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農園での成果が全社的な障がい者雇用に波及。定着率の劇的な改善を実現し、わずか数年で雇用率4.31%を達成

NDSソリューション株式会社

企画管理本部 総務部長 佐藤良文 様
総務部 課長補佐 二村恵介 様
総務部 課長補佐 関山広美 様
総務部 山口弘貴 様

利用目的
  • 本業雇用だけでは対処が難しい状況で、障がい者雇用の受け皿として期待した。
抱えていた課題
  • 障がい者雇用の重要性に対する意識が全社的に不足していた。
  • 法定雇用率を長年満たせておらず、ハローワークから障がい者雇用推進のための指導を受けた。
利用効果
  • 農園運営から学んだ知見を本業雇用にも活用し、全社的な定着率のアップを実現できた。
  • 農園で得られた障がい者雇用ノウハウが、全社的なダイバーシティ等の推進に大いに貢献している。

「フィールドエンジニアリング」「ITソリューション」「ビジネスパートナー」「教育・研修」といった事業を柱に、Iotのハードウェアサポート、インフラ構築など、さまざまなICTソリューションを提供しているNDSソリューション株式会社。

同社は2019年より「わーくはぴねす農園愛知みよしファーム」で「Natural Dream Solution Farm」を運営され、法定雇用率をクリアするとともに、農園を全社的なダイバーシティ推進の象徴として、障がいのある方の理解と雇用に取り組まれています。部署を挙げて運営されている、企画管理本部総務部長・佐藤良文様、課長補佐の二村恵介様、関山広美様、総務部の山口弘貴様に、農園の現在の状況・過去の課題・これからの思いを語っていただきました。

「一人の離職者も出すことなく設立4年目に入りました」関山様

「現在の農園運営について概要をお聞かせください」

2019年5月に「Natural Dream Solution Farm」をオープンし、ちょうど丸3年が経過しました。オープン以来、農場長と障がいのあるスタッフ3名による1チーム体制で運営しています。3名とも知的障がいのある方で、うち1名は重度認定を受けています。

人間関係が悩みの種となった時期もありましたが、農場長の適切な指導により一人の離職者も出すことなく現在に至っています。農場長は時に指導者として厳しく、時には母親のように優しくスタッフに接しながら、節度ある運営に大いに貢献しています。今ではスタッフ間に団結心も生まれ、ワンチームで仲良く日々の業務に向き合っています。

農園の管理は総務部が担当しており、約15名の社員が何らかの形で運営に携わっています。週に一回は必ず訪問し、4人とコミュニケーションの場を設けています。その場では楽しい雑談がメインとなりますが、農場長とは普段からさまざまな課題解決のための密接な連絡を欠かしません。3人の充実した働きぶりを見るたびに、リーダーシップのある農場長こそ、健全な運営には欠かせない存在だと感じています。

「野菜を通じた本社との交流は社内報で毎月紹介」二村様

栽培する野菜の選定は、スタッフの希望を尊重しています。研究熱心かつ真面目なメンバーが揃ったからでしょうか、頻繁に目新しい野菜に挑戦しています。
トレビスやコールラビなど、農園で初めて知った野菜も数多く、何ができてくるかわからない楽しみがあります。

また社内アンケートを実施し、育てて欲しい野菜をリクエストしています。トマトや枝豆が人気ですが、この試みはスタッフに良い刺激を与えています。
本社に期待されているといった思いが、確実にモチベーションの向上に結びついています。

収穫された野菜は社内配布を行っています。
訪問した担当者が毎週本社に持ち帰り、本社内での配布のほか、各事業所へも発送しています。野菜は小分けにパッケージされていて、それぞれにスタッフの写真と思いを綴った一文が添えられています。
野菜をいただいた社員からは、感想や料理例などのお礼メッセージが多く届けられ、その交流は毎月社内報で詳細に紹介されています。記事を読んだスタッフのやる気がますます向上するのは、言うまでもありません。また子ども食堂への寄付など、農園を核とした地域貢献活動は、可能な限り早い時期に再開したいと願っています。

「農園をノーマライゼーションやダイバーシティの発信基地に」佐藤様

「かつて障がい者雇用に関して抱えていた課題と、農園事業を推進された決め手を教えて下さい」

農園をオープンした2019年以前にも、本社にて障がいのある方を採用していました。しかし実態は数も少なくノウハウもないまま事務方で受け入れたに過ぎず、法定雇用率にも達していませんでした。スタッフの定着率の低さにも悩まされましたが、会社を挙げて改善に取り組むといった空気感がなく、正直当時の意識が低かったのは否定出来ません。しかしハローワークから呼び出され、直接指導を受けたところで大きく潮目が変わりました。

