写真:大同メタル工業株式会社

「大同メタルジョイフルファーム」を通して、多様な方たちが働ける場を創出し、CSR活動を推進

大同メタル工業株式会社

人事企画センター 労務グループ 主任 北川 大樹 様 、
人事企画センター 人事企画グループ グループリーダー 稲垣 里江子 様、
総務センター 広報・マーケティンググループ グループリーダー 部長 松岡 里美 様、
総務センター 広報・マーケティンググループ 石田 友佳様

イメージ:大同メタル工業株式会社インタビュー
利用目的
  • 障がい者が安全に働ける職場環境の確保
  • 専門家による職場定着の支援と農業アドバイス
抱えていた課題
  • 障がい者雇用率の引き上げにともなう雇用の確保
  • 既存の業務だけでは安全に働ける職場の確保が難しかった
利用効果
  • 働きたい意欲はあるが働く場所のない障がい者の方を雇用することで、社会参加の機会を提供
  • 採れた野菜を通して、社内のコミュニケーション活性化やCSR活動を推進し、社会に貢献する

大同メタル工業株式会社は、総合すべり軸受メーカーとして、愛知県名古屋市に本社をもち、国内、海外で事業を展開している企業です。障がい者雇用は、犬山事業所、岐阜工場、事務部門等で進めてきましたが、既存の業務だけでは安全に働ける職場や仕事の面での難しさなどに限界を感じる面があり、障がい者雇用の拡大のため、農園での雇用を進めています。
「大同メタルジョイフルファーム」を活用するまでの経緯や、野菜を栽培することの苦労と喜び、採れた野菜を通して築きつつある新たなネットワーク、そして今後の展望についてお聞きしました。

メーカーとして、工場での障がい者雇用を進めてきました

ー大同メタル工業の事業概要を教えて下さい

大同メタルグループは、1939年(昭和14年)に名古屋において操業を開始、一昨年80周年を迎えた会社です。創業以来、自動車分野を中心に船舶、建設機械、一般産業などあらゆる産業分野における機械装置の回転や滑動又は揺動を支える世界で唯一の「総合すべり軸受メーカー」として、常にお客様の声に耳を傾けてきました。

また、品質への追求、製品への付加価値の向上など世界のトライボロジー(摩擦・摩耗・潤滑)リーダーとして、常にトップレベルの魅力ある製品を提供することで、世界中のお取引先様から信頼されるビジネスパートナーとしての評価をいただいています。軸受事業以外の新たな事業の柱にも着手し、現在は世界15カ国に44拠点を有するグローバル企業として、成長してきました。

ー障がい者雇用の状況や課題、どのように進めてきましたか?

障がい者雇用では、現在、37名(農園6名を含む)の障がいのある社員が在籍しています。障がい種別は、知的と身体がそれぞれ半数くらいの割合を占めており、精神も若干名います。身体障がいは、ケガや病気などで在籍期間中に障がい者になった社員も含まれ、工場の現場から事務系の業務まで幅広く活躍しています。
また、知的の社員は主に工場の現場で働いており、製品の出荷、梱包、検査などの業務を行っています。製品の機械加工や装置の組立、ライン作業で活躍している社員もいます。入社してからクレーン講習を受講して操作技術を習得し、クレーンを操作して生産に携わる社員も出てきました。

障がい者の働く職場は、工場を含めていろいろな部門で行っています。そのため、人事部門では障がい者社員を受け入れる現場とのコミュニケーションを取りながら、入社3か月後を目安に、面談を行い、能力を発揮できているか、障がいに配慮すべきことはないか等を再確認し、必要な支援を行っています。また、何か課題があるときには、問題解決に向けて一緒に課題に取り組み、必要なときには、外部の支援機関にも入ってもらうこともあります。

安全面が確保された職場や業務を検討する中で、限界を感じるようになりました

ー障がい者雇用を農園で行うことになった経緯と農園で雇用を行うことを決めた理由は?

法定雇用率が上がること、また、企業の社会的責任を果たす上で、より多くの障がい者雇用をしていきたいと思い検討しているときに、会社から近い場所に、新しい農園ができることを聞き、関心を持ったことがきっかけです。
また、社内で障がい者の雇用を進めていく上で、作業内容や安全面などを考えた時に限界を感じることがありました。そのような中で、小牧や春日井の農園を見たときに、「これなら新しく安全に雇用していく上でやれるのではないか」、「新たな雇用がこういう形でも実現できる」と感じたことが大きな要因の一つでした。
実際に農園を見学したところ、安全に作業できる環境であることや、快適に過ごせる休憩場所やトイレなどの設備が整っていること、専門の方による職場定着の支援や野菜作りのアドバイスが受けられることから、安心して雇用を始められると思い、参画を決めました。

