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【事例紹介】野菜作りは人づくり ファームを通じて人も企業も成長する

日立グループの社会イノベーション事業を支える日立システムズが、千葉県八千代市でエスプールプラスが運営する「ソーシャルファーム わーくはぴねす農園 ちば八千代」に「スマイル∞ファーム」をオープンして約2年。幸い一人の離職者もなく、同社の新しい障がい者雇用の試みは順調に推移しています。今回、同社コーポレート・メッセージである「変化し続ける世界で、すべての人の居場所を生みだす」の実践の場でもあるファームを訪問、実際に働くスタッフの皆さんに仕事のやりがいや目標をお聞きしました。農業スキームを障がい者雇用に活かした素晴らしい成功例として、スマイル∞ファームの今をご紹介します。

株式会社日立システムズ スマイル∞ファーム 農園スタッフの皆さん
人事総務本部 ダイバーシティ推進部 奥田茉優希 様

座談会参加者(敬称略)
●スタッフ:ハッチ、チーチャン、タカ、ヨッシー、ユッキー、コークン
●農場長:父ちゃん、ボコちゃん
●本社スタッフ:奥田

「清潔で安全な環境だから、安心して働けそう」(ハッチさん)
「母もファームを一目見て気に入ってくれました」(チーチャンさん)

●ファームで働きたいと感じた最大の理由

スマイル∞ファームのスタッフは全6名。1チーム3名構成で、農場長の指導やサポートを受け就労しています。障がい種別はさまざまですが、抜群のチームワークで皆が助け合い、現場には常に明るい声が行き交っています。そんな元気な皆さんの、ファームを知ったきっかけや入社の決め手はどのようなものだったのでしょうか。

「音声パソコンのスクールでファームの存在を教えていただきました。家庭菜園を楽しんでいましたし、食べるのも大好き。直ぐに興味を持ちました」(ハッチさん) 
就労支援事業所や担当支援員さんなど、全員が普段からお世話になり、信頼している方々からファームの情報を得ていました。農業への興味や経験値はさまざまでしたが、農園体験実習を通じて一様に農業への興味が増したといいます。

「農園体験実習時、就労サポーターのスタッフさんが皆優しく接して下さり安心しました。ファームを一緒に見学した母も、いい所ねとすっかり気に入ってくれました」(チーチャンさん) 
「親族に相談したのですが、特に健康的な環境面からすすめられました。2年ほど休業を続けていましたので、規則正しい生活で心身ともに立て直さないと、と痛感しました」(タカさん)

農園体験実習は全員にとって大変有意義で新鮮な経験となりました。エスプールプラス社のスタッフと実際に触れ合い、最大の懸案だった人間関係の不安が解消されました。そして実作業をこなし、「これなら自分にも出来そう」と自信が芽生えたといいます。特にわーくはぴねす農園の特徴である、パミスサンドという軽石を使用した清潔な作業環境と徹底した安全安心管理は、全員のやる気を後押ししてくれたとか。

「学校で農業を経験しましたが、土を扱う事になじめず、耕運機などの運転に恐怖を感じていました。しかしファームは安全だしきれいだし、野菜作りを長く楽しく続けられそうだなと思いました」(ヨッシーさん) 
「仕事が長続きせず、数年間で転職を10回近く繰り返しました。しかしファーム生活は2年間続いていて、これからも長く働きたいと願っています。野菜作りを通じて、新しい自分もつくっている。そんなチャレンジ精神が胸に芽生えました」(ユッキーさん)

もっとも就労前には、不安を感じたり悩んだりした点も少なからずありました。
「初対面の障がいのある方とチームを組んで上手く働けるだろうか。プレッシャーに弱い性格だけに、慣れるまでは不安と戦いながら働きました」(ユッキーさん) 
「自分には報連相がおろそかになる悪い癖がありました。就労支援の方からも再三指摘を受けていましたが、その癖がファームの仲間たちに迷惑をかけてしまうのではないか気になりました」(ヨッシーさん) 
「高齢である事、未経験者であるなど、逡巡する要素はたくさんありました。心から信頼している方からの推薦でなければ、諦めてしまったかも」(コークンさん)