本気で障がい者雇用を進めるにあたり、本業と本業以外の2本立てで雇用者数を増やす戦略を採りました。派遣事業に携わっていたため、弊社の社員数は多く、本業雇用だけで定められた数値の達成は困難でした。本業以外で数値改善に貢献できる雇用の場はないものか。また業種は本業とは異なっても、何らかの形で会社の業績に貢献可能な職場があれば望ましい。

こうして農業スキームに白羽の矢が立てられました。障がいのある方と野菜作りの親和性の高さは認識していましたし、単純に雇用率を達成することが良いとは考えておらず、農園なら新しい価値を会社にもたらしてくれると期待したのです。特に企業にダイバーシティなどかつてない価値観が要求されている時代だけに、障がいのある方が生き生きと働く農園から、ノーマライゼーションや多様性の重要性を発信できたら会社を変えられるのではないかと考えました。そうすれば農園も会社を支える立派な一部署になれるだろう、と。

「健常者と変わりなく、本気で障がいのあるスタッフと接する大切さ」関山様

「農園が生み出した具体的な成果をお聞かせ下さい」

参入にあたってとにかく心がけたのは、スタッフとの密なコミュニケーションでした。これまでのような定着率の低さはもう許されません。
とにかく直に接しよう、話を聞こう、そして常にスタッフと思いを共有し合おう。働く場所は違っても同じNDSソリューションの一員として、エンゲージメントを抱きながら働いてもらうためのアプローチを試みました。
しかし、`障がいのある方だから`といった肩肘張った気づかいは特に行っていません。健常者と変わらない`本気`のコミュニケーションを通じてこそ、障がいのある方にとっての働く環境の改善も実現すると考えました。そして足繁く農園に通い会話を交わすことこそ、私たちが踏み出した第一歩となりました。

あれから3年が経過しましたが、私たちの気持ちは彼らに通じたようです。これまで離職者を出すことなく、全員がこれからも農園での勤務を希望してくれています。先日一人が病気で入院した際も、「早く農園に戻って働きたい」と退院を待ち焦がれていたそうです。自分たちの気持ちがスタッフの皆に通じていると感じ、大変嬉しく思いました。

「農園の取り組みと同時に全社的な働き方改革を推進」二村様

農園が雇用率アップのためだけの場所ではなく、サステナビリティ経営、ダイバーシティなどの気運を会社にもたらす貴重な装置に成長するとともに、全社的な「働き方の取り組み」も大きく進化しています。

弊社では現在各種公的認定の取得に努めており、厚生労働省の「くるみん」および「トモニン」、名古屋市の「ワーク・ライフ・バランス推進企業」など、数多くの認定を得ています。これらはすべて障がいのある方や健常者を問わない、全社員の「働きやすい職場作り」を目標に推進されているプロジェクトであり、農園の運営や本業での障がい者雇用もその一環として、重要な役割を担っているのです。

「障がい者スタッフが交流できる場を増やしたい」山口様

各事業所に勤める障がいのある社員が一堂に会し交流する「障がい者意見交換会」も始まりました。
障がい特性によって得手不得手はそれぞれ異なるだけに、スタッフはともすれば個の世界に陥りがちです。そこで、交流を通じて仲間意識を養うと同時に、会社員としての誇りを改めて持ってもらうための試みがこの会です。

交換会ではそれぞれの自己紹介や近況報告に始まり意見交換が行われますが、大変刺激を受けましたと好評です。
自分もNDSソリューションの一員なのだという意識がしっかり芽生えてくれました。
参加者の中には重度の視覚障がい者や聴覚障がいの方もいますので、常に社員が寄り添いサポートし、手話やパソコンを駆使して交流のお手伝い役に徹します。大変ですが充実したひと時ですね。イベント的な開催だけでなく、日常でもこのような交流が図れる企画をぜひ提案したいと考えています。

「離職者が減少し、雇用率が劇的に改善」二村様

弊社では半年に一度全社員に対して面談を行っています。
各自が仕事の目標を設定し半年後に検証、目標のアップデートを繰り返します。障がいのあるスタッフ面談も健常者と同様に行われ、目標に向って働くスタッフのやる気をひしひしと感じています。交流会にしろ面談にしろ、やはりコミュニケーションの場を多く持つことがお互いにとって大切だと考えます。

数々の交流を経験し、社内の障がいのある社員に対する考えや接し方も明らかに進歩しました。障がいのあるスタッフがより働きがいを感じられる社風が生まれつつあるようです。そのためだと思うのですが、ここ数年で離職者は本当に減少しました。近年の障がい者雇用率の値は劇的な改善を示していて、昨年6月時点の雇用率は3.9%を記録しました。MAX数値では4.31%をマークした時期もあります。

