- 利用目的
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- 障がい者に優しい安心安全な職場の提供
- 安定した雇用が可能な環境の整備
- 抱えていた課題
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- 法定雇用率のクリアが喫緊の問題となっていた
- 業務内容上、障がい者の現場への受け入れに難しい点が多くあった
- 利用効果
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- 社員のノーマライゼーション意識が進化した
- 社内での人の「尊厳」に対する想いが深まった
パナソニックグループの一員として、地域包括ケア実現のための介護事業を展開している「パナソニック エイジフリー」。
同社は愛知県豊明市、春日井市で「エイジフリーファーム」を運営し、社内ノーマライゼーション意識の向上と、安定した障がい者雇用環境の形成を実現しています。また、同社が行動指針に掲げる「お客様の尊厳を大切」にする想いを育む場としても、大きな成果を挙げています。
介護事業会社と障がい者雇用に関わるさまざまな物語、取り組み、そして「エイジフリーファーム」の未来予想図をお聞きしました。
「エイジフリーファーム」がつなぐ、障がい者と家族、社員の絆
「パナソニック エイジフリー」の事業概要を教えて下さい
高齢者とそのご家族に最適な商品やサービスを提供し、笑顔があふれる「快適生活の実現」をお手伝いする介護事業会社です。
社名の「エイジフリー」には、「バリアフリー」「ストレスフリー」「ケアフリー」の3つの想いを託しています。在宅介護サービス事業、通所介護サービス事業、サービス付き高齢者向け住宅事業(以下、サ高住)、介護付き有料老人ホーム事業、介護ショップ事業、介護用品・住宅改修事業、介護用品開発を通じて、「地域包括ケアシステム」社会の実現に日々貢献しています。
「エイジフリーファーム」は、2018年7月にスタートしました。現在は愛知県豊明市、春日井市でエスプールプラスが運営する「わーくはぴねす農園」内に2拠点を展開、障がい者スタッフ24名、農場長8名の計32名体制で運営しています。内訳は、スタッフは重度知的障がい者8名、知的障がい者9名、精神障がい者7名、農場長に重度身体障がい者1名を含み、バランスのよいチーム構成を心がけています。
介護事業と障がい者雇用。一見親和性があるように思えますが、現実は様々な課題がありました(金城様)
「エイジフリーファーム」開設当時に抱えていた悩みは?
現在、エイジフリー全体で雇用している障がい者は計65名、内25名がファームを職場としています。法定雇用率は2.40%で、新しい雇用率である2.3%をクリアしています。ここ2年半で、劇的に改善しました。しかし、ファーム開設前は雇用数は少なく、障がい者雇用の促進は弊社の最大かつ喫緊の課題になっていたのです。
現在、デイサービスやサ高住、有料老人ホーム、ショップなどを、全国約370ヶ所で展開しており、各事業所に障がい者スタッフを配属する案も検討されました。
介護事業と障がい者雇用は、一見親和性が高そうに思われます。しかし、介護の現場で必要とされる身体的負担、コミュニケーション能力などを考慮すると、残念ながら障がい者スタッフ自身への負担が大きく、また現場での雇用負荷を生む不安を拭えませんでした。会社の行動指針にお客様(人)の「尊厳を大切にします」を謳いながら、障がい者雇用が進まない矛盾・・・。事態の打開が急がれていました。そんな時に出会ったのが、「わーくはぴねす農園」だったのです。
農園には障がい者ファーストの精神が育んだ素晴らしい運営ノウハウがありました(前田様)
「エイジフリーファーム」導入の最大の決め手は?