「次はもっとおいしい野菜を皆さんにお届けしたい!」(ハッチさん)
「皆で助け合う心が自然と生まれてくる」(ユッキーさん)
「自分たちが作った野菜の向こうに笑顔が見える」(タカさん)

●今感じている就労の喜び、やりがいを教えて下さい。

「収穫の喜びは何物にも代えられません。野菜にメッセージや絵を添えて会社の皆さんに送ると、「おいしかったです」「どうもありがとう」などたくさんのお返事をいただけます。次回はもっともっとおいしい野菜を届けてあげたい。やる気が無限に湧いて来る瞬間です」(ハッチさん) 
「種まきから収穫まで、皆で声を掛け合いながら働ける喜びを満喫しています。助け合う心が自然と育まれる環境は、これまでの職場にはありませんでした」(ユッキーさん) 
「根処理はもっとも大変な作業になりますが、大分上手になりました。自分の技量が上がるとやはり嬉しいですね。ホコリまみれになりますが、次の栽培のために欠かせない作業だけに、やりがいも満点です。また、野菜を受け取った従業員の方から、子どもの野菜嫌いが直ったなど、お礼のメッセージは嬉しい限りです。野菜を食べていただいた方々の笑顔が見えるようで、やる気がますます涌いて来ます!」(タカさん)

収穫した野菜は、スタッフがきれいに洗浄した上で、それぞれ絵手紙やメッセージなどを添えて袋詰めし、日立システムズの全国の拠点に送られます。「収穫したばかりの野菜はこんなにおいしいのか!」という、受け取った皆さんの共通した感想はとても感動します。最近では「○○も栽培して下さい」といったリクエストも届くようになりました。オープンして間もなく3年目を迎えるファームから、新しい品種が続々出荷される日もそう遠くはないでしょう。

「中には『トマトはもう少し酸味があった方がよいのでは』、といった具体的なアドバイスをいただけるケースも増えて来ました。社員の皆さんもファームの事を、本当に親身に考えて下さっています」(コークンさん) 
「種をまいて水をあげて、日に日に野菜が育っていく様子を見るのが大好きです。連休明けなどにすっかり大きく成長した野菜を見ると、心の底からやりがいで満たされます。もちろん、ちゃんと育っているかなと、少し心配でもありますけど(笑)」(チーチャンさん)

「気づき合い助け合う、抜群のチームワークが自慢」(ハッチさん)
「自分の作業が早く終われば助けてあげるのは当然」(タカさん)

●チームが自慢できる点は?

「仲間を思いやるチームワークのよさが自慢です。私は夏場が苦手で、すぐに顔が真っ赤になってしまって・・・。でも仲間はすぐに体調を察してくれて「休憩しておいで」と仕事を手伝ってくれます。冬になったら頑張って、みんなに恩返しをしないと」(ハッチさん) 
「誰にも得手不得手はあって、苦手な作業はどうしてもスピードが遅くなります。そんな時は気ばかり焦ってプレッシャーに襲われますが、チームの仲間たちは、こちらから何もいわなくても察して声掛けしてくれるなど、自然体で助けてくれます。みんな自分のことを見ていてくれるんだと思うと、涙が出るくらい嬉しいですね」(ユッキーさん)

自分は仲間たちから常に気にして貰えていると思いますか? という問い掛けに、即座に全員の口から「思います!」と声が上がりました。自分はみんなから見守られているからこそ、自分も仲間を常に思いやる。ファームの仕事を通じて、農園スタッフの気づき合いや助け合う心がしっかりと育まれました。全員がチームワークのよさを自慢するのも納得です。

「全員が互いの作業状況を観察しながら働いています。早く終われば助けてあげるのは当然。根処理は僕に任せて下さい、体力には自信ありますよ!(笑)」(タカさん)

「野菜の前に人と人とのつながりを作る」(父ちゃんさん)
「思いやる気持ちを育む環境整備の大切さ」(ボコちゃんさん)