「本業でも農園を有効活用できる可能性を模索」二村様

「Natural Dream Solution Farmが目指す次のステップとは?」

もう少し規模を拡張したいと願っています。より大きい組織を形成することで得られる事業のスケールメリットを追及したいと考えています。
仲間たちが増えることで、スタッフのモチベーションはさらに向上すると期待しています。また本業とのコラボレーションも模索したいですね。高齢化社会に突入し、弊社も数年後には定年退職者が増加してきます。将来的にシニアが活躍できるフィールドにできないかなど、農園が持つ無限の可能性を追求して参ります。

「農園が担う社会的役割の大切さを積極的にアピール」関山様

SDGs、サステナブル経営、ノーマライゼーション、ダイバーバーシティなどの観点からも、農園が担っている社会的役割の重要性は増すばかりです。これからの企業ブランディングに欠かせないコンテンツとして、その存在や意義を外部発信したいですね。またリクルーティングなどでも積極活用し、優秀な人材の獲得を図るなど、弊社の働き方改革への取り組みを、よりアピールしていきたいです。

「Natural Dream Solution Farm」で元気に働く農場長とスタッフの皆さんにお会いしました!

「仲間たちと一緒に働く時間は本当に充実」西水流智希様(28歳)

毎日楽しく働いています。シソやミツバ栽培が得意ですが、一番思い出に残る野菜は最初に育てたコールラビですね。
苦労しましたが収穫した時の達成感は今でもハッキリと覚えています。最近は野菜作りが上手になった自覚もあり、仕事がより楽しくなって来ました。
仲間たちと一緒に支え合い働く時間は本当に充実しています。農場長さんにはよく注意され少し怖い面もありますが、時にお菓子をくれるなど優しい方で大好きです。頼りにしています。これからもずっとこの農園で働きたいです。

「これからも仲間たちと野菜の勉強を続けたい」山田雄大様 (22歳)

まったくの未経験者でしたが、今では農業がすっかり好きになりました。
プライベートでも野菜作りに夢中で、自宅のベランダや実家で父や祖母と一緒に農作業を楽しんでいます。気が付けば家族ぐるみの農業一家になりました。
料理は母にお任せですが、特にサラダが新鮮でお気に入りです。自分で働いて得たお金は、もっぱら趣味の世界に投資しています。ミニカーのコレクションが増えて嬉しいです。これからもずっと農園に勤めて野菜の勉強を続けたいですね。3人で相談しながら今回はツルムラサキ、セリフォン、オカヒジキに挑戦します。
本社からのリクエストには何でもお応えしますよ!

「得意のパソコンを駆使して新たな野菜に挑戦」丹邉芳彦様 (24歳)

当初は事務職での就職を希望していましたが、進路指導の先生と相談した母から農園を勧められ挑戦しました。最初は不安でしたが、農園の環境は安全面でも衛生面でも万全で、すぐになじめました。毎日充実した日々を送れています。特に自分が育てた野菜が本社の方々においしく食べてもらえたと考えると、嬉しくてますますやる気がわいてきます。
いただいた給料は母の実家のある熊本への帰省費や、好きな服に使っています。これからも得意のパソコンを駆使して野菜のことを調べ、たくさんの野菜を生産して会社のために働き続けたいと思っています。

「全員が社会人としての自覚を胸に元気に働く日々」野々山里美農場長

オープン当初は人間関係など課題もありました。果たしてワンチームになれるだろうかと心配しましたが、今では互いに協力を惜しまない素敵な仲間たちに育ちました。
全員がNDSソリューションの一員として社会人の自覚を持って野菜作りに取り組んでいます。とにかく本社とのコミュニケーションを楽しみにしており、心の中はおいしい野菜をたくさん本社に届けたい気持ちであふれています。私自身、素晴らしい障がい者雇用の現場にいられる誇りを胸に日々楽しく働いています。

皆さんへの最後の質問は「もっと頑張って農場長さんを楽にしてあげたいですか?」。3人の思い切り元気な挙手に、思わずウルっとされた野々山農場長さんでした!

2022年4月27日インタビュー
本文中の企業名、役職、数値情報等は、インタービュー当時のものです。
会社名 NDSソリューション株式会社
事業内容 フィールドエンジニアリング事業(半導体・FPD製造装置のフィールドサービス)、ITソリューション事業(通信ネットワークインフラ構築、システム開発)、ビジネスパートナー事業(セールスアウトソーシング)、教育・研修事業
URL https://www.nsol.co.jp/