストップしている新入社員研修の再開など、より活発な運用を推進したいですね。

「農園と本業雇用のハイブリッド戦略で社会的責任を果たしていく」米川様

農園の最大の功績は、農園という環境から新しい雇用が生まれた点にあります。農園があったからこそ、これまで機会に恵まれなかった多くの障がいのある方の就職が叶いました。新たな雇用創出は、社会貢献性の観点からも企業に求められている活動です。農園は当社が果たすべき社会的機能の象徴へと成長しつつあります。また農園運営を通じて、障がい者雇用に関する貴重な知見やノウハウが大いに得られたのは特筆すべき成果だと考えています。

一方、当社では農園と並行して本社や支店での障がい者雇用も継続しています。健常者と障がいのある方が同じ職場で働き価値を発揮しあい、理解しあう場の存在はSDGsの観点からも重要です。健常者と障がいのある方が当たり前のように同じ職場で働く世界観を全社に浸透させたいのです。当社はこの理念を「ハイブリッド雇用」と名付けました。障がいのある方を雇用する事業所も全国の拠点に拡大し、個人の特性を尊重した適材適所の人事を目指しています。

「一人ひとりの価値が発揮できる職場で働く大切さ」米川様

エスプールグループはさまざまな事業体で構成される、ポートフォリオマネジメント企業です。そのためグループ各社にも障がいのある方の雇用のしやすさに差があります。数字合わせのような雇用のための雇用ではなく、一人ひとりの価値が発揮できる職場を探し出し配属していく。そして定着率の向上に結びつける。この考え方は人事に携わる者が主体的に動かないと実現しません。当社ではそのための専任部署を立ち上げ、チームで社内雇用の開発を始めています。

同時に、障がいのある方たちの個性を活かしたキャリア支援も行っています。現在パラアスリート3名を農園管理部署で雇用しています。勤務と練習時間の調整をしながら、将来は世界のひのき舞台で輝いてほしいと期待しています。パラアーティストは4名を採用しました。エスプールの社員として障がいのある芸術家が制作活動を行うパラアーティストグループ「COLORS」を立ち上げ、東京藝術大学の美術指導協力のもとで完成した作品は、レンタルアートやバーチャル背景など、企業が取り組む SDGs 活動の一環として活用されています。

「農園から得られた障がい者雇用の経験値がグループ全体の活性化に貢献する」岳野様

エスプールグループが目指す次のステップとは?

ハイブリッド雇用をより効果的に推進するためには、グループ各社の状況にカスタマイズした障がい者雇用を実現すると同時に、会社自身のノーマライゼーション意識や社会貢献性が常に進化している必要があります。そのためには受け入れる側のレベルアップも必須です。そこで当社では昨年の12月、人材開発課内にグループ各社各部署の状況や特性を踏まえて、最良の採用を実現させる部署「D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)グループ」を発足させました。

D&Iグループに課された最大のミッションは、従業員の「定着支援」です。採用のミスマッチをいかに回避するか、常に各管理者と連携し、より効果的な雇用スタイルの確立を求めて全国の事業所を奔走しています。目標値を立てるのは容易ですが、現実は往々にして数字が一人歩きを始めるもの。数字達成を優先した採用のための採用は、結局離職者の増加となって経営を直撃します。個性と業務内容の一致を優先的に考慮して、従業員一人ひとりと長続きする関係を築きたいと考えています。

定着することで自然とその人に対するプラスの評価が生まれます。長く働けば必ず会社への貢献につながります。障がいがあるから優しくしないと、といったレベルではなく、お互いの能力を理解し合いながら健常者と肩を並べて継続して働ける職場の創出が重要です。現在は成功例を積み重ね、そのためのストーリーを紡いでいる段階ですが、手ごたえは十分感じています。

そしてD&Iグループの最終目標は、全社的な社員の定着率の向上です。農園運営から得られるかけがえのない経験を活用し、グループ全体に多様性を受容する職場を形成することで、「定着率の高さ」と「スピーディな企業体」を両立させたいと考えています。

「相手を思いやり理解しあう企業文化があってこそ全社的な定着率の高さに結びつく」赤星様

当グループの業績は順調に推移していますが、それだけに従業員の安定した確保は喫緊の課題です。社員予備軍である若者人口がだんだん減少している時代に、従業員の定着率の向上は重要な経営戦略の一つと期待されています。

そのためにも、障がいのある方、健常者に関わらず「相手を思いやる」「理解しあう」文化を社内に根付かせ、誰もが働きやすい職場環境を醸成することで、定着率をより向上させる必要があります。農園による新たな雇用の場の創出もその一環です。農園運営から得たさまざまな「気付き」は、当グループの企業文化醸成に大いに活用されています。全社を挙げて取り組む定着率の向上に欠かせない知見、ノウハウの多くは、農園より生まれたといっても過言ではありません。

そしてステークホルダーの信頼に値する上場企業であるためにも、障がい者雇用事業を通じた社会還元は当グループの責務です。さらに多くの障がいのある方を迎え入れるために、より高度化したハイブリッド雇用を実施し、雇用数の増員と文化の醸成を同時に実現したいと考えているのです。

「『私は障害者手帳を持っています』、を自然に受け入れる職場を作る」岳野様

D&Iの具体的な成果が、障害者手帳所有者に対する月一回の「定期通院休暇」の導入です。主治医からご自身の障がいに関わる定期通院の指示を受けている方は、月に1日有給休暇を取得することができます。この制度は大変好評を博しており、「実は所有しているので、ぜひ申請したい」「これまで遠慮していたが、障害者手帳を申請しようと思う」など、積極的な反応が多く見られます。また嬉しいのは一般社員が理解を示してくれている点です。職場の自然な話題になる空気感が育まれつつあります。

一般的に、障害者手帳の有無は自分からは言い出しにくい雰囲気がありがちですが、当社はむしろ逆で、職場の仲間で相談したりオープンにする方が多く見られます。D&Iが「言える」雰囲気作りをお手伝いし、職場の仲間たちが背中を押してくれたことで、この制度は広く社内全般に知られるところとなり、社員のダイバーシティ意識の成長にも寄与しました。

現在eラーニングのプログラム実践など、さまざまな障がい者雇用を啓蒙する機会を設けていますが、新型コロナ禍明けには、農園を活用した従業員が直接参加できるコンテンツを充実させたいですね。とても好評だった新入社員研修の再開、家族と一緒に参加可能な社員研修など、ダイバーシティを肌で感じられる場を用意し、知らないからこそ生じてしまう障がいのある方に対する「心の惧れ」を取り除く一助になれればと思います。

「障がい者と健常者の意識の垣根を乗り越えてこそ定着率アップのための施策は行える」米川様

障がい者雇用への取り組みから生まれた「相手を思いやり、理解しあう」企業文化は、当グループの大切なアイデンティティです。2010年、全くの未経験から始まった同社の障がい者雇用ですが、本業雇用の取り組みや農園の運営、パラスペシャリストの採用など、エスプール社は名実ともに障がい者雇用のトップランナー企業へと進化しました。そして農園から生まれた企業文化は、今では全社的な雇用の質向上にも効果的にも活用されています。「わーくはぴねす農園」がもたらしてくれた素晴らしい成果をこれからも大切に育て、近い将来大輪の花を咲かせたいと願っています。

2022年4月13日インタビュー
本文中の企業名、役職、数値情報等は、インタービュー当時のものです。

会社名 株式会社エスプール
事業内容 ビジネスソリューション事業、人材ソリューション事業
URL https://www.spool.co.jp/

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