●農場長から見たスタッフたちの成長度。

抜群のチームワークが形成されているスマイル∞ファームですが、もちろん農場長の的確な指導とサポートのたまものに他なりません。ファームでは2名の農場長がそれぞれのチームを管理していますが、実際には年長の父ちゃんさんを、ボコちゃんさんが支えながら、家族のような関係で運営されています。

「小さいながらも組織ですから、さまざまな人間関係が発生します。ましてや障がいのある方々の集団だけに、仕事を始める前に先ずは人間同士のつながりを構築することが重要だと考えました。そこで皆の気持ちをまとめるために、「バディー制度」を導入。協力し合うことの大切さを説き続け、実務では懇切丁寧な説明を心掛けました。もう一人の農場長であるボコちゃんが発案したこの制度は、見事な効果を発揮しチームの成長に大いに貢献しています。今ではスタッフは自ら目的意識を持ち、農場長にいわれなくても1、2と来れば3までこなせるスキルを身につけました。こうしてスタッフが主体的に作り上げたチームワークの素晴らしさは、わーくはぴねす農園八千代の中でも随一の存在だと自負しています」(父ちゃんさん)

父ちゃんさんが語った「バディー制度」とは、2人1組でお互いの安全を確認しあうシステムで、農場長のボコちゃんが発案しました。スローガンは「お互いを思いやって行動しましょう!!!」。スタッフから多く聞かれた助け合う精神は、この制度によって育まれました。
「各自の疲労度を1~10の段階で数値化し常に状態をバディー同士で共有、疲労度7で休憩をするルールは、チームワークの醸成に大いに貢献しました。「○○さん大丈夫?」「うん、今4だから平気です」といった思いやりの精神が、共通の目標や志しを生み、今では「おいしい野菜を安心安全に作ろう!」といった思いに集約されました」(ボコちゃんさん)

こうして一丸となったスマイル∞ファームからは、新しい提案が続々と生まれ始めています。父ちゃんさんの誕生日(古希)には歌と色紙にお祝いメッセージのプレゼントや本社スタッフの誕生日にも、サプライズで歌とダンスのプレゼントを企画。全員で「Choo Choo TRAIN」を披露し、父ちゃんさんを嬉し泣きさせたとか。また、日立システムズ従業員との交流のみならず、地域の子ども食堂と連携したファームへの招待企画などもスタッフから提案されています。ユッキーさんは、安定した職場を得られたことをきっかけに、結婚がかないました。
「今まで転職の多かった自分ですが、ファームで長く働きたいという気持ちは、就労して3ヶ月くらいで早くも芽生えていました。結婚するには安定した生活は欠かせません。おかげ様で去年の8月に結婚、今では1児の子どもに恵まれました。ファームとの出会いに心から感謝しています」(ユッキーさん)

「だからスマイル∞ファームの可能性は無限大!」(奥田様)

●日立システムズにとってのスマイル∞ファーム

今年の2月から農園業務の担当となった、同社ダイバーシティ推進部の奥田さんは、ファームではまだまだ新人。普段はパソコンに向き合う仕事中心ですが、ファームに来た時は、根処理などの手伝いに汗びっしょりで取り組んでいます。
「タカさんに教わりながらの根処理作業が、こんなに大変だとは正直思ってもいませんでした。汗をかき働く喜びを教えて下さったスタッフ皆さんに、改めて敬意を表します」(奥田様)

持続可能な障がい者雇用の場として、一人ひとりの自立支援を目標に設立されたスマイル∞ファーム。日立システムズの経営ビジョンとファームの経営理念の一致は、創立3年目を迎えようとする今、同社が提唱する「変化し続ける世界で、すべての人の居場所を生みだす」理念を実践する場としてしっかり認知され、その実績は確実に社業へとフィードバックされ始めたようです。しかしファームがその真価を発揮するのは、まだまだ先の話。
「だからこそ、スマイル∞ファームの可能性は無限大なのです!」(奥田様)

本記事に出てくる株式会社日立システムズのストーリーはこちら

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