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「失敗したって大丈夫!」時短勤務のママ社員が推進する 農園を舞台にしたダイバーシティ構想

株式会社ドトールコーヒー

人事総務部 佐藤 美波 様

利用目的
  • ダイバーシティを推進する同社の経営方針に沿った障がい者雇用の場を模索していた。
  • 同社のCSR意識向上に有用な雇用ノウハウとして期待した。
抱えていた課題
  • 会社の成長と法定雇用率の上昇で、より多くの障がい者を受け入れる必要性が生じていた。
  • 社内でも雇用を進めているが、障がい者の特性に見合った業務の切り出しが困難であった。
利用効果
  • ダイバーシティ推進に欠かせない存在として、ファームの取り組みが全社的に認知されてきた。

農園での経験が、スタッフたちの成長に確実に貢献している。

「一杯のおいしいコーヒーを通じて、お客様にやすらぎと活力を提供する」。セルフコーヒーショップのパイオニアとして、常に日本のカフェ文化をリードしてきた株式会社ドトールコーヒー。
創業から半世紀を経た現在は、コーヒービジネスの枠を超えたエクセレント・リーディングカンパニーとして、さらなる食文化の創造と成長が期待されています。

同社は2016年11月、千葉県船橋市のエスプールプラスが運営する「わーくはぴねす農園船橋」に「D-FARM」を創設、16名体制で障がい者雇用に取り組んでいます。開園直後は苦労もありましたが、現在ではスタッフも成長し、野菜を通して生まれた交流は、社内のダイバーシティ気運の醸成に大いに貢献しています。
オープン時から農園事業に携わり、6年目を迎えた今もファームと真摯に向き合う同社人事総務部の佐藤美波様に、ファーム運営の成果やこれからの目標をお聞きしました。

「会社的にも個人的にも、ゼロから始まったファーム運営」

「D-FARM」運営に携わるようになった経緯をお聞かせください。

私は2009年に新卒入社し、今年で12年目を迎えました。店舗運営や管理部門などさまざまな部署を経験後、現在は人事総務部で中途入社者、外国籍社員採用などとともに、障がい者雇用農園「D-FARM」を担当しています。人事総務部の業務も6年目に入りましたが、農園のプロジェクトはなかでも印象深く、やりがいに満ちた仕事だと考えています。

上司の言葉がきっかけでスタートした農園プロジェクトでしたが、当時の私は社内の状況や事情、法律的な知識にもうとく、まさにゼロからのスタートとなりました。高校時代には福祉コースを専攻し、障がい者の方々との接点や学びの経験は持ち合わせていましたが、ドトールでこのような仕事に関わるとは思ってもおらず、正直とまどいました。

プロジェクトは社内の障がい者雇用の現状把握や、法律や制度、農園と障がい者雇用の仕組みの理解や他社の事例など、あらゆる情報を収集する作業から始まりました。雇用の創出のみならず、サステナブルな展開を実現するために、エスプールプラス社をパートナー運営会社に選択、同社の豊富なノウハウに手助けされプロジェクトの社内承認を得ることができました。
弊社の障がい者雇用実績にこれほど大きな前例は見られず、社内コンセンサスの獲得には長い期間を要しました。それだけに当時エスプールプラス社と学んだ経験の多くが、現在の農園運営を支える貴重な財産だと考えています。

「成長する喜びを農園名に託して」

現在のファーム運営概況を教えてください。

農園運営は6年目に入りました。千葉県船橋市でエスプールプラス社が運営する「わーくはぴねす農園船橋」内に「D-FARM」を開設、現在障がい者スタッフ12名、農場長4名が、4チーム体制で働いています。
農園名のDの字には、DOUTORの他にDEVELOP(成長)、DELIGHT(喜び)といった思いを託しています。太陽をモチーフにした農園ロゴは、知的障がい者のアーティストを応援する団体「パラリンアート」様に依頼しました。

季節の葉野菜やキュウリ、トマトなどをメインに育てていますが、最近ではスタッフのスキルも上昇し、ブロッコリーやじゃがいもなど大きな実野菜の栽培も盛んになっています。
収穫した野菜は本社や工場へ配送し、社員の福利厚生として配布しています。また、子ども食堂や小学校、地域のイベントへの寄付や一部店舗での販売も行ってきました。

「スタッフとの交流が円滑な農園運営に結びつく」

順調なファーム運営に必要と思われる考え方とは?