ー農園での障がい者雇用を始めてみた感想を教えて下さい

私たちは物を作る会社ですが、野菜作りは全くの初めてでした。野菜が枯れる、実ができない、硬くて食べられないなどの失敗もありました。
一番、想定と違ったのは、ビニールハウスの中の暑さです。夏も冬も太陽が出ているときには、非常に温度が上がります。夏本番では野菜が育ちづらく枯れてしまうこともありました。
また、きゅうりの実ができないということがあったり、キャベツのような葉が巻いていく野菜が丸くならず上に育ってしまい固くなってしまったり、花のほうに栄養がいってしまったこともありました。そういう失敗を経験しながら、農業顧問の方のアドバイスを受け、農場長や農園スタッフも本を読んだり、ネットで調べたりして野菜づくりのノウハウを身に付けていきました。
野菜は、基本的にその時期に適したものを植えています。また、社内販売する時にリクエストされるものや、人気があるもの、1回栽培してうまくいったもの、そして、農園スタッフの意見などを検討しながら、栽培する野菜を決めます。おおよそ半年先までを考えながら、計画を立てる感じです。まだまだこれからですが、リーフレタスやスナップエンドウのように、自信を持って外に出せる野菜の種類を増やしていきたいです。

栽培した野菜を通して広がる社内のコミュニケーションとCSR活動

ー農園で収穫された野菜の活用方法は?

野菜の活用方法ですが、社内にて格安で販売して、集まったお金を自然災害の被災地などへ寄付することから始めました。社員にとっては、無農薬で育てた野菜を安く買うことができ、社会貢献活動にも参加できるというメリットがあります。
今年1月からは、子ども食堂へ食材として提供を始めており、大変喜んでいただいています。貧困家庭の学習支援と子ども食堂を運営している団体に、今は育てた野菜を直接届けることが中心になっているのですが、今後は野菜を販売した売上をもとに野菜以外の他の食材を提供することなども検討しています。
ファームから子ども食堂には、収穫中の写真やメッセ―ジを送り、子ども食堂からは料理の写真やお礼のメッセージをいただくことで、交流を図っています。このような活動を通して、農園スタッフは「世の中の役に立っていること」を感じることができ、また野菜作りのモチベーションにもつながっています。

ー農園導入が会社にもたらした成果は?

障がい者雇用を農園で行う前から、社内には30名ほど障がいのある社員がいて、様々な職場、職種で活躍していたので、もともと社内には、障がい者を受け入れる雰囲気やベースはあったと思います。さらに、定期的に野菜の社内販売をすることにより、農園スタッフは、自分たちが働いている会社の様子を知ることができ、販売を通しての相互のコミュニケーションが深まっているように感じます。

社内販売の時には、野菜を売っているだけでなくて、手書きで野菜の名前やメッセージが書かれているシールが貼られていて、購入する側として感激したことがあります。
販売するときには、農園スタッフと社員の間で、野菜を長持ちさせる方法や、野菜を活用した調理方法や、「こんな食べ方をすると美味しいですよ」という会話も見られています。購入してくれた社員に野菜の苗と、野菜の苗の育て方についての説明書をプレゼントしたこともありました。こうした取り組みは、農場長や農園スタッフのメンバーが、どうしたら社員にもっと喜んでもらえるかと考えて行っているもので、とても好評です。

社内の広報活動においては、年に4回紙媒体の「メタルの広場(社内広報誌)」や、社内ポータル(パソコンで見られる情報掲示板のようなもの)の中でも、ジョイフルファームの活動についてタイムリーに情報発信を行っており、記事を楽しみにする社員も増えています。農園で働く社員の表情も、どんどん明るくなっているのがわかりますし、それを見る社員も勇気をもらえていると感じることもあります。

また、プロボノ活動で知り合った地域のNPO団体とのつながりから、野菜を提供し始めています。プロボノ活動は、ちょうど創立80周年記念の時に1年間行ったもので、活動としては終わっていたのですが、そのつながりから引き続き関係を保つことができています。

今後は、農園業務を通じてできたネットワークなどを築きながら、ステークホルダーの方たちや、社外に向けた発信にも力を入れていきたいと思っています。もちろん本業での売上を上げて利益をあげることも大切ですが、社会的な責任を果たしていくことや、社員のエンゲージメントを向上することにもつなげていければと考えています。

今後も、社員が働きやすい環境づくり、体制づくりを意識していく

ー障がい者雇用に関する今後の予定や、農園での雇用に関する展望をお聞かせ下さい

障がい者雇用は、社会的責任としても継続的に行っていきます。社員が仕事しやすい環境づくりをしていくことは、農園でも社内でも、基本的には変わらないと思います。また、安全性の担保やできる仕事を増やしていくこと、ジョブコーチなどの外部の支援機関を活用しながら活躍できる場を作ること、戦力になるような体制を作ることなどをしていきたいと思っています。

ジョブコーチ支援は、以前から活用していましたので、必要な時にはこれからも連携をとっていくことを考えています。障がい者本人ができることが増えましたし、また職場で仕事を教える上司や職場の仲間への合意形成という意味でも効果的と感じています。

仕事で自信をもつことは、障がいの有無に関わらず大切です。入社してしばらくは、課題があったり、保護者にも来てもらって面談ということがあったりした社員も、入社して数年たって仕事や職場に馴染み、「この仕事だったら私に任せて」と生き生きと働いている姿を見ると、頼もしく感じることがあります。

農園スタッフも今は若い人たちが多いですが、人間はいずれ年を取りますので、元気に長く働いて頂けるよう、健康管理にも力を入れていきたいです。

2021年4月14日インタビュー
本文中の企業名、役職、数値情報等は、インタービュー当時のものです。

会社名 大同メタル工業株式会社
事業内容 総合すべり軸受メーカー
URL https://www.daidometal.com/jp/