障がい者雇用におけるコロナの影響

新型コロナウイルスは、私たちの働き方や、生活の様式を大きく変えるものとなり、さまざまな場面で大きな変化が起こっています。それは、障がい者雇用においても同じことが言えます。

また、経済や企業経営への影響が広がる中、障がい者雇用においても解雇や雇い止めなどのニュースを目にすることが増えてきました。現時点では、目にしている影響は一部かもしれませんが、わかっている情報から障がい者雇用の影響について考えていきたいと思います。

まずは、コロナが、障がい者枠で働く人や就職活動をしている人、また、障がい者雇用をしている企業にとって、どのような影響があったのかについて見ていきます。

障がい者枠で働く人たちへの影響

新型コロナウイルスの感染拡大で雇用への影響が広がるなか、障がい者枠で働く人たちへの影響が出始めています。

企業などを解雇された障がい者は2020年4月から2020年9月までの半年間で、全国で1213人に上り、前年の同じ時期に比べて342人、率にするとおよそ40%増えています。

また、その割合を障がい別でみると、知的障がい者は432人で前年よりおよそ80%増加、精神障がい者は315人(前年比+29%)、身体障がい者は466人(前年比+20%)となっています。

出典:NHK「障害者の解雇40%増加 企業の業績悪化など理由」

このように雇用環境が変化する中で、働く障がい者からは、「働いていた会社から雇い止めを受けた」、「仕事のスタイルが変化してリモートワークになった」、「勤務体系に変更があり、休業や時短勤務になった」などの声が聞かれています。

障がい者枠で就職活動をしている人たちへの影響

雇用環境が悪化する中で、障がい者枠で就職活動をしている方への影響はさらに大きくなっているようです。新規採用に関しては、コロナの影響が出始めた2020年の春頃から求人数がかなり減ったという声を聞きます。

就労移行支援事業所などで就労のための準備をしている人たちからは、「実習が決まっていたものの、実習が延期になっただけでなく、雇用の話もなくなってしまった」、「求人数が同時期に比べても極端に少ない」、「企業実習を断られる」などのケースも増えているという報告が聞かれました。

また、近年、特別支援学校などでは、医療や介護施設での実習を通して採用が決まることが増えていますが、コロナ禍の中では実習ができない状態が続きました。結果的に、就職は例年に比べて厳しくなり、一般就労する割合が減少し、福祉就労の割合が増加している状況も見られています。

コロナ禍での障がい者を雇用している企業の対応

コロナ禍の中で、障がい者雇用をしている企業の対応は、職場のある地域や仕事内容によって異なりますが、大きく分けると、次の3つに分けることができます。

1つ目は、働き方として定着しているリモートワークを、障がい者雇用の中でも同じように取り組んでいる企業です。

このような取り組みができている企業はIT・情報関連のところが多く、もともと仕事としてパソコンを使った業務が中心だったため、リモートワークという働き方に対して、ハード的にもソフト的にも準備が整っているといった背景もあるようです。

2つ目は、休業や時差出勤、時短勤務などで対応した企業です。清掃やバックオフィス業務、印刷、メール配達など、職場でないと行えない業務の企業に多く見られました。特に、2020年4月の緊急事態宣言のときには、休業にしたところも多くありました。

また、緊急事態宣言が解除されたあとも、社員のほとんどがリモートワークで働いているケースや、時短勤務や交代勤務などが継続されているケースも見られました。出社できる社員の割合が決まっている企業の場合、障がい者のマネジメントに携わる社員の出勤に合わせて障がい者が勤務するような働き方が多かったようです。

3つ目は、もともとサービス業などのリモートワークが難しい業種です。このような企業では、会社全体がソーシャルディスタンスを保ちながら通常通りの業務を続けているため、障がい者雇用においても働き方に大きな変化が見られませんでした。

ウィズ・アフターコロナでの障がい者雇用

ウィズ・アフターコロナの中で、企業は、障がい者雇用にどのように対応していくことが求められるのでしょうか。

まず、大事なことは、障がい者を継続的に雇用し続ける体制を作るということです。多くの企業では、BCP(事業継続計画)を作成していますが、自然災害を意識したものにはなっていても、今回のコロナのような状況を想定していた企業は少なかったようです。

緊急事態は、突然発生するものです。そのときに企業が適切な手段を打つことができないと、事業の縮小や継続が難しくなるという状況に陥ってしまいます。そのような状況にならないためにも、平常時にBCPを準備しておき、緊急時に事業の継続・早期復旧を図る備えをすることができるでしょう。

また、障がい者の業務として多く行われている清掃や印刷関連、事務サポート、軽作業などの仕事は、職場に行かなければできない業務です。そのために、コロナ禍の中で働くことができない人も一定数いました。

もちろんこれらの業務も必要な仕事ではあるものの、「職場でなければできない仕事」という縛りがあると、何かが起こったときには働き続けることが難しくなります。これからは、リアルの場で働くことに加えて、リモートワークで行える業務の開拓をしていくことも大切です。

リモートワークが一気に普及する中で、今までなかなか進まなかった書類の電子化やハンコ文化も変化しつつあります。もしかすると、今までにあった業務でも、新しい技術や機械化が進むことにより、仕事量が減ったり、なくなったりする可能性も出てきます。このようなことを検討しながら、業務の見直しを図っていく必要があるでしょう。

一方で、コロナ禍の中で企業が受ける影響の大きさから、多くの助成金や給付金などが支給され、企業の存続をサポートする施策がとられる中、障害者雇用率は令和3年3月から0.1%引き上げられます。これは、経済や企業経営に大きな影響があるような事態の中でも、障がい者雇用は今までと同じように取り組むようにということを示していると考えられます。

そのため、企業運営を継続できる体制づくりをしながら、障がい者雇用を進めていくこと、ITやDX(デジタルトランスフォーメーション)などの変化に合う仕事内容について、見直していくことを意識していくことが大切です。

法定雇用率の現状

厚生労働省から「令和2年 障害者雇用状況の集計結果」が発表されました。これは、令和2年の民間企業で働く障害者の雇用状況を示したものとなります。この集計結果を見ると、雇用障がい者数、実雇用率ともに過去最高を更新していることがわかります。

雇用障がい者数は57万8,292.0人と対前年3.2%となっており、7年連続で雇用者数が過去最高となりました。また、実雇用率は2.15%と、こちらも過去最高を更新しています。

障がい別にみると、身体障がい者は356,069.0人(対前年比0.5%増)、知的障がい者は 134,207.0人(対前年比4.5%増)、精神障がい者は88,016.0人(対前年比12.7%増)と、いずれも前年より増加しており、近年、精神障がいの雇用が伸び続けていますが、今回も同じように増加していることがわかります。

今回の調査では、6月1日現在の状況となっているため、コロナの影響はあまり反映されていないと考えられます。コロナの影響が出始めたのが2020年春頃、また雇用状況が悪化している、解雇などのニュースは、このロクイチ調査が終わって以降から目にすることが多くなりました。これらの影響については、今後影響がでてくるものと思われます。

まとめ

障がい者雇用におけるコロナの影響について見てきました。雇用環境の悪化による障がい者雇用の影響は小さくはありませんが、環境が変化する中で、新たな障がい者雇用の可能性を検討する企業も増えてきています。

リモートワークを実施したからこそ、精神障がいや発達障がいの方にとって働きやすい環境を提供できた、新たな業務の開発を考える機会になったという企業も少なくありません。

それぞれの企業の状況は異なりますが、コロナを機に今までの障がい者雇用を見直し、より働きやすい職場づくりや、活躍できる職域の開拓をする機会にすることもできるでしょう。