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オープン以降の5年間で、さまざまな苦労と喜びを経験しました。当初は欠勤者が目立ち、スタッフに毎日農園に出勤してもらうところからファーム運営は始まりました。休職者や退職者も発生し、スタッフ間のトラブル、農場長との衝突など、頭を悩まされる日々を過ごしたものです。「もう農園で働きたくない」と、スタッフから泣きの電話がきたこともありました。

しかし少しずつお互いの心の距離が近づき始めました。私と目も合わせてくれなかったスタッフが、名前を覚えて声を掛けてくれるようになりました。LINEや手紙による交流も始まりました。
私たちは野菜の生産を通じて、自分たちが一生懸命育てた野菜が人の空腹を満たし、笑顔を生み、健康に役立つことを知りました。自分の仕事が誰かの幸せにつながっていることを一緒に学んだのです。

こうしてスタッフの心に自信とやりがいが芽生え、農園の運営は軌道に乗り始めました。いつの頃からか、チームが仲良く収穫作業にいそしむ姿を見ることが、私のささやかな楽しみとなっています。自分はファームの成長に貢献できている、そんなやりがいを感じる瞬間ですが、もちろん自分自身もファームに育てられていたようです。

「スタッフを成長に導く3つの考え方」

5年間にわたって農場長と一緒に農園の運営管理に携わってきた経験から、私はスタッフと接する際に3つの考え方を大切にするようになりました。

「特別扱いしない」

スタッフはそれぞれ異なる障がいを有しています。安心、安全に働いていただくための個別の配慮は欠かせません。
しかし、このスタッフにこの仕事は無理だと、初めから決めつけることはしません。先ずやってみて、できるように工夫をするようにしています。前向きに取り組む心を大切にしています。人として、社会人として当たり前のことは健常者と同じようにこなしたい。スタッフの皆さんに「D-FARM」を単なる仕事場ではなく、人として成長するためのステージとしても活用して欲しい、そんな願いを常に抱いています。

「違いを否定せず受け入れる」

障がいの種類やレベルだけでなく、育ってきた環境自体が全員異なるので、それぞれ性格や価値観は十人十色です。自分の当たり前がそうではない、これは農園運営をする上で特に強く感じることです。コミュニケーションの場では、相手を変えようとするのではなく、自分自身が相手に合うように変われるかを意識しています。

「頑張りましょうではなく、大丈夫と声掛け」

オープン当初、上手にこなせないスタッフに対して、よく「〇〇さん頑張りましょう!」と声を掛けていました。しかし、スタッフと接しているうちに、皆さんはすでに頑張っている、と気づかされたのです。相手に良かれと思って口にした言葉が、スタッフのプレッシャーとなっていたのです。
現在は失敗しても「大丈夫!」と、心をほぐす気づかいを忘れないようにしています。

「D-FARMの認知拡大、スタッフの特別な場所になることを目指して」

佐藤様が思い描く「D-FARM」の未来予想図とは?

開園から試行錯誤しながら運営を行ってきた「D-FARM」ですが、まだまだ課題は多いですね。5年間でチーム数は4つに増えましたが、私自身は他の業務との兼ね合いもあり、運営管理だけで精いっぱいになっていました。
そのため、農園の存在を社内外にしっかりと認知させることができていないと感じています。これまで一部店舗の売店で野菜の販売を行ったり、社内アナウンスを行い、社員へ野菜を配布し、農園の様子も共有してきました。
しかし、どうしても人事総務部マターとして捉われてしまいがちなので、全社的に農園運営に取り組めるようなスキームを構築したいと考えています。この12月よりフードバンクTAMA様と連携を行い、児童福祉施設や子ども食堂、ひとり親生活困窮家庭等への野菜の無償提供を開始しましたが、今後も社外へのアピールや野菜活用にも力を入れていきたいと考えています。

2021年12月27日現在、さまざまな企業がSDGsやCSRの取り組みに励んでいます。弊社はその中でも、比較的早い段階からダイバーシティに関して積極的に向き合ってきました。私自身もママ社員として現在時短勤務中。これからの女性社員のロールモデルになれるよう、育児とキャリアの両立に挑戦中です。「D-FARM」はそんな弊社が推進するダイバーシティの象徴でもあるだけに、担当者として農園の未来には強い思い入れを抱いています。

近い将来、「D-FARM」がスタッフの人生の成長を応援する場となり、ここでの働きが誰かの「幸せ」「やすらぎ」「活力」に結びついてくれることを願っています。そのためにも社内だけではなく、社外の方々にも「D-FARM」の存在を知っていただきたい。これからもスタッフが暑い日も寒い日も一生懸命育てた野菜を、1人でも多くの人々にお届けしたいと思います。

2021年12月27日インタビュー
本文中の企業名、役職、数値情報等は、インタビュー当時のものです。

会社名 株式会社ドトールコーヒー
事業内容 コーヒーの焙煎加工並びに販売、食品の仕入れ・販売及び輸出入、飲食店の経営、フランチャイズチェーンシステムによる飲食店の募集及び加盟店の指導
URL https://www.doutor.co.jp/