頑丈な建屋、清潔な栽培装置、安全に配慮された器具類など、障がい者に安心な作業環境に感銘を受けました。また農園運営スタッフの障がい者雇用に対する情熱も素晴らしい。ファームには、障がい者を安定的に雇用できる条件が揃っていました。エスプールプラスからは、農園事業の大変さ、企業としての心構えを常にアドバイスしてもらい、障がい者雇用の意義を改めて気づかせてくれた担当者の熱意に、今でも感謝しています。
導入に際しては、やはり本社や経理など、管理部門の了承を得るのに苦労しました。なぜ農園なのか? 関連職場での採用はできないのか?「農業が障がい者に与える精神的好影響」「ファームだと一定数の採用が同時にかなう」など、さまざまな説得理由を用意しましたが、決め手となったのはやはり農園の見学でした。「わーくはぴねす農園」を実際に見学した管理部門の責任者の多くが、農園で行われている人間性あふれる営みに感動、導入の流れが一気に形成されました。
コロナ禍でなかなか会えない全国の仲間たちに、元気な野菜でごあいさつ!(前田様)
「エイジフリーファーム」が会社にもたらした成果をご紹介下さい
収穫した野菜は、栄養や調理法を紹介したカード、スタッフの作業風景や集合写真を掲載した「紹介チラシ」を添えて、近畿・中部圏の事業拠点を中心に出荷しています。また、門真本社・品川事務所では定期的な配布会も実施しています。獲れたての無農薬野菜はもちろん大好評で、お礼のメッセージがたくさん寄せられています。人事部が編集する壁新聞にも複数回取り上げられ、全社的な認知度もアップしてきました。
社員の皆さんから農園勤務の障がい者スタッフへのお礼メッセージ
- 「小松菜ですが、大変新鮮でしっかりしていました。小松菜らしい香り、味が味わえました」
- 「当日帰宅後、早速調理させていただきました。家族も、美味しいと喜んでくれました」
- 「生産に携わった全ての方に感謝します。ありがとうございました」
- 「野菜の無料配布は本当に助かります。家族へのお土産になるので本当に嬉しい!」
このような野菜を通じた障がい者スタッフとの交流は、社員のノーマライゼーション意識の向上に大いに貢献しています。
ファームは人の尊厳を大切にする「パナソニック精神」をリアルに実践している場だと、自ら見学を希望する積極的な社員も増えてきました。最近は生産量も順調に増加しており、今後配布エリアの拡大を目標に出荷計画を立てて生産に励もうとしています。コロナ禍でなかなか会えない全国の仲間たちに元気な野菜で挨拶しようと、障がい者スタッフの意気はますます盛んです。
生活支援業務など、スタッフに人生の次のステップを用意してあげたいですね(金城様)
ご家族を始め、支える側のコミュニケーションをさらに充実!(金城様)
「エイジフリーファーム」の今後の目標、未来予想図をお聞かせ下さい
収穫した野菜をより効果的に活用して、ファームの存在意義をさらに高めたいですね。
開設して間もなく3年、農場長を中心とした組織力、スタッフの習熟度もアップしており、質・量ともに生産力が上がっています。子ども食堂への提供、配布会の多数開催など、地域への貢献が進めば新しい交流の輪も生まれますし、スタッフのモチベーションもさらに上がります。また、弊社が展開する「各介護サービス拠点」、そして「地域の子供食堂」などに、ファームの無農薬野菜を実際に使用していただけるスキームを確立したい。野菜を通じてファームと本業が手を結ぶ。社業にリアルに貢献できる存在にファームを育てたいと願っています。
そして、障がい者、ご家族、社員の幸せを支える存在であり続けたい。安定した障がい者雇用にご家族の応援は不可欠です。実際に食した社員からのメッセージ、ファームの様子や受け取った方の笑顔を掲載した「ファーム便り」などを通してご家族に、スタッフが元気に働く姿を届け、ファームの意義をお伝えしています。
ご家族とは、メールやお手紙などでの緊密なコミュニケーションを心がけています。支える側が一致団結して安定した雇用の現場を作り出すことで、ファームはより活性化し、関わる人々に幸せをもたらし、ひいては優秀な人材の輩出にもつながると信じています。
将来的には障がい者スタッフから介護サービス拠点で働く生活支援スタッフの誕生を目指すなど、本業への雇用循環、人事の活性化に貢献できる、人材育成の場にしたいと考えています。スタッフの中には、表計算ソフトを自在に扱えたり、絵の才能に秀でているなど、強みを持った人材がたくさんいます。現在既に、障がい者スタッフからキャリアアップし優秀な農場長が誕生しています。本社からは常駐の社員スタッフも配属されました。「エイジフリーファーム」の存在は、今後ますます会社にとって大切なものになると思います。
計画当初から「安定した障がい者雇用の創出」「ファームを通じた社業への貢献」の実現をともに追究してきたエスプールプラスと我々が一緒に歩んできた道に間違いはなかったと感じています。これからもファームを媒介とした会社の活性化に貢献して参ります。
会社名 | パナソニック エイジフリー株式会社 |
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事業内容 | 介護サービス事業 /サービス付き高齢者向け住宅事業 /介護ショップ事業(用品レンタル、販売、リフォーム) ・介護用品・設備の開発および販売事業 |
URL | https://panasonic.co.jp/ls/paf/ |